A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【再配信決定】7月30日、灰野敬二率いるリアルロックバンド『THE HARDY ROCKS』GOK SOUNDドネーションライブ(再編成映像版)

2021年07月26日 00時06分11秒 | ネコ動画


2020年12月10日に配信された灰野敬二率いるリアルロックバンド『THE HARDY ROCKS』 のGOK SOUNDスタジオライブ映像が再配信されることになった。 東京オリンピック開会の日に開催された太陽肛門スパパーン主催公演「叛五輪音楽祭・東京五輪獣」にサプライズ出演(事前告知は灰野敬二名義)し、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、サム・クック、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズなどのナンバーを重厚且つ鋭利にアレンジしたカヴァーで、灰野敬二(THE HARDY ROCKS)なりの五輪(=権力)に対するNOの姿勢を明示した。そんな彼らのライブ映像を8曲、GOK SOUNDならではのライブ感あふれる迫力あるサウンドで捉えたこのドネーションライブは、イギリスのCafe Otoからデジタルアルバムとしてリリースされ全世界に衝撃を与えた。


【特報】灰野敬二率いるロックバンド『THE HARDY ROCKS』のライヴ音源がイギリスCafe Otoからデジタル・リリース!

今回の再配信は、映像を再編成し、前回以上に臨場感を増したニューバージョンでの配信とのことなので、前回観た人も見逃せないだろう。同日配信の『水中、それは苦しい』『林栄一Gatos MEETING』も素晴らしい演奏なので、ぜひとも多くの音楽ファンにご覧いただきたい。

GOK SOUNDドネーションライブ再配信 -DAY3-
2021.7/30(金)
開場 19:30 / 開演 20:00
チケット:¥2500
アーカイブ期間:7/30-8/13

出演者
THE HARDY ROCKS / 水中、それは苦しい / 林栄一Gatos MEETING
詳細・配信チケット購入⇒https://twitcasting.tv/goksound/shopcart/84916


コロナ危機
スタジオ救う
ドネーション

GOK SOUNDドネーションライブ
再配信を含む6公演の配信を7/24から順次スタート
DAY6に合わせ再配信のDAY1-5のダイジェスト映像も公開中
是非ご覧ください。

7/24:ヒカシュー / Phew / 坂田明
7/27:踊ってばかりの国 / INOYAMARAND / こまっちゃクレズマ
7/30:THE HARDY ROCKS / 水中、それは苦しい / 林栄一Gatos MEETING
8/3:渋さ知らズ / HELL FREEZES OVER
8/6:YAPOOS /橋本一子プレゼンツ:ばるぼらクインテット+藤本敦夫ダンスドンバfeat.菊池成孔(スペシャルゲスト:手塚眞監督)
8/9:椎葉大翼と齋藤寛クインテット / #STDRUMS

GOK SOUNDドネーションライブDAY1-5:ダイジェスト映像


GOK SOUNDドネーションライブ-DAY6-ダイジェスト映像


SAVE THE GOK!!⇒https://www.gok.jp/save-the-gok/
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【地下ジャズDisc Review】落穂の雨 Ochibonoame(川島誠、ルイス稲毛、山㟁直人)『酒游舘 syuyukan』~こぼれ落ちる「祈り」を拾い集めて生まれる即興演奏

2021年07月23日 00時49分49秒 | 素晴らしき変態音楽


『落穂の雨 / 酒游舘』
Text by 剛田武 Takeshi Goda

CD : Homosacer Records HMSD-009

落穂の雨 Ochibonoame:
川島誠 Makoto Kawashima (as)
ルイス稲毛 Inage Luis (b)
山㟁直人 Naoto Yamagishi (ds, perc)

1. Untitled

Recorded at 酒游館 syuyukan
Photo by 潮来辰秋 Tatsunori Itako
Artwork by 川島誠 Makoto Kawashima
Design by AGE

ホモ・サケルレコード

こぼれ落ちる「祈り」を拾い集めて生まれる即興演奏

2020年2月22日に、川島誠(アルトサックス)、山㟁直人(ドラム パーカッション)、ルイス稲毛(ベース)からなる即興バンドが埼玉県越生町・山猫軒でライヴ・デビューした。その時は「ある理性について」 というバンド名だったが、その日観に来ていた宮岡永樹(分水嶺、終古のオミットなど様々なユニットで活動する若手音楽家)による命名で「落穂の雨」になったという。宮岡がどこからインスピレーションを得たのかは分からないが、即興ユニットのバンド名としては極めて興味深い命名である。「落穂」とは収穫の際に田畑に落ちこぼれた稲穂の意から、物事の本筋からこぼれ落ちてしまった一見無駄な事柄を指す。それを拾い集める行為、いわゆる落穂拾いは、本筋から外れた事柄の中にこそ物事の本質がある、というオルタナティヴな価値観の実践であり、逸れものへの無償の愛の行為である。世間一般に認知される音楽の王道から外れた地下音楽や即興音楽といったスタイルを愛好する者にとっては、落穂拾い的な聴取姿勢こそ日常であり、それによって得られる歓びは、どんな名盤・傑作と呼ばれる作品を聴いても得られない、最高の悦楽である。磨けば光る宝の原石といえる「落穂」が「雨」となって降り注ぐ音楽とは?—無限の想像力が掻き立てられる。

2019年末に川島がバンドの結成を思い立ち、交流のあった山㟁直人とルイス稲毛に声をかけたところ、二人とも二つ返事で参加することになったという。長年ソロ・プレイヤーとして一匹狼のように活動してきた川島が「バンド」をやりたくなった背景には、アメリカ・ツアーでの経験があることは想像に難くない。

“Tashi DorjiとPatrick Shiroishiがいる部屋に入った途端「ああ、このふたりは同じ匂いがする」と直感的に感じて、後ずさりするくらいの興奮と緊張を覚えてます。瞬間に「ここに来て良かった」と思いました。そしてサウンドチェックで3人で最初に音を出した瞬間に、もうほとんど出来上がっていましたね。僕の中のイメージとしてたボルテージとか、絶頂の沸点とか。もう「ああ、そうか」って5分くらいですべて分かっていました。”
―インタビュー:川島誠 Makoto Kawashima〜アメリカ・ツアーで得たもの(2019年11月2日公開)より

