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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

功名が辻 迷うが人

2006年05月22日 | 大河ドラマ・時代劇
 第20回「迷うが人」。

「武士とは何ぞや?」
 ずっと迷っている一豊様(上川隆也)。
 松寿丸を斬らねばならぬ上意。
 三木城の兵糧攻め。
 小りん(長澤まさみ)の叫びがさらに一豊を迷わせる。
 三木城から脱出できず、飢え苦しむ人と共に苦しみ、視力を失った小りんは言う。
「お天道様の下で生きる男がすることか? 目が見えなくなってよかった。鬼となったあんたを見なくていいから」

 人の命を奪うことが本分の武士。
 人の命を奪うことが功名。
 人と武士であることの間で引き裂かれる一豊。

 それは兵糧攻めでも同じであった。
 一豊は自分の槍で子供を殺したが、兵糧攻めでも女・子供を苦しめた。
 どの様な形をとってもいくさはいくさ。

 そんな悩む一豊だが、少しは自分の意思で行動する様になってきた。
 百点満点ではないが、状況の中で自分の落とし所をみつけて行動する様になってきた。
 これは「考えろ、頭を使え」と秀吉に言われ続けてきた効果か?

 まずは松寿丸の件
 一豊は松寿丸を殺したと偽った。苦手な演技までして。
 これは秀吉の知恵でもあったが、明らかに命令違反である。
 一豊は信長(舘ひろし)に言う。
「御命に背きました。いかようにも御処断下さいませ」

 次に三木城の論功。
 一豊は功を中村一氏(田村淳)、堀尾吉晴(生瀬勝久)に譲った。
 理由は兵糧攻めは好きでないから。

 人は自分が信じていたものが揺さぶられる時、迷いを抱く。
 一豊はまさにそうだった。
 その迷いの中で何とか落とし所を見つけ、自分の意思で行動し始めた一豊。
 これが今回のモチーフ。
 しかし武士である以上、その迷いは永遠に解決されない。
 最後は光秀(坂東三津五郎)も自分同様に迷っていることを知って、心癒される。

★研究ポイント
 テーマ:迷うが人

 人は自分の中に矛盾を抱えている。
 人を殺したくないと思いながらも武士である以上殺さざるを得ない。
 この矛盾を抱えながら、迷いながら生きていくのが人間だと作者は言う。
 黒か白でなく、灰色の生き方。
 ただ灰色の生き方は常に迷いがつきまとう。
 では、黒だけの信長はどうか?
 「本能寺の変」で、作者がどう結論づけるか楽しみだ。

★キャラクター研究:小りん
 小りんもまた矛盾を抱えた人間である。
 視力を失い、やせ衰えた小りんは言う。
「やせ衰えた姿を一豊様に見せたくない」
 一方で一豊にこう言う。
「今のあんたは嫌いだ。目が見えなくなってよかった。鬼となったあんたを見なくていいから」
 恋心と失望・憎しみ。
 矛盾があるから人物に共感できる。

 矛盾のない六平太(香川照之)の様な生き方もあるが。

★名セリフ
 1
 林通勝(苅谷俊介)と佐久間信盛(俵木藤汰)追放
信長「そちは権六とは違う。権六はまだ使える」
佐久間信盛
「家臣は道具ではござりませぬ。疲れもすれば迷いもいたしまする。それを怠惰と仰せになるは、あまりに非情」
信長「使えぬ道具は捨てる他なし!」

 2
 安土城天守にて濃(和久井映見)と
濃「誰もが殿のお心がわからず苦しんでおります」
信長「わからずともよい。崇めればよいのだ」

 3
 林通勝と佐久間信盛について
信長「あやつらは弱い。弱いがゆえにおのれの怠慢を許し、ためらい思い迷っておった」
濃「弱き者思い悩む者へのいたわりも必要なのではありませんか?」

★名シーン
 1
 一豊様、はじめての演技。
 このシーンで使われたのはコミカルな音楽。
 笑ってほしいと演出したシーン。
 深刻な迷いのシーンから一転笑いのシーンへ。この緩急の妙。

 2
 安土城の天守閣にベッドを置いて寝そべっている信長。
 赤いベッドに赤い壁。
 天守閣に寝ていること自体が狂気。
 おまけに濃は「光秀を好きか」と問いつめられて気絶。
 その姿を冷たく見つめる信長。

 次のシーンでは縁側に寝そべって寝ている一豊。
 千代が微笑んで羽織をかけてあげる。

 この信長と一豊の対照。

★ちょっと一言
 千代は松寿丸のことでは「流行病」で死んだと一豊に嘘。
 千代が一豊に行った初めてのごまかし。
 これはこのドラマではやっていけないこと、あるいは重大なことでは?

★追記
 濃の気絶。現代劇では見られない芝居が逆に新鮮!
 これをシェークスピアの芝居の様だと書いていらっしゃったブログがあったが、まさにここは芝居の演出。
 信長の所作自体が芝居がかっている。
 演出家は一豊と千代の自然な芝居との対照を狙っているのか?

★追記2 
 もしかしたら小りんは惨めな自分の姿を見せたくなくて、怒ったふりをして姿を消したのかもしれない。
コメント (2)
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