速いね、一週間が....
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる "招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひ
こにゃん」
【今朝の囀り:スズメ】
全長14.5cm。短くて太めで、草の種子を食べるくちばしをしている。
日本中に分布していて、市街地、住宅地などにいる他、人家のある集
落には生息。留鳥で渡りはしないと考えられているが、移動するもの
がいる。人間にとっていちばん身近な、そのくせいちばん人間にいじ
められてきたのが、スズメ。ヒトが鳥に近づくためには、野鳥の原点
ともいえるスズメの警戒心をなくすことだが、スズメはまだ、ヒトを
見ると逃げる。これは日本だけのことらしい。ロンドンのハイド・パー
クやパリのモンマルトルなどでは、人を見ると近づいてくる。人はい
つもポケットにパン屑やエサを持って与えている。日本のスズメがこ
うなるのはいつのことか。 via 日本の鳥百科 サントリーの愛鳥活動
彦根城の内堀で白鳥のヒナが誕生し、12日午後1時時点で3羽。5日に7羽
がかえった。しかしカラスに襲われるなどして少なくなり、現在は3羽が体長
20㌢ほどまで成長。なお、城内には内堀の2羽と生まれたヒナ3羽のほか、
埋木舎前の中堀にオス1羽が生息している。 via 滋賀彦根新聞(写真を、
クリックすると、オオハクの囀りが聴けます。参考にして下さい)
【ポストエネルギー革命序論 437: アフターコロナ時代 247】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散時代」
注釈:マイクロ流体デバイスに作られた新しい構造を探るイメージ画
像。光を用いてポリマーの内部に作り出された多孔質構造をレンダリ
ングしました。本研究では、この構造により液体の流れを制御.
● 光で最小のマイクロ流路の作製
5月19日、京都大学アイセムスの研究グループは、世界最小のマイク
ロ流路を作成する革新的なプロセスの開発に成功。
これまで、マイクロ流路を使ったデバイスを作るには、いくつもの部
品から組み立てる必要があり、流路に欠陥が発生していた。開発した
プロセスは組み立が不要。➲光増感された一般的なポリマーとLED光
源を用い、水を運び、小さな生体分子同士を分離できる多孔質で高解
像度なマイクロ流路を直接作製することができる(ここが肝)➲光
の干渉パターンがポリマーフィルムに転写されて,強架橋の層と弱架
橋の層が交互に積層した状態になり,その後フィルムを現像溶媒で膨
張させることで,弱架橋の層に穴を発生させる。OM法は,①10cm以上
の長距離にわたって貫通する点,②多層構造であるという点,③多数
の柱状構造(フィブリル)が層間を支える点で----特徴的な穴を,フ
ィルム「内部」に直接開けることができる。このポリマーのフィルム
に2次元の経路を印刷すれば,フィルムに対して水平な流路として活用
できる。
マイクロ流路をウエアラブルデバイスに組み込む試みや,皮膚に直接
貼り付ける試みなどが提案されている。マイクロ流路の製造手法とし
て,透明性と柔軟性,生体安全性に優れたPDMS樹脂に溝を掘り,ガラ
スやプラスチックのカバーと貼り合わせる手法が普及しているが,貼
り合わせるという工程上,その微細化・薄型化には限界があった。そ
こで研究グループは,Organized Microfibrillation(制御されたマイ
クロ・フィブリル化:OM)という手法で、この特長は,従来の樹脂貼
り合わせによるマイクロ流路作製手法が,樹脂に溝を掘る→貼り合わ
せるという2ステップであるのに比べて,穴を印刷するという1ステッ
プと簡略化できる点。
図1.固有の構造色を備えた自己密閉型の柔軟なマイクロフルイディ
クス。
a.マイクロ流体デバイスの従来のリソグラフィー技術は、概略図に
示されているように、シーリングステップを必要とする。 b.組織化
