Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

クラングフォルム・ウィーン「クセナキス100%」

2022年08月27日 | 音楽
 サントリーホール サマーフェスティバル2022。クラングフォルム・ウィーンの最終公演はクセナキス・プログラム。1曲目は6人の打楽器奏者のための「ペルセファッサ」。ステージ上に2人、1階客席の左右に各1人、1階客席の後方に2人が配置される。写真(↑)を撮ってきたが、1階客席の後方2人の位置、1階客席の(ステージから見て)左側の位置、ステージ上の1人の位置が見える。

 1階席中央に座った人は、前後左右から打楽器の音に囲まれる。わたしは2階席中央に座ったが、音の移動が視覚的にわかり、それはそれでおもしろかった。

 野々村禎彦氏のプログラムノートによれば、全曲は6部に分かれる。その第1部は「単純な等拍リズムで始まり、3連符や5連符が混ざり始め、複雑なカノンに至る」とある。おもしろいことには(残念なことには、というべきかもしれないが)、サントリーホールの残響が豊かすぎるので、リズムの複雑化の過程が残響と入り交じり、明瞭に浮かび上がってこない。初演は「イランのペルセポリス遺跡を会場とするシーラーズ芸術祭」でおこなわれたそうだ。その会場が野外なら、そのほうが効果的だろう。

 一方、第6部は「一見単純なパルスに戻るが、そのアクセントが回転運動を始めて徐々に加速し、空間配置を活かしたクライマックスを迎える」。そのクライマックスはサントリーホールの豊かな残響がプラスに働き、華麗な音響効果を生んだ。

 演奏者は、ステージ上にイサオ・ナカムラと神田佳子、1階左右に前川典子と畑中明香、1階後方にクラングフォルム・ウィーンのメンバー2人が陣取った。イサオ・ナカムラの実力はいうまでもないが、わたしは今回、名前だけは知っていたが、実演を聴くのは初めての神田佳子の躍動感のある演奏に注目した。

 2曲目はバレエ音楽「クラーネルグ」。室内オーケストラとテープのための音楽だ。鋭い動きをする室内オーケストラの生音と、気体か液体のように流動するテープ音楽との対比が鮮やかだ。もっともその対比は、対話なのか、融合なのか、抗争なのか。それは判然としない。振付はいかようにもできそうだ。YouTubeにはGraeme Murphyの振付とLuca Veggettiの振付が(それぞれ短い動画だが)載っている。まったく異なる振付だ。

 演奏は(いうまでもないが)クラングフォルム・ウィーン。アグレッシブで、アンサンブルとしてのまとまりが見事で、透明感のある鮮烈な演奏だった。クラングフォルム・ウィーンの本領発揮だ。音響デザイン(テープ音楽)はペーター・ベーム。混濁せず、生音の効果を妨げない、繊細な音響だった。
(2022.8.26.サントリーホール)

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