再生可能エネルギーの選択肢の中で風力発電は重要な位置をしめる。そこで、春から初
夏にかけて強風が吹くアメリカ太平洋岸北西部は、同時に川の水量も増えて、豊かな再
生可能エネルギー源に恵まれここ数年は、供給過剰になり、電力網の需要の増減と発電
量のバランスをとるため、米国エネルギー省ボンネビル電力庁(BPA)は風力発電所のオ
ーナーに出力を抑えるよう依頼するというなんとも贅沢な話が話題となっている。PNNL
(パシフィック・ノースウェスト国立研究所)とBPA(米国エネルギー省ボンネビル電力
庁)は、この対応に一時的にノースウエスト航空の過剰風力発電を格納することができ、
圧縮空気エネルギー貯蔵施設を建設するためのワシントン州東部の2つの候補地を決め
たという。
地質エネルギー貯蓄
ワシントン州東部の地下にある玄武岩層に注目し、「圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)」
というシステムの実現可能性を調べ、石油探査で得られた地質学データを分析し、玄武岩
などの火山岩層に毎月8万5000世帯分の電力供給に十分なエネルギーを貯蔵するという。
南東部、ワシントンでハンフォードサイトでガス探査や研究のための掘削井から公開デー
タから、それは地下水面よりはるか下に空気を貯蔵する。化石燃料が見つかるような深い
場所にある。天然ガスなどの資源も、同じような岩石層の高圧力下で何百万年も眠ってい
る。余分な風力エネルギーを使って、地下の貯蔵槽に圧縮空気を送り込み保管。気温が上
昇する夏の午後など需要の高い時期には、空気を取り出して加熱し、タービンを回して発
電する方式。CAESは1978年にドイツ、1991年にアラバマ州で導入され、既に20年ほど商業
規模で利用されている。しかし、どちらのプロジェクトも、溶解採鉱法で岩塩を取り除い
たタンクのような空洞に空気を貯蔵している。これに対し、アメリカ北西部で検討中の手
法では、多孔質で浸透性の高い、自然のままの火山岩層に空気を貯蔵する。似たようなア
イデアは古代にもあった。ギリシャ神話では、神が激しい風を山の空洞に閉じ込めて、ア
イオロスという名の看守に監視させる。アイオロスは地面に剣を突き刺して、強風を解き
放つ。
ギリシャの半神に力を借りることはできないが、現代の一般的なCAESプラントでは、地上
に噴き出た空気を天然ガスで加熱、体積や速度を増加させてタービンを回す。一方、ワシ
ントン州のヤキマ渓谷の候補地では、地熱エネルギーを取り入れた新しいタイプのプラン
トが設計されている。地熱エネルギーで空気を加熱するとともに、冷却装置の電源として
も利用している。地下へ空気を送り込むエア・コンプレッサー(空気圧縮機)は冷却する
必要があるが、その際の効率性を高めるというアイデアだ。オレゴン州ボードマンのすぐ
北にあるもう1つの候補地は、コロンビア川に近く、天然ガスのパイプラインにも近いの
で、従来の手法が適しているという。この2つのプラントでは、エネルギー貯蔵モードと
発電モードの切り替えが数分以内で済むという。この地域の、豊富だが“ムラ”のある風
力を効率的に利用できるようになる。地域の電力供給のうち13%(約8600メガワット)が
風力発電で、原子力発電所8カ所分の出力に相当する。晩春には雪解け水で川の水量が増
え、水力発電が増加。同じ時期に風も強まる傾向にあるという。
上図のIHI社CAES-G/T(圧縮空気エネルギー貯蔵ガスタービン)のパイロットプラントの結
果では実用化は可能だとの結果が得られているが、天然ガスなどの燃料による加熱を必要
とするシステムのため全くのクリーンというわけではない。
圧縮空気エネルギー貯蔵サイトの詳細
1.コロンビアヒルズサイト
・場所:北ボードマン、オレゴン州のコロンビア川のワシントン側
・プラントタイプ:天然ガス発電所を有する従来、ペア圧縮空気貯蔵。
・発電能力:207メガワット
・エネルギー貯蔵容量:231メガワット超
・最大40日間の連続ストレージ
2.ヤキマ鉱物サイト
・場所:シーラ、ワシントンから北に17km離れたロケーション
・プラントタイプ:ハイブリッド、圧縮空気貯蔵と対地熱
・発電能力83メガワット
・エネルギー貯蔵容量:150メガワット
※
http://en.wikipedia.org/wiki/Alameda_County,_California
テクノ経済における圧縮空気エネルギー貯蔵の性能評価太平洋岸北西部、2013年2月、 http://caes.pnnl.gov/pdf/PNNL-22235.pdf
無尽蔵に吹く風を利用する風力発電は、再生可能エネルギー源として最も急成長している。
