極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

エネルギーと環境 85

2024年12月22日 | 光電融合電子デバイス革命

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-。

07: エネルギーをみんなにそしてクリーンに 09: 産業と技術革新の基盤をつくろう 12: つくる責任つかう責任 17: パートナーシップで目標を達成しよう


✳️ プリンターで作成できる液滴レーザーディスプレイ

12月19日、筑波大学と産業技術総合研究所(産総研)は,レーザー発光す
る液滴をインクジェットプリンターで吐出させ,高速かつ大量にレーザー
光源を作成する手法を開発し,この液滴を基板上に並べた小さなレーザー
ディスプレーの作成に成功した。これはびっくり 
テレビやパソコン、スマートフォンのディスプレイは絶えず進化しており、
画質や鮮明さ、そしてエネルギー効率が日々向上しています。その次世代
型として期待されているのがレーザーディスプレイで、特に輝度と色再現
度の面で、有機ELや液晶ディスプレイといった従来の発光素子の原理的な
限界を突破することができます。しかしながら、ディスプレイとして利用
するためには、現在実現されている以上に素子を微細化し、高密度かつ大
量に敷き詰めることが必要。

本研究では、インクジェットプリンターで吐出した有機色素を添加したイ
オン液体の液滴が光励起によりレーザー光を発すること、およびその液滴
に電場を印加することでレーザー光のON/OFF切り替えが可能なことを見
いだした。液滴の直径は30µmと非常に小さく、また4cm2ほどの大きな領
域に高密度かつ大量に敷き詰めることができ、この液滴を電極で挟んで電
場を印加したところ、球体の液滴が楕円球体へと変形し、それに伴いレー
ザー光の放出が止まったことから、この液滴が電気的にスイッチ可能な「
レーザーピクセル」として振る舞うことが明らかになりました。また、こ
の液滴を2x3の配列に並べたデバイスにおいても、各ピクセルのレーザー発
光をON/OFFできることが分った。
今後、電気的なデバイス構成やレーザー性能の向上により、実用的なレー
ザーディスプレイの実現に寄与すると期待できるとのこと。

図1 液滴レーザーディスプレイのコンセプトと緻密に並んだ液滴の写真
(左)レーザー光を放出する微細な液滴を基板上に密に並べて作成したレ
ーザーディスプレイの模式図。(右)インクジェットプリンターで基板上
に設置した液滴の写真。

図2 液滴の変形によるレーザースイッチングの模式図
液滴に電場(E)を印加すると、その電場に沿って球体が楕円球体に変形し、
レーザー光の放出が止まる。

図3 電場印加によるレーザー光の変化
電場を印加する前後の液滴の写真(左)。電場を印加すると赤色のレーザ
ー発光が弱まり、自然発光注5)が強くなることが、測定データ(右)か
らも示された。

【掲載論文】
【題名】 Optically Pumped and Electrically Switchable Microlaser Array
Based on Elliptic Deformation and Q-attenuation of Organic Droplet
Oscillators;有機液滴共振器の楕円体変形とQ値減少に基づく光励起で電気
的にスイッチ可能なマイクロレーザーアレイ
【掲載誌】 Advanced Materials
【DOI】 10.1002/adma.202413793


図4 レーザーアレイデバイスの構造とスイッチング性能(原著論文より引用・改変)
レーザーディスプレイとして利用するためのデバイス構造の模式図(左上)
と、実際に作成したデバイスの写真(右上。図中のローマ数字は、それぞ
れの液滴を示す)。このデバイスに電場を印加すると、レーザー光の放出
が止まる(発光が見られなくなる)ことが明らかとなった(左下・右下)。

