A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【灰野敬二ライヴ情報】4月18日(日) 灰野敬二soloパフォーマンスシリーズ 『灰野美術館』始動!@下北沢spread

2021年03月31日 00時35分08秒 | ネコ動画


灰野敬二soloパフォーマンスシリーズ
『灰野美術館』始動!


4月18日(日) 東京 下北沢spread
nijinohoshi灰野美術館vol.1

18:30open 19:00start
adv.¥3000 / door.¥3500 +1d
着席30名限定

ご予約
meholidays7@gmail.com まで
お名前、人数を明記の上メールをお送りください。
spread HP https://spread.tokyo/

下北で
ソロで演じる
美術館


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【灰野敬二ライヴ情報】5月9日(日)『事 ある 事』ギター と ギター~灰野敬二、鬼怒無月@渋谷・公園通りクラシックス

2021年03月30日 00時49分48秒 | 灰野敬二さんのこと


世界的に活動する音楽家・灰野敬二が日本の個性派ミュージシャンとコラボレート。

2021年5月9日(日)  東京 渋谷 公園通りクラシックス
『事 ある 事』
ギター と ギター ~ 灰野敬二、鬼怒無月

19:00 open / 19:30 start
前売り 3,000円 当日 3,500円 1ドリンク別

灰野敬二 (guitar)
鬼怒無月 (guitar)

予約:公園通りクラシックス
03-6310-8871
http://koendoriclassics.com/

[Profile]
灰野敬二 Keiji Haino


1952年5月3日千葉県生まれ。アントナン・アルトーに触発され演劇を志すが、ザ・ドアーズに遭遇し音楽に転向。ブラインド・レモン・ジェファーソンをはじめとする初期ブルースのほか、ヨーロッパ中世音楽から内外の歌謡曲まで幅広い音楽を検証し吸収。1970年、エドガー・アラン・ポーの詩から名を取ったグループ「ロスト・アラーフ」にヴォーカリストとして加入。また、ソロで自宅録音による音源制作を開始、ギター、パーカッションを独習する。1978年にロックバンド「不失者」を結成。1983年から87年にかけて療養のため活動休止。1988年に復帰して以来、ソロのほか不失者、滲有無、哀秘謡、Vajra、サンヘドリン、静寂、なぞらない、The Hardy Rocksなどのグループ、experimental mixture名義でのDJ、他ジャンルとのコラボレーションなど多様な形態で国際的に活動を展開。ギター、パーカッション、ハーディ・ガーディ、各種管弦楽器、各地の民間楽器、DJ機器などの性能を独自の演奏技術で極限まで引き出しパフォーマンスを行なう。200点を超える音源を発表し、確認されただけでも1,800回以上のライブ・パフォーマンスを行なっている。
http://www.fushitsusha.com/

鬼怒無月 Natsuki Kido


 ‘64年神奈川県出身。高校時代より音楽活動を始める。'90年に自己のグループ,ボンデージフルーツを結成、'94年にバイオリン奏者勝井祐二と共に発足したレーベル「まぼろしの世界」より現在までに最新作の「Bondagefruit6」(’05年2月発売)を含む6枚のアルバムを発表。ボンデージフルーツは'’98年"ScandinavianProgressive Rock Festival"、'99年にはサンフランシスコの"Prog Fest '99"に招かれるなど海外での評価も高い。近年はアストル・ピアソラの最後のキンテートのピアニスト、パブロ・シーグレルのグループ、5枚目のアルバム「NULLSET]をスペースシャワーネットワークよりリリースしたクラシックギタリスト鈴木大介氏とのユニットThe Duo、コンテンポラリータンゴバンド "Salle Gaveau" また梅津和時、早川岳晴,ジョートランプという最強のラインナップによるハードJazz Rockバンド、KIKI BAND,壷井彰久とのERA,吉田達也の是巨人、Zabadakのサポート等日々自己のギタースタイルを進化させ続ける異才ギタリスト。
鬼怒無月HP http://mabokido.web.fc2.com/
Facebook http://mabokido.web.fc2.com/

エレキギター
シールド1本
ノー・エフェクター


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【盤魔殿レーベル第3弾リリース決定!!!】ケロッピー前田 x 剛田武『Electric Tjurunga(エレクトリック・チューリンガ)』~故・近藤等則氏のスタジオで即興ライブ・レコーディング

2021年03月27日 00時25分30秒 | 素晴らしき変態音楽


【リリース特報】盤魔殿レーベル"Les Disques Du Daemonium”第3弾!
2020年10月17日に逝去されたエレクトリック・トランペット奏者・近藤等則氏のプライベート・スタジオ「近藤音体研究所」にて、電子音と生楽器の即興演奏ライブ・レコーディングが実現した!



ケロッピー前田 x 剛田武
『Electric Tjurunga(エレクトリック・チューリンガ)』
ライブレコーディング@近藤音体研究所

Les Disques Du Daemonium CD-R:盤魔-003 定価1000円(税込)
2021.4.16 Release

身体改造ジャーナリストとして活躍するケロッピー前田は、ツァイトリッヒ ・ベルゲルター のドラマーを務めた過去を持ち、現在もディジュリドゥを吹き、電子音や打楽器でストイックな演奏を聴かせる。異端DJイベント盤魔殿の企画者にして、リード楽器やフルート、ノイズドール等ガジェットを巧みに操る地下音楽家・剛田武とともに、プリミティブ(原始的)でエレクトリック(電子的)な演奏で「近藤等則氏=チューリンガ(死者の肉体)」との交信を試みた。ワイルドでソリッドな音の啓示、近藤氏へのリスペクトと魂の共鳴!