同じ匂いを持つ者同士の直観的な相互理解。共演者とは「個」と「個」でありたいと願う川島にとって、何も語らなくてもそれが可能な奇跡の出会いであった。そんな出会いを一回限りで終わらせるのではなく、バンドとして恒常的な関係を持ち続けたいという希求がいつしか彼の心の中に芽生えたに違いない。同じインタビューで、山㟁について「Tashi Dorjiと同じようなものを感じる。重力というか」、稲毛について「音の塊が心地よくて、とてもやりやすかった」と語っている。インタビューが行われた2019年10月19日の時点ではバンド構想はなかったはずだが、この言葉の中に希求の答えが隠されていたのであろう。

2020年8月9日にデビュー・ライヴと同じ山猫軒で開催されたコンサートがライヴ・レコーディングされ、命名者の宮岡永樹による秀逸なアートワーク(筆者が愛するオーストリアの芸術家フンデルトワッサーの「血の雨の降る家々」をパラノイアックに再構築したように見える)が付されて、2021年2月に1st CD『落穂の雨 Ochibonoame』としてリリースされた。3人のこれまでの活動を考えれば、単なるフリー・ジャズやフリー・インプロヴィゼーションになるわけがないと予想していたが、意外なほど真っ向からストロング・スタイルの即興演奏に挑んだサウンドが新鮮だった。

それから4か月、早くもリリースされた2nd CDが本作。タイトル通り2020年10月3日近江八幡サケデリックスペース酒游舘におけるライヴ録音である。酒蔵を改装した、アコースティック・サウンドの素晴らしさに定評のあるこの会場は、音楽に加えて美味しいお酒を楽しみに遠地から訪れるミュージシャンやファンも多い。川島にとっても山猫軒や白楽Bitches Brewと並ぶ演奏拠点のひとつである。酒の神が宿るとも言われるこのスペースで繰り広げられた落穂の雨の演奏は、阿部薫のポートレートが見下ろす山猫軒とは趣の異なる霊性を帯びて聴こえる。

冒頭の鎖を引き摺るような音は、川島が床に置いた鈴飾りを裸足で踏んで歩く清めの儀式の音である。スネアやシンバルをスティックで擦る山㟁の独特な奏法、ロック的なスケールを封印した稲毛のストイックなベース、郷愁のメロディを奏でる川島のハーモニカ。音数の少ない静的な演奏がしばらく続く。10分強過ぎたところで川島がアルトに持ち替える。情念の重みに軋むようなソロとは異なり、バンドの力で重力から解放されて開かれた音色が酒蔵の天井に反響する。演奏は次第に熱を帯び、30分過ぎには、雷鳴のようなドラム、詠唱するサックス、パルスを重ねるベースが三位一体となって『Spiritual Unity』の如き疾走感を生む。しかし狂騒は長くは続かず、一瞬にして沈静する。それぞれがソロ演奏をしているように聴こえるが、即興の場の緊張感は保たれている。終盤はベースが一定間隔でミニマルなフレーズを繰り返す上で、サックスとドラムが四方八方にエネルギーを噴出する。その後、酒の神が降臨したのを確認したかのように61分のロング・セットは終焉する。CDが停止した後、三人が酒の神に祝杯を挙げる姿が残像として脳裏に浮かんでくる。あたかもボーナス・トラックのように。

それぞれが異なる地平に立ちつつも、演奏が進むにつれて表情を変化させて、ダイナミックに響き合ったり、静寂に収斂したりしながら同化と異化を繰り返すプロセスに、ひとつのバンドならではの魂の共感と進化を感じる。川島自身が手掛けた今作のアートワークには、三つの魂が音の靄の中を軽々と上昇していく様が描かれている。「どこにも混ざらない音」とは川島が書いた故・橋本孝之への追悼文のタイトルだが、同じ匂いを持ちながらも混ざり合わない三つの「個」としてあり続けるこのバンドが生み出す祈り(=落穂)を雨のように浴びながら、バンドがどのように深化し、それぞれのソロ活動にどのように反映されていくのか、興味津々追い続けることが「落穂拾い」の醍醐味なのである。(2021年7月2日記)
*初出:2021年7月3日 JazzToyko No.279

【参考記事】川島誠 インタビュー:みんなの「心」が集まって生まれる即興演奏(2019年3月2日公開)

落ちる雨
稲穂の先に
露の花

落穂の雨 Live Information


■8/7(sat) サケデリックスペース酒游舘(滋賀)
「酒游舘」発売記念公演

18時開場 18時30分開演
入場料 予約2000円 当日2500円
(ドリンク代別600円 地酒のみお代わり自由)

サケデリックスペース酒游舘
近江八幡市仲屋町中6
TEL:0748-32-2054
(電話対応10:00~17:00)



​■8/8(sun) Gllery Nomart(大阪)
小谷くるみ / 砂から星へ
Kurumi Kotani / Sand to Stardust (Cosmos)

2021.7.17 sat – 8.21 sat
13:00 – 19:00
closed on sundays, national holidays and 8.13 – 8.15
———————————–
[関連イベント] 音楽 Live “砂から星へ”
2021.8.8 sun, open 18:00 / start 18:30
charge:¥2,000. *予約制 By reservation only

performer:落穂の雨 ochibo no ame [川島誠 makoto kawashima(altosax), ルイス稲毛 inage louis(bass), 山㟁直人 naoto yamagishi(drums,percussion)], sara(.es / piano)

more infomation >>
https://www.nomart.co.jp/exhibition/detail.php?exhCode=0186
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【ライヴ情報】灰野敬二と蓮沼執太による貴重なコラボレーションライブ 「う       た」の振替公演が、9/3(金) WWW Xにて開催決定!

2021年07月22日 00時30分09秒 | 灰野敬二さんのこと


2019年に京都で行われたコラボレーションライブの後、
セッションを重ねてきた両者が、満を持してのパフォーマンスを披露!

