【水の惑星の理由】
これまで、地球表面の水は、鉱物の構成物の一つとして地球深部に運ばれるが、深部は高
温高圧のため、鉱物が分解されて水分は蒸発してしまい、深さ1250キロを超えると水は存
在しないと考えられていたが、地球の中心核に近い地下2900キロのマントル最深部にも水
が存在する可能性があることが、愛媛大学の西真之研究員らの実験で分かり、地球表面の
水が、鉱物に取り込まれて最深部まで運ばれている可能性があるという。2月3日、イギ
リスの科学雑誌「ネイチャー・ジオサイエンス」電子版で発表された。時事ドットコムな
どが報じた。愛媛大学の研究グループは、超高圧発生装置によって、水を含む鉱物「蛇紋
石」を、深さ1400キロの場所に当たる50万気圧、1000度の状態にすることに成功。鉱物は
分解せず、水は保たれたままの状態だったという。
西研究員らは、マルチアンビル超高圧実験技術・第一原理計算・放射光実験などを駆使し、
下部マントル深部領域において新しい高圧型含水マグネシウムケイ酸塩(DHMS)を見出し、
Phase Hと名付けた。Phase Hの存在は土屋准教授により予測されていたが、今回の発見は
その理論予測を実証し、マントル深部の水の挙動の新しい知見をもたらすものと期待され
ものだ。Phase Hは1989年に報告されたPhase E以来25年ぶりのDHMSであり、東北大学らの
グループにより報告されているδ-AlOOH相と同じ結晶構造であると考えられている。
● 蛇紋石の脱水分解反応の速度論的研究
日本列島のような島弧-海溝系では、海洋プレート("スラブ")が地球深部へと沈み込んで
いる。沈み込むスラブ中には、海水と反応し含水化した鉱物が含まれており、これにより
地球深部へと水が運搬されている。含水鉱物の中で、カンラン岩が含水化した「蛇紋石」
という鉱物があり、カンラン岩はスラブの大部分を占めるので、この蛇紋石の振る舞いは
非常に重要だとされる。蛇紋石の中のある多形はあの悪名高い「アスベスト」の一種だが、
地球内部に水を運搬しているという点では非常に重要な鉱物だ。このような重要性から、
熱力学を併用した相平衡論的研究が数多く行われ、この相の安定領域やその脱水分解反応
境界が明らかにされてきた。そして、この脱水分解反応により放出された水がマントル鉱
物の融点を下げマグマを生成したり、脱水分解反応に伴い、スラブ内地震が発生している
というアイデアも提唱されてきているが、その脱水分解の反応速度の研究は皆無。この反
応は非常に低温で起こるため、放射光X線その場観察という手法を用いて研究を行なった。
放射光X線その場観察実験は、筑波にある高エネルギー加速器研究機構で行い、高圧発生装
置はMAX80というキュービック型高圧発生装置を用いる。特に今回の実験で重要なのは、反
応速度の計測を非常に短時間で効率よく脱水分解する途中のデータを取るため、脱水した
水の流出を防ぐため、完全に試料をカプセルに封入する必要がある。無水系の実験では貴
金属でできたカプセルが用いられるが、それではX線の吸収には不利で、X線に対して透過
性の優れたダイヤモンドスリーブをカプセルに用いながら、圧力を内部に伝えるために、
上下の蓋は貴金属カプセルとした。このカプセルは含水マグマの構造を求める研究にも用
いられ効果を発揮しているという。
今回得られたX線回折パターンの時系列変化の一例を上図に示す。このデータは5.2 GPa,
650℃の条件で得られた。蛇紋石が脱水していくとともに、輝石とカンラン石が晶出してい
るようすが解り、反応は約40分程度で完了するが、輝石は脱水分解反応の始まりとともに
晶出しするが、カンラン石は少し潜伏期間を経て遅れ晶出する。これは、脱水分解反応で