2021年4月16日リリース、盤魔殿関連イベントにて先行発売、店舗販売も予定



【Credit】
Artist : Keroppy Maeda x Takeshi Goda
Title :Electric Tjurunga(エレクトリック・チューリンガ)~Live Recording @ Kondo Sound Body Laboratory

Track List:
Turn on
Transmission
Electric Tjurunga I
The man blowed us
Electric Tjurunga II
Immortality
Fly away

Dedicated to Toshinori Kondo (1948 - 2020)

ケロッピー前田: electric didgeridoo, synth, clapstick, gong, sound tube
剛田武: reed-flute, shinobue, folk flute, noise dolls, percussion / produce and mastering

Recorded at 近藤音体研究所 2021年2月14日
Special thanks to 近藤空太、近藤陽太、近藤音体研究所
(c) 2021 Les Disques Du Daemonium 盤魔-003




【Profile】
ケロッピー前田(けろっぴー・まえだ)


1965年、東京都生まれ。千葉大学工学部卒、白夜書房(のちにコアマガジン)を経てフリーに。世界のカウンターカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『BURST』(白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。その活動は地上波の人気テレビ番組でも取り上げられ話題となる。著書に『クレイジートリップ』(三才ブックス)、『クレイジーカルチャー紀行』(KADOKAWA)、責任編集『バースト・ジェネレーション』(東京キララ社)など。新刊本『縄文時代にタトゥーはあったのか』(国書刊行会)絶賛発売中!
公式twitter:@keroppymaeda


剛田 武 Takeshi Goda(ごうだ・たけし)


1962年千葉県生まれ。77年パンクに衝撃を受けバンド活動開始。80年代前半地下音楽と交わる。サイケバンドでTV番組『イカ天』に出演するも94年に解散。サラリーマン生活の傍ら2005年にブログ「A Challenge To Fate」をスタートし、音楽サイトJazzTokyo等で執筆活動。著書『地下音楽への招待』(ロフトブックス2016年)。DJ NecronomiconとしてDJイベント『盤魔殿』および自主レーベル「Les Disques Du Daemonium」を主宰。2019年から演奏活動を再開、フルートにサックスのマウスピースを付けたリード・フルートや人形型電子楽器ノイズ・ドールといった異形の楽器を操るソロ活動の他、Marc LoweとのデュオLower Than Godなどでも活動する。
https://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

生と死を
繋ぐ音楽
滲みでる

●レコ発イベント決定!!!


盤魔殿 presents
NEO UNDERGROUND vol.3

~ケロッピー前田 x 剛田武「Electric Tjurunga(エレクトリック・チューリンガ)」Release Party~

2021/4/16 fri.
阿佐ヶ谷TABASA
https://www.asagayatabasa.com/
19:00 Open / Start
¥1,000 + 1d / Live 投げ銭制
*15名限定(参加希望の方はTABASAホームページにて予約、またはFacebook特設ページにて参加表明お願いします)

Live Acts:
Rie Fukuda
Keroppy Maeda × Takeshi Goda

DJ's: 
DJ Vaby a.k.a. 大場弘規
DJ Athmodeus a.k.a. 持田保

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ライヴ+DJイベント開催決定】『盤魔殿 presents NEO UNDERGROUND vol.3』4/16(金) 阿佐ヶ谷TABASAにて開催!

2021年03月24日 01時02分10秒 | 素晴らしき変態音楽


異端DJイベント『盤魔殿』が贈るライヴ+DJイベント『NEO UNDERGROUND』の第3弾が決定した。4月16日(金)、コロナ禍の帝都東京の鬱々とした地下で蠢いていた音楽どもが目を覚ます。この日、新たな地下音楽の開花宣言を発令する。

盤魔殿 presents
NEO UNDERGROUND vol.3
~ケロッピー前田 x 剛田武「Electric Tjurunga(エレクトリック・チューリンガ)」&コンピレーション「盤魔殿 Flashback」Release Party~

2021/4/16 fri.
阿佐ヶ谷TABASA https://www.asagayatabasa.com/
18:00 Open / Start (20:00終演)
★「まん延防止等重点措置」追加適用により開演時間が変更になりました。
¥1,000 + 1d / Live 投げ銭制
*15名限定(参加希望の方はTABASAホームページにて予約、またはFacebook特設ページにて参加表明お願いします)

Live Acts:
Rie Fukuda
Keroppy Maeda × Takeshi Goda

DJ's: 
DJ Vaby a.k.a. 大場弘規
DJ Athmodeus a.k.a. 持田保

------------------
Time Table
18:00 - 18:30 DJ Vaby a.k.a. 大場弘規
18:30 - 19:00 Live Act : Rie Fukuda
19:00 - 19:30 DJ Athmodeus a.k.a. 持田保
19:30 - 20:00 Live Act : ケロッピー前田 x 剛田武
-------------------

【Live Act紹介】
●ケロッピー前田×剛田武


身体改造ジャーナリストとして活躍するとともに、ツァイトリッヒ ・ベルゲルター のドラマーを務めた過去を持ち、現在もディジュリドゥを吹き、電子音や打楽器でストイックな演奏を聴かせるケロッピー前田と、異端DJイベント盤魔殿の企画者にして、リード楽器やフルート、ノイズドール等ガジェットを巧みに操る地下音楽家・剛田武による異色のデュオ。故・近藤等則氏のプライベート・スタジオ「近藤音体研究所」にてライヴ・レコーディングされた『Electric Tjurunga(エレクトリック・チューリンガ)』を盤魔殿レーベル"Les Disques Du Daemonium"第3弾としてリリースする。
【盤魔殿レーベル第3弾リリース決定!!!】ケロッピー前田 x 剛田武『Electric Tjurunga(エレクトリック・チューリンガ)』~故・近藤等則氏のスタジオで即興ライブ・レコーディング


