平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

肉屋

2007年02月11日 | 洋画
 「肉屋」という作品を見た。
 このジャンルをイタリアンエロスというらしい。
 音楽家の妻アリーナは夫が演奏会で世界をまわっていていつも独り。
 そんなアリーナがまさに筋肉のかたまりの様なたくましい「肉屋」に惹かれていく。

 アリーナは腺病質で身体が弱っている。
 食餌療法で肉を積極的に食べるように言われる。
 毎日、肉屋に通う。
 肉屋のブルーノのたくましい肉体。目が虚ろになる。
 ブルーノはそんな妻を見て、自分を欲しがっていると感じる。
 ブルーノはアリーナに自分が他の女と交わっているところを見せつける。
 場所は肉屋の冷凍庫。女に激しく身体をぶつけていく。
 そしてアリーナにアプローチ。
「おまえは俺以上に浮気な女だ」肉を買いに来たアリーナに囁く。
 留守電にメッセージを残す。
「今日、そちらへ行くよ。もし俺の勘違いでなければ、家にいないでくれ」
 今日アリーナを抱きに行くが、もしその気がないのなら家にいないでくれというわけだ。
 果たしてアリーナはいる。
 そこからふたりの情事が始まる。
 アリーナは一晩だけのことでもう来ないでくれと言うが、ブルーノを拒めない。
 ブルーノの肉体が凄すぎるからだ。

 こんなシーンがあった。
 夫は演奏会で「ハレルヤ」を指揮している。
 その演奏シーンにアリーナとブルーノがセックスするシーンがカットバック。
 何とも皮肉なシーンだ。
 ブルーノとの情事で歓喜の表情のアリーナと夫とその聴衆の真面目くさった顔。
 セックスの歓喜と神を讃えるハレルヤ。
 そして、このシーンで物語の対立軸が見えてくる。
 観る者に問いかけてくる。
「あなたはどちらを望みますか?」

 肉体の素晴らしさ、肉体の復権をこの作品は描いている。
 セックスで肉体の炎を燃やす方がどんなに幸せであるか。
 肉体の結びつきはどんなに強く、肉体の愛はどんなに素晴らしいものであるか。
 ラストシーンは夫からの留守番電話で終わる。
「演奏会は大成功だった。明日、帰るよ」
 ブルーノとの情事の間、夫がアリーナにしたことはこうした留守番電話かFAX。
 空虚な言葉だけの結びつきと肉体の結びつき。
「あなたはどちらを選びますか?」とこの作品は問うている。

コメント
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