風力タービンが次々と設置され、その拡大スピードも増すばかりだ。ところで、風力発電利
用に対する根本的な疑念もないわけではない。しかし、世界のエネルギー需要を賄う可能性が
制限されるという論争もある。発端はタービンそのものによる。ノースカロライナ大学シ
ャーロット校の気象学者で、大気モデリングの研究を行うアマンダ・アダムスは「タービ
ンを設置すると、風に変化が起きる」。タービンが風のエネルギーを奪う問題を、アダム
スをはじめとする複数の研究者が探っている。ブレードの回転によって空気抵抗が生じ、
空気の流れが遅くなるがこの“ウインド・シャドー”現象が発生するとこれ以上タービン
を設置しても、もうエネルギーは得られない状態になる。このため、ウインドファーム(
風力発電所)はウインド・シャドーのリスク回避のため、タービン同士が風速を奪い合わ
ないよう慎重に配置する。このため世界のエネルギー需要の大きな部分を担うには巨大な
施設が必要で、現在のウインドファームはまだ規模が小さく、十分な大きさになれば、ウ
インド・シャドーは避けられないと主張している。
風力への大きな期待
カリフォルニア大学バークレー校再生可能・適正エネルギー研究所(Renewable and App-
ropriate Energy Laboratory)の創設者ダニエル・カメンDaniel Kammen)は、風からど
れくらいのエネルギーを得られるかに議論があるものの、風力エネルギーを最も積極的に
活用している国の水準さえもはるかに超える可能性を秘めていることは間違いないと話す。
デンマークは既にエネルギー全体の約20%を風力から得ており、ドイツやポルトガル、ア
メリカ、韓国なども同等の目標を掲げている。スタンフォード大学のマーク・ジェイコブ
ソン(Mark Jacobson)教授によれば、タービンの数が増えるにつれ風力のポテンシャルが
“飽和状態”に達し、それ以上のエネルギーを得ることが期待できない段階は確かに存在
するという(「風力の可能性の飽和状態と風力発電への影響(Saturation wind power po-
tential and its implications for wind energy)」)。ただし、風力エネルギーが天井
に達する要件は「何十億基というオーダーになる」という。世界風力エネルギー会議(G-
lobal Wind Energy Council)の報告によれば、2011年末現在、全世界で稼働するタービン
は20万基弱だという。ジェイコブソンらの論文では、2030年に世界のエネルギー需要の半
分、つまり6テラワットのエネルギーを生むには5メガワット(MW)のタービンが約400
万基必要だと試算している。400万基ぐらいなら、互いの効率を損なわないよう配置するこ
とは可能だと浮力発電を肯定する。
配置の問題
現在、ほとんどのウインドファームに設置されているタービンは、5メガワットよりずっと
小規模。米国風力発電協会(AWEA)では、2012年秋に稼働を開始した世界最大のウインド
ファーム、オレゴン州のシェファード・フラット(Shepherd's Flat)は78平方キロに2.5
MWのタービン338基が設置され、845MWの発電能力を誇る。風力エネルギーは現在、全世界
の電力の2.5%しか担っていない。石炭が支配する電力産業の一角を占めるには、シェフ
ァード・フラットのような規模のウインドファームがいくつも必要になる心配もある。タ
ービンの設置には地理的な問題、政治的な問題が絡むため、過密な配置によって効率が下
がらないかどうかが重要になり、地球上のあちこちにタービンを設置できるわけではない。
ドイツのマックス・プランク生物化学研究所(Max Planck Institute for Biogeochemis-
try)は地球上を吹く風から最大の電力を得ようとすれば、大気中の二酸化炭素が倍増し
た場合と同等の気候変動を引き起こしかねないと指摘(ウインドファームは局地的な気候
変動を引き起こすくらいの規模に達すると予想)している。つまりは風力発電の依存にも
慎重な検討を必要という指摘は傾聴しなければならないだろう。
風力タービンの高性能化とダウンサイジング
さて、ウインドーファームの拡大のリスク問題はこれぐらいにしておき、風力タービンの
高性能化とわたしがこだわるダウンサイジングに考えてみる。小規模風力発電では、垂直
式型タービンは水平型タービンより本質的に効率が悪いとされている。また、スイス連邦
工科大学チューリッヒ校が新たに発表した研究によれば、風力発電設備は大型化すればす
るほど環境に優しくなるという。過去30年で、風力タービンの大きさは4倍以上になり、