●Rie Fukuda


2005年に朗読を開始、学生バンド時代から長いブランクを経てのステージ再開。2009年より自主企画"騒音天獄"を主催、現在トータル26回。"好きな音でなければ何でも騒音である"をスローガンに掲げている。デュオを組んでいたさるギタリストの病死をきっかけに、ハードシンセを鳴らしながら朗読をするスタイルを開始し、現在に至る。田畑満とのコラボレーションアルバム"precog"をオースチンレコードより、またI,eternalとのスプリットシングルをスウェーデンskitnasteよりデジタルリリース。2020年11月29日に盤魔殿レーベル"Les Disques Du Daemonium"第2弾として"Rie Fukuda / 狩赤夢 -Live at EdgeEnd Nov.2020-"(盤魔-002)をリリースしている。

Rie Fukuda / 狩赤夢 KariAkaYume - Live at EdgeEnd -digest- (盤魔殿レーベル)


同時発売⇒【盤魔殿コンピレーション リリース決定!!】『盤魔殿 Flashback~Disque Daemonium Live Archives 2019-2020』~東京ネオアンダーグラウンド・サンプラー

コロナ禍に
地下音楽の
春が来た



盤魔殿レーベル"Les Disques Du Daemonium"とは…
異端DJイベント『盤魔殿』が主宰する音楽レーベル。盤魔殿DJがセレクトするおススメアーティストやユニークなMIXをリリースしていく。
盤魔-001『Lower Than God / We Advance Masked』(2020/9/27 release)
盤魔-002『Rie Fukuda / 狩赤夢 -Live at EdgeEnd Nov.2020-』(2020/11/29 release)
盤魔-003『ケロッピー前田 x 剛田武 / Electric Tjurunga(エレクトリック・チューリンガ)』(2021/4/16 release)
盤魔-004『Various Artists / 盤魔殿Flashback』(2021/4/16 release)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【地下ジャズDiscReview】『橋本孝之 / チャット・ミー』~是は異端音楽家の独り火遊びの誘惑か?

2021年03月22日 00時07分41秒 | 素晴らしき変態音楽


『Takayuki Hashimoto / CHAT ME』
text by 剛田武 Takeshi Goda

Nomart Editions CD:NOMART-117

橋本孝之 Takeyuki Hashimoto : g, as

01 CHAT ME (Flamenco guitar solo) 21:33
02 CLOUDY BLUE (Alto saxophone solo) 26:13

Art direction & Produce: 林聡 Satoshi Hayashi
Art work: 山田千尋 Chihiro Yamada
Liner notes: ミシェル・アンリッツィ Michel Henritzi
Translation: 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Design: 冨安彩梨咲 Arisa Tomiyasu

https://www.nomart.co.jp/dotes/

奏者と楽器のディスタンスを再定義するベッドルーム・インプロヴィゼーション

いわゆるノイズ・ミュージックを形容する際に使われる”物音ノイズ”という言葉がある。ノイズ・ミュージック(単にノイズともいう)とは、1913年にイタリア未来派のアーティスト、ルイジ・ルッソロによる論文『騒音芸術(L’arte dei rumori)』と彼が発明した騒音楽器イントナルモーリをはじめとして、創作楽器や電子楽器などノイズ(雑音・騒音)を出すための機器を用いて演奏されることが多い。そうした楽器を使わず、物体(オブジェ)と物体(オブジェ)が接触するときに発生する具体音を素材とするのが”物音ノイズ”である。そもそも音は何かと何かが接触することで生まれる空気振動が耳殻に伝わることで認知される現象であることを考えれば、殊更に”物音”と言いたてる必要はないはずだが、音を音楽(または音楽用語としてのノイズ)に変えるためには、何らかの人工的な変換作操作が必要だ、という前提(先入観)があるのだろう。

橋本孝之が2020年6月に自宅マンションで独りきりで録音したソロ・アルバムが本作『CHAT ME』。M1.「CHAT ME」はフラメンコ・ギター・ソロ。金属か何かで弦をガサゴソ擦ったり叩いたりする音が続く。音程のある楽音は全く聞こえない。M2.「CLOUDY BLUE」はアルトサックス・ソロ。こちらは時々楽器の音が聞こえるが、連続したフレーズを奏でることはなく、管の中を通る息が気紛れに嗚咽や軋みを生じるだけで、あとは空気の通過音やサックスのキーをパタパタと開閉する音や楽器のボディを叩く音が続くばかり。楽器演奏というよりも、楽器という物体(オブジェ)を用いた物音ノイズと言っていい。にもかかわらずこの作品がノイズ・ミュージックではなく、紛れもない即興演奏として成り立つ理由は、物体の一方が橋本孝之の肉体であり精神であるからだ。

2014年のギター・ソロ作『Sound Drops』ではギターに内蔵されたオルゴールのネジを巻く音、2016年のハーモニカ・ソロ作『SIGNAL』では唇がハーモニカと接するリップノイズと、これまでに橋本は楽音を使わない音楽作品を発表してきた。それらと本作が異なる点は、音の距離の近さである。実際にどのように録音されたかは分からないが、CDを聴く限りではマイクロフォンを音源(楽器と橋本の指)に密着させて録音されたように聞こえる。スピーカーで聴くと音が耳元で鳴っているように聞こえるし、ヘッドフォンで聴くと頭の中にギターやアルトサックスを置いて、橋本が耳から指を入れて弾いているように感じる。微小な画像を顕微鏡が拡大するように、微弱な音がマイクロフォンで拡大されて聴き手に密着するように聞こえるのである。

感染防止対策でソーシャル・ディスタンスが叫ばれ、人と人の距離が問題視された2020年、橋本孝之が挑んだのは、楽器との距離を最小限に縮めて自分と楽器(=音楽)との関係を再定義することではなかろうか?『CHAT ME』=自分とおしゃべり、とはノマル・ディレクターの林聡が直感で閃いたタイトルだというが、楽器の立場に立てば「自分とおしゃべりしようよ」という誘いになる。人間に近づくことが禁止されたならば、楽器と触れ合えばいい。自分と楽器の独り語りをSNS代わりにCDとして世界に拡散すればいい。ポップスの世界では、自分の寝室で宅録によって作った音楽を「ベッドルーム・ポップ」と呼ぶが、『CHAT ME』はいわば「ベッドルーム・インプロヴィゼーション」と呼べるだろう。しかしながら、これまでの橋本の楽器へのアプローチを考えれば、コロナ禍がなくても遅かれ早かれこのような作品を作ったであろうことは想像に難くない。(2020年12月29日記)
初出:JazzTokyo #273 2021年1月2日

独りでも
語る指数は
無限大

TAKAYUKI HASHIMOTO SOLO IMPROVISATION 2019.07.28 live cafe giee (PART3: alto sax)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【地下ジャズDiscReview】『ドットエス(橋本孝之&サラ)/ カタストロフの器』~是は行動主義者の瓦礫の未来か?

