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極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

量子スケールデバイス工学(2)

2014年02月01日 | デジタル革命渦論

 

 

 

 

【遺伝と変異】


マウスの血液や皮膚などの細胞を弱酸性液(塩酸溶液:pH 5.7)に浸して刺激を与え、LIFを含
む培養液に移して培養し作成されたるだけで、人工多能性幹細胞(iPS細胞)のようにさまざま

な細胞になる万能細胞ができるSTAM(刺激惹起性多能性獲得細胞(Stimulus-Triggered Acquis-
ition of Pluripotency cells
)が
トップニュースで話題となっているが、そう簡単に商品化されるど
うか疑問符がつきまとう。まとうが、STAPを傷口に塗り込めばたちまち傷口が
縫合完治すと
なれば、それはそれでもの凄いことになるね?!と思ったりもする。同時に既成の生命細胞学の
見直しが根底から迫られる。そこで、書斎の1冊から次のサマリーを書き留めた(『もうひとつ
の万能細胞作製手法
』)。



       約38他年前に地球上に出現した生命は、以来めんめんと無生物には
      見られない、生物だけに見られる特徴を子孫に伝えてきた。親から子
      へは顔つきや背丈といった形質が遺伝されるが、遺伝されるうちで最
      も重要なのは生きていることである。この生命システムとでも呼ぶべ
      き性質を遺伝させる基本単位は細胞である。細胞が生命システムの最
      小の基本単位であることは、1個の細胞から、生物の最も高次の基本
      単位である個体がつくられることからも明らかである。
       卵細胞の中の生命システムにさまざまな情報が作用して、個体の形
      質や機能が発現する。情報は大きく分けて2づあり、ひとつは遺伝情
      報、もうひとつは環境情報である。遺伝情報をになっているのは通常
      DNAであり、この情報はシステムにくくりつけめ情報でありDNA
      の複製を通して子孫に遺伝する。一方、環境情報は外部からの偶有的
      な情報であり遺伝しない。          
       あるまとまった単位の遺伝情報をになうDNAは遺伝子と呼ぱれ、
      生命システムや環境情報が同じならば、形質の違いは遺伝子の違いに
      より決定される。したがって、DNAに突然変異が起きて遺伝子が変
      化し、これがになっている遺伝情報が変化すると形質もまた変異する。
      突然変異はシステムにくくりつけの情報の変化によるものであり、こ
      れは遺伝する。薬物や温度などの環境因子によって起こされる変異は、
      一過性の環境情報による変異で遺伝しない。
       実際の形質は、遺伝情報と環境情報がともにシステムに作用するこ
      とによって発現す発現可能な形質の範囲|を決めぐなひるめはシズテ
      ムであり、情報は可能性を限定し、形質を固定する作用をもつ。また
      システムを破壊する情報は致死因子であり、これが遺伝子に生じれば
      致死遺伝子となる。最も大きな遺伝的変異はシステム自体の変化であ
      るが、このメカニズムはまだ解明されていない。

      
                   池田清彦 著 『新しい生物学の教科書』 第2章 


そう、以前、著者である池田清彦は週刊誌の質問にこのように答えている。「iPS細胞は分化し
た細胞にいくつかの遺伝子を導入して作られるが、これらの遺伝子は他の遺伝子の活性を制御
する転写因子と呼ばれるタンパク質を作る遺伝子である。この導入された遺伝子が実際どんな
メカニズムで分化した細胞を未分化な細胞に戻しているかはブラックボックスでよくわかって
おらず、実際に分化した細胞に、初期化に必要な遺伝子を導入しても数百個に一個くらいしか
iPS細胞にならない。今のところ宝くじを当てているような状態なのだ。ES細胞由来のものに比
べがん化する確率も高く、これも究極原因は不明なため、試行錯誤でより安全なiPS細胞を開発
する必要がある。実用化にはまだ時間がかかると思う」と。

 