【補足情報】
2.1 液滴レーザーと電気デバイス
レーザーピクセルは、下部シリコン (Si) 電極、液滴レーザー発振器、およ
び透明な上部電極で構成されていた (図 1a)。下部 Si 電極は、液滴の球状形
態を維持するための超撥油性サポートを提供するナノピラーで完全に覆わ
れていた (図 1c)。ピラーは、著者の以前のレポートに従って、ボッシュ
プロセスを使用して開発 (図 S1、補足情報)。[26] 通常、厚さ 10 nm の金
の薄い層が下部 Si 基板上にスパッタリングされ、800 °C で 2 時間の熱ア
ニールによってサブマイクロメートル スケールの半球状のドットに変換し
た。その後、基板はドライエッチングにかけられ、その間に金の半球がマ
スクとして機能し、平均直径 420 nm、高さ 2.1 µm、間隔 800 nm のナノ
ピラーが生成された。柱の上の金色のドットはAURUM-302で除去され、
Auが完全に除去されたことが元素マッピングによって確認された(図S2、
補足情報)。柱は撥油性が高く、EMIBF4の液滴をキャストする際の接触角
が33°から155°に大幅に改善されましたが、接触角は液体の表面張力に依存
していた。たとえば、比較的小さな表面張力(33 mN m−1)を特徴とす
る1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル
)イミドの液滴は、116°の接触角を示しました(図1c、図S3、補足情報)。

粘性液体専用のインクジェットプリンター(MicrojetモデルLaboJet-600)
を使用して、EMIBF4の液滴を堆積しました。視認性を高めるためにアシッ
ドレッド52(AR52)を添加したEMIBF4のアリコートをプリンターヘッド
に装填し、平均直径30.8µmの球状の液滴として基板上に吐出した(図1e)。
接触角が大きく接触面積が小さいにもかかわらず、液滴は柱にしっかりと
付着し、激しく撹拌しても滑ったり広がったりすることはなかったた。液
滴は、1.4µmの空間精度で(1mm2あたり650液滴、図1d)、広い領域(
20×20mm)に高密度で堆積した(図1e)。3つの液滴が1つのフルカラー
ピクセルを構成することを考えると、図1dに示すアレイ密度は、1インチ
あたり220ピクセルの市販の40インチ8Kモニターの密度に匹敵。インクジ
ェット印刷後、下側にインジウムスズ酸化物 (ITO) をコーティングしたガ
ラス板を、下側の Si 基板から 100 µm 上に配置し、後の実験で、基板に直
交する電気力線で液滴に電界を印加するために使用した。ギャップを維持
するために、厚さ 100 µm の絶縁スペーサーを電極間に挿入した (図 S4、
補足情報)。

基板上の単一の液滴からのフォトルミネッセンス (PL) スペクトルは、図 2a
および S5 (補足情報) に示す光学セットアップを使用して測定されました。
その後、EMIBF4 の液滴に、AR52 の代わりに、レーザー色素として 2-[4-(
ジメチルアミノ)スチリル]-1-メチルピリジニウムヨウ化物 (DASPI、5.0 mg
mL-1) を、抗光退色試薬として β-シクロデキストリン (CD、16 mg mL-1)
をドープしました。液滴は fs レーザーパルス (Δ = 80 fs、λ = 460 nm、
f = 1 kHz、スポットサイズ = 100 µm) で励起され、回転テーブル上に設
置された光ファイバー (コア径 = 355 µm、NA = 0.22) を使用して発光が
収集され、角度分解 PL スペクトルが取得された (図 S5、補足情報)。光フ
ァイバーの角度は θ で示され、その原点は基板の法線上に設定している。


2.4 レーザー発振器のアレイ
レーザーディスプレイのプロトタイプとして、液滴を基板上に堆積させて
2 × 3 アレイを形成し、各液滴に電界を印加するための小さな ITO パッド
のアレイがパターン化された透明なトップパネルで挟む (図 4a、b)。液滴
の間隔は 250 µm で (図 4c)、電極パッドは DC 電源に接続されました (図
S20、補足情報)。励起レーザー (λ = 355 nm、Δ = 1.4 ns、f = 1 kHz) を
各液滴に照射し、それぞれ E = 0 および 8 × 106 V m−1 で PL スペクトル
を観察しました。E がオフのときに液滴はレーザーを放射したが (図 4d)、
電圧を印加するとすべての液滴がレーザーの放射を停止した。レーザーの
切り替えは、6 つの液滴すべてに対して個別に実行できた。その後、励起
レーザーのスポットサイズを拡大して、アレイ全体を同時に励起すること
を試みた。しかし、レーザースポットの電力密度が不均一なため、これま
でのところ試行は成功していない。アレイのスケールアップにも取り組ん
でいたが、この取り組みは現時点ではデバイスの組み立てプロセスと液滴
レーザーの歩留まり率によって制限されている (図 S21、補足情報)。

