【大雪と国土強靱化政策】
こんかいの大雪で、東日本では16日、北海道や東北の一部を除き雪はおさま
ったが、14~15日の大雪の影響で集落の孤立や交通機関の混乱が続いた。
東京都や宮城、静岡、長野県などが自衛隊に救助や除雪を要請。朝日新聞のま
とめでは、雪による事故などでの死者はこれまで少なくとも計16人にのぼっ
たと報じた。群馬県では雪の重みで渡り廊下や車庫が倒壊するなどして巻き込まれ
る人が相次ぎ、16日までに7人が死亡。埼玉県でも15日朝、落下した屋根
の下敷きになり2人が亡くなり、山梨県では同日朝、車が動かなくなり歩いて
帰宅しようとして凍死したとみられる2人が見つかった。岐阜県白川村の野谷
荘司山では16日、雪崩による山岳遭難が相次ぎ、男性1人が死亡、男性1人
が大けがをした。また、宮城県丸森町では、町道が倒木で通れなくなり約800世帯が
孤立。少なくとも約400世帯が一時停電。町は16日午後、県を通じて陸上自衛隊に
派遣を要請した。静岡県も小山町須走(すばしり)地区に陸自の派遣を要請し
た。バスが側溝に落ちるなどして車が通れず、同地区が孤立状態にあるという。
東京都檜原(ひのはら)村では14日夜から都道などが通行止めになり、全世
帯の2460人が一時孤立状態に。同奥多摩町でも16日、青梅街道などが雪
で埋まり、町内の計266世帯494人が孤立。東京都青梅市内でも御岳山周
辺の集落約140人が孤立したとも伝えている。
この大雪で「環境リスク本位制」時代に対応するわたし(たち)の基本政策は
間違いがなかったとの思いをさらに強めたわけだ。因みに、政府の掲げる「大
規模自然災害等に対する脆弱性の評価の指針」(2013.12.17「国土強靱化推進
本部決定」)のワークフローなどは基本的に賛成であるが「環境リスク本位制」
は、そもそもが「人為的要因」に依拠しているものだから、政策(対策)のあ
る程度の瑕疵はさけられないものの、事前に網羅的に長期的に政策(対策)が
立てられるものである。例えば「大雪」。大規模な季候変動により豪雪・風雪
が冬季にかけ、その反対には台風洪水・竜巻が常態化する-ここでは「大雪」
に限って、全国的な(1)除雪、(2)融雪、(3)耐風雪構造、(4)緊急
システムのハード・ソフト整備ということになり、落とし込み作業となる。例えば、(4)
として、ドクター・ヘリ(あるいは、エマトラ・へリ:緊急輸送へリ)ポートを各拠点市町村
に建設(できれば公共建造物の屋上に建設)などを計画する等が考えられる。
【アベノミクスの盲点は?】
【アベノミクスの行方とベスト・ポリシー】
この3四半期で実質GDP(国民総生産)は7.1兆円増えている。その内訳は、
民間消費3.5兆円、民間投資▲0.1兆円、民間純輸出1.8兆円、政府支出2
兆円である。民間投資は遅行指標なので、まだ本格的な効果が出ていないが、
民間消費や民間純輸出は予想通りに伸びている。一方、昨年1月の政権交代後
の補正予算により、政府支出も伸びている。民間部門と政府部門の有効需要は
71%と29%である。政府支出による誘発需要を考慮しても、民間部門の増加は
金融緩和によると高橋洋一は評価している(「新年・日本経済最大の焦点 ア
ベノミクスの行方を見極めるポイント」、ダイヤモンドオンライン、2014.01.