図1

【量子ドット太陽電池研究Ⅰ 上】 

今年になって、量子スケール電子デバイスである量子ドット太陽電池の最新技術の事例研究を行
ったので(『特開2014-017420 光電変換素子』、豊田中央研究所)、紙面の都合もあり、ここ
では3回に分け掲載してみようと思う。ところで、太陽光エネルギーを直接電力に変換できる太
陽電池は、次世代のクリーンエネルギー源として期
待されている。太陽電池設置面積は限られて
いるため、より多くの電力を得るためには光電変換
効率を向上させる必要があり、素子構造や作
製工程の最適化、主要な材料であるシリコンの高品質化
等の開発が進展している。例えば、下図
のように複数の半導体や絶縁体で構成し、光の吸収する光吸収層と電極間に設け、励起されたキ
ャリアを光吸収層側から電極側へ透過させる特定のエネルギー準位を、複数の半導体や絶縁体の
うち、片方にの半導体や絶縁体の伝導帯の下端エネルギー準位と同一のエネルギー選択性コンタ
クト準位を形成する部位を備えた光電変換装置が提案されている(図2参照)。

図2

また、可視光の波長に対応する大きさを有する面領域内に、異なるサイズの量子ドットが配置され
厚さ方向にはサイズが揃った量子ドットが配置されたキャリア発生層を有する太陽電池が提案され
ている(図3参照)。

図3

また、光を透過する材料の基体およびこれと接する波長変換層と蛍光体の発光を基体の側面から
取り出す集光装置と光電変換部から構成される光電変換装置が提案されている(図4参照)。

 図4

さらに、下図5には、規則配列した量子ドットと該量子ドットの隙間に形成された障壁層の光吸
収層の電
子取り出し端側にある第1エネルギー選択性コンタクトと、この外側に形成させた電子
取り出し電極と、光
吸収層の端側に形成された正孔取り出し電極と、光吸収層と正孔取り出し電
極との間に形成された第2
エネルギー選択性コンタクトから構成する光電変換素子が提案されて
いる。

図5

しかし、図2、図5で提案されている技術では、エネルギー選択性コンタクトを介して電子を取
り出すので、
これらの技術が提案される前の光電変換素子よりも、光電変換効率を高めることが
可能になると考えら
れるが、離散準位の数を増やすために量子ドットの形態(大きさや材料等)
を複数にする技術デザインは示されていないため、単一形態の量子ドットを用いるこれらの技術
では、生成される離散準位が限定されるため、幅広い波長範囲の光を吸収し難く、光電変換効率
の向上効果が不十分であった。これに対し図3の提案は、異なるサイズの量子ドットを用いてい
るので、幅広い波長範囲の光を吸収することが可能になると考えられるが、量子ドットを用いて
幅広い波長範囲の光を吸収しても、光吸収により生成された電子及び正孔を取り出す際のエネル
ギー損失を低減しなければ、光電変換効率の向上効果は不十分になる。図2、図5には、複数形
態の量子ドットを用いた光電変換素子において、光吸収により生成された電子及び正孔を取り出
す際のエネルギー損失を低減するための構成が開示されていず、これらの提案に示されている技
術を単に組み合わせても、光電変換効率の向上効果は不十分であった。

●問題解決案

少なくとも伝導帯側に離散的なエネルギー準位をもつキャリア発生部と、これの表面を覆うよう
に配置されたエネルギー選択移動部の構造の第1キャリア生成物質と第2キャリア生成物質をも
ち、エネルギー選択移動部は、キャリア発生部側から外側に向かい順に配置し、第1障壁層、量
子井戸層と、第2障壁層をもち、量子井戸層は少なくとも伝導帯側に、特定のエネルギーをもつ
電子の通過を許容する離散的なエネルギー準位をもち、第1キャリア生成物質のキャリア発生部
に形成される離散的なエネルギー準位と、第2キャリア生成物質のキャリア発生部に形成さする
離散的なエネルギー準位とが互いに異なり、また、第1キャリア生成物質のエネルギー選択移動
部に形成される離散的なエネルギー準位と、第2キャリア生成物質のエネルギー選択移動部に形
成される離散的なエネルギー準位とが等しいという手段にて、光電変換効率を高める(図1)。
 