脱水される「水」は純粋な組成ではなく、かなりの珪酸塩成分を含んでおり、その溶解・
晶出と関係を示唆する。
●高温高圧下における含水マグマの構造解析
最近の地震学的観測による研究で、地球の浅い部分だけでなく深い部分、例えば地下410km
付近にもマグマ(珪酸塩液体)が存在していると示唆され、物理化学的特性の解明は地球内
部科学の分野においても大きな関心事の一つ。高圧条件下において鉱物が融解するには何
らかの融点降下の役目を果たす物質が必要で、最も有力な候補として水が挙げられる。水
の働きによって鉱物の融点が下げられれば、一般的に考えられている地球内部の温度でも
マグマの発生は十分可能といえる。つまり、地球内部に存在するマグマには水が含まれて
いるということになる。このような高圧力下で生成された含水マグマは、無水条件のもの
と全く異なる物理化学的特性を持ち、例えば含水条件下で生成されるマグマは低圧の領域
ではSiO2成分(酸性成分)に富むことが知られていたが、最近の研究では高圧の領域では逆
にMgOやCaOといった塩基性成分を急激に溶かしこみ始めることが明らかになった。物質の
物理化学的な特性は固体、液体関係なくその構造によって支配され、その構造を読み解く
ことは物質をより理解する上で必要不可欠といえます。ところが、このような高温高圧状
態で生成された含水マグマの構造に関する直接観察実験は、実験技術的な困難さからこれ
まで皆無だった。
図1:Mg2SiO4-MgSiO3-H2O18.3重量%(Mg/Si=1.5)液体のX線干渉関数。
図中の矢印は第一ピークの位置を示す。
この研究では、MgO-SiO2-H2O系の試料で、Mg(OH)2、SiO2粉末を目的の量比で調合し、含
水の試料を準備。実験は茨城県のつくば市にある高エネル ギー加速器研究機構の放射光施
設PF-AR及び兵庫県の大型放射光施設SPring-8で行った。高圧マグマの構造解析には、両施
設で得られる強力な放射光X線を用いてX線回折法を採用しました。含水マグマの高温高圧
X線回折を行うにあたり、この実験では新たに単結晶ダイヤモンドと白金の複合カプセルを
試料の容器として使用。この実験では新たに単結晶ダイヤモンドと白金の複合カプセルを
試料の容器として使用しました。この封入法の開発により、含水マグマを完全に容器中に
閉じ込めつつ試料からの高強度の回折線を得ることが可能となり、より正確な構造データ
を得ることに成功する。
蛇紋石
【フード・ファントム・メナス(16)】
ミツバチ
●ハチの大量失踪は、農薬が原因だった
日本各地でミツバチがいなくなり、受粉不良によって果物に品質低下が起きたり、
特産のはちみつが採れなくなったりと、深刻な状況になっている。
「ミツバチがこれだけ足りない事態は初めて」と「日本養蜂はちみつ協会」に加盟
する養蜂家たちは、□をそろえて言う。
ミツバチの大量死は、2005年夏に岩手県南部で続発したのが発端といわれる。
カメムシ対策の殺虫剤が原因と疑われたので、岩手県が死んだミツバチを検査する
と、ネオニコチノイド系農薬の有効成分クロチアニジンが検出された。そこで県養蜂
組合は、稲作農家に適切な農薬使用を指導しなかった県やJA全農いわてを相手に訴
えようとすると、500万円の和解金が支払われて幕が引かれた。
2008年夏には中部地方で、一度に計160群、約320万匹の大量死が起きた。
養蜂家がミツバチの死骸を検査機関に持ち込むと、ここでもクロチアニジンが検出さ
れた。
ネオニコチノイド系農薬は、昆虫の神経を興奮させたり、神経伝達を遮断する働き
があるので、濃度が高ければミツバチは死ぬ。
カメムシ対策にネオニコチノイド系農薬を散布した直後にミツバチの大量死が起き、