09)。下図は、その結果、有効需要が増加して、潜在GDPとの差、いわゆる
GDPギャップが7兆円まで縮小していることをあわらしている。このギャップ
がなくなれば、デフレ脱却宣言に手が届く。しかし、「財政支出については、
昨年12月26日付けの本コラムに書いたようにそれなりに拡大しているので、吸
い上げてバラマクという、ヘンテコな話になっている。本来望ましいのは、政
府が吸い上げてバラマクのではなく、政府が余計なことせずに民間でそのまま
使ってもらうことだ。この余計なことが民間経済には悪影響である。それと、
増税など「吸い上げ」が大きいので、5兆円程度の追加補正で「はき出す」こ
とをしないと、景気には悪影響になる高橋は現政権の施政に厳しいが、この指
摘は原則として正しい。
※ 潜在GDP:一国の経済全体の供給力を表す推計値。現存する経済構造の
もとで、生産要素(資本・労働力)を最大限に投入した場合、あるいは平均的
な水準まで投入した場合に達成可能な経済活動水準。資本ストック統計、鉱工
業指数の稼働率、労働力率、就業率などの数値をもとに算出され、需給ギャッ
プ・潜在成長率の推計に利用される。
そのことを踏まえ、「規制緩和を判断」で、成長戦略は、どれだけ規制緩和が
あるかを見ればいい。それは、具体的には規制緩和の法律がどれだけできたか
を見ればいい。先の国会で、産業力強化法と国家戦略特区法が成立した。この
観点から二つの法律を見れば、産業競争力強化法には具体的な規制緩和がなく、
成長戦略の意味が乏しい法律であることがわかるとし、一方、国家戦略特区法
を見ると、具体的な法改正記述がある。旅館業法(13条)、医療法(14条)、
建築基準法(15、16条)、道路法(17条)、農地法等(18、19条)、土地区画
整理法(20条)、都市計画法(21、22、23条)、都市再開発法(24条)、都市
再生特別措置法(25条)等でありこれらに期待を寄せる。
※ 産業競争力強化法(経済産業省)
※ 安倍首相が自画自賛する産業競争力強化法は 経済産業省の焼け太りを助
長する(「ニュースの深層」2013.10.22)
※ 構造改革特別区域法、2013.06.21
ここで、経済政策評価は、ひとにより定義がマチマチというか「厳密な解」の
導き出し方がわからないのだ。例えば、下図の「就職者数(万人)の推移評価
は、ほとんどのひとは理解できるだろうが、東日本大震災及び福島原発事故復
旧・復興の立ち上がりの寄与もあるだろうが、失業率の低下は、有効需要増に
よる就業者数の増加によってもたらされ、金融政策を使った安倍政権は、民主
党政権のトレンドから、反転し政権と経済政策の違い端的に表れているとほと
んどのひとはそう判断するだろう。
さらに、下図(上)のように、GDPギャップの縮小につれて物価が上昇し、
失業率が低下していることが端的に表れ、デフレからの脱却過程であることが
理解できるだろう。高橋洋一は、3年程度(場合によっては5年程度)すると、
安定成長に入り(おそらく、名目成長率4~5%程度、インフレ率2%程度)
→設備投資が出てきて、資金需要が活発化し、名目金利が上昇する(せいぜい
4~5%程度まで)→実質金利も上昇する(せいぜい2~3%程度まで)と予
測する。さらに、デフレ脱却過程では、名目賃金の上昇率が一時インフレ率に
及ばず、実質賃金が低下する局面もあるが、実質賃金が上がらないことを、金
融緩和が効いていない証というひとでてくるが、これはデフレ脱却局面ではあ
りえることで、雇用が増加している限り、実質賃金の上昇率するので問題は起
こらないとする。
ところで、かれは、「世界の金融・資本市場が動揺 FRBの出口戦略で市場
があたふたする理由」(ダイヤモンドオンライン、2014.02.06)で、マネタリ
ーベースを拡大しても、予想インフレ率の上昇、実質金利(=名目金利-予想
インフレ率)の低下にもラグがあるし、それを受けて消費、投資、純輸出の増
加など実物経済の変化にもラグがある。その後のインフレ率上昇や失業率低下
にもラグがある。つまり、FRBがマネタリーベースを増加させると、1年く
らい経過すると失業率は低下しはじめる(上図(下)参照)。その関係は相関
係数 0.95 程度と高いが、ほぼ1年後の失業率を予測することができ、今のマ
ネタリーベースの増加では、来年末の失業率は6.5%程度で、緩和スピードをダ
ウンさせないと、先の失業率が6.5%を大きく下回り、その代わりにインフレ率
が高くなる可能性があるが、1年先をみると、緩和スピードの調整が必要にな
り、今回の政策変更の判断の背景には、マクロモデルで計算があり、情緒的な
判断では情勢分析を誤りかねず、「属人的から関係式」への転換は不可抗にあ
ると解説する。
ベスト・ポリシー? それは、規制緩和案件数とその実施数ではかるのか?た
ぶん、それはそうだろう。しかし、その反動(実施波及リスク、政策瑕疵)は
予め想定されているのだろうか?今後もそれを時宜を得て考えてみたい。