2人が新たな試みとして表現する”うた”を目撃してください。

当初の予定を変更し、振替公演では有料配信は無く会場での観覧のみとさせて頂きます。
配信を楽しみにお待ち頂いていたお客様へは心よりお詫び申し上げます。
会場は全着席でのご案内となります。

この貴重な機会を、ぜひお見逃しなく。
みなさまのご来場をお待ちしております。
____________________________

「う       た」

日程:2021年9月3日 (金)
会場:WWW X
時間:OPEN 17:30 / START 18:30
料金:前売 ¥4,000 (税込 / ドリンク代別 / 自由席)
出演:灰野敬二 / 蓮沼執太

チケット:7/22(木祝)10:00〜
e+ https://eplus.jp/haino-hasunuma/
チケットぴあ https://t.pia.jp/【Lコード:71296】
ローソンチケット https://l-tike.com/【Pコード:201-149】

公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/013694.php

なお、5/16公演のチケットは9/3公演でも有効となりますので
お手元に保管をお願い致します。

開催日程の変更に伴いご来場が難しいお客様へは、チケットの払い戻しを実施します。
【払い戻し期間】7/22(木祝)10:00~8/15(日)23:59
※期限を過ぎてしまうと払い戻しの受付ができませんので、ご注意ください。

払い戻しの詳細については、WWW HP(https://www-shibuya.jp/schedule/013522.php)をご確認ください。




灰野敬二

1952年5月3日千葉県生まれ。アントナン・アルトーに触発され演劇を志すが、ザ・ドアーズに遭遇し音楽に転向。ブラインド・レモン・ジェファーソンをはじめとする初期ブルースのほか、ヨーロッパ中世音楽から内外の歌謡曲まで幅広い音楽を検証し吸収。1970年、エドガー・アラン・ポーの詩から名を取ったグループ「ロスト・アラーフ」にヴォーカリストとして加入。また、ソロで自宅録音による音源制作を開始、ギター、パーカッションを独習する。1978年にロックバンド「不失者」を結成。1983年から87年にかけて療養のため活動休止。1988年に復帰して以来、ソロのほか不失者、滲有無、哀秘謡、Vajra、サンヘドリン、静寂、なぞらない、The Hardy Rocksなどのグループ、experimental mixture名義でのDJ、他ジャンルとのコラボレーションなど多様な形態で国際的に活動を展開。ギター、パーカッション、ハーディ・ガーディ、各種管弦楽器、各地の民間楽器、DJ機器などの性能を独自の演奏技術で極限まで引き出しパフォーマンスを行なう。200点を超える音源を発表し、確認されただけでも1,800回以上のライブ・パフォーマンスを行なっている。




蓮沼執太

音楽家。1983年、東京都生まれ。蓮沼執太フィルを組織して、国内外でのコンサート公演を開催する。
映画、ドラマ、舞台、ファッションなど、多くの音楽制作を展開している。また個展形式での展覧会、プロジェクトを行っている。2014年にアジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)グランティでアメリカ・ニューヨークへ。 2017年に文化庁・東アジア文化交流使に任命され中国・北京へ。
主な音楽アルバムに 蓮沼執太フルフィル『FULLPHONY』(2020)など。
主な展覧会に『Compositions』(Pioneer Works, NY、2018)、『 ~ ing』(資生堂ギャラリー、2018)など。
第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

うたとうた
言葉と言葉
音と音

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【RSD私の収穫】TVスミス&リチャード・ストレンジ『1978』/XOXO EXTREME『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』/O'CHAWANZ『EARTH』

2021年07月21日 01時09分55秒 | ネコ動画


先日の引越しで最も苦労したのはアナログレコードとCDの整理・梱包だった。現在の住居に転居してから約20年間、それ以前から買い集めたコレクションは数倍に増え、今回の引越しでその全貌がついに明らかになった!......などと大袈裟な話ではないが、買って帰るたびに部屋の棚や床に適当に放置してきたレコードやCDをかき集め、要不要を判断し、必要なものだけを段ボールに詰める作業は、50余年の筆者の人生の中でも、35年前に大学の卒論を3日完徹して書き上げた時に劣らず苦痛に満ちた経験だった。その結果まとめたレコードは40枚入段ボールが130個=5200枚、CDは半分近く処分したにも関わらず150枚入段ボール20個=3000枚という厄介極まりない重量級の荷物となった。



これに懲りて、家族の前で「もう二度とレコードもCDも買わない」と宣言したのが6月下旬、しかしそれから3週間も立たないうちに、その誓いはあっさりと破られることとなった。それは決してそろそろ食傷気味の「レコードストアデイ(RSD)」と言う名の業界キャンペーンの魔力に屈した訳ではなく、たまたま自分の人生に於いて聴かねばならない/入手しなければならない/所有しなければならない塩化ビニール盤と運命の出会いをしてしまったからに違いない、などと自嘲的な言い訳をしながら、自らの過ちをブログとして世に晒そうという露悪的な一面は筆者の人格のどこかにしっかりと根を下ろして、もはや取り返しのつかないほど人格崩壊もしくは異常行動の兆候をきたしていることは間違いないが、悲しいかな人生を辞任することは今の私にはしたくてもできない。レコード中毒という十字架を背負ったまま、残り少ない人生という荊の道をレコ買いしながら終点まで歩んでいくしか術はない。

●TV Smith & Richard Strange / 1978


ドクターズ・オブ・マッドネスのリチャード・スミスとジ・アドヴァ―ツのTV スミスが1978年に二人だけでレコーディングしたデモ音源が世界初公開。TVスミスはアドヴァーツを結成する前からドクターズのファンで、1976年にリチャード・ストレンジと知り合って意気投合し、77年頃最初に共作した曲「Back From The Daed」は両バンドがそれぞれレコーディングしアルバム/シングルとして発表された。1978年にドクターズからヴァイオリンのUeban Blitzが脱退し解散に向かっていった頃、リチャードからの誘いでTVスミスとのコラボレーションがスタートした。二人で曲や歌詞のアイデアを出し合い、リチャードの自宅で2トラックのオープンリールレコーダーでレコーディングされた8曲は、レコード会社のバックアップがない分、二人のやりたい方法でやりたいように制作できたという。その後リチャードはソロ活動、TVスミスは新グループTV Smith's Explorersとそれぞれの道へ進んだため、発表されないまま43年間眠っていたデモテープがRSDのために発掘され世に出た意義は大きい。サウンド的にはあくまでデモテープだが、すべての曲にふたりのエッセンスが結晶化され、両グループのファンにとっては溜まらなく魅惑的な世界を味わえる。真っ赤なレコード盤のようにロック詩人と愛好家の血は争えないのである。

'BACK FROM THE DEAD' by TV Smith & Richard Strange.