ブレードの直径がフットボール場より長いタイプも登場。この急激な大型化によって、欧
州の陸上に設置されている風力タービンの効率向上が進んだととしている。研究では、風
力タービンの製造、輸送、維持管理、廃棄に使われるエネルギーと、風力タービンが欧州
の送電網に供給する電力を調べた。最近の風力タービンは、より持続可能な発電方法にな
ってきたという。大型化によって発電量が飛躍的に増加したが、タービン製造時の消費エ
ネルギーはそれほど増えないからだ。しかも、メーカーは製造の経験を積んだ最近の風力
タービンは、より持続可能な発電方法になってきたという。大型化によって発電量が飛躍
的に増加したが、タービン製造時の消費エネルギーはそれほど増えないからだ。しかも、
メーカーは製造の経験を積み、技術も進歩。数が倍増するたびに、1キロワット時あたり
の地球温暖化への悪影響は14%軽減しているとする。
大型化が有効な理由
大型の風力タービンは高い位置で回る。高所ほど風が強いため、小型タービンより多くのエネル
ギーを取り出すことができ、発電効率が上がる。 1980年代、標準的な風力タービンの発
電能力は約50キロワットだった。現在、陸上に設置される大型タービンは3000キロワット
(3メガワット)の発電能力を持つ。ウィンド・エナジー・アメリカ(Wind Energy Ame-
rica)社によれば、1メガワットのタービン1基で、米国の350世帯に1年分の電力を供給
できるという。コロラド州ゴールデンにあるエネルギー省国立再生可能エネルギー研究所
(NREL)の風力技術センターは、発電能力の高いモデルを使用すれば、1つのウインドフ
ァームに設置するタービン数を減らすことができると話す。例えば、現在の発電能力では、
1000基の小さなタービンを500基の巨大タービンに置き換えられる。少ない数で多くのエ
ネルギーを生むことができれば、風力発電のコスト低下につながる。風力タービン製造の
大手シーメンス・ウインド・パワー(Siemens Wind Power)社によれば、1980年から2003
年まで、タービンが生み出すエネルギー量は4年ごとに倍増していたが、この10年、陸上
用タービンの発電能力は横ばいか微増にとどまっているという。
それは、主に2つの要因が大型化を妨げている。まず、自治体による高さ規制。そして、
重量増によってエネルギー効率の上昇が相殺される可能性。しかし、各メーカーは技術改
良を続けている。将来的には、さらなる軽量化や、部品点数の削減、制御の改善が実現す
るだろうとみるており、海上いずれのタービンも大型化を続けると予測する。技術者たち
は既存のモデルをさまざまな方法で改良していくだろう都予測する。
それでも、個人的にはオールソーラーシステムに軸足を置きながら、風力発電のダウンサ
イジング化の可能性を捨てていない。その例として上図、新規考案を記載する。つまり、
従来の風力発電地帯は、大規模な水平軸タービンの設置からなり、いくつかの大きな経済
的及び環境的な欠点を有す。各タービンが、それ自体の非常に高く重い鋼の塔を必要とし、
広範囲の電気ケーブル敷設がタービンハブから各塔の土台に延び、そこからその先への送
電のために変電所に延びる。従来の風力発電地帯が設置される場合、非常に重い塔の基礎、
重いリフト機器を運ぶことが可能な新しい連絡道路、及び追加の土地排水も必要なことが
多い。この追加の基盤の経済的コスト、エネルギーコスト、及び環境コストの他に、ター
ビンそれ自体が、景色の視覚的支配性、視覚的な「フリッカー」の発生、及び低周波騒音
により地域社会から反対されることが多く、これらは、地表からのタービンの高さにより、
設置場所からかなり離れた場所であっても不快なものとして受け止められる。タービン機
器及びクレーンの環境的な問題及び物理的なアクセスは、大規模な海上風力タービン機器
を展開し得る場所の範囲に厳しい制約を課す。沖合風力タービンは視覚的な問題および騒
音問題を克服するが、広大な設置およびケーブル敷設・接続コストがかかるという問題が
あるからだ。
この発明は、導電レール、梁、又は他の構造形態のシステム上に取り付けられた風力ター
ビンの軽量の相互接続されたモジュールアレイの使用し、それにより、導電構造部材が、
タービンの重量を支える機能と、風力負荷による力を支える機能と、必要なときはいつでも
タービンにより生成される電力を運ぶ完全な電気回路を提供する機能とを組み合わせ、そ
れにより、従来のケーブル敷設の必要を低減またはなくすというものだ。より高所に設置
するのではなく、例えれば山肌の高低に直交するようにに配置し、山風・谷風を電力変換
する衣状発電網というシステムだ。