Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

インキネン/日本フィル

2019年06月08日 | 音楽
 インキネン/日本フィルの意欲満々のプログラム。1曲目は湯浅譲二(1929‐)の「シベリウス讃―ミッドナイト・サン―」(1991年初演)。詳細は省くが、1990年のシベリウス生誕125周年を記念して書かれた曲。

 湯浅譲二の透明な音響がシベリウスの澄んだ音響にシンクロしたような曲。ミッドナイト・サン(白夜の太陽)の薄明な光が感じられる。湯浅譲二特有の音響がシベリウスと相性がいいのが意外な発見だ。湯浅譲二を解くキーワードが一つ増えたように感じる。インキネン/日本フィルの演奏も純度が高かった。

 演奏後、今年90歳になる湯浅譲二が、杖を突きながら、ゆっくりした歩調でステージに上がった。会場から大きな拍手が起きた。その拍手に応え、インキネンと握手を交わした後、再びゆっくりと自席に戻る湯浅譲二を、聴衆はずっと拍手で送った。

 2曲目はエサ=ペッカ・サロネン(1958‐)の「ヴァイオリン協奏曲」(2017年初演)。ヴァイオリン独奏は諏訪内晶子。全4楽章、演奏時間約29分(プログラム表記による)のこの曲の(第3楽章結尾を除いて)ほとんど出ずっぱりの独奏ヴァイオリンを、諏訪内晶子は目の覚めるような技巧で弾き通した。

 オーケストラもおもしろかった。独奏ヴァイオリンに呼応するかのように、絶えずどこかで(たとえば第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンの後方プルトで)細かい音型が動いていたり、独奏ヴァイオリンの素早い動きがヴィオラの首席奏者に波及し、それがチェロの首席奏者に引き継がれたりする。あるいは12‐12‐10‐8‐8という低音に比重のかかった弦楽器と、バス・クラリネットやコントラ・ファゴットはおろか、コントラバス・クラリネット(珍しい!)や音程付きのゴングなどが、低音のアクセントを添えたりする。

 難易度の高そうなオーケストラ・パートだが、インキネン/日本フィルは見事に演奏して、実演ならではのおもしろさを伝えた。

 諏訪内晶子はアンコールにバッハの「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番」からルールを弾いた。楽器がよく鳴って美しかった。

 3曲目はシベリウスの組曲「レンミンカイネン」(4つの伝説)。終始張りのある音で、緊張感を途切れさせず、ニュアンス豊かに、よく練り上げた演奏が展開された。インキネン/日本フィルの名演の一つが生まれた。このコンビは、4月のヨーロッパ公演後、一皮むけたと思う。当夜はゲスト・コンサートマスターの白井圭の力も大きかった。
(2019.6.7.サントリーホール)
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