●XOXO EXTREME / Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-


プログレッシヴ・アイドル、キスエクことXOXO EXTREMEが一色萌、小嶋りん、浅水るりの3人に2020年に加入した真城奈央子と研修生の星野瞳々が加わった新体制で制作した2ndオリジナル・アルバム。サン・サーンスの「動物の謝肉祭」を意味するアルバムタイトルからわかるように全曲動物に因んだタイトルの楽曲からなる。1曲以外は2019年にメンバー二人が卒業して“そして3人が残った" 編成になって以降に発表された曲ばかりで、現在進行形のキスエクの活動を集約し未来を予感させる作品である。プログレをはじめとするロックの閉塞感をぶち壊すポジティブなパワーと無限大の希望を感じるとともに、コロナ禍により声出しや移動を禁じられ、かつてのような熱狂的なライブをすることができず、活気を失いがちな地下アイドルシーンに於いて、ここまで完成度の高い音楽性を持ち、レコード/CDとして十二分に楽しめる作品を発表したことキスエクは、“音楽第一”という当たり前の事実を改めて思い出させてくれる救世主と言えるだろう。フルート好きの筆者にとっては吉田一夫のフルートが活躍する「十影」と「Hibernation(冬の眠り)」がライヴで披露される日が待ち遠しい。P-Modelの1stアルバムを思わせるショッキングピンクのレコード盤には十代の頃にパンクやニューウェイヴに感じたトキメキが詰まっている。

Altair(孤高の荒鷲)/ XOXO EXTREME



●O'CHAWANZ / EARTH


ゆるふわなラップを聴かせる文化系ヒップホップユニット O'CHAWANZ (オチャワンズ)初のアナログ・シングル。過去に1,2度観た時はボーダーシャツにベレー帽のゆるふわファッションだったが、7/18下北沢Flower Loftで開催されたキスエクとのダブルレコ発ライヴイベントでは、ホワイトTにエスノパンツのオシャレなストリートファッションになっていた。「サポーターズ」と呼ばれるサポートメンバーを加えた3人組となったパフォーマンスは、持ち前のユルさに、ヒップホップらしい切れ味が加わり、ラップが苦手な筆者も思わずフリコピしてしまうほどカッコいいステージで、約1か月ぶりのアイドルライヴで溜まっていたフラストレーションを発散させてくれた。シングル盤にはエンドレストラックやヴォイスのサンプリング・トラックも収録されていて、筆者のレコ愛が刺激される。ライヴで披露されたA面「EARTH」のマッタリ感もいいが、個人的にはB面の早口ラップ「SPARK!!」の疾走感が気に入った。レーベルのさかさまお茶碗キャラクターの愛らしい眼が「いつまでも聴いてね」と訴えかけてくる。

EARTH / O'CHAWANZ


レコ買いは
一生終わらぬ
愛の道

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【魅惑の軽音楽】築50年の古民家生活のBGM~デニス・ファーノン/ギィ・ルイパルツ/ヴィルジニー・モルガン/マーティン・デニー

2021年07月17日 01時16分42秒 | こんな音楽も聴くんです


自宅のリフォーム工事のために1ヶ月間自宅を空けてとある街に仮住まいをしている。1968年竣工、築53年木造2階建ての民家である。造りが昭和のままで子供の頃遊びに行った世田谷の祖母の家を思わせる。夜雨戸を閉めて静かな時を過ごしていると、いつも聴いている地下音楽やノイズやフリーインプロヴィゼーションやパンクやアイドルソングを聴く気分にならない。軽音楽と呼ばれる、ムード音楽やイージーリスニングのレコードを親父の形見の家具調ポータブルステレオで静かに流すのがよく似合う。ポール・モーリアやレーモン・ルフェーブルといった70年代の華美なラブ・サウンドではしっくりこない。50年代のジャズスタンダードやシャンソンに基づいたオーケストラがピッタリだ。古風な美女ジャケットが障子や土壁の色合いに映える。50年前にこの家を建てたご主人は、きっとこんなレコードを蒐集していたのかもしれない。家も喜んでいるに違いない。ちなみに紹介するレコードはマーティン・デニー以外は中古レコード屋の100円コーナーでジャケ買いしたものである。

●デニス・ファーノンと彼のオーケストラ/魅惑の森
Dennis Farnon and His Orchestra / The Enchanted Woods (RCA Victor ‎– LSP-1897 / 1959)


デニス・ファーノン(1923年8月13日– 2019年5月21日)は、カナダの音楽アレンジャー、作曲家、オーケストラ指揮者。トロントの音楽一家に生まれ12歳からトランペットを学ぶ。カナダ陸軍の音楽隊に入りヨーロッパに演奏旅行もする。20代半ばにシカゴに移りジャズクラブで演奏しながら作曲・オーケストレーションを学ぶ。50年代にジョニー・アリディの音楽監督としてハリウッドに移り、RCAレコードとプロデューサー、アレンジャー、レコーディングアーティストとして契約し、数多くのレコードを発表した。アカデミー賞を主催するレコーディング・アカデミーの創立メンバーでもある。
59年の本作は映画やミュージカルのテーマ曲をストリング中心にアレンジしたアルバムで、ジャケットの深い森の中に佇む少女のように、神秘的なオーケストラ・サウンドの森で微睡むような体験ができる。

