80年代半ばにロックの情報を入手する手立ては雑誌とラジオと口コミしかなかった。日本盤が2枚出たとはいえ、殆ど話題にならないまま解散したドクターズ・オブ・マッドネスの情報がメディアに載ることはなかった。「NME」「SOUNDS」「Melody Maker」といったイギリスの音楽新聞を購読することなど貧乏学生には夢のまた夢だった。だからその当時、ドクターズが何枚レコードをリリースしたかすら筆者が知っていたとは思えない。だから『ドクターズ・オブ・マッドネスII』という邦題でリリースされた2ndアルバム『Figments Of Emancipation(虚構の美学)』を入手できたのは、中古レコードハンティング中に遭遇した幸運だったと言っていい。
●ドクターズ・オブ・マッドネス『虚構の美学』
Doctors Of Madness / Figments Of Emancipation (Polydor Japan 1976)
(1984.10.5/¥1400/新宿Disk Union)
多くのファンが最高傑作に挙げる『虚構の美学』はジャケット通りのパラノイアックな世界観が全開した完成度の高さが魅力だが、筆者にとっては1st『精神錯乱』が最も好きなアルバムである。バイオも歌詞も判らないまま音だけで想像を膨らませた聴取体験は「自殺の町(Suicide City)」への入口だったのかもしれない。『精神錯乱』の裏ジャケットに書いてある「This Record to be played with the gas full on.(このアルバムはガスを充満させて聴くこと)」というクレジットが、「このアルバムを聴きながらガス自殺しろ」という意味だと知ったとき、ドクターズと出会って絶望から救われたのは自分だけじゃないと確信した。
doctors of madness - suicide city
●ドクターズ・オブ・マッドネス『修正論:狂気の医師団1975-1978』
Doctors Of Madness – Revisionism / The Doctors of Madness: 1975-1978 (Polydor Special Price 2478 146)
(1985.6.18/新宿EDISON UK)
●ドクターズ・オブ・マッドネス『精神錯乱』
Doctors Of Madness / Late Night Movies, All Night Brainstorms (Polydor Japan MPF 1008 / 1976)
(1981.2.16/¥1000/吉祥寺TONY)
謎のパンクバンドを見つけたとワクワクしながらターンテーブルに乗せて針を落として飛び出した1曲目のヴァイオリンロック「ウェイティング」には興奮したが、残りの曲はパンクらしくないフォーク調のスローナンバーばかりで戸惑いを覚えた。しかし謎めいたこの4人組の世界を理解しようと聴き込むうちに、キッド・ストレンジの独特の訛のあるヴォーカルに魅了されて行った。B面最後の15分に亘る「メインライン」の途中の、演奏が徐々にフェードアウトして無音になった瞬間に叩き出されるブレイクには、何度聞いても驚いて心臓がドキドキしてしまう。歌詞カードがないので自分で聞き取ろうとして、"Mainline Resistance is Low"というコーラス部を"〜Love"と聞き違えて<抵抗の本道は愛である>というロマンティックな曲だと思っていた。本当は<麻薬注射への抵抗は低いものだ>という絶望的な歌だと知ったのは92年にCD化されたときだった。
Doctors of Madness - Waiting
●ドクターズ・オブ・マッドネス『サンズ・オブ・サヴァイヴァル』
Doctors Of Madness / Sons Of Survival (Polydor Super 2383 472 / 1978)
(1984.4.19/¥1400/新宿Disk Union)
ドクターズは常にリアルライフ(現実の生活)を歌って来た。精神錯乱、政府の統制、革命、反抗などをね。
〜リチャード・ストレンジ(ドクターズ・オブ・マッドネス)
来日直前インタビュー
RIchard Strange of Doctors Of Madness
2016.8.25 メールにて/質問作成:剛田武 Takeshi Goda
1978年にドクターズが解散して以降、僕はエキサイティングで挑戦し甲斐のあるプロジェクトにたくさん関わってきた。ワンマン・ショーは『The Live Rise of Richard Strange』 (1980 ZE Records/PVC Records)と『The Phenomenal Rise of Richard Strange』 (1981 Virgin Records)という2枚のアルバムになった。ロンドンのソーホーで『キャバレー・フューチュラ(Cabaret Futura)』というミックス・メディア・ショーのクラブをオープンし、1981年から83年にかけて、最初期のデペッシュ・モード、ソフト・セル、ザ・ポーグス等が出演した。プロデューサーとして、Way Of The West、トム・ロビンソン、The Nightingalesのレコードを制作した。
リチャード・ストレンジ&ジ・エンジン・ルームというバンドで2枚のアルバム『Going Gone』(1986 Another Side/Interphon)と『The Rest Is Silence』(1989 Ausfahrt)をリリースし、シングル「Damascus」がヨーロッパとイスラエルでヒットした。