されたミクロフィブリル化(OM)によって作成されたマイクロフルイ
ディクスの図。 流れによって引き起こされる色の変化(シアンからオ
レンジに描かれている)は、周期的なOM構造の光学特性を変化させる
液体の浸透に起因します。 c–eさまざまな基板に印刷されたOMチャネ
ルのマクロレンズ写真:(c).ポリ(エチレンテレフタレート)(P
ET)シート、(d)カバーガラス、および(e)シリコンウェーハ。
f、gそれぞれ(f)複雑なチャネルと(g)毛細管のようなパターンを
持つOMマイクロフルイディクスのSEM画像。 h、(f)の同じOMマイク
ロチャネルのAFM画像。 スケールバー、(c–e)1 cm、(f)50μm、
(g)10μm、(h)20μm。
これによって,わずか1μmの厚さのポリスチレンのフィルムに最小幅
5μmの流路を印刷することに成功。これは現在世界最小・最薄のマイ
クロ流路。流路の壁面厚みは100nm程度しかなく,この流路幅と壁面厚
みは毛細血管よりも微細。マイクロ流路内に注入された液体は毛管力
(キャピラリー)で流動をコントロールできる。素材を溶解しない限
り,どんな有機溶媒でも使用可能。様々なポリマー素材に適用でき,
ポリスチレンやポリカーボネート,アクリル樹脂などへの適用に成功
している。アクリルアミドを界面活性剤として添加すれば,流路内に
水を流すこともできる。➲OM法は穴の高さを調整することができ、
一枚のフィルムの流路中に高さの異なる2種類の大きさの分子を導入
すれば,分子の大きさによる分離が可能となる。分子量の異なる糖類
の分離や,インスリンとタンパク質の混合した溶液を流路内で分離で
きる。
❏ 関連論文:Qin, D., Gibbons, A.H., Ito, M.M. et al. Structural colour enh-
anced microfluidics. Nat Commun 13, 2281 (2022).
https://doi.org/10.1038/s41467-022-29956-4
【ウイルス解体新書 116】
序 章 ウイルスとは何か
第1章 ウイルス現象学
第2章 COVID-19パンデミックとは何だったのか
第3章 パンデミック戦略「後手の先」
第1節 新型コロナパンデミックから生まれたもの
1-1 進化する感染判定方法
1-1-1 汗から感染症を検出するウェアブルセンサ
1-1-2 「測定時間1分」と「超高感度」、2種のウイルス検出法
⮚2022.5.19 感染リスクの“その場検査”実現に期待
【概要】産総研はデジタル検出法に、埼玉大学が開発した凝集誘起発
光(AIE)試薬を取り入れることで、従来の迅速抗原検査キットに比べ
格段に高速で、PCR法を超える検出下限100コピー/mLの感度を実現し
た1分以内にウイルスを検出できる新たな手法を開発。開発した検出法
は、施設などの入り口で来訪者のウイルス保有の可能性を“その場検
査”するといった、効果的な感染対策の実現につながることが期待さ
れている(「ウイルスゲートキーパー」の実現)。
1-2 予防技術
1-2-1 不活化技術
1-2-1-1 エアーカーテン
⛨ コロナを不活化するエアカーテン
⮚20212.5.16 新型コロナウイルスの不活化を実現する卓上型エアカー
テン装置を開発
名古屋大学らの研究グループは、新型コロナウイルスを不活化できる
卓上型のエアカーテン装置を開発。ウイルス感染予防策としてエアカ
ーテン(空気壁)で空間を遮断するには,エアカーテンの強度を長距
離にわたって持続させる必要がある。静止空気中に向けて空気をノズ
ルから噴出させてエアカーテンを生成する場合,一般に噴出気流の速
度が低下し,エアカーテンは崩壊し,エアロゾルやウイルスなどの遮
断効果を急速に喪失する。崩壊したエアカーテンは強い拡散性を持つ
ため,ウイルスを空間中に撒き散らす恐れがあり,逆効果をもたらす
ことになる(ここが肝)。
【要点】後端を切断した翼型(切断翼)をノズル内部に搭載すること
