平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

華氏911

2007年02月16日 | 洋画
 戦争をすれば兵器会社が儲かる。
 戦争をすれば国の復興事業が発生し、その関連会社が儲かる。
 戦争をすればそれまでその国の統治者が持っていた利権を戦勝国が握ることが出来る。
 正義や理想で行われる戦争などない。

 この作品はそんなことを訴えている。
 現にイラク戦争を行ってブッシュの関わる様々な企業が恩恵を受けた。
 それに対してつらいめにあったのはアメリカの若き兵士たち。
 彼らはイラクの現実を前に悩む。
「イラク人を守るためにこの国に来たのに何で憎まれるのか?」
「何のためにここに来たのか?」
「人を殺すたびに心が失われていく」
 彼らは主に故郷では食べることが出来ず、食べるために兵士になった人たち。
 戦争がもたらす恩恵には程遠い人たち。
 それはイラク市民も同じ。
 爆撃を受け家と家族を殺されて泣き叫ぶ女性。
 神の不在を嘆く。
 確かに何もしていないのにすべてが奪われる現状というのは不条理なものだろう。
 そして戦争がなければこのようなことに遭わなかった。

 タイトル「華氏911」とは「人々が思考停止になってしまったこと」の意味。
 9・11のテロが人々から考えることを奪ってしまった。
 いつテロリストに自分や家族の命を奪われるかわからない恐怖。
 この恐怖が「テロリストを殲滅する」という指導者の言葉を無条件に受け入れさせた。
 9・11は指導者がやりたいことをすべて可能にした。
 「9・11を引き起こした憎むべきテロリストを殲滅する。テロ支援国家を打倒する」
 指導者はただひと言こう言えばいいのだから。
 怖ろしい状況だ。
 結果イラク戦争は引き起こされ、銀行の引き落としなどが個人情報が明らかにされる「愛国者法」などが成立した。

 この様に9・11以降、思考停止になった状況とイラク戦争の現実をドキュメンタリー手法で表現した「華氏911」。
 随所にマイケル・ムーアの主張が散りばめられていて、映像作品としてはお腹いっぱいという感じだが、以下の映像手法は面白い。
 アメリカの議員の息子はひとりしかイラクに行っていない。
 そのことをムーアが登庁する議員に突撃取材するのだ。
「なぜ愛国者のあなたは息子をイラクに行かせないんですか?」
 それに対する議員たちのリアクションに本音が見え隠れする。
 映像を編集している部分は作者の意図を感じるが、これはリアルな議員の姿だ。
 この辺りにドキュメンタリー映画の可能性を感じる。

★追記
 マイケル・ムーアは9・11のすらもブッシュの謀略ではないかと指摘している。
 ブッシュ家とビン・ラディン家の関わり。
 9・11の調査委委員会がすぐに発足しなかったこと。
 9・11のテロリストたちのほとんどがサウジ・アラビア出身でサウジ・アラビアはアメリカの最大投資国であることなど。
 以上の真偽は定かではないが、この作品を見ていると「権力者の言うことには疑って聞かなくてはならない」「美しい言葉のかげにはどこか胡散臭いものがある」ということを実感させられる。

コメント
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