Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ペッカ・クーシストのCD

2019年06月19日 | 音楽
 先日、日本フィルの横浜定期で聴いたペッカ・クーシスト(1976‐)というヴァイオリニストが大変面白かったので、その後いくつかのCDを聴いてみた。わたしがアクセス可能なのはナクソス・ミュージック・ライブラリーなので、そこで聴いた範囲だが、その感想を記したい。

 横浜定期で聴いた曲はシベリウスのヴァイオリン協奏曲だが(オーケストラはインキネン指揮日本フィルで、インキネンのやりたいことがよくわかる演奏だった)、冒頭のヴァイオリン・ソロの深く沈潜した表現と、聴こえるか聴こえないかというくらいの最弱音に惹きつけられた。また、第1楽章と第3楽章では、弾みのあるノリのよい演奏が展開され、思わず目をみはった。

 それらの演奏を思い出させるCDは、まず深く沈潜した表現では、チャールズ・アイヴズのヴァイオリン・ソナタ第4番「キャンプの集いの子供の日」の第2楽章ラルゴが挙げられる。その集中力ある演奏は並大抵ではないと思う。

 一方、ノリのよい演奏では、バッハのヴァイオリン協奏曲ホ長調BWV1042の第3楽章アレグロ・アッサイの展開部が挙げられる。目覚ましい躍動感がある。オーケストラはタピオラ・シンフォニエッタだが、指揮者を置かずに、クーシストが弾き振りしている。

 これらのCDで先日のわたしの印象は裏付けられたが、それと同時に、クーシストへの興味がますます募るのを感じた。古典派の曲も聴いてみたいと思い、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」を聴いてみた(オーケストラはオッリ・ムストネン指揮タピオラ・シンフォニエッタ)。ピリオド様式を取り入れたその演奏にひじょうに惹かれた。また、パガニーニのヴァイオリンとギターのための協奏的ソナタイ長調は、古典的な様式感を備えていた。

 もっとも注目したCDは、セバスチャン・ファーゲルルンドSebastian Fagerlund(1972‐)というフィンランドの作曲家のヴァイオリン協奏曲「光の中の闇」(2012年)だ(オーケストラはハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放送響)。その演奏は水を得た魚のようだ。

 なお、ファーゲルルンドはポスト・モダンの作曲家で、2016/17のシーズンにアムステルダムのロイヤル・コンセルトヘボウのコンポーザー・イン・レジデンスを務めた。

 余談だが、クーシストの父のイルッカ・クーシスト(1933‐)は作曲家で、1984~92年までフィンランド国立オペラの総支配人を務めた。兄のヤッコ・クーシスト(1974‐)はヴァイオリニストで、兄弟のデュオのCDもある。
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