散布された農薬が死んだミツバチに残留していたのだから、因果関係は明白であろう。
低濃度で高い殺虫能力を持つネオニコチノイド系農薬は、野菜、果樹、穀物、イモ
類、茶などに使える万能殺虫剤だ。しかも、半年ほど残留して効果を発揮する。
ネオニコチノイド系農薬の濃度が低いと、ミツバチは死なないが、方向感覚を失っ
て巣箱に帰ってこられなくなる。これが、全国各地で次々と起きているミツバチ失踪
の原因だ。
一度使うとさまざまな昆虫が田畑からいなくなるので、農村での人気は高く、ミツ
バチがいなくなっても、多くの農家はどこ吹く風、というのが実情だ。
養蜂家数が全国一の長野県では、農家と養蜂家が話し合う「ミツバチ危被害対策連
絡会議」を2009年に立ち上げている。
みりん
●本みりんを使おう
みりんは、煮物を美味しくし、照り焼きの魚を美しくする和食の調味料だ。
みりんのルーツは、室町時代の甘い「お酒」で、焼酎に、もち米と米麹を仕込んで、
甘い高級酒として飲まれていた。
「調味料」になるのは、江戸時代に醤油と出合ってからだ。みりんの糖分と、醤油の
アミノ酸によって生まれる香り、つや、旨味などが重宝されるようになった。
そして現代では、和食に不可欠の基礎調味料となっている。
ところが、アルコール税制によって「本みりん」「みりん風調味料」「料理酒」など
の種類ができて、どれがホンモノかがわかりにくくなってしまった。
「本みりん」は、もち米・米麹・醸造アルコールなどを1~2ヵ月熟成させて作った、
アルコール分を14%ほど含む「酒類」で、この中にホンモノの「みりん」がある。
「みりん風調味料」は、水あめ・醸造調味料・化学調味料・酸味料などを混ぜたもの
で、アルコールはI%未満。原料を発酵・熟成させて作る本みりんとはまったく別物
で、製造コストが安く、酒税もかからないため、安価だ。
ただし、煮汁に含まれる成分をアルコールで浸透させる力がなく、煮崩れを防ぐ効
果もないが、アルコールを煮切る必要がないので便利だ。
「料理酒(発酵調味料、みりんタイプ)」は、アルコールを含むが、酒類に分類され
ないように塩を加えて飲めないようにしてある。酒税がかからないため、安いが、使
用するときに塩分の調整が必要だ。
味と健康を重視するなら「本みりん」がいい。中でも「純米」がいいのは、幅広い
成分が豊富に含まれているからだ。
本みりんでも、本格焼酎に、蒸したもち米と米麹を加えて仕込み、じっくりと熟成
させた伝統製法の良質のものを使うと、料理の味がダンと良くなる。
「三州三河みりん」「福来統三年熟成本みりん」「甘強昔仕込本隊淋」が、伝統製法
の三大本みりんだ。この三本は、飲むと、「ポルトガルの宝石」と称されるポートワイ
ンに並ぶほど美味しい。
塩
●決して買ってはいけないのが「精製塩」
さまざまなミネラルを含んでいても、「ミネラル豊富」とする表記が、不当表示で
あるとなったのは、塩である。
塩の主成分である「塩化ナトリウム」がミネラルなので、極微量ミネラルについて
は、効果・効能につながることを書いてはいけないルールになったのだ。
塩化ナトリウムの純度が高すぎて健康に良くない塩が、イオン交換膜を用いて本格
的に製造されるようになったのは、二九七フ年である。
当時は、日本専売公社しか塩を製造できなかったので、天下り役人の安易な考えに
より、国民のすべてが純度九九%以上の塩を買わざるを得なくなった。
こうして国民の健康が損ねられたので、ミネラルの重要性を訴える「自然塩を守る
会」や「食用塩調査会」などが発足して、「公社の塩」の危険性がアピールされ「赤
穂の天塩」「伯方の塩」「海の精」などの「自然塩」が復活していった。
そして、ついに塩の専売制が廃止されたのが、1997年だ。
塩を自由に売ることができるようになったので、今は、スーパーの棚に、たくさん
