Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

インキネン/日本フィル

2018年06月10日 | 音楽
 メンデルスゾーン・プログラム。インキネンは東京定期でもメンデルスゾーンをプログラムに組んでいるが、当日は仕事の関係で行けないかもしれないので、この横浜定期でしっかりインキネンのメンデルスゾーンを聴いておこうと思った。

 1曲目は「フィンガルの洞窟」。予想にたがわず、冒頭の弦のテーマが、澄んだ音色で、軽く、浮き立つように演奏された。その後も、穏やかで、素直な演奏が続く。先日の下野竜也指揮都響の交響曲第3番「スコットランド」のアグレッシヴな演奏とは対照的だ。

 2曲目はヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は川久保賜紀。チャーミングなステージマナーの人だ。技巧的にも十分なものを感じさせる。だが、どこか、引っ掛かるところがあった。それは何だろう。あえていえば、細かな音が恣意的に流れる部分があるのではないか、と思うが。

 オーケストラはよかった。インキネンのドイツ音楽の演奏の型がよく表れていた。最初は淡々と進むが、徐々に彫りが深くなり、最後は思いがけないところに到達する。ドイツ音楽の往年の巨匠のような型だが、インキネンはそれを身に着けているとともに、前述のような、軽くて、澄んだ、浮き立つような音を持っている。その両面がインキネンを個性的な指揮者にしている。

 川久保賜紀がアンコールを演奏した。バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番からサラバンド。演奏もよかったが、それ以上に、バッハの音楽が、若い演奏家も(川久保賜紀の場合は中堅の域にさしかかっているのかもしれないが)、老年の演奏家も、すべてを受け入れ、各人のその時々の音楽観を映し出す鏡のような存在であることを、あらためて感じた。

 3曲目は「真夏の夜の夢」の抜粋。序曲の冒頭では、弦の細かい動きが一糸乱れずとはいかなかったが、全体的にはインキネンらしい演奏。結婚行進曲は、テンポを抑え気味で、ことさら華やかではなく、メンデルスゾーンの本旨に立ち返った演奏。そのおかげで、演奏会全体がいわゆる名曲コンサートにならずに済んだ。

 横浜定期ではアンコールが恒例だが、さて、このメンデルスゾーン・プログラムでアンコールは何だろうと思っていたら、ノスタルジックで、映画音楽のような雰囲気のある曲が演奏された。帰りがけに、出口の掲示を見ると、「無言歌」から「舟歌」を編曲したものとのこと。珍しい曲を聴けた。
(2018.6.8.横浜みなとみらいホール)
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