●概要説明 

図1は、第1実施形態にかかる本発明の太陽電池100を説明する断面図で、p型半導体材料12a、
n型半導体材料12bと、キャリア生成粒子16x、16y、16zを簡略化して示している。下図6は、
キャリア生成粒子16x、16y、16zを説明する断面図であり、図6は、p型半導体材料12a、
n型半導体材料12bとキャリア生成粒子16x、16y、16zのバンド構造の説明図である

 図6


下図7は、p型半導体材料12a、n型半導体材料12b、及び、キャリア生成粒子16x、
16y、16zのバン
ド構造を説明する図である。図7では、右側ほど電子のエネルギーが大き
く、紙面下側ほど正孔の
エネルギーが大きい。図7における「●」は電子であり、「○」は正孔
である。

図7

なお、上図1に示したように、太陽電池100は、p層11及びn層13、並びに、p層11と
n層13との間に配設された混合pn材料層12で構成。p層11には裏面電極14が接続され、
n層13には表面電極15が接続されている。混合pn材料層12は、p型半導体材料12a、
12aと、n型半導体材料12b、12bをで構成し、さらに、p型半導体材料12a、12a
…と、n型半導体材料12b、12b…に接触しているキャリア生成粒子16x、16xとキャ
リア生成粒子16y、16y、…とキャリア生成粒子16z、16z…をもつ。混合pn材料層
12は、p型半導体材料12a、12a…の一部はp層11と接触あるいは複数のp型半導体材
料12a、12a、…の接触を介し、p層11に接触しており、p型半導体材料12a、12a
…からp層11へ正孔が移動可能なように構成されている。また、n型半導体材料12b、12b、
…の一部はn層13と接触あるいは複数のn型半導体材料12b、12b、…の接触を介しn層
13に接触し、n型半導体材料12b、12b、…からn層13へ電子が移動可能なように構成
されている。p層11を構成する半導体材料の価電子帯上端のエネルギーは、p型半導体材料
12aの価電子帯上端のエネルギーと同程度で、n層13を構成する半導体材料の伝導帯下端の
エネルギーは、n型半導体材料12bの伝導帯下端のエネルギーと同程度。混合pn材料層12
において、受光面であるn層13に近い部位にキャリア生成粒子16z、16z、…が配置され
p層11に近い部位にキャリア生成粒子16x、16x、…が配置され、キャリア生成粒子16z、
16z、…が配置されている部位とキャリア生成粒子16x、16x、…が配置されている部位
との間に、キャリア生成粒子16y、16y、…が配置される。

図6に示したように、キャリア生成粒子16xは、キャリア発生部16xaと、キャリア発生部
16xaの表面を覆うように配置されたエネルギー選択移動部16xbとで構成。キャリア発生
部16xaとエネルギー選択移動部16xbは、何れも、半導体材料によって構成されている。
エネルギー選択移動部16xbは、キャリア発生部16xaの表面に形成された第1障壁層16
xba、該第1障壁層16xbaの表面に形成された量子井戸層16xbq、及び、該量子井戸
層16xbqの表面に形成された第2障壁層16xbbを有している。キャリア生成粒子16x
では、その中心側から外側へ向かって、キャリア発生部16xa、第1障壁層16xba、量子
井戸層16xbq、及び、第2障壁層16xbbが同心円状に配置されており、第1障壁層16
xba及び第2障壁層16xbbは、キャリアがトンネル伝導により通過可能な厚さとされてい
る。