2021年03月21日 00時03分46秒 | ネコ動画


『.es (Takayuki Hashimoto & sara) / Vessel of Catastrophe』
text by 剛田武 Takeshi Goda

レーベル:Nomart Editions
品番: NOMART-119

.es(ドットエス)
Takayuki Hashimoto 橋本孝之
– Alto Saxophone, Harmonica, Guitar
sara
– Piano, Percussion

01 Catastrophe #1
02 Catastrophe #2

Recorded live at Gallery Nomart, Osaka, 2020.9.12
The solo exhibition “Vessel of Catastrophe” by Nana Kuromiya
黒宮菜菜個展 “カタストロフの器” 会場にて
Art direction & Produce: 林聡 Satoshi Hayashi
Art work: 黒宮菜菜 Nana Kuromiya
Text: sara
Translation: 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Design: 冨安彩梨咲 Arisa Tomiyasu

https://www.nomart.co.jp/dotes/

崩壊の先にある”行為としての即興音楽”

イギリス、ロンドンのテムズ川沿いにある現代美術館テート・モダーンの常設展に「The Disappearing Figure : Art After Catastrophe(消失する形象:カタストロフの後の芸術)」と名付けられた展示室がある。第二次世界大戦という壊滅的な出来事の後、いかにして作品を作り続けるか、という20世紀半ばの芸術家にとって最大の問題に取り組んだ作品を集めた展示である。欧米そして日本中心の社会的・政治的な秩序が崩壊し、すべての価値観の大変革を経験した世界に於いて、ある者は非西欧的文化を参照し、ある者は作為を排除し自然発生的な手法を取り入れ、ある者は特殊な素材を使って実験し、芸術の大変革を推し進めた。メインの展示のひとつにアメリカのジャクソン・ポロックの「Number 14」(1951)がある。床に置いたキャンバスに塗料を滴らせる”ドリッピング(Dripping)”と呼ばれる手法でカラフルな抽象絵画を発表していたポロックが、黒の塗料を棒や注射器で注ぐ”ポーリング(Pouring)”という手法で描いた白黒の作品である。これは1951年から1954年の間に制作されたBlack Pouringsと呼ばれるシリーズのひとつで、成功のプレッシャーでアルコール依存症に陥り1956年に自動車事故で44歳の生涯を閉じるポロックの最後の傑作と言われている。

新型コロナウィルスという災禍がもたらしたカタストロフ(崩壊)と再生への希望をテーマにしたアート展 「カタストロフの器」最終日での演奏で、橋本はエレクトリックギターの爆音ノイズとハーモニカのディレイ効果で、saraはエレクトリックとアコースティックのピアノ演奏で、ギャラリー・ノマルの空間をこれまでになく厚い音の壁で塗りつぶそうとしている。四方を囲む壁に飾られた黒宮菜菜の絵画(ジャケット参照)は、手法は異なるかもしれないが、ポロックの抽象絵画を思わせる混迷と激情を感じさせる。

以前橋本は自分の演奏メソッドをジャクソン・ポロックを引き合いに出して語ったことがある。”即興演奏はその場のエモーションから生まれるが、そこに感じる自分と考える自分がいる。そこにあるあらゆる感覚を使って受け取ったものに、蓄積した経験や感情が反応した時に音が生まれる。ポロック同様、無為と有為のスパークだ”(2019年7月27日(土)東京・国分寺gieeでのソロ公演での配布プリントより)。

音楽とアート、無形と有形、抽象と具象、無意識と有意識、無為と有為、消失と出現、Catastrophe(崩壊)とCreation(創造)。聴き手の感覚を音でスパークさせるドットエスの表現行為は、ジャクソン・ポロックの「アクション・ペインティング」に倣って「アクション・インプロヴァイジング・ミュージック(行為としての即興音楽)」と呼ぶのが相応しい。(2020年12月31日記)
初出:JazzTokyo #273 2021年1月2日

即興之
精神崩壊
再生術

[Close-Up] 黒宮菜菜/Nana Kuromiya Image-終わりし道の標べに



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【地下ジャズDiscReview】『ドットエス(橋本孝之&サラ)+林聡 / アトラス』~是はアート・ギャングの意識攪乱戦略か?

2021年03月20日 00時49分01秒 | 素晴らしき変態音楽


『.es (Takayuki Hashimoto & sara) + Satoshi Hayashi / Atlas』
text by 剛田武 Takeshi Goda

Nomart Editions
品番: NOMART-118

.es(ドットエス)
橋本孝之 Takayuki Hashimoto
– Alto Saxophone, Shakuhachi(With Reed), Harmonica
sara
– Piano, Percussion
+
林聡 Satoshi Hayashi
– Laptop

