日本の政界再編の地下水脈
2007年、長年、防衛庁(現防衛省)のドンとして君臨してきた防衛事務次官・守屋武昌が、自衛隊の兵器調達を専門とする貿易商社・山田洋行からの収賄の罪に問われ、逮捕された(2008年、一審判決有罪)。守屋は山田洋行から度重なるゴルフ接待を受ける等、日本の高級官僚による出入り業者への「タカリ」行為の典型として、マスコミの総攻撃を受けた。
しかし、程度の差はあれ、この程度の収賄で逮捕していたら日本の高級官僚は全員逮捕されなければならず、日本の官僚機構=政治機能は事実上麻痺する。「守屋だけを血祭り」に上げなければならない「理由」は、他に存在した。
一方、機を前後して2005年、許永中も商法の特別背任、刑法の詐欺罪で実刑判決を受けた。許永中は「口先だけで」政界・財界を縦横無尽に結び付け、リゾート開発、株の仕手戦、兵器の貿易商社等、あらゆる所に「顔を出す」仕掛け人=フィクサーとして知られている。しかし、マスコミの宣伝する「マガマガしい」許のイメージと異なり、実物は温厚で人当たりが良く、誰にでも好かれる好人物である。
一見、無関係に見える、守屋と許の逮捕は、長年、米国の政界・財界・軍事産業と結託して来た、岸信介以降の「古い日本の政界・自民党・財界」の対米パイプが破壊された意味を持っている。
対自衛隊の兵器備品納入商社の間では、国産支援戦闘機F2のエンジン納入に関わり、老舗のヨーロッパ=ロールス・ロイス社と、新興の米国GEとの激しい販売争いが、長年、続いて来た。ロールス・ロイスは、その代理人として香港の商社コーンズ・アンド・カンパニーを立て、GEは、三井物産系の極東貿易を代理人として、対防衛省交渉を継続して来た。
しかし、この三井系の極東貿易に対し、暴力・脅迫を手段としつつGEの代理権を奪う「戦争を仕掛け」、遂には代理権を奪い取って来たのが、守屋と結託した山田洋行である。
「表向きは」この乱暴な山田の商法に対し、警察がNOを突き付け、「収賄という、カラメ手、あるいは別件逮捕」で制裁を加えた、と言うのが今回の摘発の実相であった。
元々、日本の自衛隊向けの兵器納入の窓口となって来たのが竹下登首相の「産みの親」金丸信であり、その人脈は首相となった橋本龍太郎に一部継承され、大部分は金丸信の「愛弟子」である小沢一郎に継承されて行った。
小沢が自民党を割って出、細川政権を樹立する際に必要とされた80億円の選挙資金は、金丸を窓口として自衛隊に納入されたAWACS・早期警戒管制機の購入資金の米国側からの「キックバック=仲介手数料」から捻出された。
これが現在の日本の民主党の「重要資金源」である。
兵器購入は決して1回払いで購入する場合ばかりではなく、何回かに分割して支払われるケースも多い。米国軍事産業への支払いは1回で行われるが、日本政府からの支払いは分割になる場合、クレジット会社として米国への支払いを代行し、利息を加えて分割支払い契約を日本政府と行う金融会社が存在する。地銀の旧平和相互銀行が、それであり、近年は北朝鮮系の金融機関が、その役割を部分的に担って来た。
つまり北朝鮮金融が自衛隊への兵器納入を「コントロール」して来た。日本の国防を「敵国に担当させる」という奇妙な構図が、そこにはあった。守屋逮捕は、そのルート潰しの意味が、「まずはあった」。
金丸の作り上げた防衛利権は、現在も、小沢ルートが握り、しかし、その内実は新興の山田洋行が潰された事で、F2エンジンについては極東貿易、そして、とりわけロスチャイルド系のロールス・ロイスが「復活した」。
山田洋行の経営顧問は、父ブッシュの知日派・国務副長官リチャード・アーミテージであり、父ブッシュ=ロックフェラーの「顔に泥を塗り」、ロスチャイルドが勝利を収めた、と言うのが、事件の真相でもあった。
現在に生きる金丸の作り上げた利権は、防衛に留まらない。日本全国津々浦々の地方議会の議員を組織し、地方議員達に各地元に「必要とされる公共事業プラン」を提出させる。そのプランの多くは、土木業者でもある地方議員の「会社経営に必要な土木工事」であり、本当に地域にとって必要な事業では無い。無用な「箱モノ行政」と言われる、この全国津々浦々、「下から積み上げられて来る公共事業プラン」を、集中的に「集計」し、金丸=自民党中枢に「伝達」しているのが東京・台東区の中堅ゼネコン「モリヘイ」である。
この中堅ゼネコンが、毎月第一月曜日に開く月曜会には、自民党・民主党の国会議員が続々と集まり、そこには小沢一郎、渡辺恒三等の顔も見える。日本全国から集まる公共事業プランの料金体系を集計するトータル・マネージャーが、このゼネコンの副社長・長田久代であり、長田は金丸の愛人であった。このゼネコンの事実上の経営者は金丸信本人であった。このゼネコンの営業マンは、時として「代表取締役・金丸信」と書いた名刺を、「錦の、御旗」として取引先に出していた。
金丸と長田が死去した現在、別人が、この会合を仕切っているが、この構造自体に何等変化は無い。
この会合で目立つ人物達には、小沢一郎本人の他に、小沢の防衛利権の代理人である国会議員・田村秀昭(現在、国民新党の亀井静香の傘下に居る=小沢人脈と亀井の接点)、防衛族で北朝鮮金脈に強い山崎拓、このグループに逆らう経済人・政治家に暴行・脅迫を加え、殺人を担当する暴力団・柳川組、故・渡辺美智雄(その息子が現在、自民党内で反乱を起こしている渡辺喜実)と、その大阪後援会長の弟子=カバン持ち・許永中。小沢と山崎拓の官僚版である守屋等々。
許永中、守屋の逮捕は、このグループへの攻撃として行われて来た。
それは現大統領ブッシュが、父ブッシュとは異なる「ネオコン路線」を走り、祖父プレスコット・ブッシュ譲りの独自・貿易商社を対日面で「押し立てた」結果「でも」あった。この現大統領ブッシュの兵器商社の共同経営者が小泉元首相の祖父であった。小泉時代、と言うより、子ブッシュ時代に、守屋と許の逮捕があった理由が分かる。
ブッシュ時代が終わろうとしている現在、山崎拓、その盟友・加藤紘一、小沢民主党の参謀・菅直人、亀井静香が、YKKKとして、現行政権に反旗を翻し、渡辺喜美が自民党内で若手議員を結集し内乱の準備を行い、小沢一郎が政権奪取に取り掛かっている。全員、月曜会の主力メンバーである。
このグループは、子ブッシュのネオコン派に痛め付けられ、リーマン・ブラザースの崩壊でロックフェラーにも見切りを付け、小沢の引退決意を翻意させたロスチャイルド人脈をバックに復活を遂げ始めている。