の種類の塩が並んでいて、どれを選んだらいいか迷うようになった。
その中で、決して買ってはいけないのが、かつて「公社の塩」を独占販売していた
財団法人「塩事業センター」の「精製塩」である。純度99.5以上だから、塩辛い
だけで、健康に良くない。
しかし、時代の流れは皮肉なことをするものだ。
「公社の塩」に反対する象徴だった「自然塩」「天然塩」という名称が禁止されたの
である。私は寂しさを感じるが、「公社」対「民間」から「民間」対「民間」の時代
になったので、一般的なルールが塩にも適用されるようになったのだ。
そこまではいいのだが、自然なままのミネラルを含んでいても、その微量ミネラル
がきちんと豊富に含まれることを表示することもできなくなった。
ミネラルの重要さがわからない役人が、表示制度で大きなミスをしたのである。
今後、塩に問題が起こるかもしれないとしたら、放射能汚染だ。今のところは検出
されていないが、出れば騒ぎになることは間違いないだろう。
酢
●原料が「米」などのシンプルなものを選ぶ
1970年ごろまで、合成酢の生産量は醸造酢より多かった。それが今では、合成
酢はほとんどなくなってしまった。
業界トップの企業姿勢がいいと、伝統食品の質が良くなり、よく保たれるという典
型例が、酢と醤油である。
それでも、今の時代に合う健康にいい酢を選ぶには、知識が必要だ。
お酒が腐ると酢になるように、アルコールに酢酸菌を入れると、酢ができる。アル
コールから酢を作ると、安上がりのうえ、ミネラルの少ないすっきりした味になるの
で、酢の原料に、醸造用アルコールが使われることが多いのだ。
醸造用アルコールの使用が、基本的に悪いわけではない。砂糖の項で述べたように
人間は純度の高い食品を好む傾向があるので、自由経済の下で、醸造用アルコールが
酢の原料に用いられるのは、必然性がある。
清酒では吟醸酒が好まれ、スコッチウイスキーは、味の濃いモルトに、味の薄いグ
レーンをブレンドする技術を磨いたので、世界の昧になったといわれている。
私は、純米酒や純米吟醸酒を飲むように心がけているが、醸造用アルコールを用い
た本醸造の安い清酒に人気があるのは仕方がないとも思う。
酢も、米や穀物だけでなく、アルコールも原料に入れると、透明感のある酸味にな
って料理に合わせやすくなる。
だが、ミネラル不足になりがちな人にとっては、この酢には問題がある。おそらく
読者の九割以上は、ミネラル不足なので、料理に使う酢にミネラルが含まれていれば、
より健康にいい食事になる。
いい酢を選ぶには、原材料が「米」とか「リンゴ」というようにシンプルで、アル
コールを使っていないものがいい。
ただ、原料にアルコールを使っていても、「酒粕」を使っていたら、安上がりなの
に、ミネラルが多くなるから、この酢なら選んでもいい。
酢を料理に用いると、ミネラルが水に溶けやすい形に変わり、吸収率が高くなる。
微量栄養素が多い良質な酢をたっぷり使って、あなたの健康度をアップさせよう。
醤油・麺つゆ
●「調味料(アミノ酸)」の表示がないものがいい
醤油の産地、小豆島でマルキン醤油記念館を見学したとき、出口で醤油をいただい
た。その「本醸造醤油」には、原材料欄に「調味料(アミノ酸等)」と書かれていた。
化学調味料を入れると本醸造醤油ではないと思っていたので、大変に驚いた。
ネットで調べてみると、化学調味料を用いた「混合醸造」醤油を、地方の醤油蔵が
製造し、販売していた。この醤油には「保存料(パラオキシ安息香酸)」も使われて
いたので、衛生状態の悪いところで製造されているのだろう。
敗戦後にGHQの指導で、脱脂大豆に塩酸をかけてアミノ酸液にし、炭酸ナトリウ
ムで中和したものを「醤油」と称していたと聞いたことがある。当時は「新式醸造」