Details are in the caption following the image
図4 レーザーアレイデバイスの構造とスイッチング性能

✳️ 
UVダブルカットレンズとは  

1.特開2024-143079 眼鏡用レンズ 株式会社ジンズホールディングス
【要約】下図11のごとく、眼鏡用レンズは、基材層とコート膜層とを備え、
基材層とコート膜層とのトータルのUVA平均透過率が基材層のUVA平
均透過率よりも高く、基材層とコート膜層とのトータルのUVB平透過率
が基材層のUVB平均透過率よりも低く、裸眼で自然光を浴びるときに近
い状態にしたい、かつ、UVB領域の波長をカットしたいう相反するニー
ズに対し、適切に対応する眼鏡用のレンズを提供する。


図11.UVA可視光ARコートが形成された各試験片の反射率の比較例を
    示す図

【発明の効果】本発明によれば、長波長のUVAの紫外線をなるべく透過
し、短波長のUVBの紫外線をなるべく透過しない眼鏡用レンズを提供す
ることが可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】  基材層とコート膜層とを備え、  前記基材層と前記コート膜
層とのトータルのUVA平均透過率が前記基材層のUVA平均透過率より
も高く、前記基材層と前記コート膜層とのトータルのUVB平均透過率が
前記基材層のUVB平均透過率よりも低い、眼鏡用レンズ
【請求項2】前記コート膜層は、UVA領域および可視光領域の波長の反
射を防止する反射防止膜層を含む、請求項1に記載の眼鏡用レンズ
【請求項3】前記基材層は、ラジカル捕捉剤及び/又は紫外線吸収剤を含
む、請求項1に記載の眼鏡用レンズ
【請求項4】前記基材層は、ラジカル捕捉剤及び/又は紫外線吸収剤を含み、
  前記コート膜層は、UVA領域および可視光領域の波長の反射を防止する
反射防止膜層を含む、請求項1に記載の眼鏡用レンズ
【請求項5】前記眼鏡用レンズの視感透過率に対する太陽紫外線B領域の
透過率τSUVBが5%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の
眼鏡用レンズ
【請求項6】前記基材層と前記コート膜層とのトータルのUVB平均反射
率が前記基材層のUVB平均反射率よりも高い、請求項1から4のいずれ
か一項に記載の眼鏡用レンズ
【請求項7】前記コート膜層は、280nm以上315nm未満の波長領
域において、波長が短くなるにつれて反射率が上昇する特性を有する、請
求項1から4のいずれか一項に記載の眼鏡用レンズ
【請求項8】前記基材層と前記コート膜層とのトータルのUVA平均透過
率とUVB平均透過率との差が、前記基材層のみのUVA平均透過率とU
VB平均透過率との差、又は前記基材層と可視光領域における特定の波長
の反射を防止する反射防止膜層とのトータルのUVA平均透過率とUVB
平均透過率との差よりも大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載の
眼鏡用レンズ
【請求項9】基材層とコート膜層とを備え、前記基材層と前記コート膜層
とのトータルのUVA平均透過率が前記基材層のUVA平均透過率と略同一
か又はそれ以上であり、前記基材層と前記コート膜層とのトータルのUV
B平均透過率が前記基材層のUVB平均透過率と略同一か又はそれ以下で
あり、前記基材層と前記コート膜層とのトータルのUVA平均透過率とU
VB平均透過率との差が、前記基材層のみのUVA平均透過率とUVB平
均透過率との差、又は前記基材層と可視光領域における特定の波長の反射
を防止する反射防止膜層とのトータルのUVA平均透過率とUVB平均透
過率との差よりも大きい、眼鏡用レンズ

 今日の楽曲   『稲垣潤一 クリスマスキャロルの頃には』



「クリスマスキャロルの頃には」は、 稲垣潤一 の楽曲。 自身の27作目の
シングルとして、 ファンハウス (現・ Ariola Japan / Sony Music Labels)
から 8cmCD で 1992年 10月28日 に発売された。




日本評論社(2012/03発売)