I Hear a Rhapsody



●ギィ・ルイパルツと彼のオーケストラ/喜びがある!
Guy Luypaerts and his orchestra / Ya D'la Joie! there is joy! the music of Charles Trenet (MGM Records ‎– E3595 / 1957)


ギィ・ルイパルツGuy Luypaerts(1917-2015)はフランスの作曲家・指揮者。40年代からエディット・ピアフやシャルル・トレネといったシャンソン歌手の伴奏を務めるとともに、コール・ポーターやジョージ・ガーシュインなどアメリカの作曲家の作品をフランス流にアレンジしたレコードをリリース。自分のオーケストラを率いて57年にアメリカのMGMレコードからリリースした本作は、シャルル・トレネの楽曲のオーケストラ・アレンジのインストゥルメンタルを収録。アコーディオンを効果的に使ったサウンドはフランスのエスプリ満ちている。

Guy Luypaerts - Chatter Box (1955)



●ヴィルジニー・モルガンとそのリズム・バンド/パリの星空を流れるムード
Virginie Morgan ‎– Sous Le Ciel De Paris (Ducretet Thomson ‎– TOM 5017 / 1959)


ヴィルジニー・モルガン、別名ミゲル・ラモス Miguel Ramos(1910 - 1978)。スペイン生まれの鍵盤オルガン奏者。1936年のスペイン市民戦争勃発時にフランスに駐在しており、そのまま60年代までフランスで活動する。50年代からヴィルジニー・モルガン名義でオルガンのレコードをリリースし人気を博す。60年代にスペインへ戻りミゲル・ラモス名義でオルガン奏者、アレンジャー、作曲家として活躍する。本作はフランスのムード音楽を日本に紹介するシリーズの1枚として59年に日本独自の選曲でリリースされた。シャンソンだけでなく、アメリカやイタリアのポップスも披露し、エレガントかつグルーヴィ―なオルガン・サウンドを楽しめる。

Virginie Morgan, Son Orgue & Ses Rythmes - Coin de Rue



●マーティン・デニー/プリミティヴァ
Martin Denny ‎– Primitiva (Liberty ‎– LST 7023 / 1958)


マーティン・デニー(Martin Denny, 1911年4月10日 - 2005年3月2日)は、アメリカ合衆国ニューヨーク州生まれのピアニスト、作曲家、ミュージシャン。エキゾチカ(エキゾチック・サウンド)、ラウンジ分野の代表的なアーティストである。若い頃からクラシック・ピアノを学び、第二次世界大戦中は空軍兵士としてフランスとドイツで兵役についた。終戦後、復員兵援助法のもとロサンゼルス音楽学校と南カリフォルニア大学で対位法とピアノを学ぶ。57年のデビュー・アルバム『エキゾチカ Exotica』はムード音楽、ラウンジミュージックの代表作であるだけでなく、スロッビング・グリッスルのジェネシス・P・オリッジにも影響を与えた。4thアルバムの本作では、ヴィヴラフォン、マリンバ、バードコール、日本の琴などエキゾチックな楽器を取り入れ、南国風味を増したサウンドを展開している。

Martin Denny - Primitva - Burma Train


軽音楽
重音楽より
気持ちいい

▼仮住まいの庭がプリミティヴァ!!!


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【魔法の横笛が奏でるロックサウンド】新時代フルートロックバンド特集:キクラテメンシス/THE RATEL/STORCHI/JYOCHO/XOXO EXTREME

2021年07月14日 01時50分20秒 | 素晴らしき変態音楽


小中学生の頃フルートを習っていたことは以前書いたが、大学に入ってからはサックスとの持ち替えで時折ヒット曲のカバー曲をやったり、90年代前半にやっていたサイケバンドではシタールやタブラと合わせてフルートを吹く程度だった。バンドが解散して以降はほとんど楽器をとり出すことはなく20年以上もの間放置していたが、数年前から即興演奏を再開する中で、子供の頃に馴染んだ銀の横笛フルートの魅力を再発見した。7月23日の『盤魔殿スピリチュアルラウンジ vol.2』ではフルートとアコーディオンをメインにアンビエントミュージックを奏でる予定である。再燃するフルート熱の勢いで、フルートを取り入れたロックバンドを検索してみた。<フルートロック>というとたいていはジェスロ・タル、フォーカス、キング・クリムゾンといったオールドロックばかり紹介されることが多いが、今回お届けするのは新進気鋭の21世紀型フルートロックバンドである。
魂を解放する魔術の横笛~フルート・ロック/ジャズ特集

●キクラテメンシス(Cichla temensis)/ Kiku Latte


2006年結成のJapanese Progressive Flute Rock Band。幻想的な情景を描く、プログレッシブフルートロックバンド。キクラテメンシスは淡水魚の名前に由来、構築美と即興性が有機的に絡み合う圧倒的なライブパフォーマンスで好評を博している。ベル・アンティーク・レーベルより、2021.05.25に4作目のアルバム"「小さな物語」~Stories~"をリリース。
昭和歌謡コンボ、サロメの唇で妖艶なフルートを吹いていたかずみんぐこと鈴木和美が参加。敬愛するフォーカスやキャメルを思わせる抒情派プログレが愛おしい。

鈴木 和美 (SUZUKI Kazumi) - flute
秋山 佑介 (AKIYAMA Yusuke) - keyboards
国分 巧 (KOKUBU Takumi) - bass
吉田 真悟 (YOSHIDA Shingo) - drums
加藤 裕幸 (KATO Hiroyuki) - guitar
https://cichlatemensis.tumblr.com/

『組曲 遭遇』(The Encounter Suite) / キクラテメンシス Kiku Latte live at SOUND CREEK Doppo on June 24, 2018.