01 Atlas #1 17:13
02 Atlas #2 23:13

Recorded live at Gallery Nomart, Osaka, 2020.7.18
The solo exhibition “Atlas” by Motonori Inagaki
稲垣元則個展 “Atlas” 会場にて
Remixed by Satoshi Hayashi
Art direction & Produce: 林聡 Satoshi Hayashi
Art work: 稲垣元則 Motonori Inagaki
Liner notes: 田中ゑれ奈 Erena Tanaka / 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Translation: 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Design: 冨安彩梨咲 Arisa Tomiyasu

https://www.nomart.co.jp/dotes/

リアル即興音楽を疑似アート作品に転化させる企み。

2009年の結成時点からドットエスのプロデューサーとして制作に携わってきたノマル・ディレクターの林聡が、音源としては初めて演奏者として参加した作品の登場である。昔ならば第3のメンバーと呼ばれたかもしれないが、林の存在はメンバーを越えた「場」として捉えるべきである。1989年に版画工房としてスタートしたノマルエディションが、デザインスタジオ、アートギャラリーへと拡大し、ちょうど20年後にドットエスという音楽ユニットを生むことで音楽レーベルへと発展した。林は想定外の自然発生的変化というが、ノマルという「場」の磁力が、多様な表現者を惹きつけてきた結果に他ならない。《(ノマルは)僕のお城みたいなもの》という林の言葉から、ノマル=林聡のアート美学であることが分かるだろう。

70年代地下音楽のメッカと呼ばれる吉祥寺マイナーは、1978年3月に王道ジャズ喫茶として開店したが、オーナー佐藤隆史の磁力で有象無象の地下音楽家や異端表現者を惹きつけ、コンセプトの変貌と共に店内はみるみる崩壊し、80年9月に閉店の憂き目にあったと言われるが、その10年後に大阪・深江橋に生まれたノマルが崩壊とは正反対に、アートの美学を貫き通したまま30周年を迎えることが出来たことも、林聡と彼を取り巻く表現者や企画者たちの意識の高さを証明している。

そんな林がラップトップコンピューターでドットエスの演奏に参加した本作は、M1.雨音とストリートノイズの中でハーモニカとカリンバのエスニックな演奏でスタートする。ノマルの白い空間が映画のワンシーンにワープする。鳥の囀りを合図にsaraの鈴の音がカホンに変わるとサウンドが加速、アルトサックスの鋭い音が狩猟を思わせる躍動感を醸し出す、カエルの合唱。M2.フクロウの鳴き声で一転して静まり、ピアノが不気味な旋律を奏でる。ニワトリの一声で朝の目覚めが訪れる。ドビュッシーを思わせるゆったりしたピアノとハーモニカは古いトーキー映画の伴奏音楽。saraのタップダンスが始まり、予期せず二重にされたサックスが激しく踊る。虫の音が再びトーキー映画の世界を呼び戻し、蝉時雨の果てにサックスとピアノが静かな眠りに落ちる。

これまでのドットエス関係の作品でここまで映像的なイメージを喚起させるものがあっただろうか?ネットで拾ったフリー音源に拘ったという林の意図は、意識の塊のようなドットエスの二人の演奏に、《たまたま落ちていた音。たまたまそこにあった音》を重ねることで、疑似アンビエント空間に放り込み、デュシャンの「泉」のように聴き手の価値観の攪乱を意図したのである・・・などとどこかの評論家のような深読みと断言をさせてしまうのが《アート・ギャング》たる由縁かもしれない。(2020年12月30日記)
初出:JazzTokyo #273 2021年1月2日

*文中《 》は.es(橋本孝之&sara)+林聡インタビューからの引用。

音楽と
アートのまぐわい
睦まじく

.es(ドットエス) 結成10周年記念ライブ “Miracle” 2019/10/13 Gallery Nomart
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【配信イベント情報(視聴無料)】変態ギタリスト大集合~3月20日・21日 オルタナティヴ・ギター・サミット2021ミュージック・フェスティバル

2021年03月19日 01時43分26秒 | 素晴らしき変態音楽


Alternative Guitar Summit
オルタナティヴ・ギター・サミット


オルタナティヴ・ギター・サミットは、ギタリストであり作曲家でもあるジョエル・ハリソンが2010年に創設した、ギターへの新しいアプローチを重視した、大胆で独創的なプレイヤーたちによる年に一度の祭典である。著名なギタリストによるマスタークラスを開催する「Guitar Camp」と、オルタナティヴ・ギター界の著名なスターや注目の若手プレイヤーによるコンサートを開催する「Music Festival」で構成されている。

公式サイト
https://alternativeguitarsummit.com/


Alternative Guitar Summit 2021 Music Festival
オルタナティヴ・ギター・サミット2021ミュージック・フェスティバル


コロナ禍のパンデミックのためオンライン配信で開催される本年度のフェスティバルは、革新的なギター音楽をできるだけ多くの人々に紹介したいことから"Pay What You Wish(希望の料金設定)"となっており無料で視聴が可能。配信後48時間はアーカイブで何度でも視聴できる。またフェスティバルを支援するための寄付金(Donation)も募集している。
https://boxoffice.mandolin.com/collections/alternative-guitar-summit-2021

2021年3月20日午後8時(NY time)
パット・マルティーノに捧ぐ
ギター界の巨匠、パット・マルティーノに敬意を表して、12人のギタリストが登場。5組のデュオがパットの作曲した曲を2曲ずつ演奏する。

出演:
デュオ:
Adam Rogers and Peter Bernstein
Dave Stryker and Paul Bollenback
Rez Abbasi and Jeff Miles
Oz Noy and Nir Felder
Sheryl Bailey and Ed Cherry

ソロ:
Joel Harrison
Kurt Rosenwinkel - special guest
Howard Paul of Benedetto Guitars

リズム・セクション:
Dezron Douglas, Alan Mednard, Chulo Gatewood, Tobias Ralph.