ドイツの"ワールド・ミュージック"バンドのインターナショナル・ノイズ・オーケストラの2枚アルバム『Listen To The Earthbeat』(1987 Ausfahrt)、『The Dark And Bright Side Of The Globe』(1989 World Music)にゲスト参加した。
2001年に自叙伝『Strange- Punks and Drunks and Flicks and Kicks』を著し、音楽、演劇、映画、イベント企画、実演、作曲といった多種多様な芸術形態で活動するアーティストとしての自分の人生を書き綴った。
一方で月に一度ソーホーの聖バルナバス教会で主催している『A Mighty Big If(とてもでっかい”もしも”)』というくだけた雰囲気のトークショーは、ロンドンの芸術文化ガイドで人気イベントとして定評がある。最近のゲストは、映画監督のマイク・フィッギス、作曲家のマイケル・ナイマン、演劇の巨匠ロバート・ウィルソン、プロデューサー/作曲家のナイル・ロジャーズ、ゲイリー・ケンプ、マーク・アーモンド、ピーター・キャパルディ、ブライアン・コックス、そして芸術家のコーネリア・パーカー、リチャード・ウィルソン、ギャヴィン・タークなど、それぞれの分野の巨匠たち。
作曲家のギャビン・ブライヤーズとのコラボレーション・プロジェクト『Language Is A Virus From Outer Space(言語は外宇宙からのウイルスである)』はウィリアム・バロウズの人生と作品に基づいたカンタータだ。バロウズ生誕100年にあたる2014年10月11日にロンドンのクイーン・エリザベス・ホールでの世界初演は、ソールドアウトでスタンディングオベーションを受けた。僕自身が想起し、キュレートし、共作し、監督したこのショーは、長年のドクターズ・ファンであるデフ・レパードのジョー・エリオット、ギャヴィン・ターク、サラ・ジェーン・モリス、ルパート・トムソン、ジェレミー・リード、ハルーン・ミルザ、アンニ・ホーガン、デヴィッド・コールター、セブ・ロッシュフォード、そしてドクターズ・オブ・マッドネスが出演した。イベントを記録した長編フィルムを現在編集中で、今年中にリリースしたいと思っている。
Doctors of Madness reunion with Joe Elliott
3. アーバン・ブリッツと再会したきっかけは?彼はドクターズ解散後どうしていたのでしょうか?
先述したウィリアム・バロウズのイベントのために、ドクターズの他の3人のメンバーに一夜限りの再結成を持ちかけることにしたんだ。70年代初期にバンドを結成した時に僕らはウィリアム・バロウズから膨大な影響を受けたからね。嬉しいことに3人とも熱心に協力してくれて、一回限りのショーの為にリハーサルと演奏をしてくれた。3人の女性コーラス・シンガーを決めるのに侃々諤々の論議をして、リリバッド・ディアスリ−、サラ・ジェーン・モーリス、イジー・ワーナーに決まった。ライヴでは8曲演奏した。「Doctors of Madness」, 「Billy Watch Out」,「Suicide City」 (ジョー・エリオットがステージに登場して僕とデュエットした)、「Mitzi's Cure」、「Sons Of Survival」, 「Triple Vision」そして「Marie and Joe』。
JOYSOUND presents
はやぶさかがやきツアー2016
supported by ナタリー
ファイナル・ZeppTokyo
Fear, and Loathing in Las Vegas
でんぱ組.inc
7月6日、同じZEPP TOKYOからスタートしたでんぱ組『はやぶさかがやきツアー2016』のツアーファイナル。チケットの整理番号はA22。見たことがないほど若い番号だが、もしかしたらその前にS1〜1000があって、そのあとの入場かもしれない、と疑ってかかる用心深さはこれまで何度も痛い目に会って来た数字時不信家の自己防衛本能。ところがどっこい、滅多に微笑まないツンデレの幸運の女神の気紛れか、正真正銘前から22番目の神チケットだった。夢の最前列GETか?とドキドキしながら係員の導くままに入り口から会場内まで列を守って牛歩で進む。引率されて最前列のブロックまで来たところで解放され、無我夢中で隙間を見つけて縋り付いた手摺は、ステージ中央やや左寄り、おそらくえいたそ所定ポジションの真正面と思われる。走ってもいないのに心臓バクバク、息が荒い。気を失いかけても柵にしがみつけば大丈夫と高を括って、隣のみりんちゃん/ねむきゅん寄りのハコ推し青年とダベって時間を潰す。後ろに立っていた女子から、Fear, and Loathing in Las Vegas(以下べガス)の時だけ場所を代わってくれませんか、と懇願されたがモッシュに巻き込まれる恐れがあると断固拒否。すると隣のハコ推し青年が快く場所を譲ってあげた。「何て心の狭い利己主義野郎」と思われたかもしれないが、もし譲っていたとしたら、自分の身が流される恐怖に晒されたに違いない。それほど激しいベガスファンのノリ。頭上を転がるクラウドサーファーと引き摺り降ろす警備員との攻防に、頭を蹴られたり殴られたりしながら柵にしがみついて耐える。目の前のお立ち台で入れ替わりでメンバーがアピールしたり、ヴォーカリストが頭上を飛び越してオーディエンスの中に突入するのは楽しかったが、ドラムの音しか聴こえなかった。