●THE RATEL


2018年3月に結成された、ハードコアマインドなバンド。東京を拠点に活動。
フルートとファゴットという二本の木管楽器をメインにしたユニークな編成のバンド。EPのタイトル通りが「フォーカス」なのでプログレ的要素はあるが、もっと実験的なサウンドを追求する曲者である。東京ネオアンダーグラウンドに誕生したオルタナティブ・チェンバー・ロックとでも呼べばいいだろうか。

Fl.Cho 池田若菜 / Wakana Ikeda
Fg.Vo 内藤彩 / Aya Naito
Gt 畠山健嗣 / Kenji Hatakeyama
Ba 溝渕匠良 / Narufumi Mizobuchi
Dr 富樫大樹 / Hiroki Togashi
http://theratel.info/

THE RATEL / Focus EP / LIVE



●ストーチ(Storchi)


イスラエル出身の4人組メタルバンド。べース、ドラム、ギターのロックトリオにヴォーカルの代わりに2001年生まれのフルート奏者のダニエレ・サッシがフロントに立つ。
ロック、メタル、ジャズ、フュージョン、プログレに中東民族音楽を融合した重厚且つ華麗なサウンドを聴かせる。エスノ色を取り入れたメタルバンドは少なくないが、その多くがトライバルな悪魔性を打ち出しているのに対して、エレガントな天使性・女神性を放つストーチに好感を感じる。

Noam Arbel - Drums
Shachar Sasson - Bass
Itay Carmeli - Guitar
Danielle Sassi - Flute
https://storchi.bandcamp.com/music

(Storchi - Paracosm (2017 Version



●JYOCHO(じょうちょ)


2016年、超絶テクニックを誇るギタリスト・だいじろー(ex.宇宙コンビニ)によって京都にて始動。マスロック〜プログレッシブ~ポップスなど様々なジャンルを通過した音楽性に、テクニカルなトラック、温かみ、激情をふんだんに盛り込んだ、まさに情緒感たっぷりな、JYOCHOにしかできない独自の世界観を構築する。
何食わぬ顔で超絶テクニックを披露する新世代ミュージシャン集団。いわゆるマスロックは、最初は驚いてもだんだん全部同じに聴こえて飽きてしまうことが多々あるが、JYOCHOの場合はフルートの存在が救っている。弦楽器や鍵盤楽器と違って人間の呼吸で奏でる管楽器は聴き手の血液の流れや心臓の鼓動やと同期するからだろう。

sindee [Ba.]
だいじろー(Daijiro Nakagawa)[Gt./Cho.]
猫田ねたこ(Netako Nekota)[Vo./Key.]
はち(Hachi)[Fl.]
hatch[Dr.]
https://jyocho.com/

JYOCHO x KYOTO - family (Machiya Session)


フルートは
魔法使いの
秘密兵器

●XOXO EXTREME(キスエク)


一色 萌・小嶋 りん・浅水るり・真城奈央子・星野瞳々(研修生)の5名からなる、プログレッシヴロック(略:プログレ)の楽曲を中心にパフォーマンスしているアイドル。その名の通り、一曲の中で曲調がよく変わる・曲が長い・変拍子…等プログレッシヴな楽曲を歌い踊る。
プログレにはフルートが欠かせない。「組曲革命」「鬱。」「Salty Sky」などでフルートを吹くのは日本のプログレバンドQuiの吉田一夫。5月にリリースされた2ndアルバム『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』では「十影」「Hibernation(冬の眠り)」で流麗なフルートが聴ける。
https://www.xoxo-ex.com/

The Last Seven Minutes (MAGMA COVER)/ XOXO EXTREME 2019.7.25 渋谷WWW


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【ディープリスニング覚醒イベントのここが聴きどころ!】7/29(木)開催『盤魔殿スピリチュアルラウンジ vol.2』予約受付中!

2021年07月13日 00時00分07秒 | 素晴らしき変態音楽


『盤魔殿SPIRITUAL LOUNGE vol.2』
DISQUE DAEMONIUM SPIRITUAL LOUNGE vol.2

~瞑想しながら意識を変革しチャクラを開くディープリスニング覚醒イベント~

7月29日(木) 四谷三丁目CON TON TON VIVO

18:00開場 18:0018:30開演 20:00終演予定 *緊急事態宣言のため、開演・終演予定時間が変更になりました。
Charge 1500 Yen

Special Live:
Takeshi Goda+Tanao(INIBURA)+Aura Noir AMBIENT UNIT

DJ's:
DJ SubRosa a.k.a.由良瓏砂
DJ Qliphoth a.k.a.宇田川岳夫
DJ ASTERIX!


CON TON TON VIVO
tel 03-6274‐8383
〒160-0006 東京都新宿区舟町7番 舟町ビル 地下1階
予約⇒https://www.contontonvivo.com/schedule-list/210729yoru

出演者紹介はこちら⇒【イベント情報】噂のディープリスニング覚醒イベント、再び~『盤魔殿スピリチュアルラウンジ vol.2』7月29日(木)四谷三丁目CON TON TON VIVOにて開催決定!スペシャルライブ有。

TIME TABLE
18:00 開場、開演
18:00 DJ Qliphoth a.k.a.宇田川岳夫
18:30 DJ ASTERIX!
19:00 DJ SubRosa a.k.a.由良瓏砂
19:30 LIVE : Takeshi Goda+Tanao(INIBURA)+Aura Noir AMBIENT UNIT


【ここが聴きどころ!】
●DJ Qliphoth a.k.a.宇田川岳夫


Neo Folk Underground パンデミックの下で開催される「平和の祭典」に叛旗を翻す政治的に正しくない音楽をお聞かせします。緊急事態宣言のショックドクトリン下、異常が日常になってしまった「栄光の三日間」の終焉の日に向けて。1830年7月27日から29日フランス七月革命、栄光の三日間、ブルボン復古王政打倒、しかし妥協の末七月王政樹立。

The Revolutionary Army Of The Infant Jesus - Tales From Europe



●DJ SubRosa a.k.a.由良瓏砂


今回の選曲のテーマは「少女病」。実は私が最初に開催した、二人展のタイトルです。今は病みかわいい、という言葉もありますが、少女と病が結び付いたところの退廃美を、ご紹介できればと思います。
フランスの国民的歌姫ミレーヌ・ファルメールの三枚目のアルバム「L'antre」より、精神病者の歌とおぼしい"Psychiatric"。彼女の7枚目のアルバムのジャケットには、友人の三浦悦子氏の人形が使われています。
またフランスのレーベルからレコード「妄想の楽園」が発売されたばかりの靜香の曲、由良瓏砂がボーカルを務める「ヰタ・スピリチュアリス」の"Loveless"などのラインナップを考えております。乞御期待。

Mylène Farmer - Désenchantée



●DJ ASTERIX!