チケット購入リンク
https://boxoffice.mandolin.com/collections/alternative-guitar-summit-2021/products/alternative-guitar-summit-3-20

Pat Martino Trio @ Padova Jazz Festival 2018 - "Full House"



2021年3月21日午後2時(NY time)
バーチャル・ビジョナリー・ソロ
世界中から集まったギタリストによる(ほぼ)ソロ・ギターの午後。

出演:
Nguyen Le グェン・レ
Nels Cline ネルス・クライン
Michael Gregory Jackson マイケル・グレゴリー・ジャクソン
Wolfgang Muthspiel ウォルフガング・ムースピール
Mary Halvorson with Tomas Fujiwara メアリー・ハルバーソン&トマ・フジワラ
Henry Kaiser ヘンリー・カイザー
Anthony Pirog アンソニー・ピログ。

チケット購入リンク
https://boxoffice.mandolin.com/collections/alternative-guitar-summit-2021/products/alternative-guitar-summit-3-21

Alt Guitar Summit Trailer: Visionary Solos 3/21/21


異能ギター
変態ギター
嬉しすぎだー

Mary Halvorson & Nels Cline - at The Stone, NYC - Aug 2 2016



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【和の心・純邦楽への誘い】大正琴の進化と伝承~古賀政男/A-Musik(竹田賢一)/平成琴姫/剛田武

2021年03月18日 03時23分15秒 | 素晴らしき変態音楽


昨年自粛中に純邦楽に興味を持ち、11月29日に開催されたイベント『盤魔殿リターンズ』で純邦楽・民謡・読経・観光案内の音源を使ったDJ MIXをプレイした。2021年に入ってからも月2で立ち寄るHARD-OFFのジャンクレコードコーナーに眠る純邦楽レコを漁っては、めぼしいジャケットのレコを1枚110円払って家に持ち帰り、除菌シートで黴と埃塗れのレコード盤をきれいに拭ってから、恭しく天岩戸のようなターンテーブルに乗せ、33rpmで回転させてはダイヤモンド針を静かに降ろし、その摩擦で溝に刻まれた四半世紀前に鳴らされた音を世に解き放つという、まるで生まれたばかりで神隠しにあって獣に育てられ、野人のままの子供を救い出して、洗礼を施す禊に似た儀式のような行為を続けている。

同時に気づいたのはHARD-OFFに大正琴のジャンク品が異常に多いことである。これは浪花節や長唄や民謡のレコードと同様に、物故した老人が残した遺品を遺族が二束三文で売り払ったものに違いない。物心ついて以来40年あまりレコード/楽器ヲタクとして生きてきた筆者でも、これほど多くの純邦楽のレコードや大正琴が市中に出回っていたとは想像すらしなかった。

1912年(大正元年)に名古屋で開発された(音楽学者の小泉文夫によると「日本人の開発の唯一のオリジナルの楽器」)大正琴は、伝統的な日本の琴と、西洋のピアノの鍵盤と、楽器ですらないタイプライターのキーを合体させた「あいのこ」であり、いわば楽器界の畸形児ともいえる。基本的に室内で机の前に座って演奏することを想定された家庭用の楽器だが、エレキギターのピックアップを付けた電気(エレキ)大正琴や、リズムボックスやエフェクターが内蔵された電子(シンセ)大正琴、さらにストラップをつけ立って演奏できる肩掛け大正琴(ショルダーハープ)まで開発されている。つまり大正琴は温故知新の「和の心」を体現する進化と伝承の楽器なのである。

●古賀政男『大正琴のしらべ』


古賀メロディーで知られる古賀 政男(こが まさお、1904年11月18日 - 1978年7月25日)は、昭和期の代表的作曲家であり、ギタリスト。少年時代に弦楽器に目覚め、青年期はマンドリン・ギターのクラシック音楽を研鑽しつつ、大正琴を愛した。大正時代に大流行した大正琴も昭和に入ると流行が終わり、戦後はほとんど忘れられていた。1960年代初頭にコロムビアレコードが大正琴に目をつけ、当時の流行歌のヒット曲を演奏したレコードを発売したところ予想外の反響と好評を得てヒットしたという。古賀政男が50年ぶりに大正琴を手にしてレコーディングしたこのシリーズは古賀メロディーにこだわらず、明治・大正・昭和の懐メロを収録している。

古典音楽 - 古賀政男 大正琴



●A-Musik ‎『E Kú Ìrójú』


音楽評論家、竹田賢一を中心に1981年に結成された反ポップ・バンド。83年リリースの1stアルバムには世界の抵抗歌・革命歌を中心に哀愁のメロディからフリーキーな即興演奏まで柔軟な音楽を聴かせる。竹田は新宿の楽器屋でみたエレキ大正琴を直感的に選び、エフェクターを通して耳を劈く爆音で演奏した。同時にチリの抵抗歌「不屈の民」のようなマイナー調の曲も大正琴が欠かせない。前衛大正琴の第一人者である。

A-Musik 不屈の民



●平成琴姫『笑顔全力努力ガッツ平成琴姫ナンバーワン! 』


平成琴姫(へいせいことひめ)は、日本の女性アイドルユニット。大正琴を肩から下げる仕様にしたオリジナル楽器「平成琴」を用いてパフォーマンスする。ただし、ほとんどのライブ会場ではPAやセッティング時間の制約があり、生演奏ではない当て振りである。2012年にデビューし、2019年に解散するが、同年新メンバーによる「令和琴姫」がデビューした。大正から平成、令和へ、大正琴の進化を象徴する。

平成琴姫「メロディ」



●剛田武『Beyond Vaccine』


30年前学生時代にお茶の水の楽器屋の新春セールで購入したきり、ほとんど使い物にならず放置していた安物の大正琴を押し入れの奥から引っ張り出して、アコースティックギター用のピックアップとマルチエフェクターを繋いでギターアンプで爆音で鳴らしてみたところ、結構いい感じだった。即興でフルートを重ねて編集したのがこの音源である。


大正から
明治昭和平成令和
生き続ける和の心



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【勝手に翻訳】マーシャル・アレン(サン・ラ・アーケストラ)インタビュー~マーシャル・アレンは96歳にして、最も先見性のあるジャズグループを率いている。