目次
1 原発震災の歴史的意味(原発震災前史;自然の力を軽視したツケ;次
に原発震災が起き
る場所;福島第一原発で起きたことの再検証;電力不足キャンペーンのウ
ソ;今後も続く、とてつもない危機)

2 これは事故を超えて犯罪だ(考え得る原発過酷事故の勢揃い;福島原
発事故による人体被害;汚染日本で暮らすための汚染者負担の原則;未必
の故意による事故と業務上過失で拡
大した被害)

3 討論 福島原発事故の疑問を解く
著者等紹介
槌田敦[ツチダアツシ]1933年東京生まれ。東京都立大学理学部卒。
大学大学院物理課程中途退学、東京大学理学部物理教室助手、理化学研究
所研究員。1966年東京大学理学博士。名城大学経済学部教授、高千穂
大学非常勤講師定年退職。専門:熱物理学、環境経済学

山崎久隆[ヤマザキヒサタカ]1959年富山県生まれ。富山県立桜井高
等学校卒。たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会、福島原発市民事故調査委員会

原田裕史[ハラダヒロフミ]筑波大学大学院修了。理工学修士。コンピュ
ータプログラマ。たんぽぽ舎では「地震がよくわかる会」「核開発に反対す
る会」に所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


✳️ 反「第7次エネルギー基本計画」概論⓵

先日の新聞各紙が報じた「第7次エネルギー基本計画」。前々から不穏な
空気は報じられていた。官民あげての「電気が足りなくなる」宣伝も始め
られている、山崎久隆さんの記事を転載させていただきます。原稿が書か
れたのは1ヶ月以上前ですが、内容は第7次エネルギー基本計画を察知
たもの。()

第7次エネルギー基本計画、通称「エネ基」の改定作業が経産省で進行中だ。
10月27日の総選挙で敗北した石破首相はエネ基素案を「今年中に取りまと
めるよう」指示したと報じられた。大敗した自公政権に対して、議席数を
大幅に増やした国民民主党の声が強まり、原子力利活用の拡大という悪夢
の政策が拡大する可能性も出てきた。
第7次エネ基の問題は、原子力の扱
いと再生可能エネルギーの位置づけである。
第4次(2013年)から第6次
(2021年)のエネ基では、震災の教訓から「可能な限り原発依存度を低減
する」としてきた。ところが昨年の岸田政権において「脱炭素電源法」(
GX電源法)が成立した際、「原子力の活用」という方針の大転換が行われ
た。
GX電源法は、具体的には主に次の5つの法令改正により成り立ってい
る。原子力基本法、電気事業法、再エネ特措法、原子炉等規制法、再処理
法である。

これらの法令の改正を簡単にまとめると次の通り。
1. 原子力基本法の改正では、原子力利用の目的、基本方針で「地球温
化の防止」と「事故を防止できなかったことを真摯に反省」との言葉が追
加され、安定供給と脱炭素を口実に原発を活用することなどを「国の責務」
として規定した。国策としての原子力推進が前面に押し出された。
2.法定期限を40年と定めたのは炉規法だが、例外的に20年の延長運転を
許可する権限は炉規法から電気事業法に移された。これは許可をする機関
が原子力規制委員会から、推進の経産省に移ることになり、「運転期間は
40年」「延長期間は20年」としつつも、経産大臣が許可すれば、事業者が
予見しがたい事由(震災以降の安全規制に係る制度・運用の変更や司法判
断など)で停止していた期間を運転期間から排除することが認められ、実
質的に60年超の運転が可能になった。

3.既存の原発は運転開始から40年以内に延長が認められなければ廃炉に
なる制限がなくなり、改正炉規法では、①運転開始から30年を超えて運転
しようとする場合、10年以内ごとに「高経年化技術評価」を行い、②その
結果に基づき長期施設管理計画を作成し、規制委の認可を受けることで60
年以上の長期間運転が可能になった。

第7次エネ基を決める前に、エネ基で定めるべき原子力の利活用方針を法
律で規定している以上、岸田政権の原発政策の大転換と同様に、石破政権
のエネ基においても原子力の利活用推進に大転換する。
今回のエネ基では、
何を根拠として原発の比率や発電量を決めるのかが問題になる

