マイブラの紙ジャケ発売~来日決定以来シューゲイザーがマイブームになっており、何度かシューゲ関係のブログ記事も書いた。音楽雑誌のマイブラ&シューゲ特集や2010年に出版された「シューゲイザー・ディスク・ガイド」を読み、90年代当時は決して大きな注目を集めた訳ではないこのスタイルが、21世紀に入り日本を含め世界各国で再評価され、若いリスナーにとってある種神格化されたムーヴメントになっていることを知った。
90年代半ばのブリットポップ・ブームの頃プレイグス、L-R、ヴィーナス・ペーター、ブリッジ、シークレット・ゴールドフィッシュなどUKロックに影響を受けた日本のバンドを観る機会も多かったが、正直言ってイギリスの真似っ子にしか聴こえず小馬鹿にしていた。しかしその流れからサニーデイ・サービスやスピッツなど人気バンドが生まれてきたのだから、UKロック・ムーヴメントが日本のロック界に与えた影響は無視できない。
個人的にテクノやデジロック、ポストロックや音響派には興味を惹かれなかったので、その手のアーティストは名前は知っていてものめり込まなかった。故に2000年代のロック・バンドはたまたまアンテナに引っかかったもの以外はひとつのシーンやジャンルでは捉えていない。シューゲイザーが”ニューゲイザー”と呼ばれ復活していることは知っていたが、毎年100本を超えるライヴへ通い若いバンドも数々観てきたにも拘らずシューゲ系とは一切邂逅しなかったことを考えると根本的に生息地が違うのだろう。
「シューゲイザー・ディスク・ガイド」を参考に日本のシューゲイザーをいくつか聴いてみた。皆さん上手にコピーしてらっしゃるが個人的には余り感慨はない。「お上手ですね」と褒めてやりたい気持ち。オリジナル・シューゲイザーを知らない世代にとっては耳に新しく見てくれもカッコいい憧れの存在なのだろう。こればかりは経験者と未経験者の捉え方の違いであって如何ともしがたいのが事実だ。これ以上書くと批判記事に陥ってしまうので辞めよう。決して良くないと言っている訳ではないので誤解なきよう。どのバンドも研究熱心で感服するばかりだ。ひとつ苦言を呈するとすれば殆どのバンドがヴォーカルが弱過ぎる。確かにシューゲはドリーミーなメロディの朦朧感のあるヴォーカルが特徴ではあるが、それと"魂の抜けた歌"とは次元が違うことを心して欲しい。ってまたもや余計なお世話で失礼。
●Coaltar Of The Deepers
1991年5月に結成。シューゲイザー・デスメタル・パンク・テクノ・エレクトロニカ・ネオアコ・ボサノヴァ等々、様々なジャンルが混在したサウンドを見せる。リーダーのNARASAKIは、大槻ケンヂのバンド・特撮でギターとサウンドプロデュースを担当するなど、ディーパーズ以外にもマルチな音楽活動を繰り広げている。
●Luminous Orange
ペイル・セインツにインスパイアされ、1992年横浜にて曲を書き溜めた竹内里恵がメンバーを募り、女性4ピースバンドとして結成。 何度かメンバーチェンジを経た後、2002年以降は竹内里恵のソロプロジェクトとなる。サポートミュージシャンを迎え録音やライブを行っている。
●cruyff in the bedroom
1998年にハタユウスケを中心に結成される。アメリカのシューゲイザー専門レーベルのclairecordsにより「キング・オブ・シューゲイザー」と名付けられ、最近はバンドサイドでもそう自称している。
●Hartfield
2000年東京にて結成。coaltar of the deepers、cruyff in the bedroom、luminous orangeらと共に「日本のシューゲイザー四天王」の一角と称されている。ダブル・ヴォーカル、ダブル・ギターのノイズの奔流が特徴。
●Supercar
1997年にデビューし、2005年2月26日に解散。この中では最もポピュラーなバンドだろう。初期はシューゲ・サウンドだった。現在各メンバーはソロや自己のバンドで活躍中。
●dip
鬼才ヤマジカズヒデ率いる1991年結成のサイケデリック・ロック・バンドdipがシューゲイザーと呼ばれているのは意外だったが、若いシューゲ・アーティスト/ファンからリスペクトされている。dip加入前ドラムのナカニシ氏は高円寺20000Vの店員で別のバンドをやっており、私のバンドのイベント「アートロック宣言」に何度か出演してもらった。ある日20000Vにブッキングに行くと「ナカニシは辞めたよ。dipに引き抜かれてさ」と店長が教えてくれた。だから何となく"同期の桜"的イメージ。ヤマジ氏は灰野さんと共演しているので愛着があるし、ヴォーカルの重要性をよく分かっている。
[8/31追記]
ディスク・ガイドには載っていないが90年代半ばに大好きだったバンドを紹介。
●PLECTRUM
1992年大阪で結成。バンド名はティーンエイジ・ファンクラブのノーマン・ブレイクが命名した。吉本興業所属のロック・バンドという珍しい存在だった。シューゲイザー、UKギターポップ、USインディポップに強く影響を受けたギター・ロック・サウンドと♪君は素晴らしい90年代過ごしているのか♪という衒いのない直球の歌が印象的だった。ポリスターから2枚のアルバムと数枚のシングルをリリースしたあと1999年からインディーに。現在でも活動しているとのこと。
シューゲ海
何だか気持ち
良さそうだ
何故突然この特集なのかといえば、昨日紹介したシャーベッツの最新PVでベンジーがジャズマスターを弾いていたことと、今夜渋谷クラブクアトロでdipトリビュート・アルバムのリリース・パーティがあるからだ。出演アーティストはモーサム、ノーべンバーズ、池畑潤二(元ルースターズ)、ポリシックスのメンバーなどシューゲ系ではないが面白そうなメンツで楽しみである。