Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

「グレの歌」(1)

2019年03月22日 | 音楽
 先日カンブルラン/読響がシェーンベルクの「グレの歌」を演奏した。今後は大野和士/都響とジョナサン・ノット/東響も同曲を演奏する予定なので、今年は「グレの歌」の当たり年だと、音楽好きの間で話題になっている。

 「グレの歌」はそれほどわかりやすい曲ではないと思う。シェーンベルクの音楽には圧倒的な力があるが、テキストはどうだろう。ヴァルデマール王とトーヴェの愛を語る第1部と、トーヴェの死に当たってヴァルデマール王が神を呪う第2部はわかりやすいが、道化師クラウスが出てきたり、「夏風の荒々しい狩り」と題する語りが出てきたりする第3部は、すっきり頭に入ってこないのではないか。

 「グレの歌」の原作はデンマークの詩人・作家のヤコブセン(1847‐1885)の未完のオムニバス的な作品「サボテンの花ひらく」の中の詩「グレの歌」だ。その「サボテンの花ひらく」を、鷺澤伸介氏が原語のデンマーク語から翻訳したものが、インターネット上に公開されている。しかも同氏による詳細な訳注付きだ。

 わたしは数年前にそれを読み、今回(読響を聴く前に)読み直した。以下はわたしの備忘録として――。

 まず、グレとは何かだが、グレ(デンマーク語では「グアア」)は地名。訳注によれば「ヘルシングウーアとティクープの間にある村」の名前。ヘルシングウーアは日本では一般的にヘルシンゲルと表記されている。シェイクスピアの「ハムレット」の舞台となった場所だ(「ハムレット」ではエルシノアと表記されている)。わたしも一度行ったことがある。コペンハーゲンから電車で1時間足らずで着いた。海に面した街で、わたしが行った日は寒い曇天だったので、「ハムレット」にふさわしい陰鬱な感じがした。

 そのヘルシンゲルの郊外にある村がグレだ。中世には城が建っていたが、今では廃墟となっている。その城にはヴァルデマール王とトーヴェの伝説が伝わり、今でも観光客が訪れる。その伝説を題材とした詩が「グレの歌」だ。

 ヴァルデマール王とトーヴェは愛し合い、グレの城で逢瀬を重ねる。それを知ったヴァルデマール王の妃はトーヴェを殺害する(殺害は「森鳩の歌」で伝えられる)。ヴァルデマール王は神を呪う。以上が第1部~第2部。

 さて、第3部。ヴァルデマール王の亡霊が軍勢(それも亡霊)を引き連れて、夜の荒野を駆け廻る。農夫がびっくりする。そこまではよいが、その後に登場する「道化師クラウス」とは何者か。また語りの「夏風の荒々しい狩り」とは何か。(続く)

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