【切り餅騒動に新局面】
餅をきれいに焼くために表面に切り込みを入れるアイデアの特許を巡って、業界2位の「越後製菓」が、業界
トップの「佐藤食品工業」に販売の停止などを求めた裁判で、知的財産高等裁判所は、佐藤食品工業に対し、
商品の製造販売の停止と8億円余りの賠償を命じた。越後製菓の商品は餅の側面だけに切り込みが入っている
のに対し、佐藤食品工業の商品には上下の面にも入っていて、それぞれ特許として認められていたが、裁判で
先出願した越後製菓の特許権を侵害しているかどうかが争われていた。1審は、それぞれの特許は別だとして
訴えを退け、2審の知的財産高等裁判所は、去年9月「側面に切り込みが入っていれば越後製菓の特許技術の
範囲だ」として、特許権の侵害と判断、その後、和解調整していたが不調に終わる。22日の判決で、知的財
産高等裁判所は、佐藤食品工業に対し、商品の製造販売の停止を命じたほか「切り込みによって餅がうまく焼
けることが売り上げの増加につながっている」として8億円余りの賠償を命じた。これにより佐藤食品工業は、
執行停止を申し立てて認められなければ商品の製造販売はできなくなくなる。今後、国内的にもそして隣国中
国の無頼行為の不作為問題をはじめとした、世界での知財権取得抗争は新たなる段階の象徴的な事件だ。
【バイオ燃料 ボツリオコッカス・ブラウニーのチカラ?!】
バイオ燃料ブーム。中でも微細藻類は生産性が高く、かつユニークな脂質生産をする種が多い。生息域が水中
で陸上の食用作物と生産の場が競合しない点からも次世代バイオ燃料資源として期待が集まっていが、微細藻
類は、脂肪酸系の脂質を蓄積するものが多いが炭化水素も蓄積する。その1つが淡水性トレボウクシア藻の一
種ボツリオコッカス・ブラウニー(下図)。単細胞性だが、個々の細胞を細胞問マトリクスでつなぎ止めて群
体を形成する。この藻の炭化水素含量は乾燥重量の数18%にも及び、細胞間マトリクス部に蓄積するため、顕
微鏡観察時にカバーガラスで圧迫すると、染み出す様子が観察されるという。1度分泌された炭化水素が細胞
内に再吸収されて栄養源等へ代謝されることはない。
この藻は生産する炭化水素のタイプによりA、B、Lの3品種に分けられる。A品種は奇数個の炭素鎖からな
る直鋼状のアルカジエンおよびアルカトリエンを生産し、L品種はリコパジエンというテトラテルペンを生産
する。また、B品種は、ボツリオコッセン(BC)類(下図)という本種に特異的なトリテルペンと、メチル化され
たスクアレン(SQ)類を生産する。B品種は炭化水素含量が平均的に高いことや、テルペン類が軽質化により高
オクタン価の燃料に変換可能なことから帆バイオ燃料源として有望と考えられ、すでに石油ショック後の1980
年代から世界各地で本藻の大量培養による炭化水素生産に関する研究が行われてきたが、増殖速度が非常に遅
い。岡田茂東京大学准教授らはこの藻の炭化水素生産に、トリテルペン炭化水素生合成酵素遺伝子の同定を試
み新たな知見をえている。
※トリテルペン triterpenes:トリテルペンは、ほとんどの植物に存在し、天然には80種以上のトリテルペン
骨格の存在が分析されています。トリテルペンは高麗人参など人参類、きのこ類の含有成分として知られてい
たが、トリテルペン合成酵素の遺伝子構造が解析されるとともに、抗がんなど新薬の可能性が期待されている
物質。トリテルペンの基本骨格を形成するのはスクワレンC30H50(スクワレンは鮫など動物ばかりでなく植物
にも広く存在)。スクアレンは2経路の変換をしますが、一つはトリテルペン、もう一つはラノステロールLan-
osterolを経てコレステロールC27H46O(386.66)へと変化する経路。トリテルペン、コレステロールはスクアレ
ンから二つの酵素(Squalene epoxidase、Squalene oxidocyclase)で合成される。スクワレンからトリテルペ
ンやステロイド類のコレステロールを生成するメカニズムは、スタンフォード大学のWilliam Summer Johnson
教授(1913-1995:ステロイド類の合成作用解明に多大な貢献があった)らによって、1970年ごろには解明さ
れた(Model Studies of Squalene Cyclization)。青紫蘇などに含有するオレアノール酸 oleanolic acidや
ウルソール酸 ursolic acidの分子構造もトリテルペン。
※参考
この藻が生産するBC類も、マイナー成分であるメチルSQ類も、ともに細胞内で炭素数30の化合物で、順次S-ア
デノシルメチオニン由来のメチル基が導入されて炭素数34程度までの様々な同族体に変換する。両者の構造の
違いは、2つのファルネシル基の結合様式だけで、BCはスクアレン合成酵素qualene synthase=SS)と非常に
よく似た酵素により生成するものと考えられてきた。SSは真核生物に広く分布する酵素で、2段階の反応を行