図6に示したように、キャリア生成粒子16xは、キャリア発生部16xaを構成する半導体材
料の伝導帯側に8つの離散準位が形成されており、キャリア発生部16xaの価電子帯側には離
散準位が形成されていない。キャリア発生部16xaの伝導帯側に形成されている離散準位のう
ち最も低エネルギーの離散準位と、キャリア発生部16xaの価電子帯上端のエネルギーEv1
xaとの差はEg1aである。また、キャリア生成粒子16xは、量子井戸層16xbqを構成
する半導体材料の伝導帯側に1つの離散準位が形成されており、量子井戸層16xbqの価電子
帯側には離散準位が形成されていない。量子井戸層16xbqの伝導帯側に形成されている離散
準位のエネルギーEc1bは、キャリア発生部16xaの伝導帯側に形成されている離散準位の
うち、最も高エネルギーでもなく最も低エネルギーでもない離散準位のエネルギーと同一である。
Ec1bは、n型半導体材料12bの伝導帯下端のエネルギーEc1cよりも図7の右側に位置
し、Ec1b-Ec1c≦0.1eVとなるように調整されている。また、量子井戸層16xbq
の価電子帯上端のエネルギーEv1bは、Ev1xaよりも図7の右側に位置し、また、p
型半導体材料12aの価電子帯上端のエネルギーEv1cよりも図7の左側に位置している。E
v1xa、Ev1b、及び、Ev1cは、それぞれ、|Ev1b-Ev1xa|≦0.1eV
また、|Ev1c-Ev1b|≦0.1eVとなるように調整されている。キャリア生成粒子16x
において、Ec1cとEv1cとの差はEg2である。

また、図7に示したように、キャリア生成粒子16yは、キャリア発生部16yaを構成する半
導体材料の伝導
帯側に6つの離散準位が形成されており、キャリア発生部16yaの価電子帯側
には離散準位が形成され
ていない。キャリア発生部16yaの伝導帯側に形成されている離散準
位の間隔は、キャリア発生部16xa
の伝導帯側に形成されている離散準位の間隔よりも広く、
キャリア発生部16xaの伝導帯側に形成されて
いる離散準位の一部、及び、キャリア発生部16
yaの伝導帯側に形成されている離散準位の一部は、互
いにエネルギーが異なっている。キャリ
ア発生部16yaの伝導帯側に形成されている離散準位のうち最も
低エネルギーの離散準位と、
キャリア発生部16yaの価電子帯上端のエネルギーEv1yaとの差はEg1b(
>Eg1a)
である。また、キャリア生成粒子16yは、量子井戸層16ybqを構成する半導体材料の伝導
側に1つの離散準位が形成されており、量子井戸層16ybqの価電子帯側には離散準位が形
成されてい
ない。量子井戸層16ybqの伝導帯側に形成されている離散準位のエネルギーEc1b
は、キャリア発生部
16yaの伝導帯側に形成されている離散準位のうち、最も高エネルギーで
もなく最も低エネルギーでもない
離散準位のエネルギーと同一である。また、量子井戸層16y
bqの価電子帯上端のエネルギーEv1bは、
Ev1yaよりも図7の右側に位置し、またp型
半導体材料12aの価電子帯上端のエネルギーEv1cよ
りも図7の左側に位置している。Ev
1ya及びEv1bは、|Ev1b-Ev1ya|≦0.1eVとなるように調整され
ている。

太陽電池100に太陽光が照射されると、太陽光の一部がn層13に吸収され、n層13に吸収
されなかった太陽光(以下において、単に「光」ということがある。)が混合pn材料層12へ
と達する。n層13のバンドギャップはn型半導体材料12bのバンドギャップと同程度、また
n層13の伝導帯下端のエネルギーはn型半導体材料12bの伝導帯下端のエネルギーと同程度
であり、n層13、n型半導体材料12b、及び、p型半導体材料12aのバンドギャップは、
太陽光に含まれている様々なエネルギーの光のうち、高エネルギーの光(例えば紫外線)のみを
吸収可能なように調整されている。それゆえ、太陽電池100に太陽光が照射されると、高エネ
ルギーの光がn層13によって吸収され、n層13で電子及び正孔が形成される。そして、n層
13によって吸収されなかった光が混合pn材料層12に吸収される。

図7に示したように、混合pn材料層12を構成する半導体材料の中では、キャリア発生部16xa
を構成する半導体材料のエネルギー差Eg1aが最小であり、Eg1a<Eg1b<Eg1c<
Eg2となっている。そのため、混合pn材料層12へ光が達すると、Eg1a以上のエネルギ
ーを有する光が吸収される。こうして光が吸収されると、様々なエネルギーを有する電子が、キ
ャリア発生部16xa、16ya、16zaを構成する半導体材料の価電子帯から伝導帯の離散
準位へと励起され、当該半導体材料の価電子帯には正孔が形成される。