🎈デジタル化が電力需要を爆上がりさせる?
原発推進の理由について、ある人の言葉が経産省の主張を代弁している。
その人物とは、河野太郎氏。
もともと自民党内での脱原発派の最左翼と目
され、特に核燃料サイクル政策を批判して、自身のブログでも「六ヶ所村
の再処理工場の稼働に反対する」と主張していた。ところが今回、総裁選
挙に立候補するにあたり「脱原発」の持論を撤回し、超党派の国会議員有
志で作る「原発ゼロの会」を立ち上げた立場からも大転換して、「リプレ
ース(建て替え)も選択肢」と語った。変わり身の早さというか、みっと
もないというか、あまりの変節ぶりにあきれるばかりだ。
その理由らしき
ものが記者会見の場で明らかにされたのだが、それが「今後予想される電
力需要の急騰に対し既存の原発の再稼働でも足りない」ということらしい。

いかにも経産省による「レクチャー」に「説得」された感が大きいのだが、
原発推進側の都合の良い『未来予想』に惑わされるのでは、河野太郎のレ
ベルもその程度かと、残念に思う。
もっとも、デジタル担当大臣としてマ
イナンバーカードの押しつけ、事実上の強制を推進している姿を見ても、
今回の変節は予想できたと思う。
では、本当にそうなるのか。具体的に検
証しよう。

🎈電力需要は現状から「激増」する?
データセンターや生成人工知能(AI)などの新たな電力需要が増えていて、
「再稼働しても足りない可能性がある」というのは本当だろうか。
電力中
央研究所(電中研)による将来予測は、意外な値だ。

将来の電力需要については「基礎的需要について省エネと電化を考慮した
結果、2050年度では最小値8290億から最大値1兆750億kWh」とする。な
お、中位推計では9230億kWhである(以下、kWhを省略)。現在の値はと
いうと、同じ電中研データでは2010年の最終消費電力量が1兆1237億だっ
たのが、2020年の最終消費電力量は9870億で、約12%も減少している。
年率で約1.2%ずつ減少しているのである
2050年の最小値は8290億。今後40年で1580億減る。年間53億、率で0.6%
ずつ減少する。では最大値はどうだろうか。1兆750億だと880億増だが、
年間約30億、率にして0.3%程度だ。
報道では、2021年からの比較で最大
値が3割以上増加するとし、次のような記事を出したメディアもある。

「膨大なデータ計算が必要な生成AI(人工知能)の利用拡大で電力の消費
量が急増する。データの計算や保存を行うデータセンターを新設する企業が
相次ぎ、日本では2050年に4割弱増えるとの予測がある。技術革新に伴い、
想定以上に電力消費が進む。脱炭素化を進める政府のエネルギー戦略に影
響を与える可能性もある。」(日経新聞4月11日)

しかし、最新では2023年度の消費電力量は8020億kWhである。これは前
年度比2%減、最近10年間、最小値を更新している。
電中研は原発を推進
する電力会社系の研究機関で、平岩芳朗理事長は元中部電力副社長、評議
員には東電や原電の社長も名を連ねる。その研究機関の2050年の電力需要
見通しは、最小値では「激増」どころか、減少している。
仮に増えるとし
ても、データセンターだ、AIだからといって、年で3割も増加するわけ
ではない
それでも、猛暑に厳冬と、電力の消費量のピークが増大するか
ら電力が逼迫するということだろうか。
しかし現実にはこれも、年々低下
し続けている。今年の夏は日本の気温は観測史上最高を記録した。しかし
電力消費量は大幅に減っているのである。
日本は少子高齢化が進むと同時
に、人口減少時代に入っている。国の人口推計値は2070年に8024万人とし
ている。
さらに、電気料金は高止まりしているため、省エネの努力が一般
庭だけでなく産業規模でも進んでいる
日経新聞系の「日経クロステッ
ク」は、日本の電力エネルギー構造について次のように書いている。