と言われたが、そういう醤油が、今でも九州、四国、中国、北陸、東北に残っていた
のだ。
コンビニには、化学調味料を入れた本醸造醤油が置かれるようになっているが、大
手メーカーの全国流通する醤油に、化学調味料を入れたものはない。
だが、本物の醤油の売上は下がっている。その代わり化学調味料入り「麺つゆ」が
伸びている。
麺つゆは、原材料の使用量に関係なく「醤油」「風味原料」「糖類」「食塩」とい
う順に書くことになっていたので、表示を見ても中身を推定できない、と豊水省に指
摘した。
そうすると、表示の見直しが始まり、2012年7月1日から、重量順の表示に改
定されることになった。
スーパーで麺つゆの表示を見ると、中身がわかるように改定しているのはキッコー
マンだけで、他の大手メーカーは、まだ以前のままの表示である。
うどんやそばを食べるとき、麺つゆの品質の良し悪しは、健康に直結している。
なぜなら、ほとんどの人は、普段の食事でミネラルが不足しており、それに加えて、
うどんやそばを、砂糖、塩、化学調味料が主成分の麺つゆを用いた汁で食べるので、
炭水化物だけは摂れても、微量栄養素がほとんど摂れないからだ。
これでは健康が悪化することはあっても、良くなることはない。
麺を消化するときにもミネラルが必要なので、ミネラルの豊富な麺つゆでないと、
消化酵素を作るためのミネラルを、自分の骨から取り出すことになる。いい麺つゆを
使わないと、健康状態がさらに悪くなっていく。
西日本産の煮干しだしを取って、醤油と、みりんで麺つゆを作ることをおすすめす
る。そうすれば、魚、大豆、小麦、米のミネラルと微量栄養素を摂ることができるの
で、麺類は健康にいい食事になる。
それができない人は、いわし節、うるめ節を使っていて、「調味料(アミノ酸等)」
の表示がない麺つゆを買うのがいい。探せば、こういう麺つゆもある。
味噌
●化学調味料を入れた味噌はよくない
味噌の消費量は下がり続けている。
そこで、「だし入り」と称した化学調味料の入った味噌を市場に出した。これが人
気を博し、伝統的な味噌より「だし入り味噌」の方が多く売れているスーパーもある。
味噌に入っている「だし」は、化学調味料よりも、カツオ、煮干しなどの風味原料
を多く入れるというルールになっている。しかし、強いうま味を持つ化学調味料が、
味噌汁の味を支配していることは間違いない。
そういうわけで、だし入り味噌を使って味噌汁を作っている人は、煮干しでだしを
取っている人より、ミネラルの摂取量がはるかに少なくなる。だし入り味噌汁で、不
足したミネラルを補給することはできないのだ。
手間を省くからミネラル不足になるのだが、だし入り味噌でも手間がかかるという
消費者も少なくない。そこで、インスタントの味噌汁がよく売れるようになった。
今よく売れているのは、シジミの成分のオルニチンを配合したものだ。
「一杯でしじみ70個分」と宣伝しているが、その下に「のちから」とあるように、
シジミから取れた成分を入れたのではない。「発酵オルニチン二25mg」を入れている
のである。
シジミを70個食べると、ミネラルを始め、多くの微量栄養素も摂れるが、この味
噌汁ではオルニチンしか摂れない。本当にシジミの味噌汁を食べたときのような力が
出るわけではないのだ。
カツオ節
●天然のカツオ節を使っているから健康は大丈夫、は誤解
「天然のカツオ節を使っているから、健康は大丈夫」という人が多い。残念ながら、
これは誤解だ。
カツオ節は次のように作られる。原料の冷凍カツオを解凍し、頭と内臓を取り除い
た後、1~2時間煮てから、カツオを水につけて二つに切り、骨を取り除く。それを、
いぶしながら乾燥したのがカツオ節だ。その「カツオ節」を削ってパックしたものが
