人が変わっていくというのはドラマである。
人と人が結びつくというのはドラマである。
そしてその作品ならではのメッセージ・アイデア。
この3要素を満たして「県庁の星」は楽しいドラマとなっている。
まず、人が変わっていくということ。
県庁のエリート官僚・野村聡(織田裕二)は出世の階段を上ることだけを考えている男。
スーパー満天堂での半年間の民間交流研修もビッグプロジェクトに関わるための一過程。
トラブルがないことが一番。
しかし、プライドが高い。
ヒマな寝具売り場の担当にされると不満を言い出す。
そんな彼が2つ挫折を味わう。
ひとつはお弁当競争。
賞味期限ぎりぎりの食材を使った格安弁当と野村が手掛ける高級弁当の戦いだ。
結果は野村の惨敗。
マーケティングなどの理論先行。
だが、客層・客の気持ちがわかっていない。
ふたつめは200億の福祉施設建設のメンバーから外されたこと。
自信があるがゆえに派閥に加わらなかったのが理由だ。
メンバーから外されたことは野村から婚約者も奪った。
婚約者の父親が彼を見限ったこともあったが、婚約者も彼との結婚を拒んだ。
理由は野村が婚約者ではなく、結婚することによる県での後ろ盾、出世をみていたためである。
野村は人の気持ちのわからない男だった。
スーパーの客はもちろん、婚約者も県の上層部の気持ちも。
理由は自分に対する過剰な自信。
それがこの挫折によって打ち砕かれ、彼の再生が始まる。
パート店員・二宮あき(柴崎コウ)に消防・保険の検査にパスするよう店を建てた直してほしいと言われる野村。
すべてを失った野村が「必要」とされた瞬間だ。
野村は二宮の指示もあって、現場の人間といっしょに汗を流す。
その中で野村が気がついたこと。
それは自分が上から物を見ていたということだ。
ちょうど県庁の高い建物から街を見下ろしていたように。
そしていっしょに汗を流すことによってスーパーの人間も彼を認めるようになる。
また、彼の高級弁当も売り方が悪いこと、安い弁当に比べて冷えてしまったらおいしくないことに気づく。
これは上からのマーケティングでは見えなかったこと。
客はもっと細かい所から商品を見て買っている。
こうして彼は変わっていく。
弁当に象徴されるように上からの理屈で作ったものは決して人から支持されない。
それは200億の福祉施設でも同じ。
上からのプランニングで作られたものは決して受け入れられない。
野村は、スーパーでの研修から県庁に戻ると、市民の望まないサービスを省いた福祉施設、80億で作れる福祉施設を提案する。
野村は変わり、その結果、スーパーの人間も変わった。
そして野村は県庁の人間も変えようとしている。
第2の人が結びつくというドラマはこうだった。
野村が変わり、スーパーの人間も変わった。
野村の必死な思いがスーパーの人間に影響を与え、心は結びついたのだ。
また、スーパーをよくするという目標も彼らを結びつけた。
結果、野村が県庁に戻る時には満天堂は130%の売り上げ増。
野村はそのお祝いパーティで一番の功労者として迎えられるが、その時の彼のうれしそうなこと!
そして二宮との恋愛。
二宮は野村が来た時はただの邪魔者扱い。(使えないやつが来た)
だが挫折に涙した野村、挫折から立ち上がってがんばる野村を見て、次第に魅かれていくようになる。
店の再生という自分の願いを聞いてがんばってくれたところも嬉しかった。
そして目標を実現していく中で生まれた共感が恋愛に発展したのだ。
第3のドラマポイントはメッセージとアイデア。
スーパーの裏側を見せるというアイデアもよかったが、野村が議会で話すこのメッセージがいい。
「行政改革はシステムや組織の改革ではなく、意識改革だ」
それはすなわち野村がスーパーで身をもって体験したことでもあった。
スーパーもそこで働く人間が意識改革をして、スーパーを130%の売り上げ増にした。
メッセージが主人公が行ってきた物語とうまくリンクしている。
素晴らしいメッセージだ。
★研究ポイント
ドラマの作り方
1.人が変わること。
2.人と人が結びつくこと。
3.メッセージとアイデア。
★キャラクター研究:二宮あき
勝ち気で自分の仕事にプライドを持っている。
デパートで女性客が何を買うかを観察して、どんな人間であるかを類推する研究熱心さを持ち、枕交換に来るおばあちゃんが話し相手を求めて来ていることも知っている。
そして彼女がおばあちゃんと話をするのは、お客様に満足して帰ってほしいという店の店員としてもプロ意識、人としての優しさからだ。
しかし、自分の弱さも知っている。
店の現状を把握していながらも、現状放置で手をこまねいて見ている自分。
そこを野村に指摘されると、それは自分の問題ではないと逃げてしまう自分。
そんな自分の弱さも知っている。
だから挫折して弱さを見せた野村も包んであげられた。
自分に出来なかった店の改革を必死でやる野村を尊敬した。
仕事を持つ女性として実に魅力的な女性キャラだ。
★名セリフ
1
「あたし、いつも気づくのが遅いんだよね」
二宮が野村への気持ちを語ったせりふ。
