Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

DIC川村記念美術館のロスコ・ルーム

2016年07月18日 | 美術
 3連休なので、この機会に‥とDIC川村記念美術館に行った。JR佐倉駅・京成佐倉駅から無料のシャトルバスが出ている。わたしが行くのは2度目。前回は2006年。クレー展を見に行った。そのときの感動は今でも覚えている。今回の目的はロスコ・ルーム。常設展なので前回もあったわけだが、前回はクレー展でお腹がいっぱいになり、そのまま帰った。

 ロスコ・ルームはマーク・ロスコ(1903‐1970)の「シーグラム壁画」7点の展示室。ロスコ・ファンの聖地だ。わたしは昨年、ドイツのエッセンのフォルクバンク美術館でロスコの作品と出会って、魂が震える想いがしたので、ようやくロスコ・ルームを訪れる機が熟したと思った。

 ロスコ・ルームは不均等な七角形の部屋。各々の壁面に「シーグラム壁画」が1点ずつ架かっている。部屋に入ると、最初は照明が暗いと思った(その照度はロスコの意図を踏まえたものだ)。だんだん目が慣れてくると、作品が見えてきた。

 最初は拒絶されている感じがした。スフィンクスのようだと思った。だが、じっと見ているうちに(5分か10分たった頃か)、急に作品が動き始めたような、あるいは(もっと実感に即していうと)何かをしゃべりだしたような気がした。そうすると、あとはもう興奮の渦中にいた。

 「シーグラム壁画」がどんなものか、言葉で説明することは難しいが、あえて概略を述べると、サイズは縦167.6~266.7㎝×横152.4~455.9㎝と大きく、暗褐色の地の上に黒色や橙色や紫色の窓や扉(のように見える図形)が描かれている。(※)

 図形といっても、それはけっして定規で測ったような直線ではなく、太くなったり細くなったり、かすれて消えそうになったり、曲がったり、要するに人間の手が描いた痕跡を残すもの、いや、人間の手が描いたことを主張するものだ。

 それらの図形が何かをしゃべり、わたしに問いかけ、部屋全体がそんなおしゃべりに満たされているのに、同時に静謐で(これ以上はないくらい静謐で)瞑想的だ。

 わたしは想像した――もしこれらの壁画が当初の予定通りニューヨークの高級レストランに飾られていたら、お客さんたちは食事と談笑に夢中で、壁画など眼中になかったろう。でも、談笑の途中で、だれかがフッと壁画に気が付いて、何だかこっちを見ているような気がしたら、落着かない気分になったかもしれない‥と。
(2016.7.16.DIC川村記念美術館)

(※)「シーグラム壁画」の動画Youtube

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