Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

下野竜也/東京シティ・フィル&シモーネ・ヤング/読響

2017年06月25日 | 音楽
 土曜日は東京シティ・フィルの定期と読響の定期をハシゴした。どちらにも大変な名演があった。

 まず東京シティ・フィルの定期へ。下野竜也の指揮でフンパーディングのオペラ「ヘンゼルとグレーテル」の前奏曲、ワーグナーの「ヴェーゼンドンク歌曲集」(ヘンツェ編曲の室内オーケストラ版、メゾ・ソプラノ独唱は池田香織)、ドヴォルザークの交響曲第6番。

 なかでもドヴォルザークの交響曲第6番が名演だった。第1楽章の冒頭から、軽やかで艶のある弦の音が流れてきて、その流れにオーケストラ全体が合流した。リズムには快い弾みがあり、明るく伸びやかな叙情が漂った。テンポの変化もよくきまった。第1楽章のコーダでは息詰まるような高揚感があった。

 第2楽章以下もその流れに変わりはなかった。わたしはとくに第3楽章に目をみはった。チェコの民族舞曲フリアントの様式による楽章だが、そこにほとばしる魂の叫び、別の言い方をするなら、抑えようもない感情の爆発に、胸が熱くなった。

 下野竜也はほんとうによくこの曲を知っているようだ。持ち前のメリハリのある曲の把握と、歯切れのよいフレージングに加えて、緻密なアンサンブルと瑞々しい音色をオーケストラから引き出し、全体を通して快い緊張感が持続した。

 次に読響の定期へ。シモーネ・ヤングの指揮でプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番(ピアノ独奏はアブドゥライモフというウズベキスタンの若手ピアニスト)とリヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」。シモーネ・ヤングはすでにいくつかの在京オーケストラを振っているが、読響へは初登場。

 「アルプス交響曲」が名演だった。久しぶりに読響がよく鳴る演奏だった。読響はカンブルラン体制になってから、一気に語彙を豊富にしていると思うが(わたしはカンブルランを全面的に支持する一人だが)、読響にはもともと豪放磊落に鳴る側面があり、そこにシモーネ・ヤングが触れたようだ。

 よく鳴るとはいっても、けっして粗くはならない。いわゆる‘爆演’ではない。オーケストラは常にシモーネ・ヤングのコントロールの下にある。その上で、チェロとコントラバスの激しい動きを強調するなど、演奏上のダイナミズムを生む仕掛けが施されていた。

 最後の、消え入るように終わる暗い音色には、‘死’を想わせるものがあった。
(2017.6.24.東京オペラシティ&東京芸術劇場)
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