好きになったのに気づくのが遅かった自分への後悔。
無器用で間接的な恋愛表現。
2
「今度デートしよう。マーケティング調査……抜きで」
野村の二宮への気持ちを語ったせりふ。
前回はマーケティングでデパートデートをしたふたり。
今回は「抜きで」と野村はつけ加えた。
野村も無器用だ。
3
「女性の方はうまくやれてるの?」
買い物をする女性の心理を理解していない野村に二宮が語ったせりふ。
同時に女性を理解していない官僚のぎこちなさも揶揄している。
このせりふの後、ふたりはマーケティングデートを行い、野村は「女性が形や雰囲気で買い物をすること」を知る。
そのシークエンスで野村は婚約者にふられていたからドキリとくるせりふでもある。
考えてみると野村は婚約者とウエディングドレスを選ぶシーンでウエディングドレスを見ていない。仕事の出世の話ばかりをしている。この女性の買い物真理を知っていれば、このシーンの会話も違っていたかもしれない。
4
野村と二宮の会話
「接客マニュアルを見せてもらえますか?」
「はあ?そんなものありませんけど」
「じゃあ組織図を」
「そんなものなくたってまわって行きますから、民間は!」
★追記
倉庫で台車がすれ違うシーン。
台車が行き交い、二宮の台車はいつも迂回路に戻って前に進めない。
映像として面白かったが、これは整理されていない倉庫の伏線。
「手を洗て」の張り紙に「っ」の字を書き加え「手を洗って」にする野村。
これに職員は反感。野村との対立図式を的確に描いたエピソード。
小道具と言えば県庁のエスプレッソマシーン。
最初のシーンでは「県民の税金によるコーヒーです」と張り紙がされるが、ラストは「1杯100円」に、県庁の意識改革を象徴させている。
同時に満天屋のコーヒーは立派なコーヒーメーカでもなく、いつも出がらし。
野村がスーパー研修で教えてもらったこと。
・間違った時は素直に謝ること
・知らないことは素直に教えてもらうこと
・成功には仲間が必要なこと
人と人が結びつくというのはドラマである。
そしてその作品ならではのメッセージ・アイデア。
この3要素を満たして「県庁の星」は楽しいドラマとなっている。
まず、人が変わっていくということ。
県庁のエリート官僚・野村聡(織田裕二)は出世の階段を上ることだけを考えている男。
スーパー満天堂での半年間の民間交流研修もビッグプロジェクトに関わるための一過程。
トラブルがないことが一番。
しかし、プライドが高い。
ヒマな寝具売り場の担当にされると不満を言い出す。
そんな彼が2つ挫折を味わう。
ひとつはお弁当競争。
賞味期限ぎりぎりの食材を使った格安弁当と野村が手掛ける高級弁当の戦いだ。
結果は野村の惨敗。
マーケティングなどの理論先行。
だが、客層・客の気持ちがわかっていない。
ふたつめは200億の福祉施設建設のメンバーから外されたこと。
自信があるがゆえに派閥に加わらなかったのが理由だ。
メンバーから外されたことは野村から婚約者も奪った。
婚約者の父親が彼を見限ったこともあったが、婚約者も彼との結婚を拒んだ。
理由は野村が婚約者ではなく、結婚することによる県での後ろ盾、出世をみていたためである。
野村は人の気持ちのわからない男だった。
スーパーの客はもちろん、婚約者も県の上層部の気持ちも。
理由は自分に対する過剰な自信。
それがこの挫折によって打ち砕かれ、彼の再生が始まる。
パート店員・二宮あき(柴崎コウ)に消防・保険の検査にパスするよう店を建てた直してほしいと言われる野村。
すべてを失った野村が「必要」とされた瞬間だ。
野村は二宮の指示もあって、現場の人間といっしょに汗を流す。
その中で野村が気がついたこと。
それは自分が上から物を見ていたということだ。
ちょうど県庁の高い建物から街を見下ろしていたように。
そしていっしょに汗を流すことによってスーパーの人間も彼を認めるようになる。
また、彼の高級弁当も売り方が悪いこと、安い弁当に比べて冷えてしまったらおいしくないことに気づく。
これは上からのマーケティングでは見えなかったこと。
客はもっと細かい所から商品を見て買っている。
こうして彼は変わっていく。
弁当に象徴されるように上からの理屈で作ったものは決して人から支持されない。
それは200億の福祉施設でも同じ。
上からのプランニングで作られたものは決して受け入れられない。
野村は、スーパーでの研修から県庁に戻ると、市民の望まないサービスを省いた福祉施設、80億で作れる福祉施設を提案する。
野村は変わり、その結果、スーパーの人間も変わった。
そして野村は県庁の人間も変えようとしている。
第2の人が結びつくというドラマはこうだった。
野村が変わり、スーパーの人間も変わった。
野村の必死な思いがスーパーの人間に影響を与え、心は結びついたのだ。
また、スーパーをよくするという目標も彼らを結びつけた。
結果、野村が県庁に戻る時には満天堂は130%の売り上げ増。
野村はそのお祝いパーティで一番の功労者として迎えられるが、その時の彼のうれしそうなこと!