Fear, and Loathing in Las Vegas - Party Boys (Live)
『草原の輝き』(原題:Splendor in the Grass)は1961年のアメリカの青春映画。世界大恐慌時代の悲恋を描いたストーリーは日本でもヒットし、同名の楽曲が制作されることになった。ビートルズ日本公演の前座で「ウェルカム・ビートルズ」を歌ったブルー・メッツは、13枚目のシングルにこのタイトルを盗用した。短髪スーツの銀行員ファッションで、不良の音楽グループサウンズを歌謡曲に転化させた主犯格である。
草原の輝き / ジャッキー吉川とブルー・コメッツ
●カーペンターズ『青春の輝き』
青春の輝き(I Need to Be in Love)は、1976年にカーペンターズが発表した楽曲、及びシングル。リチャード・カーペンターによれば、生前のカレン・カーペンターが最も気に入っていた曲だったという。オリジナル・シングルは全米チャート最高25位、日本のオリコンで最高62位と振るわなかった。しかし、1995年に日本のテレビドラマ『未成年』でエンディングテーマに取り上げられ、カレン(1983年2月4日死去)を知らない世代にも大好評を博した。
人の一生のうちで最も輝く時期は「青春」という気がする。「私は愛にする必要があります(I Need to Bo in Loveのgoogle翻訳)」を「青春の輝き」と訳した担当者は、リア充だったに違いない。恋と無縁の青春時代を送った筆者にとっては、青春とは鬱々と性に関する知識と想像を逞しくするだけで、実際には何も得られないまま過ぎ去った冬眠期だった。そんな輝きの無い中学生の頃、金沢実践倫理会館にカーペンターズが来た。他に金沢公演をした外タレはベンチャーズだけだった。
青春の輝き / I Need To Be In Love [日本語訳付き] カーペンターズ
●アイカツ『輝きのエチュード』
2014年12月公開の劇場版アニメ『アイカツ!』に収録されたナンバー。歌手:わか from STAR☆ANIS 作詞:こだまさおり 作曲:石濱翔 。普通の女の子・星宮いちごがトップアイドル・神崎美月に憧れアイドルとなり、美月に助けられ見守られながらやがて同じトップアイドルへと成長していく。そんな美月への恋に似たような気持ちを込めた曲「輝きのエチュード」。
「輝ける7つの海」(Seven Seas of Rhye)は、イギリスのロックバンドのクイーンが、1974年にリリースした楽曲。シングルで発売され、イギリスのシングルチャートで10位に入った。後にバンドのセカンド・アルバム『クイーン II』に収録された。作曲はフレディ。タイトル及び歌詞の中に登場する"Rhye"はフレディが子供の頃に想像したファンタジー世界の名前である。
●Maison book girl(ブクガ)
コショージメグミの前髪カットをツイッターで知り、実物はどんなだろうと興味津々で息を飲むうちに、見慣れたUFO Clubのステージに現れたコショを見て、マリアンヌ東雲にも似た斜めカットの前髪の、卒倒しそうなほどの神々しさに心を撃たれた。サイケの聖地で聴く変質的ミニマルチューンは、他現場よりもしっくり来る。それだけにモダンダンス仕込みの優雅な踊りのユニークさが際立つ結果に。終演後の特典会では、コショージの美少女ぶりを褒め讃えることに無我夢中で、「愛の真実」について論じる時間が無くなってしまった。
彼らが語る通り本ミュージックビデオでは、ビールを片手に仲間たちと過ごす楽 しい夜が描かれている。お酒を飲む人では誰もが経験するであろう、ひどい二日 酔い…昨晩のことはよく覚えていないけれど、最高だったのはハッキリ覚えてい る。ヴォーカルのディエゴがしゃがれた声で歌う「Let's Do It Again(もう一度 やろうぜ)」。
何にも縛られずに自由を謳歌する彼らを象徴する1曲となっているので、ぜひ聞 いてほしい。
The Parrots - Let's Do It Again (Official Video)
The Parrots - No me gustas, te quiero (Official Video)
<トラックリスト>
1. Too High To Die
2. Let’s Do It Again
3. No Me Gustas, Te Quiero~好きじゃなくて、愛してる~
4. A Thousand Ways
5. Jame Gumb
6. Casper
7. E.A. Presley
8. The Road That Brings You Home
9. Windows 98
10. Los Ninos Sin Miedo~恐れなき子供たち~
*日本盤ダウンロードボーナストラック
1. I Am A Man
2. I Did Something Wrong
三ヶ月連続デジタルリリースのラストは、色鉛筆の蕩けた造形の中に同化してメンバーを識別することすら不可能なシュールな世界へワープしてしまった。メンバーカラーも薄れてパステル化。これは即ち2013年10月発売のシングル「W.W.D II」で歌われた「One For All, All For One(ひとりはみんなの為に みんなはひとりのために)」という<万物同一の法則>に基づく行動であり、さらに「Dempa For All, All For The World(でんぱはみんなの為に みんなは世界のために)」という<全世界でんぱ主義運動>の実践である。2年半前に提唱した理想郷を現実のものにする時が遂にやって来た。