ビートはあるけどうるさくないラウンジ、アンビエント的なものを選曲中です。

Art & Technique「Acier」(1998/仏)



●Takeshi Goda + Tanao (INIBULA) + Aura Noir AMBIENT UNIT


2020.12.21 mon 四谷三丁目 喫茶茶会記で開催された《哲学者の薔薇園》+盤魔殿 Collaboration Eventにて、Lower Than Godとしてライブ出演した剛田と、DJで出演したAura Noirこと黒い瞳、彼女の知り合いで来場したTanaoが出会ったことから生まれた新ユニット。話してみると不思議な縁で繋がっていたことが判明し、この3人の邂逅は偶然でなく運命だったことが明らかになった。30年の活動歴を誇るアンビエントノイズバンドINIBULAを率いるTanaoの空間的なギターに、得意のノイズドールを封印し、アコーディオンやフルートなどアコースティック楽器をメインとする剛田のインプロと、ミュージカル・ソーやグロッケンシュピールといったエキゾチックな楽器やガジェットを操るAura Noirの直観的プレイが生み出すアンサンブルは、単なるアンビエントやドローンには留まらない精神拡張瞑想音楽を創造する。レギュラーユニットとしての活動する構想もある。

Takeshi Goda+Tanao(INIBURA)+Aura Noir AMBIENT UNIT in Studio

【イベントレポート】冬至の夜の異端と幻想~《哲学者の薔薇園》+盤魔殿 四谷三丁目 喫茶茶会記 2020.12.21 mon

革命と
アンビエントの
退廃美

【関連イベント】
唸る語る、盤魔殿 Vol.3 NeoFolk Underground 不法音楽地下蜂起集会

9月11日(土) 阿佐ヶ谷TABASA
17時30分開場開演
料金 1500円+1ドリンク

9・11の日を記念して開催する政治的に正しくない音楽を媒体とした地下集会。90年代初頭にドイツの雑誌Zillo誌上でポスト・インダストリアル、ポスト・パンクな音楽としてCurrent93とその周辺を紹介する際に造られた言葉NeoFolk。ポスト冷戦下に進行するグローバリズム資本主義の蔓延下でケイオスマギック、異教主義、ペイガニズム、極右から極左までの政治運動、伝統主義など、様々な種類のエクストリームなムーブメントのハイブリッドな交雑によって発生し、時にはネオナチやアレクサンドル=ドゥ―ギンの『第4政治理論』との親和性も交えながらドイツを中心とした欧米地下音楽シーンのさらに地下水脈として知る人ぞ知るムーブメントととして継続してきた。
関与するアーティストやメディアは、Death In June,Current 93,COIL,Les Joyeaux De La Princess,The Moon Lay Hidden Beneath A Cloud,Der Blutharsch,Sol Invictus, Fire and Ice,&6th Comm,Freya Aswyn,Sonne Hagal,Backworld,Changes,Boyd Rice,NON,Camerata Mediolanense,Von Thronstahl,Orplid,Forseti,Belborn,書籍looking For Europa,書籍Tyr,雑誌Zazen Sound Magazine,V.IT.R.I.O.L.Magazine等、多岐にわたる。
盤魔殿+あなたの聞かない世界+帝都音社が送る地下トークショウ。15名限定。

予約は阿佐ヶ谷TABASAまで。
配信はいたしません。
写真撮影・録音・録画を禁止します。
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【地下ジャズDisc Review】クリス・ピッツィオコス Chris Pitsiokos『カーニー・カント Carny Cant』~パンデミックで生まれ変わった自我の解放~

2021年07月09日 00時19分27秒 | 素晴らしき変態音楽


Chris Pitsiokos / Carny Cant
DL/LP : Eleatic Records ELEA005

Chris Pitsiokos: alto saxophone, baritone saxophone, harmonica, electric bass, electronic drums, voice, all electronic/midi instruments, and electric guitar on track 6.
Rick Eye: electric guitar on tracks 2-5
Jason Nazary: drums on tracks 2, 3, 5

1. Invocation
2. Journal: The Burden of Solidity
3. Go Ahead Rick
4. Lapsarian
5. Journal: The Burden of Memory
6. Question Mark

All music composed, produced and mixed by Chris Pitsiokos.
All words by Chris Pitsiokos
Album Art by Katharina Huber

Bandcamp

パンデミックで明らかになった本当の自分の具現化

昨年のパンデミック以来、クリス・ピッツィオコスと何度かメールで連絡を取り合った。ニューヨークに非常事態宣言が発令された2020年3月に母が住むヴァージニア州に避難し1か月間田舎暮らしをしたが、4月にブルックリンに戻ってからは自粛生活を余儀なくされた。ライヴ活動はおろか、友人や他のミュージシャンと会うことすらできない我慢の時期は、逆に彼にとって有意義な時間になったようである。

「僕はこの時間を利用して、自分の人生や価値観、そしてそもそもなぜ音楽を作り始めたのかを再検討することにしました。久しぶりに練習に励み、集中力も高まり、サックスの修理方法も独学で学びましたが、これは大きなウサギの穴を下りていくように深いです。自分自身や自分のレーベル、ライヴ企画に集中することで、経済的にも感情的にも、そして創造的にも、より自給自足できるようにシフトすることを決めました」(2020年5月22日付けメールマガジン)。

自粛期間にレコーディングした音源を『Aswoon』(2020年11月)と『Milquetoast』(2021年1月)の2作のミニ・アルバムとしてBandcampでデジタル・リリースした。いずれもストイックに研ぎ澄まされたサックス・ソロで、若干のオーバーダブはあるものの、直感的に録音された即興作品だった。その一方でじっくりとプロデュースされた作品にも取り組んでいた。