い、1段階目の反応では2分子のファルネシルニリン酸(FPP)が縮合した中間体であるプレスクアレンニリン酸
(PSPP)を生成し、2段階目の反応でリン酸基の離脱、シクロプロパン環の開裂、炭素一炭素結合の再構築、NA
DPHによる還元が起き、SQが生成すると考えられている。SSは生物種間を超えてよく保存されているアミノ酸残
基からなる5つのドメインI~Vを有し、ドメインⅢおよびIVはSQ合成反応の1段階目に、ドメインVが2段
階目の反応に重要であることが示唆されていた。2段階目の反応におけるシクロプロパン環の間裂様式のみが
SSによる反応と異なればBCは形成し得る。そこで筆者らは、BCの合成酵素はSSにおけるドメインVのみが異な
る酵素であるとの仮説に基づき探索を開始した。事実、藻体ホモジネートにおけるBC合成活性は、SSの特異的
阻害剤であるスクアレスタチンにより阻害された几これはBCの生成がPSPPを経ることを意味しているというこ
とになるが、これはややこしい説明となる。
ボツリオコッカス・ブラウニーは他の生物には例を見ないシステムでBCおよびSQ分子を作ることが明らかにな
ったことにより、最初に同定されたBSSにより作られるSQ分子が、ステロールの前駆体として一次代謝に使われ
る一方、SSL-1とSSL-2の組合せにより作られるSQが、メチルスクアレン類など二次代謝産物としてのSQ誘導体
へと変換されるが詳細はいまだ不明の中にある。また、トリテルペン生合成に直接関与する酵素の遺伝子が同
定されたことで、この藻による炭化水素生産へ遺伝子工学的手法を導入する糸口が得られている。
※「Regulation of Squalene Synthase, a Key Enzyme of Sterol Biosynthesis, in Tobacco」
【未来の車いす】
全方向に移動できる4輪の未来型乗り物(1人用)を京都大大学院工学研究科の小森雅晴准教授が開発、22日
発表。電動車椅子などへの応用が期待され、直径約40センチの車輪の周りに、車輪の回転に対して垂直方向
に回転するゴム製ローラー(直径約6センチ)を32個取り付けた。ローラーだけ回転させれば真横に、両方
なら斜め方向に動く仕組みだ。重量がどの程度か写真だけではわからないが、軽量化・コンパクト化や安全性
設計の改良が進めば世界標準(オプション別)に一歩近づくことになり、一大事業がこの2、3年で実現でき
そうだ。
【符号の説明】10,10a,10b 移動搬送機構 12 ケーシング 14a,14b モータ 16a 第1の回転軸 16b 第2の回転軸
18a,18b 入力かさ歯車(第1及び第2の入力部材) 20 ホイール部材 20a 外周 20s ホイール回転中心軸 22 第1
の結合部材 24 第2の結合部材 26 第3の結合部材(回転支持部材) 30,30a,30k,30t,30x,30y 副車輪 31 回
転軸 31x 副車輪回転中心軸 32 プーリ(回転伝達部材) 34,34a,34c,34s,34t 副車輪 36 副車輪 38 ローラ(
回転伝達部材) 42 出力かさ歯車(出力部材) 43 出力かさ歯車回転軸(回転伝達部材) 44 第1の中間歯車(回転伝達
部材) 46 第2の中間歯車(回転伝達部材) 47 中間回転軸(回転伝達部材) 48,48s プーリ(回転伝達部材) 49 伝動
ベルト(回転伝達部材) 49a~49e,49s,49t ベルト(回転伝達部材) 50,50a~50e,50s,50x~50z 第1の入力部
材 51,51a~51e,51s,51x~51z 係合部(第1の係合部) 52,52a~52e,52s,52x~52z 第2の入力部材 53,
53a~53e,53s,53x~53z 係合部(第2の係合部) 54,54a~54e,54s,54x~54z 出力部材 55,55a,55c,
55d 係合部(第3の係合部) 60,60a,60b 移動搬送装置 62 本体 64 底面 68 ボール車輪 70 主車輪71 差動機
構 71a 入力かさ歯車 71b 出力かさ歯車 72 副車輪 73 プーリ(回転伝達部材) 74 副車輪 75 副車輪 76,76a,
76b プーリ(回転伝達部材) 77 プーリ(回転伝達部材) 78,79 丸ベルト(回転伝達部材) 80 主車輪 90 外歯太陽歯
車(第1の入力部材) 92 遊星歯車(出力部材) 93 キャリヤ 94 内歯車(第2の入力部材)
今日は「メカとバイオのことはじめ」と題してブログした。言い換えれば「高齢社会と持続可能な燃料のことはじ」と言い換えられ
る。この2つの事業化は世界に貢献できるものだけに、冒頭の「切り餅特許抗争」のように新規考案をめぐる競合も激しくなる
ものと考えられる。つまりは「世界貢献と野心のことはじめ」とも言い換えられるテーマでもある。改めて時に触れ考えていく。