Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ウルバンスキ/東響

2023年04月16日 | 音楽
 ウルバンスキ指揮東京交響楽団の定期。ウルバンスキを聴くのは初めてだ。1曲目はプロコフィエフのバレエ音楽「ロミオとジュリエット」から12曲が演奏された。ウルバンスキ自身が「ぶらあぼ」のインタビューで語っているが、ストリーを追って組み立てられている。演奏もバレエ音楽というよりは、シンフォニックな性格のものだった。全12曲の中で「タイボルトの死」を頂点に、そのダイナミックな演奏と、その他の曲での音を抑えた演奏との対比をつけていた。

 2曲目は1970年生まれのフランスの作曲家、ギョーム・コネッソンの「Heiterkeit」(晴れやかさ《静穏》)。オーケストラと合唱のための曲だ。ベートーヴェンの「第九」の前プロとして作曲された由。オーケストラは「第九」と同じ編成で書かれている。演奏時間は約11分。ウルバンスキに献呈されている。

 全体は3部に分かれているが、切れ目はない。表題の通り、明るく爽やかな空気の漂う曲だ。「第九」の前に演奏したら、「第九」の冒頭の不穏な和音が際立つだろう。歌詞はヘルダーリンが精神を病んでから、スカルダネッリという名で書き続けた詩の4篇がとられている。スカルダネッリというと、ハインツ・ホリガーの「スカルダネッリ・チクルス」が思い出される。あれはヘルダーリン(=スカルダネッリ)の精神の不安定さと、そこに窺われる異常な明敏さを音にしたような、他に比べようのない音楽だ。一方、コネッソンの音楽は晴朗で安定している。ホリガーの音楽とは対照的だ。

 3曲目はシマノフスキの「スターバト・マーテル」。ペルゴレージ、ドヴォルジャーク、プーランクその他枚挙にいとまのない「スターバト・マーテル」の中で、シマノフスキの本作品は、歌詞がラテン語ではなく、ポーランド語に訳されている点が特徴だ。ポーランド語がどんな音か、まったくわからないが、時々スラヴ語的な音が聴こえた。

 全6曲からなるが、どの曲も美しく、また全体を通して一貫した緊張感がある。シマノフスキがオペラ「ロジェ王」を書きあげた後に書いた曲だが、「ロジェ王」の異教的かつ耽美的な音楽とは異なり、シンプルで明快な音楽だ。約20分の演奏時間があっという間に終わった。

 ソプラノ独唱のシモーナ・シャトゥロヴァの伸びのある声、メゾ・ソプラノ独唱のゲルヒルト・ロンベルガーの深みのある声、バリトン独唱の与那城敬の張りのある声、いずれもすばらしかったが、特筆すべきは東響コーラスだ(合唱指揮は冨平恭平)。透明なハーモニーに加えて、ポーランド語のディクションも統一されているように聴こえた。「Heiterkeit」も本作品も暗譜で歌ったことにも驚嘆した。
(2023.4.15.サントリーホール)

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