「日本では2010年をピークに年間消費電力がほぼ右肩下がりに低減してい
るからだ。ちょうどそのころから、地球温暖化の抑制に向けた温暖化ガス
削減の世界的取り組みが盛り上がって、LEDや高効率モーター、そして太
陽光発電など各種の省エネルギー技術の開発や実用化が進んだ。また、2
011年3月には東日本大震災が発生した。これらによって、日本におけるエ
ネルギー消費の“体質”が変わったと考えられる。その意味で2010年は大き
な分水嶺になった。(中略)2010年と2022年の日本の年間消費電力を結ぶ
とその傾きは年率1.2%減。仮にこれが2050年まで続くとすると、電中研が
AIデータセンターや水素生産などに必要になる最大電力量の年率増加率1.0
%を相殺して、まだお釣りが出る。」
このような視点は、原発推進派には全く理解されていないようだ

問題はどこにあるのか?
問題は、原発などの大規模な発電所が不足しているのではなく、電力シス
テムの問題だ。
特に、再生可能エネルギーの大きな供給力を有するのは北
海道や九州で、消費地から遠い。従って、これらの電力を広域的に融通す
システムを構築すれば有効活用ができる。また、日中に発電する太陽光
については、蓄電システム(バッテリーだけではない。物理的な蓄電シス
テムもある)を構築すれば夜間も使える。
電力のリスクは、発電所不足にあるのではない台風や地震に脆弱な広域
に張り巡らされた送電システムや、老朽化した火力、大規模発電所に依存
している供給システムにある。
これを解決するには、小規模で環境負荷の
少ない発電所と、蓄電システムの接続、コンパクトな送電網の構築が喫緊
の課題だ。

日本のように、地震や台風災害の多発する国では、大規模な発電所が停止
するリスクが、そのまま大規模停電の引き金になる。北海道で最大震度7の
北海道胆振東部地震が起こったのは、2018年9月6日3時7分。この地震
にともない、北海道エリアにおいて、3時25分、日本で初めてとなる、エリ
ア全域に及ぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生した。
台風被害では、
2019年9月9日に千葉で大規模なブラックアウトが発生した。
台風15号は
千葉県房総で鉄塔2基、多数の電柱をなぎ倒し、約100万戸の停電が発生。
千葉県内では16日になっても6万戸が停電したまま。東電は他電力会社の
応援を含め1万6千人で復旧作業を行ったが、完全復旧に3週間を要している。

🎈こうした自然災害に、原発も極めて脆弱である。
原発そのものには重大な損害がなくても、原子炉建屋の基礎版付近で120
ガル程度の揺れが観測されれば自動停止する。安全のため自動停止する設
計になっているので、安全上止めなければならない。その後点検して安全
確認後に運転開始できても、1週間程度は止まっている。地震などの被害
で広域停電が発生し、電力が必要な時期に原発は動かない。南海トラフの
地震などが発生すれば、西日本全域の原発は止まると考えられる。浜岡や
伊方は甚大な被害を受ける危険性が高いし、福井県や九州の原発も止まる
上、危険にさらされるだろう。

巨額の原子力予算は、電力システムの強靱化や自然災害対策に使うべきだ。
広域的な電力送電システムの構築よりも、地域で電気の地産地消に取り組
むことも重要だ。原発や再処理工場など、電気を生むより核のごみを生み
出すものこそ、廃止するべきだ

🎈私たちはどう生きるか
電中研を含めて多くの研究機関やシンクタンクの推計には、最小値と最大
値で大きな開きがある場合が多い、これは、省エネの進展や再エネの普及、
電気料金の推移、環境問題への取り組みやエネルギー価格の動向など、多
くの変数があるからだが、その中では、私たちの「意思」と産業の「思惑」
が大きい。
消費者が環境負荷の大きい原発や火力エネルギーを忌避する「
意思」を示し、これに応えてエネルギー産業が省エネや再エネへの投資
重視すれば、自ずと低位推計に近い値になっていく。もっと少なくなる可
能性だってあろう。これは、意思がいかに大きな影響を与えるかの証左で
ある。
こうした推計値、特に高位推計を元にした報道を鵜呑みにして「電
力需要爆上がり」などと信じてしまうことが最も大きな問題だ。
私たちは
どう生きるか、それが今問われている。

(脱原発・東電株主運動ニュース331号より転載)



今日の言葉:信頼喪失の時代⓷

春が来ても、鳥たちは姿を消し、鳴き声も聞こえない。
             春だというのに自然は沈黙している。

                    レイチェル・カーソン 『沈黙の春』
                              (因果報応の季節風)より

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