キャリア発生部16xaで生成された電子のうち、量子井戸層16xbqを構成する半導体材料
の伝導帯に形
成されている離散準位のエネルギーEc1bと一致するエネルギーを有する電子は、
トンネル伝導によりエ
ネルギー選択移動部16xbを通過して、n型半導体材料12bの伝導帯
へと達することができる。ここで、
上述したように、Ec1b-Ec1c≦0.1eVとなるよ
うに調整されているので、エネルギー選択移動部16xbを通過した電子は、ほとんどエネルギ
ーを失うことなくn型半導体材料12bへと達する。こうしてn型半導体材料12bへと達した
電子は、n型半導体材料12bを移動してn層13へと移動し、n層13に接続されている表面
電極15へと収集される。

キャリア発生部16xaで生成された電子のうち、Ec1bとは異なるエネルギーを有する電子
は、相互にエネルギーの授受を行い、一部の電子のエネルギーはEc1bになる。こうして量子
井戸層16xbqの伝導帯側に形成されている離散準位と同じエネルギーEc1bを有すること
になった電子は、相互にエネルギーの授受を行うことなくEc1bと一致した上記電子と同様に、
トンネル伝導によりエネルギー選択移動部16xbを通過してn型半導体材料12bへと達する。
そして、n型半導体材料12bへと達した電子は、n型半導体材料12bを移動してn層13へ
と移動し、n層13に接続されている表面電極15へと収集される。


一方、キャリア発生部16xaで生成された正孔は、エネルギー選択移動部16xbを経由して、
p型半導体材料12aの価電子帯へと達することができる。ここで、上述したように、|Ev1b
-Ev1xa|≦0.1eV、また、|Ev1c-Ev1b|≦0.1eVとなるように調整さ
れているので、エネルギー選択移動部16xbを通過した正孔は、ほとんどエネルギーを失うこ
となくp型半導体材料12aへと達する。こうしてp型半導体材料12aへと達した正孔は、p
型半導体材料12aを移動してp層11へと移動し、p層11に接続されている裏面電極14へ
と収集される。


また、キャリア発生部16xaの場合と同様に、キャリア発生部16yaで生成された電子のう
ち、Ec1bと一致するエネルギーを有する電子は、トンネル伝導によりエネルギー選択移動部
16ybを通過して、n型半導体材料12bの伝導帯へと達することができる。ここで、上述し
たように、Ec1b-Ec1c≦0.1eVとなるように調整されているので、エネルギー選択
移動部16ybを通過した電子は、ほとんどエネルギーを失うことなくn型半導体材料12bへ
と達する。こうしてn型半導体材料12bへと達した電子は、n型半導体材料12bを移動して
n層13へと移動し、n層13に接続されている表面電極15へと収集される。


キャリア発生部16yaで生成された電子のうち、Ec1bとは異なるエネルギーを有する電子
は、相互にエネルギーの授受を行い、一部の電子のエネルギーはEc1bになる。こうして量子
井戸層16ybqの伝導帯側に形成されている離散準位と同じエネルギーEc1bを有すること
になった電子は、相互にエネルギーの授受を行うことなくEc1bと一致した上記電子と同様に
トンネル伝導によりエネルギー選択移動部16ybを通過してn型半導体材料12bへと達する。
そして、n型半導体材料12bへと達した電子は、n型半導体材料12bを移動してn層13へ
と移動し、n層13に接続されている表面電極15へと収集される。


これに対し、キャリア発生部16yaで生成された正孔は、エネルギー選択移動部16ybを経
由して、p型半導体材料12aの価電子帯へと達することができる。ここで、上述したように、
|Ev1b-Ev1ya|≦0.1eV、また、|Ev1c-Ev1b|≦0.1eVとなるよ
うに調整されているので、エネルギー選択移動部16ybを通過した正孔は、ほとんどエネルギ
ーを失うことなくp型半導体材料12aへと達する。こうしてp型半導体材料12aへと達した
正孔は、p型半導体材料12aを移動してp層11へと移動し、p層11に接続されている裏面
電極14へと収集される。


