A Challenge To Fate

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【NTSラジオで放送中】デイン・ミッチェルの音響インスタレーション『ポスト・ホック』と灰野敬二がコラボレーション。

2022年07月11日 00時26分55秒 | 灰野敬二さんのこと


Dane Mitchell / デイン・ミッチェル
デイン・ミッチェル(1976年ニュージーランド生まれ)は、不可視の領域におけるエネルギーや力学について、芸術的、科学的、歴史的な観点から多様なリサーチを行っている。そこでは視覚と嗅覚の関係性がしばしば意識されるが、不可視の領域や記憶の古層にわれわれの意識を誘う「香り」を、彼は重要な“彫刻的素材”として捉えている。
2019年にニュージーランドの代表としてベニス・ビエンナーレに参加し、2018年には森美術館で個展を開催した。

Dane Mitchell _Post hoc_ NOWNESS


『ポスト・ホック(POST HOC)』(ラテン語で「この後」の意味)はベニス・ビエンナーレに出品した作品の核になるもので、AI (人工知能)によって400万個の言葉が読み上げられる音響インスタレーションである。読み上げられるのは絶滅した、消えた、消失した、そして取り消されたモノのリストである。すべて読み上げるには、1人8時間読み続けても6か月かかるという。

その膨大なリストは、ほとんど理解しがたいほど多岐にわたっている。:盗まれた美術品、昔の国歌、絶滅した鳥、絶版になったフィルム映画、恐竜、無くなった政党、検閲された展示会、閉局されたラジオ局、中断された科学論、失われた水域、廃刊になった新聞、禁止された・もしくは作れない色、絶滅した植物、失われた映画、以前に確認されていた星座、破壊された惑星、禁止されている芳香分子、歴史的紙幣、閉鎖した核兵器施設、破綻した銀行、崩壊したブラックホール、化石の鳥、紀元前の哺乳類、シンクホール、紀元前の昆虫、竜巻、紛失した文学作品、閉館または失われた図書館、破壊された美術品、元国立公園、紛失した古記録、(その他多々)。

このリストは失われたモノの一覧表だと考えてもいいだろう。リストは意図的に様々な分野に広がり、何をもって失われたというのだろうと、詩的にして主観的に思いめぐらせるようになっている。このリストは実際のところ断片的にしか経験することができない。前述したように、リストの何百万の消えていった見えないモノをすべて聞くには、1日8時間聴いても6ヶ月かかるのだから。この作品はすべてを百科事典的に収集しようという試みだが、すべてのデーターベースがそうであるように、現在進行形で発展しているリストが完成することはない。

この作品の意図は、世界はこの様に収集できるという西洋の認識論(的)な考え方を押しつけて、そしてモノに名前をつけるという行為自体が世界にある物に力と所有権を及ぼそうとしているという考えに対面させることだという。そして同時にモノに名前をつけるという行為が呪文のように働くことに強い興味を持つだろう。名前を口にすること、発声することによって、そのモノがこの現在の瞬間に呼び出されるかもしれない。(名前を言うことによって)このリストにある色々な種類のかつては現実の海を泳いでいたモノが一瞬不死身の力を得て、かつてそれが生命の一部だった事、そして我々の今の瞬間がそれらの上に成り立っているということを亡霊のように思いださせるのだ。

2021年8月1日から英NTS Radioで『ポスト・ホック』のエピソードが、毎日朝6時から1時間、週に7日間放送されている。毎月異なるアーティストが音楽を提供し、AIが読み上げる言葉のリストとコラボレーションしている。これまでAl Doyle with Max Eastley、 Hermione Johnson、Rosy Parlane、Rachel Shearer、Torben Tilly、Rob Thorne、Gillian Whiteheadなどが参加した。

1年間の『ポスト・ホック』シリーズの最後の月である2022年7月は灰野敬二による『“Caught in the dilemma of being made to choose” This makes the modesty which should never been closed off itself, Continue to ask itself: “Ready or not?”/「選ばされてしまう はめになる」 このことが もう閉じることが無かったはずの謙虚さに「もういいかい」と 自らに問いかけ続けさせる』と題されたポリゴノーラを中心とするパーカッションによる音楽作品とのコラボレーション。各エピソードで放送される楽曲のパートは毎日変化する。もちろん言葉のリストも一度として同じものはない。いわば31日間かけて31の異なる作品が放送されるマラソン・インスタレーションである。

放送されたエピソードはNTSラジオのアーカイヴで試聴可能。アーカイブされるのは放送の翌週なので、現在は1回目(7/1放送分)を聴くことができる。読み上げられるリストは「List Of Future Solar Eclipses(未来に起こる日蝕のリスト)」。

POST HOC W/ DANE MITCHELL & KEIJI HAINO 01.07.22
https://www.nts.live/shows/post-hoc/episodes/post-hoc-w-dane-mitchell-keiji-haino-1st-july-2022

POST HOC W/ DANE MITCHELL(これまでの全エピソードのアーカイヴ)
https://www.nts.live/shows/post-hoc

DANE MITCHELL / POSTHOC(ポスト・ホックの説明)
https://www.posthoc.xyz/post-hoc-venice

NTS RADIO LIVE(NTS生放送)
https://www.nts.live/
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