極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

贈与経済とデフレーション

2012年03月18日 | デジタル革命渦論

 





【国家会計の現在化と贈与経済】

これも朝の話。彼女が吉本さんのことが新聞に書かれているよと言うので、どんなようにと問い返すと、文面
を読んで聞かせてくれる。あまりにもすんなりと書かれている内容が入ってくるので、もしかして、中沢新一か
芹沢俊介ではないかと思い、作業の手をとめ新聞を読んでいるとこに行き確認すると案の定、ピンポン~~。
 

   経済の世界でおこっていることと、ことぱの世界でおこっていることの間には、密接
   な関連がある。そのため資本主義の本質を研究することで、ことぱだ
けではなく技術
   や大衆文化のよ
うな、じつに広大な領域にまたがる、さままざまな表現の本質を、
   く理解する鍵が手に入るはず
である。
   吉本さんはそうやって、あらゆる形態の「価値一般」を串刺しにできる思考を、生み
   出そう
と努力した。そこからじつにユニークな[経済学」が成長した。この経済学も
   っとも威力を発揮したのは、現代資本主義のウェイトが「生産」から「消費」へ転換
   しだした時期であった。そのとき吉本さんは、同時代の世界中のどんな思想家をも凌
   駕する、斬新で大胆な思考を展開してみせた。『ハイ・イメージ論』の連作に結晶す
   る、驚くべき仕事かそれである。
   農業の問題も、吉本さんにとっての大きなテーマだった、農業では貨幣が介在しない
   ところで、自然の循環をもとにした生活がおこなわれている。そのために農業地帯は
   おしなぺて貧困で、農業人口もどんどん減少している。しかし人間は農業が生み出す
   食料がなければ生きて行けない。この矛盾をどうするか。

   交換経済ではなく、贈与経済だけがその矛盾を乗り越える可能性を持つ、と吉本さん  
   は考えた。農業者から食料を得るために、都市生活者は等価交換によらないで積極的
   に自分の富をあげてしまう、贈与のやり方を採用する必要がある。そうなると経済世
   界は、根底から変化していくことになるだろう。未来の経済学は、このような新しい
   贈与論を組み込んだものにならなければならない(このあたりの議論は『マルクスー
   読みかえの方法』などに出てくる)。
   『吉本隆明の経済学』は実在する。それはヴァーチヤルな空間の中に隠されていてい
   て、いまだに全貌をしめしていない。しかしそこには未来への宝が埋蔵されている。

    
                  中沢新一『吉本隆明の経済学』、朝日新聞 120318
                                   


【デフレーションと時価負債】

PCG-707 1997年

メインメモリー 標準:32MB(SDRAM)
プロセッサー    :MMX Pentium 166MHz
ディスプレイ    :12.1インチ TFT液晶 カラー

VGNFT73 VGN-FT73DB 2006年

メインメモリー 標準:32MB(SDRAM)
プロセッサー    :Core 2 Duo T7200 2000MHz
ディスプレイ    :15.4 インチ TFT液晶 カラー

平成の不動産バブルが崩壊したころ、わたしたちの周りも大きな変化がみられた。サラリーマ
ンなのにゴルフの会員権を投機目的で複数所有していたが自己破産しブラック・リストに載り
労働金庫に泣きつくとか、銀行が自宅兼用賃貸マンションに家屋改造するように勧められたが
不況でテナントがつかず約款に縛られ、デフレ下の長期負債苦に未だに脱し切れずにいるとい
った該当者が多数存在することも知っている。勿論、現在でもFXなどで利殖に成功しているケ
ースもあるがその逆もあり、いずれにしてもその因果報応が自己責任に帰される。金融資本主
義にかかわるものたちが無知な大衆を煽り(もっとも、煽っている本人もこの先どのようにな
るのかわからずにいたのだが)、それを咎めるも無視されたことも体験している。しかし考え
てもみよ、個人や個人的経営体が億単位の借金をすることの過酷さを。さらに追い打ち掛ける
かのようなデフレーション社会を(もっとも、『デジタル革命』によるその影響はネガティブ
な側面よりポジティブな側面が圧倒する状況は積極的に肯定されるべきものだが)。そのこと
を確たるデータがそろわないがパーソナルコンピュータのここ10年の変化を見て考えてみよう。

上の写真のソニーのバイオの基本的性能を比較すると、メインメモリーの標準仕様には変化が
ないが、処理速度では2000÷166÷10≒
1.2倍/年、ディスプレーは15.4÷12.1÷10≒0.13倍/年
価格はオープン価格と言うことでわからないので、一般社団法人電子情報技術産業協会(Japan
Electronics and Information Technology Industries Association)の1997年および2006年の
平均価格のデータから引用すると、12.1万÷24.1万円÷10≒▲0.05倍/年の価格逓減となってい
る。指標の試算として年間の価格逓減率に同様に処理速度およびディスプレイの逓増率を掛け
合わしたものを『デジタル革命』の基本第4則のデフレーションの指標としてはじき出すと、
0.05×1.2×1.13=▲0.0678倍/年(百分率に直すと6.78%/年)の価格逓減となる。ただしOS
機能や通信機能の価値逓増は除く。つまり、パーソナルコンピュータ1つとってもこれほどの
変化をもたらしているのであるから、半導体などの電子機器や情報機器などの科学技術を駆使
した産業(生産および消費)でのポジティブな価格下落作用の世界的経済への波及効果は膨大
であることが容易に推測できるだろう。わかりやすくいうと、同一使用価値をもつ商品がこの
10年間で半分以上の価格で購入できるという付加価値化が進行したということになる。これを
建造物や設備への投資負債に反映すれば、例えば、無茶な計算だが建設債として償還期間を仮
に60年とすれば単純計算で406.8%の時価での負債逓減となり、これはひとつの問題提起になり
うると考える。と同時に前述した中沢新一の『吉本隆明の経済学』にある爆発的な贈与経済の
波及の技術移転的側面だとも思うがいかに。

「官僚とはインテリのなれの果て」とは吉本隆明のもの言いなのだが、近頃の財務官僚派の政
治委員らの発言を聴くあるいは行動を看ていると、経済音痴だなぁと思うことがしばしばだ。
時代は激しく変化しているのだから彼らだけでなく誰もが大なり小なり、わからないところが
いっぱいある(もっとも、最前線の企業戦士は肌身で感じていることなのだが)。あらゆる常
識を見直し自前で考え出直した方が良いのだが、それも大変ですねと改めて、大きな道標を失
ったいま深いため息とともに行く末を案じ見つめている。


       真砂なす数なき星の其の中に吾に向ひて光る星あり    正岡子規


「星あり」か。最後の部分は、「星なし」やね。そんな気分だ。         
                                                           


 

 

 

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