「カツオ削りぶし」、カビ付けして深い味を出したのが、「カツオ枯れ節」だ。
「カツオ削りぶし」も「カツオ枯れ節」も天然だしだが、原料カツオが水煮されてい
るので、ミネラルは意外と摂れないのである。
ミネラルを「不純物」として抜くと、アミノ酸の味を際立たせて美味しくなるが、
健康に良くないので、煮干しや昆布などでミネラルを補給する必要がある。
カツオを煮た液を濃縮した「かつおエキス」にはミネラルが含まれている。
顆粒調味料
●このだしを使っても、ミネラルの補給はできない
家庭で一番よく使われる粉末だしは、カツオ風味の穎粒だしで、原材料は、多い順
に「調味料(アミノ酸等)」「食塩」「砂糖類(砂糖、乳糖)」「風味原料(かつお
ぶし粉末、かつおエキス)」「酵母エキス」「小麦たん白発酵調味料」である。
この中で、食事で不足するミネラルを含むのは、「かつおエキス」だけだ。
この「かつおエキス」は、カツオを煮た液を乾燥して粉末にしたものだが、四番目
の「風味原料」の二番目に出てくるので、ほんの少ししか入っていない。食塩や砂糖
類よりもずっと少ないから、ミネラル補給を期待できる量ではない。
風味はカツオ節でも、主原料は「化学調味料」で、それに塩と砂糖で味を付け、「
酵母エキス」「小麦たん白発酵調味料」でうま味に幅を出したのが、業界一の穎粒だ
しである。
このようなだしを使っていると、ミネラル不足が進行し、心身の調子が狂ってくる。
水道水
●福島県の線量の高い地域では、ナチュラルウォータを
2011年3月下旬に、関東全域で水道水から放射性ヨウ素が検出され、都県民を
恐怖に陥れた。しかし、5月以降、放射能は「不検出」になり、福島県でも6月から
放射性セシウムが五ベクレル/l以下の「不検出」になった。
一見すると、水遠水に放射能の心配はなくなったようだが、福島県の水道水が安全
になったと思うのは早計だ。
放射線量が増減を繰り返している地域では、危険が潜んでいると考えておかねば、
将来、被害を受けることになりかねない。
現在でも事故を起こした原発では、むき出しになった原子炉から水蒸気が蒸発して
いるし、汚染水を処理する蒸発濃縮装置では、水を蒸発させているからである。
問題は、この蒸気に、トリチウム(三重水素)が含まれているということだ。トリ
チウムは、核燃料が出す放射線によって、水原子の中の水素が、三重水素になって放
射化したもの。水素は遺伝子DNAを構成する原子でもあるので、トリチウムを水や
食べ物から体内に取り込むと、遺伝子の中に入ってしまう。
遺伝子の中のトリチウムが放射線を出すと、他の部分のDNAを切断してしまう。
そのとき、トリチウムはヘリウムに変わるので、その部分のDNAが崩壊する。遺
伝子に、通常とは異なる傷がつくので、うまく修復できず、その結果、マウスの実験
では、通常の放射線による発ガンより、発ガン率が高くなることがわかっている。
アメリカで、原発の周辺に住む人がガンにかかったと訴訟が起きているのも、稼働
中の原発から出続けるトリチウムが原因とされているからだ。
福島第コ原発から出る水蒸気には、これからもずっとトリチウムが含まれ続ける。
原発からの風の通り道には、トリチウムを含む雨が降るので、その地域の人は、これ
から発ガン率が高まることになるだろう。
「放射性セシウムは、透浸透(RO)膜を使った浄水器で、すべて取ることができ
る」と、原子力村の専門家が保証した浄水器でも、トリチウムは水の構成元素なので、
すべて通り抜けて出てくる。
福島県で線量が高い地域に住む人は、ナチュラルウォーターを買って飲むのがいい。
小若順一 著 『食べるな危険!』、PP.137-156
※ トリチウムについては、このブログでも掲載している(『三重水素事変前夜』)