により,気流のブースト効果(カムテールの空力特性)を発現させ,
エアカーテン気流の持続力を高め,その距離を延伸することに成功し
た。エアカーテン気流による,呼気に含まれるエアロゾル粒子の遮断
効果を実験で検証した結果,エアロゾルはエアカーテン装置の反対側
に到達しない。採血時を想定してエアカーテン気流を横切るように腕
を配置した場合においても,エアロゾルの遮断効果を確認。さらに、
波長280nmの深紫外線LED装置を搭載することで、ウイルスを検出限界
まで不活化できることを確認。➲既存の一般的な空気清浄機には,
HEPAフィルタが搭載されている。HEPAフィルタは,直径0.3μm以上の
粒子に対して捕集率99.97%を実現するフィルタと定義されているが、
HEPA フィルタにはウイルスを含む塵やほこりが堆積するため,定期的
な交換が必要。 ➲一方で,エアカーテン気流に深紫外線を直接照射す
方式は、①フィルタを必要としないので,圧力損失を低減でき,送風
機の小型化と騒音低減を実現、②メンテナンス間隔はLEDの寿命に相当
する10000時間以上(350mA 駆動時)であり,長期連続稼働が可能。
❏“Blocking Effect of Desktop Air Curtain on Aerosols in Exha-
led Breath”,DOI:10.1063/5.0086659
河出書房新社(2021/09発売)
サイズ 46判/ページ数 320p/高さ 20cm
商品コード 9784309228303 NDC分類 345.1 Cコード C0022
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第15章 労働の未来
人びとの雇用を奪うロボットには課税するべきだ。
ビル・ゲイツ(2017年)
ロボットはわれわれの雇用を奪うのか
たとえば、運転手である----タクシー、バス、トラックの運転手、さ
らには旅客機のパイロットもそうだ。自動運転の車両や航空機が主流
になれば、彼らの需要はだんだん減っていく。運輸業界は変わりつつ
ある。この変化はしばらく前からのことだが、自動運転システムを実
際に採用するとなれば、それはあっという間のことだろう。おもな障
壁は規制量であると思われる。だが、そのインパクトは絶大だろう。
現在、アメリカの労働者のおよそ3%----440万人以上がなんらかの
運転手として慟いているのだ。
同じような大変動にさらされるセクタはほかにもある。飲食店はウ
ェイタのかわりにタブレットを設置するようになった。これを使えば、
メニューの内容や、おすすめの料理を教えてもらえる。私などは、つ
いこのあいだ東京でバーテンダーロボットに給仕してもらった。商店
は店員のかわりにセルフレジを置くようになった。なかには、店頭で
商品を選び、そのまま店を出れば、自動的にアカウントに代金を請求
されるシステムを導入しているところもすでにある。米軍は世界最大
の雇用者である。一般の兵士からパイロット、監視担当士官、爆発物
処理班兵士まで、人間のかわりにロボットが使われている例は多い。
倉庫業や製造業も大きく変化している。すでに自動車の80%はロボ
ットによって組み立てられている。健康管理、データ入力、法律事務、
税務書類作成、経理、銀行取引、資金運用、金融取引は、すべてロボ
ットのほうがうまくできるようになっている。すでにAIは、翻訳、
顔認証、運転、記事の執筆、金融商品の取引、がんの診断において、
人間を上回る成果を上げている。
ロボットはミスが少ない。機械知能はたいへん優秀で、自分の試行
錯誤からばかりか、他人の失敗からも学ぶほどである。ロボットは人
間よりも長時間働ける。手当、休暇、保険を必要としない。病気で、
あるいは無断で欠勤することもない。家庭問題にも、精神的な病にも
かかわりがない。人間らしい弱点に悩むこともない‥だからロポット
の利川が増えているのももっともである。
しかし、新しい仕事もいくつか生まれるだろう。それらは、いまの