2021年03月16日 02時00分06秒 | 素晴らしき変態音楽


マーシャル・アレンは96歳にして、最も先見性のあるジャズ・グループを率いている
by シャノン・エフィンガー / ワシントン・ポスト Oct. 30, 2020

マーシャル・アレンは、パンデミックの間、ある意味で私たちの多くと同じように時間を過ごしてきた。彼が外出するのは新鮮な空気と運動のために近所を軽く散歩するためだけだ。何か月も経つと誰でも自粛生活に退屈してしまうのは当然だ。しかし、過去四半世紀にわたり最も重要なジャズ・グループの1つであるサン・ラ・アーケストラのリーダーを務めてきた96歳のジャズ界のレジェンドであるアレンは、毎日何時間も音楽を演奏することで現状を受け入れている。演奏活動を80年続けてきても飽きないということは、今始まったことではないだろう。

アレンは不思議なほど楽観的で、すべての音に新しい可能性を見出そうとしている。この自粛期間を利用して、彼はオーケストラに匹敵する数の楽器を使いこなし、ジャズ界で最も永続的な人物の一人となった技術をさらに磨いている。

8月下旬の電話インタビューで、アレンは「演奏しなければならない楽器が15~20種類もある」と豪語した。「オーボエ、フルート、ピッコロ、トランペット、トロンボーン、テナーサックス、バリトン、3~4本のアルト、ソプラノ・・・。(西アフリカの伝統的な弦楽器である)コラも、日中に演奏するために手に入れたんだ」と、彼は楽しそうに弦を爪弾き始めた。「24時間忙しくしていられるだけの楽器を持っているんだ」。

アレンは、これまでに行ってきた仕事によって、尊敬すべき長老的存在となっている。遡ること1940年代から、リーダーとしてもサイドマンとしても何百枚ものアルバムを録音し、世界各地で何千回ものコンサートを行ってきた。彼の一生分のエピソードに匹敵する記憶を持つ人は少ない。例えば、ナイジェリアのドラマー、ババトゥンデ・オラトゥンジとの4年間をまだ覚えている。

「私は大きなベルを弾いていた。バン、バン、バン、ババン、バン、ディディディ」とベルのリズムパターンを口真似する。「オラトゥンジの隣に立ってね。彼は大きな古いドラムを持って、バン、バン ......オーイェー!ってね。私がリズムを見失うと、バン!と私にスイングしてくれた」。2003年に亡くなったオラトゥンジのことを笑いながら語る。

もちろん、アレンが最も関わってきたのはサン・ラ・アーケストラだ。アーケストラの名を冠したリーダー、サン・ラは自称天上人であり、正確さや完璧さよりも個性や表現力を重んじる、20世紀を代表する先見性のあるジャズ・ミュージシャンであった。音楽の可能性の限界を再定義したと言っても過言ではないサン・ラが1993年に亡くなって以来、アレンはその遺産を引き継いでいる。サン・ラ・アーケストラの1999年以来のニュー・アルバム『Swirling』は、アレンの仕事がまだ終わっていないことを示している。

「今起こっているウイルスなんて、私の邪魔にはならない」 とアレンは言う。「私は家にいて仕事をすることに慣れている。なぜなら、サン・ラの音楽を存続させるためにやるべきことがたくさんあるからね」。



1924年にルイビルで生まれたアレンは、やがてフィラデルフィアに移り住み、18歳で軍隊に入隊した。ミュージシャンとしてのキャリアはここから始まり、最初の伝説的なグループに参加したのもここだ。彼は、バッファロー・ソルジャーとして知られる陸軍第92歩兵師団の第17師団特別サービス・バンドで、クラリネットとアルトサックスを担当した。アレンは、有名な黒人騎兵隊の最後の生き残りの一人なのだ。

パリに駐留していたとき、アレンはピアニストのアート・シモンズ、サックス奏者のドン・バイアス、アルト・リード奏者のジェームス・ムーディなどと共演した。名誉除隊後、アレンはパリ音楽院に入学し、音楽家であり教育者でもあるユリス・デレクリューズにクラリネットを学んだ。約10年間アメリカを離れていたアレンは、1951年に帰国した。父親はまだフィラデルフィアにいたが、母親はシカゴに住んでいたため、アレンは帰国後ここに住むことになった。

「音楽院で2、3年過ごした後に帰国した時、フィラデルフィアには戻らなかった。なぜなら用意されたチケットはフィラデルフィアではなく、シカゴ行きになっていたから」と自分の人生を変えた偶然の決断を振り返る。

シカゴの地元バンドで数年演奏した後、アレンは、近くのボールルームで毎晩リハーサルを行い、シカゴのジャズ・シーンで勢力を伸ばしていたサン・ラがミュージシャンを探しているという情報を耳にした。彼のバンドに参加したいと思ったアレンは、ある日、仕事が終わってからサン・ラに会いに行って一晩中一緒にいた。

「彼は、聖書や古代史など、さまざまなことを話した」とアレンは当時の出会いを振り返る。「それから音楽のことなど。私はただそこに立って聞いていた。毎晩、仕事が終わると、そこに行って鍛錬していた」。

やがてサン・ラはアレンに、サックス奏者のジョン・ギルモアの家で会おうと言った。もうひとつ指示があった。フルートを持ってきなさい、と。

「私はクラリネットとアルトしか持っていなかった」とアレンは振り返る。彼はすぐにダウンタウンに行ってフルートを買ったが、間もなく吹けないことに気づいた。「アンブシュア(吹くときの口の形)ができなかった。キーも何もかも知っていたが、肝心な口の形ができなかったんだ」。

アレンは、シカゴ交響楽団員で子供向けの音楽学校の運営もしている講師を見つけて、2人は取り決めをした。「“私があなたにレッスンをする代わりに、あなたは子どもたちにレッスンをしなさい。それをあなたのレッスン料の代わりにします”と言われたのを覚えている。それを2週間ほど毎日続けて、少しずつ口の形が出来るようになった」。