そして二宮との恋愛。
二宮は野村が来た時はただの邪魔者扱い。(使えないやつが来た)
だが挫折に涙した野村、挫折から立ち上がってがんばる野村を見て、次第に魅かれていくようになる。
店の再生という自分の願いを聞いてがんばってくれたところも嬉しかった。
そして目標を実現していく中で生まれた共感が恋愛に発展したのだ。
第3のドラマポイントはメッセージとアイデア。
スーパーの裏側を見せるというアイデアもよかったが、野村が議会で話すこのメッセージがいい。
「行政改革はシステムや組織の改革ではなく、意識改革だ」
それはすなわち野村がスーパーで身をもって体験したことでもあった。
スーパーもそこで働く人間が意識改革をして、スーパーを130%の売り上げ増にした。
メッセージが主人公が行ってきた物語とうまくリンクしている。
素晴らしいメッセージだ。
★研究ポイント
ドラマの作り方
1.人が変わること。
2.人と人が結びつくこと。
3.メッセージとアイデア。
★キャラクター研究:二宮あき
勝ち気で自分の仕事にプライドを持っている。
デパートで女性客が何を買うかを観察して、どんな人間であるかを類推する研究熱心さを持ち、枕交換に来るおばあちゃんが話し相手を求めて来ていることも知っている。
そして彼女がおばあちゃんと話をするのは、お客様に満足して帰ってほしいという店の店員としてもプロ意識、人としての優しさからだ。
しかし、自分の弱さも知っている。
店の現状を把握していながらも、現状放置で手をこまねいて見ている自分。
そこを野村に指摘されると、それは自分の問題ではないと逃げてしまう自分。
そんな自分の弱さも知っている。
だから挫折して弱さを見せた野村も包んであげられた。
自分に出来なかった店の改革を必死でやる野村を尊敬した。
仕事を持つ女性として実に魅力的な女性キャラだ。
★名セリフ
1
「あたし、いつも気づくのが遅いんだよね」
二宮が野村への気持ちを語ったせりふ。
好きになったのに気づくのが遅かった自分への後悔。
無器用で間接的な恋愛表現。
2
「今度デートしよう。マーケティング調査……抜きで」
野村の二宮への気持ちを語ったせりふ。
前回はマーケティングでデパートデートをしたふたり。
今回は「抜きで」と野村はつけ加えた。
野村も無器用だ。
3
「女性の方はうまくやれてるの?」
買い物をする女性の心理を理解していない野村に二宮が語ったせりふ。
同時に女性を理解していない官僚のぎこちなさも揶揄している。
このせりふの後、ふたりはマーケティングデートを行い、野村は「女性が形や雰囲気で買い物をすること」を知る。
そのシークエンスで野村は婚約者にふられていたからドキリとくるせりふでもある。
考えてみると野村は婚約者とウエディングドレスを選ぶシーンでウエディングドレスを見ていない。仕事の出世の話ばかりをしている。この女性の買い物真理を知っていれば、このシーンの会話も違っていたかもしれない。
4
野村と二宮の会話
「接客マニュアルを見せてもらえますか?」
「はあ?そんなものありませんけど」
「じゃあ組織図を」
「そんなものなくたってまわって行きますから、民間は!」
★追記
倉庫で台車がすれ違うシーン。
台車が行き交い、二宮の台車はいつも迂回路に戻って前に進めない。
映像として面白かったが、これは整理されていない倉庫の伏線。
「手を洗て」の張り紙に「っ」の字を書き加え「手を洗って」にする野村。
これに職員は反感。野村との対立図式を的確に描いたエピソード。
小道具と言えば県庁のエスプレッソマシーン。
最初のシーンでは「県民の税金によるコーヒーです」と張り紙がされるが、ラストは「1杯100円」に、県庁の意識改革を象徴させている。
同時に満天屋のコーヒーは立派なコーヒーメーカでもなく、いつも出がらし。
野村がスーパー研修で教えてもらったこと。
・間違った時は素直に謝ること
・知らないことは素直に教えてもらうこと
・成功には仲間が必要なこと