ところどんなものかが不明なので、列挙することは難しい。またそれ
らは、どこに生まれるかも不明である----たとえば、オクラホマのみ
で雇用が剔出されるとすれば、ニサーカッスルの人びとにはたいして
うまみがないということになる。
一方、多くの仕事とそれに付随する義務は、たんに変化するのみだ
ろう。軍人という職業はなくならないだろうが、前線で戦闘に従事す
る人びとはもっと少なくなるかもしれない。経理係もなくならないが、
データの人力や処理は機械が行なうことになる。今後、輸送される人
も商品もますます増えるだろうが、運転手の仕事は少なくなると思わ
れる。ギグエコノミーの拡大とともに、フルタイム従業員として働く
のではなく、いくつかの小さい仕事を請け負う人びとが多くなるかも
しれない。
2016年、総合コンサルティング会社のプライスウォーターハウスク
ーパースは、イングランド銀行と同様に、労働者の今後をたいへん悲
観的にとらえていた。AIの導入により、イギリスの労働者の約30%
が失業する、というのが同社の予測だった。だが2018年、同社はこの
見方をやわらげた。業務は、全体の20%が影響を受けるものの、消滅
したのと同じくらいの数が新たに剔出されるというのである。イギリ
スの雇用に対する全体的影響は、「概して中立」であるという。
労働者を自動化の波から守る手段を講じても、解決にはならないだ
ろう。近年、そういう手段が裏目に出ている。労働者の権利を求める
声が高まったことで、自動化がいっそう運んでいるのである。
人員削減によって所得税が取れなくなった分、ロボットに税金をか
けようと主張しているのは、ビル・ゲイツを始めとする人びとだ。い
いアイデアのように思えるが、これには実務上の難しさがある。
ロボットの定義がはっきりしないのだ。タスクを実行する、実体の
ある機械? データを分析するアルゴリズム? それでは、機械はどこ
にある? IPはどこに? 生命のない物体から税金を取る方法は? 税
額の評価基準は? 稼働時間? 生産力? つての誰かの稼ぎを基準にす
ることはできない。仕事の性質がすでに変わっているからだ----馬車
をあやつる御者の稼ぎを基準に、自動車に税金をうなものなのである。
たぶん、ロボットの名目上の賃金を計算し(それ自体が難題である
が)、企業がその金額に対応する税金を納付することになるのだろう
が、それが世界的規模で行なわれるのでないかぎり、企業はたんに、
合、外国に移すわけにいかない所有するロボットを、ロボット税の安
い国や地域に移転させるだろう。ロボット税制を機能させるには、政
治的意思のみならず、多くの手立てが必要になる。ところが、ことが
すんなり運ぶとはかぎらない。労働よりもむしろ資本にかかる税金で
あることから、なんらかの提案がなされても、それに反対する企業が
さかんにロビー活動を行なうために、なかなか前に進まないかもしれ
ない。
それでも、国内にあることが明白であるロボットには、いまに税金
をかけられることになるだろう。たとえば、自動運転車(ロボットと
いえるのだろうか?)への課税はほぼ不可避である。自動運転車の場合
外国に移すわきにはいかない----IP(通信規格)ならばそれが可能
だろうが。だから、課税のターゲットになりやすい。私の予想では、
一種の走行距離税が導入されるのではないだろうか。都市、とりわけ
都市中心部での走行では単位当たりの税額が高くなる。走行距離はリ
アルタイムで測定され、税額は自動引き落としされるのかもしれない。
地方当局によって徴収されることも考えられる。
この経済の大変動において確実といえることは数少ない。だが、間
違いないのは政府の最大の収入源である所得税が影響を受けることで
ある。
Julian Paul Assange
第16章 暗号通貨----税務署職員の悪夢
いまは2018の冬。私はロジャー・ヴァーと夕食をとっている。彼は
初期のビットコインの推奨者としてもっとも有名な人物ではなかろう
か。この新しいテクノロジーを熱心に売りこんだことで「ビットコイ
ン・ジーザス」と呼ばれている。そして、抜け目なくこの分野に投資
したことで億万長者どころではない犬富豪になった。いまやFROF・
8ヨのCEOである。私は、これから「デジタル・ノマド」の労働人
口がぐんと増えることを彼に強く印象づけようとしている。また、そ
れによって政府の収入源がダメージを受けるということも。だが、そ
れは釈迦に説法といったところである。
「いわれなくても知っているよ。毎日目にしているからね」と彼は
いった。「僕はそういう人たちに仕事を与える側だから」
「bitcoin.com」で働いている人は何人いるんです?」と私はいった。
「たぶん130人、140人かな。ともかくも、その全員がノマドだ。彼
らの多くは、どこにいるのかわからない。リスボンか、チェンマイか、
来週にはメデジンに移っているかも」
「彼らの出身地は ? 」
「いやあ、いろいろだよ。アメリカ人もいるし、ヨーロッパ人やアジ
ア人----中国人、韓国人、日本人、インド人、インドネシア人----そ
れに南米人も。少なくとも20カ国はある」
「賃金の支払いはどうやって?」
「ビットコインキャッシュだ」と、彼は即答した(ビットコインキャ
ッシュとはビットコインから分岐した仮想通貨で、よりすばやく受け
渡しできるようになっている)。「実務上、一人一人の母国の通貨で
支払うのは厄介だし、金がかかる。彼らはボーダーレスなデジタルサ
ービスを提供している。そして、われわれはボーダーレスなデジタル
通貨を支払うんだ。これしかうまくいかない。ともあれ、彼らはビッ
トコインキャッシュでの支払いを望んでいる。だからこそうちで働き
たがっている」
仮想通貨は価格が乱高下することで知られる。「価格変動リスクに
ついてはどうなんです?」
「彼らはそういうリスクを喜んで引き受けている。受けとってすぐ
母国の通貨に交換することもできるが、僕の知るかぎり、ほとんどの
者はそうしない。彼らはビットコインキャッシュを信頼している。こ
れにできるだけ多くの注目を集めたいと思っている」
「税金については? 」
「いやあ、それぞれの国の税制に応じて税務手続きをするとか、専
門家を雇うとか、社員の誰がパートタイムで、誰がフルタイムかとか
----今後どうなるのか、考えたくもないな。彼らはノマドだからね。
9時5時で働いていない。自分のスケジュールを自分で組んでいる。税
金の手続きも自分でやる」
「全員が納税していると思いますか? 」
「 それは彼らに訊いてみてくれ。それは彼らの責任だから----彼ら
と彼らの国の政府とのあいだのことだから。まあ、納税している者も
いるだろうが、何年も帰国していない、帰国するつもりもない者もい
るから。母国の政府を支持していないんだ。政策が気に入らないわけ
だだから、納税して政府に資金を供給することに反対しているんじゃ
ないかな。それから、ほら、彼ら白身は義務を果たしたい、法律を守り
たいと思っていても、税法に彼らの勤務形態の規定がないって場合も
ある。勤務状態がはっきりしないから、当局はわずらわしく思うのか
もしれない。たいてい、棚上げにするほうが楽だってことになる」
急増するこの労働人口は国境をまたいで仕事をするが、彼らが使う通
貨も国境をまたいでいる従来の銀行業の外にある非法定通貨なのだ。
こういう通貨の場合、取引を監視することも、監督することも、そこ
から徴税することも困難である。
デジタル・ノマドは2030年までに10位人に達するというピーター・
レフェルスの予測を位えているだろうか? 披は「知り合いのノマドの
半数以上が仮想通貨経済で働いている」という。現在のトレンドが継
続したならば、法定通貨をいっさい使わずにすませる人びとの数は、
2035年までに5億人に達することになる。馬鹿馬鹿しく思えるかもし
れないが、実状に通じた仮想通貨の推奨者だちならば、もっとすっと
もっとずっと多いけずたというだろう。
クリプトアクティビズム
政府の収入を脅かしつつあるもののなかでも、暗号資産テクノロジー
はもっとも大きな脅威かもしれない。
20世紀の「大きな政府」モデルは法定通貨と一体だった。実際、
このモデルは法定通貨によって可能になるものなのだ。政府は管理通
貨制度によって強大な力を得た。資金がもっと必要になれば----闘費
調達などのためだが、近年には金融セクター救済を目的とする例もあ
った----通貨をもっと発行すればいいのである。非法定通貨の流通は
その力を弱めてしまう。政府は管理外の通貨の価値を引き下げられな
い----つまり、インフレ税を取ることができない。源泉徴収、VAT、
売上税あるいは取引税を徴収することと、それらを監視することも困
難になる。代替通貨、とりわけオンラインと海外に置かれたそれを使
う人びとが増えれば増えるほど、それだけ税金を取るのが難しくなる
のだ。ビットコインなどの仮想通貨を理解していない、あるいは理解
したくない人びと----高名な経済学者(ポール・クルーグマンからヌ
リエル・ルービニまで)や銀行家(ジェイミー・ダイモン)も含まれ
る多くは、たんにそういうものを念頭から排除している。だがそうす
ることで、おそらくインターネット以来となる著しいテクノロジーの
進歩を拒絶している。そして、彼らの意見にしたがう人びとは、今後
いっさい訪れそうにないほど大きな金儲けのチャンスをふいにしてい
る。最初の価格は2009年10月の0.001309ドルだったが、2017年12月に
約2万ドルの高値をつけたビットコインは、1,500倍以上も値上がりし
たことになる。その間、80%以上の暴落が少なくとも5回あった。ビ
ットコインがいつか廃れるというならば、すでに何年も前に廃れてい
てもおかしくなかった。ところが、むしろ一兆ドル近い産業に成長し
ている。この科学技術の新しい可能性に、世間は熱狂している。1990
年代のインターネット登場以来の大騒ぎである。
通貨制度とテクノロジーはともに進歩してきた。一方がもう一方を
後押しするのだ。古代メソポタミアでは、粘土を焼いてつくったトー
クンで借金の額を記録していたが、やがて粘上板に絵を刻みつけるそ
れが人類史上もっとも古い文字の始まりとなった。金属の含有力を一
定に保つことが吋能な鋳造という方法で硬貨がつくられるようになる
と、貝殻、クジラの歯などの原始的な貨幣は廃れていった。印刷機の
登場で紙幣がつくられるようになると、貴金属を便った貨幣は使われ
なくなった。
銀行業務が電子化されると、小切手が廃れていった。ただし、小切
手の使用状況は国によって異なるデメリカなどでは現在も広く使われ
ている)。今日では、非接触型決済の普及によって不便になりつつあ
る現金が、やはり廃れつつある。市場においては、たいていは利便性
が勝つ。通貨は科学技術である。
ビットコインやそこから分岐した仮想通貨はその進歩の最先端であ
り、インターネット専用のキャッシュとして設計されている。一般の
人びとの大半がスーパーでの買い物にビットコインを使う日がやって
くるとは思えないが、オンライン取引での仮想通貨の使用は今後いっ
そう広がっていくだろう。
利便性を念頭に、仮想通貨の多くは特定の目的のために設計されて
きた。たとえば、持つもの(モネロ、グリン)、決済スピードが重視
されたもの(ライトコイン、ダッシ言乙金な匿名性を、チップなどの
小目の支払いに特化しかもの(ステラ、ド-ジコイン)、アプリ構築
用につくられたもの(イーサリアム、カルダノ、イオス)などがある。
現金の代替となるアルトコインはすでに3000種類以上ある。法定通貨
が時代遅れに思えるほどである。遠くない未来に、PCやスマートフ
ォンに複数のウォレットを入れておくことが一般的になるだろう。
それぞれのウオレットには、特定の目的に応じた仮想通貨がしまっ
てある気に入ったブロダ記事や動画へのチップの支払いから、株・貴
金属・債券の取引、さらには非合法市場からの商品の購入まで。
政府は、プライバシーを侵害することなくこういう取引のすべてを
監視し、適正に課税するための効果的かつ効率的な手立てを講じられ
るだろうか?
非法定通貨である仮想通貨は体制を打倒する可能性を含んでいるが、
実は意図的にそのようにつくられている。仮想通貨のテクノロジーを
生みだしたのは、1990年代に出現した反体制的なプログラマー集団、
サイファーパンクたった。彼らが団結するに至った原囚は、インター
ネットという新技術への懸念だった。彼らは、インターネットに潜在
する可能性を認めつつも、企業や国家がそれを利用することで、個人
のプライバシーが侵害されるのではないかと考えた。彼らはそれを強
く恐れた----そして、それ以降に起こったことを考えれば、まさに彼
らの危惧したとおりになった。そこで彼らは、プライバシーの保護の
ため、オープンソースのテクノロジー、とりわけ暗号技術の開発に乗
り出した。
サイファーパンクの動機となった考え方は、アナーキズムではない
にせよ、まさしくリバタリアニズムたった。彼らは国家に大きな不信
を抱いていた。この集団の創設者はカリフォルニア州在住のコンピュ
ーター科学者で、名前をティム・メイといった。彼は1988年にクリプ
ト・アナーキスト宣言を著し、暗号技術の進歩は「法規制の性質も、
情報保護の能力も、さらには信頼や評判の性質までも一変させるだろ
う」と述べた。
そして、つぎのように続けた。「活版印刷技術は中世のギルドの力
を弱め、社会の権力構造を変えた。暗号技術にしても、経済取引にお
ける企業および政府の干渉の性質を根本から変えるだろう。このとこ
ろ新しく出現した情報市場とともに、クリプト・アナーキーは文字と
画像に置き換えることのできるありとあらゆるリアリアルを扱う、流
動性の高い市場をつくりだすだろう」
サイファーパンクの夢を実現するためのカギは、匿名性の高いイン
ターネットキャッシュのシステムだった----つまり、仲介者(たいて
い銀行)による取引処理なしに、金額の大小を問わず、AからBにじ
かにオンライン送金できるシステムである。しかし、ティム・メイを
始めとするサイファーパンクたらの勇ましい言葉とはうらはらに、あ
る技術上の問題がその実現の妨げになっていた。これは二重支払いの
問題だった。つまり、基本的には、たとえば文字であれ、画像や動画
であれ、通常のデシタルコードならばコピーとペーストが可能なわけ
だが、それを不可能にするための対策を講じなければならなかった。
20年以上のあいだ、この問題は未解決のままたった。取引処理をする
中心体がなければ解決は不可能であるとコンピュータ科学者の多くは
考えていたから、なおさらたった。多くのサイファーパンクは彼らの
アナーキーな夢をあきらめた。そんなとき、サトシ・ナカモトという
人物がビットコインという新発明を携えてあらわれた。あとのことは
語るまでもない。
Satoshi Nakamoto
via jp.wikipedia
暗号化技術のおかげで、人びとは大企業や政府の目の届かないとこ
ろでのコミュニケーション、ブラウズ、商取引が可能になった。その
結果、情報はしたがって人びとも管理しにくくなり、課税しにくくな
った。なんてあれ暗号化はごく易しく、暗号化解除はごく難しい。「
それは卵のようなものだ」と、科学技術専門の記者のジェイミー・バ
ートレットはいう。「割るのは簡単だが、割った殼をもとどおりにす
るのは困難だ」もう1人のサイファーパンクのジュリアン・アサンジ
にいわせれば、「宇宙は暗号化を信じている」。それは国家への挑戦
であり、不正な手段にも公正な手段にも使われる。何よりも、それは
国家の通貨独占および徴税能力への挑戦なのである。
テクノロジーとともに、サイファーパンクの世界観もまた急速に普
及している。暗号化を推進するコミュニティの人びとは政府に大きな
不信感を抱いている。政府のつくるルールは間違っている、そんなル
ールにはしたがいたくない、と考えているのだ。左翼権威主義的世界
観がいっそう深く根づきつつあるなかで(アメリカではミレニアル世
代の半数以上が社会主義を好意的にとらえている)、それと同じくら
い熱意に満ちたリバタリアニズム的信念がひときわ目立ちはじめてい
る。そのイデオロギー上の心臓は暗号化にある。『サピエンス全史』
の著者である人類学者のユヅァル・ノア・ハラリならば断言するだろ
う。人類の進化にまつわる言説のもたらす影響を過小評価してはなら
ない、と。これは本書の内容から離れた筆者の私見であるが、かつて
人びとの指針となる言説は宗数的信条から生まれていた。二十世紀に
入ると、宗教とは加かわりのない社会主義思想、社会民主主義思想が
世の中を席巻した。そして現在、つぎの100年にもっとも重要になる
イデオロギーはリバタリアズニズムである。
Peter Thiel
via jp.wikipedia
ペイパル社の伯楽器のピーター・ティールは、2009年に発表したエ
ッセイ「リバタリアンの教育〔The Education of a Libertarinan]のなか
で、資本主義と民主主義は両立しないと主張している。彼にいわせれ
ば、資本主義は「大衆に人気がない」。大衆は、再分配および規制と
いう形を取った、もっと大幅な譲歩を資本家に求めているという。テ
ィールの意見では、政治的アクティビズムを通じて意義のある政治的
変化を引き起こすことは不可能である。「こういう目的を達成する方
法について、私はすっかり考えを改めた」彼によれば、政治的変化は
むしろテクノロジーを進歩させることで引き起こせる。「脱出の手段
には、われわれを未発見の国に連れていってくれる、これまでに試
されたことのない、新しいプロセスが含まれていなければならない。
だから私は、自由のための空間をつくりだすと思われる新技術の開発
に全力を傾けることにした」ティールのいう「未発見の国」は、サイ
バースペース、外宇宙、あるいは洋上にあるという。
ティールがこのエッセイを書いたきっかけの一部には、彼自身の苛
立ちと、2008年世界金融危機の際の体制側の対応------金融機関の救
済、大幅な金利引き下げなどがあった。憤った者、解決策を講じよう
と考えた者は、彼だけではなかった。ビットコインをつくったサトシ・
ナカモトも同じ思いに突き勣かされた一人で、彼がその発明晶を発表
したのは、ティールがエッセイを執筆し、またもや金融機関のための
救済策がとられたことを伝える「タイムズ」紙の見出しについて言及
するほんの2、3カ月前のことだった。のちにナカモトは「中火によ
って管理されている通貨にひそむ意図的なインフレのリスクから逃れ
よ!」と採用者に要請している。ビットコインは、政治的変化を引き
起こすことを可にすると思われる「テクノロジーの進歩」とティール
のいうものの一種たった。
ティールやナカモトのようなリバタリアンは小さな政府、低い税率、
自己責任を信条にするが、新しいテクノロジーのワイルド・ウェスト
には回し考えの人びとが人勢いる。彼らは政府が時勢に連れているこ
とを知っている。彼らの多くは自らアンキヤップ----無政府資本主義
者〔anarcho-capitalist〕----と称する。コンピュータープログラミング
の領域で活動する、非常に有能な人びとが、同じ志のもとに展開する
この運動は、いまやますます拡大している。彼らの目標は世界秩序の
破壊と改善である。その手段は政治的アクティビズムではなくテクノ
ロジーの進歩だ。税を始め、広い範囲に影響が出てくる。
⏱ このブログでも掲載しているが、激変する世界から小さな企業を
守り大きくするかを考えるなかで、新自由主義を考察した中で、「リ
バタリアン」の思想は驚きもち-迫った。もつとも、政治的関与を一
切排除を原則にするのか、その当時(27年前)曖昧だと了解している。
ここでは「無政府主義的完自由主義」が語られているがそのことにも
驚いたが、それをさておいても、この章節を興味深く読むこととなっ
た。
この項つづく
風蕭々と碧い時代
Jhon Lennone Imagine
♞Their Greatest Hits (1971–1975)
ならず者 ” Desperado” (1973)
Music&Word: Don Henley, Glenn Lewis Frey
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Desperado,why don't you come to your senses
You been out ridin' fences for so long now
Oh, you're a hard one
I know that you got your reasons
These things that are pleasin' you
Can hurt you somehow
Don't you draw the Queen of Diamonds, boy
She'll beat you if she's able
You know the Queen of Hearts is always your best bet
Now, it seems to me some fine things
Have been laid upon your table,
But you only want the ones that you can't get
Desperado, oh, you ain't gettin' no younger
Your pain and your hunger, they're drivin' you home
And freedom, oh freedom, well that's just some people talkin'
Your prison is walking through this world all alone .....
このトラックはGlennFreyとDonHenleyによって書かれ、1973年のアル
バム「Desperado」や多数のコンピレーションアルバムに登場。シング
ルとしてリリースされることはなかった、イーグルスの最も有名な曲
の1つ。ローリングストーンの2004年の「史上最高の500曲」のリスト
で494位にランクインしている。
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