また、キャリア発生部16xaやキャリア発生部16yaの場合と同様に、キャリア発生部16
zaで生成された電子のうち、Ec1bと一致するエネルギーを有する電子は、トンネル伝導に
よりエネルギー選択移動部16zbを通過して、n型半導体材料12bの伝導帯へと達すること
ができる。ここで、上述したように、Ec1b-Ec1c≦0.1eVとなるように調整されて
いるので、エネルギー選択移動部16zbを通過した電子は、ほとんどエネルギーを失うことな
くn型半導体材料12bへと達する。こうしてn型半導体材料12bへと達した電子は、n型半
導体材料12bを移動してn層13へと移動し、n層13に接続されている表面電極15へと収
集される。


キャリア発生部16zaで生成された電子のうち、Ec1bとは異なるエネルギーを有する電子
は、相互にエネルギーの授受を行い、一部の電子のエネルギーはEc1bになる。こうして量子
井戸層16zbqの伝導帯側に形成されている離散準位と同じエネルギーEc1bを有すること
になった電子は、相互にエネルギーの授受を行うことなくEc1bと一致した上記電子と同様に、
トンネル伝導によりエネルギー選択移動部16zbを通過してn型半導体材料12bへと達する。
そして、n型半導体材料12bへと達した電子は、n型半導体材料12bを移動してn層13へ
と移動し、n層13に接続されている表面電極15へと収集される。


これに対し、キャリア発生部16zaで生成された正孔は、エネルギー選択移動部16zbを経
由して、p型半導体材料12aの価電子帯へと達することができる。ここで、上述したように、
|Ev1b-Ev1za|≦0.1eV、且つ、|Ev1c-Ev1b|≦0.1eVとなるよ
うに調整されているので、エネルギー選択移動部16zbを通過した正孔は、ほとんどエネルギ
ーを失うことなくp型半導体材料12aへと達する。こうしてp型半導体材料12aへと達した
正孔は、p型半導体材料12aを移動してp層11へと移動し、p層11に接続されている裏面
電極14へと収集される。


このように、太陽電池100では、キャリア発生部16xaで発生させた電子を、エネルギー選
択移動部16xb、n型半導体材料12b、及び、n層13を経由して表面電極15へと移動さ
せる。同様に、キャリア発生部16yaで発生させた電子を、エネルギー選択移動部16yb、
n型半導体材料12b、及び、n層13を経由して表面電極15へと移動させ、キャリア発生部
16zaで発生させた電子を、エネルギー選択移動部16zb、n型半導体材料12bと、n層
13を経由して表面電極15へと移動させる。また、キャリア発生部16xaで発生させた正孔
を、エネルギー選択移動部16xb、p型半導体材料12a、及び、p層11を経由して裏面電
極14へと移動させる。同様に、キャリア発生部16yaで発生させた正孔を、エネルギー選択
移動部16yb、p型半導体材料12a、及び、p層11を経由して裏面電極14へと移動させ、
キャリア発生部16zaで発生させた電子を、エネルギー選択移動部16zb、p型半導体材料
12a、及び、p層11を経由して裏面電極14へと移動させる。電子及び正孔をこのように移
動させることにより、電気エネルギーを得ることができる。太陽電池100には、複数種類のキ
ャリア生成粒子16x、16y、16zが含まれているので、単一形態のキャリア生成粒子が用
いられる場合と比較して、エネルギーがEg1a以上である幅広い帯域の光を吸収することがで
きる。加えて、太陽電池100では、キャリア発生部16xa、16ya、16zaの大きさを
それぞれ変えても、量子井戸層16xbq、16ybq、16zbqの伝導帯側に形成される離
散準位のエネルギーをEc1bにしている。そのため、キャリア発生部16xaから移動してき
た電子も、キャリア発生部16yaから移動してきた電子も、キャリア発生部16zaから移動
してきた電子も、エネルギーを等しくすることができる。このような形態とすることで、n型半
導体材料12bやn層13の伝導帯下端のエネルギーを、キャリア生成粒子から取り出される電
子のエネルギーに合わせやすくなり、その結果、光電変換効率を高めることが可能になる。

 
                    「特開2014-017420 光電変換素子」 第40項まで
                              株式会社 豊田中央研究所

 

 

 



                     

 

 

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