Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

モンドリアン展

2021年06月03日 | 美術
 緊急事態宣言の発令にともない休止された「モンドリアン展」が、緊急事態宣言は継続中だが、一部規制緩和されたので、6月1日から再開された。会期は6月6日まで。ぎりぎりで間に合った。本展は今後、豊田市美術館に巡回する。

 本展はモンドリアン(1872‐1944)の作風の変遷をコンパクトに辿っている。スタートは「ハーグ派」と呼ばれる穏やかな作風の風景画家たちの一員として。SOMPO美術館では2014年に「オランダ・ハーグ派展」を開催した。そこではモンドリアンの作品も何点か展示された。わたしは同展を見て「モンドリアンはここから出発したのか」と感慨を覚えた。今回それを思い出した。

 その時期の作品から一点挙げるとすれば、「ダイフェンドレヒトの農家」(1905頃)が印象的だった。農家が数軒建っている。何本もの枯木がそれらの農家を囲んでいる。手前には小川が流れている。背後には平野が広がっている。空にはどんよりとした雲が浮かんでいる。雲間から弱い日差しがもれている。その日差しの描写が美しい――と、そういう絵だ。画像は本展のHP(※)に掲載されている。

 本展でもっとも衝撃的な作品は、「ドンブルグの教会塔」(1911)だった(※画像は本展のHPで)。教会塔がピンク色に染まっている。夕日を浴びているのだろう。だが、リアルな夕日というよりも、夕日をイメージした抽象的なピンク色だ。窓は灰色で空虚だ。夕日が反射しているのだろう。教会塔の下部には青い影が忍び寄る。教会塔の前の広場にはポールが立っている。そのポールも青い影の中だ。

 空は真っ青だ。だが、その空には網目のような緑色の文様が張り巡らされている。それはなんだろう。なにか緊張を強いる。夕日を背にして空を眺めるとき、空はどのように見えるだろう。にわかには思い出せない。教会塔の突端には青い物体が浮かんでいる。樹木の(幹は見えないが)枝葉だろう。緑色の文様とは異なる。

 全体的に、抽象化された線、平面性そして極端な色彩の対比が特徴だ。本作はモンドリアンが変化し、ある一線を超えようとする緊張感が刻印された作品のように感じる。

 チラシ(↑)の作品は、「大きな赤の色面、黄、黒、灰、青色のコンポジション」(1921)だ。黒の正方形を4倍すると赤の正方形になる。その黒の正方形は(チラシではわからないが)、4つの正方形からなる。それが最小単位だ。最小単位が全体の構成を反映する。本展のキャプションはそれを「遊び心」と書いている。本展には来ていないが、晩年の「ブロードウェイ・ブギウギ」などは、その「遊び心」の発露だったのかもしれない。
(2021.6.2.SOMPO美術館)

(※)本展のHP

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