その後、サン・ラとライブで会って「Spontaneous Simplicity」という曲で初共演した。譜面通りに一音一音演奏した後、サン・ラはアレンに「もう一度、感覚だけで演奏してくれ」と言った。その夜に学んだのは「正しいことをしたのだから、今度は正しく間違えなさい」ということだった。アレンはその後もそれをずっと自分に言い聞かせることとなった。こうして、アレンは1957年に初めてバンドに参加し、惑星は永遠につながったのである。

アレンは、35年以上にわたってサン・ラのもとで演奏する中で、数多くの教訓を得たが、その中でも最も重要なもののひとつが「自制(discipline)」だった。自分の技術や声を磨くことだけでなく、自分の欲求や野心よりも大きな利益を優先することである。アーケストラのもう一人のリーダーであるギルモアと同様に、アレンがリーダー、教育者、そして最終的には門番としての役割を担いながら、キャリアの中でほとんどアーケストラとの共演のみを選んだ理由も、この点にある。

「私の自制心を高めようと彼は強制した」とアレンは言う。「サン・ラは週7日、毎日リハーサルをした。その頃の私はワイルドだったので、ちょっとへこんだね。逃げられなくて頭にきたけど、彼は毎日、音楽、音楽、リハーサル、リハーサル・・・と続けていた。私はついにあきらめて“ああ、このまま続けて、ちゃんとやってみようかな”と思ったんだ」。 



『Swirling』は1999年の『A Song for the Sun』以来となる、サン・ラ・アーケストラのスタジオ作品である。フィラデルフィアのRittenhouse Soundworksで録音されたこのアルバムで、アレンは演奏だけでなく、ミキシング、エンジニアリング、プロダクション、そしてアーケストラの名曲の再アレンジも手掛けている。2020年の大半が破滅的な雰囲気に包まれている今、人間はよりスピリチュアルな世界へと進化し、両手を広げて歓迎される必要がある、というサン・ラのメッセージにとって、これ以上ベストなタイミングはないだろう。

「最初にサン・ラーを知ったのは、彼の(アルバム)ジャケットを見たときだった」とアーケストラの長年のフレンチホルン奏者であり、1976年からグループで演奏を始めたヴィンセント・チャンシー(70歳)は語る。「私は東洋哲学や神秘的な読み物に興味を持っていた。また、古代エジプトや、アフリカのディアスポラや私たちの歴史との関係にも興味があった」。

現在、アーケストラには10数名のメンバーがいるが、アレンは、60年以上前にサン・ラが彼を導いたように現在のアーケストラを導いている。「彼は私に"ああ、君はいい演奏をするね "とか"君はいいトーンを持っているかど、私が望むものではない "と言っていた」とアレンは語る。

「彼は、頭で考えたことを演奏するのではなく、本当の気持ち、魂、心を演奏することを求めていた」とアレンは言う。「私はいつもそれに困惑していたが、本当のところ、彼が私に求めていたのは、心の底から演奏してほしいということだった。私が "自分が知っているやり方 "で彼と争うのをやめたとき、やっと彼を少しずつ喜ばせることができるようになった」。

アレンを含むアーケストラのメンバーの大半はクラシックの訓練を受けているが、オリジナルの楽譜の多くが手元にあっても、感覚を求めてページ上の音符を使わないことがよくある。これは音楽が「聴覚的」に受け継がれていること、そして口承の豊かな伝統の一部であることを常に思い起こさせてくれる。

「確かに火の洗礼のようだった」と2019年にアーケストラに参加したWeFreeStringsの創設者であるヴァイオリニストのメラニー・ダイアーは語る。「弦楽器奏者として、譜面からはあまり学ぶことができなかった。アルトサックス奏者のスコット・クノエルが譜面をくれたとしても、その夜にその譜面が演奏されるとは限らなかったから」と彼女は笑いながら言う。「だから、私はステージ上で多くのことを学ばなければならなかった。それは本当に古いタイプのやり方だった」。

現役の音楽家の中でもひときわ経験豊富なアレンの同僚であり弟子であることの重さは、バンドの現役メンバーにも伝わっている。「マーシャルについて話そうとするとき、それはとても個人的なことなので、単に“彼は素晴らしい人だ”と言うだけではなく、何を言えばいいのか、どう表現すればいいのかを考える時間を与えてくれる」と、2012年からメンバーとして活動しているアーケストラのボーカル&バイオリンのタラ・ミドルトンは言う。「それ以上に深いものがある」。

「伝説的な人物であり、音楽の革新者だえり、前衛的なサックス奏者であり、他の誰もやっていないことをやっている人物から学ぶ機会があること。また、サン・ラのように変化をもたらす人でもある。彼は音楽に変化をもたらし、心にも変化をもたらし、社会にも変化をもたらした。マーシャルには、そのような変化をもたらす方法がある。サン・ラが誰もやっていない芸術を創造したように。マーシャルは、現在誰もやっていなかった音とスタイルを生み出したのです」。

大統領選挙の数日前に、アレン、チャンシー、その他のアーケストラの現役・元メンバーがフィラデルフィアに集まり、選挙の夜に市内の投票所での即興演奏シリーズの一環として開催されるライブのリハーサルを行う。アーケストラの核心は、音楽を通して真実を追求し続けるミュージシャンの緊密な集団なので、このオファーは2020年にその力を利用して再び変化をもたらすことができる貴重な機会となる。これもマーシャル・アレンが多くの弟子たちに伝え続けていることのひとつだ。

「私はサン・ラではないが、ひとつだけわかっていることがある」とアレンは言う。「注意を払って、私がプレイしろと言ったらプレイしてほしい」。



自粛時代
自制の音楽
継承する

Sun Ra Arkestra - Seductive Fantasy (A Chad Van Gaalen animation)

Disc Review 『Sun Ra Arkestra / Swirling』『サン・ラ・アーケストラ/渦を巻く』

Sun Ra Arkestra NTS Live at Jazz Cafe
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする