極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

セザンヌと満月の南仏(Ⅰ)

2009年02月07日 | 国内外旅行


炎上の城を討ち出て山路をゆく  きみと誓いて吾は戻らん



※佐和山城の大手門が
宗安寺に移築されている


誹謗中傷が50件以上の書き込みが集中するブログ炎上が話題
だ。情報交換の要諦は「言葉は沈黙」(
discommunication/Comm-
unication gap
ということぐらいネット利用の常識だ。デジタル
世代には法規制でしか学習出来ないという現れはともかくとし
て、図書館の帰りに立ち寄った
佐和山城を登った。天候は良か
ったが伊吹山も、琵琶湖も霞んでいた。頂上の灌木を打ち払え
ば最高の眺望をえることができる。三島由起夫もここへきてヘ
ンダーリンの詩を歌えば良かったのだ。「岐阜は高すぎた、佐
古はほどよく、見晴らしもよい」と織田信長も安土城築城をここ
で決意したのだろう。

ところで、佐和山に入城した井伊直政は落城した惨状のままで
使えたものではなかった。修築しようにも中世の山城で交通が
不便なうえ、戦闘形態が鉄砲主体の時期には不適当な城だった
ので近世城郭の建設を西の湖畔の磯山に築城しようとしたが、
関ヶ原合戦の鉄砲傷が原因で慶長7(1602)年がわずか2年後に
急死したため、幼少の嫡男直勝への重臣の木俣守勝の進言で、
金亀山(現彦根城)を最適地として移築・築城したといわれて
いるが、世間では三成の亡霊に呪い殺されたとも噂され、家康
は三成に関わる城や寺であろうと破却させたが、その見せしめ
としての政治的背景の犠牲になった周辺住人の沈鬱な怨嗟はい
かばかりかと想像するだにない。






『余湖くんのホームページ』
から

上の一首は、落ち武者として炎上の城を捨て生き長らえた後は
必ずきみと二人して戻り再興を果たすんだという気概を石田三
成の時代と重ね合わせ、「後二年の辛抱だ、それまで力を蓄え
再興を機す」とこの困難な時代(第二の敗戦期)を乗り越えて
いくんだという誓いを詠った。



ポール・セザンヌ「ガルダンヌから見た
サント=ヴィクトワール山」1892-95年


油絵同好会で活動していた時から、明るく色彩豊かな、安定感
のある構図それでだけではない、色合いの深さ、日本では言い
古された‘熟(な)れた’、‘枯れた’画風のセザンヌが好き
だった。その仲間にはゴッホ風やルソー風の絵を描く埜坂昌宏
もいたが好きではなかった。父親の影響もあり、異常なまでの
潔癖症で人付き合いが、極端に苦手な性格といわれ心を許せる
友人は、カミーユ・ピサロなど数人に限られていたというが、
後期印象派の代表画家のフィンセント・ファン・ゴッホ、ゴー
ガン、スーラら比べ、彼のしっとりした色彩感覚や明るい画風
は一番気に入っている。それとは対照的にゴッホの絵と接した
時のいいようのない不安感に襲われるのはわたしだろうか。そ
のことを、生きていたなら棟方志功や岡本太郎に確かめてみた
かった。スーラを除いてセザンヌは、ゴッホやゴーガンと同じ
く生前中は評価されなかったが、ゴッホと異なり経済的に不安
がなかった。ところで、この四人のうちスーラが一番早く夭折
していった。

Cafe Terrace at Night
Portrait of Pere Tanguy

Tahitian Women on the Beach
Self-portrait

ファイル:Georges Seurat 019.jpgDer Zirkus
グランド・ジャット島の日曜日の午後




しかし、セザンヌの絵画は誰の目にも魅力的に映る一方でその
表現はとても複雑で難解である。「近代絵画の父」、そうピカ
ソが敬愛し、「セザンヌ主義」という言葉が存在するのは彼の
絵画が20世紀初頭のフランスの革命的な芸術運動に与えたとさ
れる。「自然を円筒、球、円錐として捉える」という主張は、
キュビスムに大きな影響を与えた。時間とともに移ろう光を追
いかけている印象派に不満で、「絵画は、堅固で自律的な再構
築物であるべきである」という考え、自然を写すだけではなく、
ひとつの空間で個々の形態が他の形と呼応し、荘厳かつ明澄な
絵画を完成させる。


Les Joueurs de cartes,


カミーユ・ピサロらの印象派の影響を受けがその豊かな色彩や
明るい画風は地中海気候の南仏のエクサン・プロヴァンスの風
土と切り離せないもの。セザンヌが生涯描き続けた、エクスの
東約20kmに位置する標高1,011mのサント=ヴィクトワール山。
石灰岩質の山肌の為、日中は白く輝き、夕刻には紅に染まる。
幾つも登山道があるが、ヴォヴナルグとル・トロネから標高
945mのプロヴァンスの十字架までの登山道が適度の難易度で人
気がある。




さて、セザンヌを訪ねることは南フランスを知ることでもある
が、難解な彼の作品を理解し絵画を継承するには字数制限で無
理だ。また、別の機会にするとして、南フランスを訪ねる夢を
膨らませ、プロヴァンス料理を先ず理解することとしよう(乞
うご期待を)。


アイオリソース(材料:ニンニク、卵黄、オリーブ油、レモン汁、塩、コショウ) 





 映画『おくりびと』

妻の誘いで急遽、彦根ビバシティシネマで観てきた。映画『お
くりびと』は、監督黒沢、伊丹監督などの遺産を継承しその才
能を如何に発揮した滝田洋二郎、脚本家小山薫堂、宮沢賢治の
小説のようなチェロ伴奏等の映画音楽を指揮する久石譲。そし
て、山形県庄内平野の名峰月山の四季の美しいロケーション。
「人生に迷いながらも成長していく新人納棺師大悟(本木雅弘
)、夫の仕事に嫌悪感を抱きつつも彼を理解し尊敬していく妻
(広末涼子)。ベテラン納棺師佐々木(山努)らの俳優とが
織りなす日本の生死観。観客に飽かすことなく、最上川の如く
貫きつつ雄大かつ、匂い立つ雪深い山形の万象の響きと、繊細
、ユーモラスにして味わい深い日本人の心の襞を最大限醸しだ
しすことに成功した秀抜の一品。


月山のミヤマリンドウ

パーム・スプリングス映画祭において観客賞
(Audience Award for Best Narrative Feature)を受賞。

サウンドトラック盤(視聴)





 

コメント (1)
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