トルコやイスラエルはまだ支援しているISだが、米支配層の一部はロシアのIS
攻撃を支 援する動き
2015.08.25 櫻井ジャーナル
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201508250000/
シリアをめぐって興味深い動きがある。イ スラエルのF-16戦闘機が地対空ミサ
イル・システムのS-300に撃墜されたという話が 流れているだけでなく、ロシア
がシリアへ6機のミグ-31要撃戦闘機を引き渡し、衛星写真を提供し始めた模様。
その一方、NATOがトルコに 設置し、 IS(イラクとレバントのイスラム首長国。
ISIS、ダーイシュなどとも表記)やアル・カイダ系武装集団を守る形になってい
たパトリオット・ ミサイルが撤 収され、イスラエル沖にいたアメリカのイージ
ス艦2隻が消えたというのだ。ロシア政府がシリア政府支援を強化、アメリカが
イスラエルやISと の距離を取り 始めたと言えるだろう。
少なくとも半年前までISはNATOから衛星写真の提供を受け、シリア軍の動きをリ
アル・タイムで把握していたと言われている。そうした写 真を含む書類の入っ
たブリーフ・ケースをシリア軍が回収した際、そのケースをイスラエル軍が空爆
で破壊したともいう。2013 年1月30日の夜明け頃、4機のイスラエル軍戦闘機が
超低空飛行でシリア領空に侵入て首都ダマスカスの近くにある軍事研究センター
を攻撃し たのがそれ。
この攻撃に対し、ロシア軍は「最速の要撃機」と言われているミグ31を発信さ
せ、シナイ半島を横断してイスラエルの方向へ飛行、途中で西に 転回して地中
海に出ることでイスラエルを牽制している。その時、地中海には18隻で編成され
たロシア軍の艦隊が待機していた。そのミグ31をロシアはシリ アへ提供した わ
けだ。
現在、アメリカはフランス、イギリス、ベルギー、カナダ、そしてトルコと共同
してインシルリク基地を拠点にしてISを空爆しているという が、ISのスポ ン
サーであるトルコ政府は作戦計画をISへ知らせ、空爆の効果はあまりないと言わ
れている。勿論、ほかの参加国もそうした事情を熟知している はず。
そうした中、アメリカが情報の提供を止め、トルコに配備していたパトリオッ
ト・ミサイルを撤収、イージス艦をイスラエル沖から移動させたわ けで、ロシ
ア 軍によるIS攻撃を支援する意味があると言われている。そうなると、あくま
でもISをシリア攻撃の駒と認識しているトルコやイスラエルとの関 係は微妙に
な る。
そのトルコはウクライナでアメリカの好戦派が行っている軍事作戦にも関与しは
じめている。本ブログでは何度か書いたが、8月1日にウクライ ナの外相、ト ル
コの副首相、そしてタタール人の反ロシア派代表がトルコのアンカラで会い、タ
タール人、チェチェン人、ジョージア(グルジア)人などで「国 際イスラム旅
団」を編成してクリミアの近くに拠点を作ることで合意したとされている。ネ
オ・ナチ(ステファン・バンデラ派)の部隊や既存の傭兵だけでは足 りないと
いう ことだろう。
ウクライナを乗っ取り、ロシアを殲滅しようと考えているのはネオコンやズビグ
ネフ・ブレジンスキーの一派。ボリス・エリツィンというアメリ カの傀儡を
使ってロシアを属国にし、2004年から05年にかけての「オレンジ革命」でウクラ
イナを乗っ取ることに成功したが、いずれも途中で挫折、ロ シアの場合は 再独
立してしまう。そこで、軍事力による脅し、あるいは制圧に切り替えた。
アメリカ支配層の一部は中東でISをたたき始めたが、殲滅しようとは考えていな
い。制御しようとしているにすぎず、戦闘員をウクライナへ移 動させてロシ ア
と戦わせようとも目論んでいるだろう。そうなる前にISを叩きつぶそうとしてい
るロシアとは思惑が違う。つまり同床異夢だが、とりあえずは アメリカの一 部
支配層がロシアとISの問題で手を組んだ。11月に予定されているトルコの総選挙
次第では状況がさらに大きく変化する可能性がある。