「パンデミックの間、私は本やビジュアルアートに多くの時間を費やしてきましたが、最近は音楽よりもその種のアーティストの創作活動に影響を受けています。特に、ひとつの作品にじっくりと向き合い、レコーディング、リシェイプ、ミキシング、プロデュース、マスタリングを経て、ゆっくりと作品を作り上げていくことについて考えています。本当に一つの世界を作り、その中にゆっくりと入っていくのです。深く個人的で、私にとってユニークなもの」(2020年9月5日私信)。

上記の言葉にある「個人的で、自分にとってユニークな」作品が本作『Carny Cant』であることは間違いない。2020年1月から10月にかけて作曲・録音・制作され、ドラムにCP-Unitのメンバーでもあるジェイソン・ナジー、ギターにテキサス州デントン出身のマルチミュージシャン、リック・アイ(Gay Cum Daddies, Flesh Narc, Bukkake Momsなど)がリモートで参加した他は、ハーモニカ、エレクトリック・ベース、アルト・サックス、バリトン・サックス、そして多くの電子楽器をすべてピッツィオコス自身が演奏している。タイトルは「カーニバル特有の言葉遣い=外部の人には分からない仲間内の秘密の言葉」の意味。普通に聴くと何を意味するのか分からないけど、自分の仲間になれば意味が通じる秘密の音楽、という意味だろうか。実際に一聴するとこれまでのピッツィオコスの音楽とは異質な感触に驚く人は多いだろう。さらにジャケットの手斧の意味を考えると、過去の自分(の音楽)を断ち切り新局面に進む決意も感じられる。

「控えめに言っても、このアルバムは僕のこれまでの音楽とは一線を画しています。僕にとってこの作品は、当時世界で起こっていたすべてのことに対する瞑想であり、その中での自分自身の個人的な旅でもありました」(2021年2月6日付メールマガジン)。

M1『Invocation(呼び出しの呪文)』は多重録音されたバリトンとアルトの嘶き。場と空気を清め、新たなピッツィオコスの音楽を召喚する。M2『Journal: The Burden of Solidity(日誌:固形物の重み)』。インダストリアルなビートに驚く。無理数(分数で表せない実数。例√2、円周率)を用いて生成されたリズムだという。切り裂くような即興サックスが飛び交う中、ピッツィオコスがラップ、というよりスポークン・ワード(ポエトリー・リーディング)を聴かせる。アブストラクトな前衛ヒップホップ。M3『Go Ahead Rick(進めリック)』はリック・アイのギターをメインにしたヘヴィロック・ナンバー。ピッツィオコスが吹くハーモニカが妙に明るい牧歌的な雰囲気を醸し出す。重苦しさと虚無感が同居したミスマッチは、まさに非現実的な自粛生活の空虚感に繋がる。M4『Lapsarian(ラプサリアン:アダムとイヴの堕落の後の世界)』は、サックス版ラップのようなリズムを分断するアブストラクトな曲。ピッツィオコスの超絶技巧サックスが味わえる。M5『Journal: The Burden of Memory(日誌:記憶の重み)』は、M2と対になるスポークン・ワード・ナンバー。再びハーモニカが感傷的な気分を醸す。ジェイソン・ナジーのドラムがバックで淡々とインプロを続ける中、ピッツィオコスのスポークン・ワードがダウナーな呟きとなり、アイの歪んだギターへと変容する。アルバムの最後を飾るM6『Question Mark(疑問符)』は、なんとピッツィオコスのギターの弾き語り。正直に言ってギターも歌も上手ではないが、茫漠とした浮遊感の中で「これが自分だ」と悟りの境地に辿り着いたことを感じる。

ギターとドラムが参加しているが、このアルバムに描かれているのは間違いなくクリス・ピッツィオコスというひとりの人間の魂と肉体である。現在のピッツィオコスのありのままの音楽を時間をかけて濃縮することにより、彼自身の未来の音楽と人生の在り方を刷新した。1年間にわたる非日常的な生活はアーティストにとって決して無駄ではないどころか、ライフタイムで最も有用な変容期間となり得るのである。(2021年4月27日記)
初出:JazzTokyo #277 2021年5月1日

Lapsarian


自画自賛
自害無縁の
自我解放

▼クリス・ピッツィオコス野外サックス動画コレクション
Chris Pitsiokos solo @ DMG at Oliver Coffee 6-26-21 1/3


No Land + Chris Pitsiokos - on the street in Red Hook Brooklyn - Aug 23 2020


Chris Pitsiokos - solo alto saxophone - in Red Hook Brooklyn - Aug 15 2020


Chris Pitsiokos @ "The Hedgehog and the Fox" by Richard Serra in Princeton, NJ, 7-31-20 1/5


Chris Pitsiokos: Racquetball Court, Video by Katharina Huber


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【SAX OUTSIDER】野外サックスのススメ~白石民夫/阿部薫/川島誠/クリス・ピッツィオコス/フローリアン・ヴァルター/マーシャル・アレン

2021年07月08日 02時47分56秒 | 素晴らしき変態音楽


コロナ禍で外出できず家に閉じ籠っているサックス吹きたちよ。ステイホーム環境で近所の苦情を恐れて思いっきり楽器を吹き鳴らせずフラストレーションが溜まっていないかい?爆発寸前の表現欲求を思う存分発散できず、ミュージカル・インポテンツ(音楽的不能者)になっていないだろうか?このままじゃ演奏家としての才能が衰えるだけじゃなく、人間として無力の欠片になってしまうぞ。そういう時は外へ出よう。川でも庭でも街でも橋の下でもどこでも吹けるサックスの強みを活かしていろんな場所でヤッてみよう。誰もいない自然の中でもいいし、衆人環視の中でもいい。誰憚ることなく欲望のままに思い切り音を発射すれば、天にも昇る快感を感じられるだけでなく、今まで知らなかった新しい自分を発見し、今までにない新鮮なサウンドが生まれるに違いない。レッツ・ゴー・アウト!「サックス・アウトサイダー」として異次元の表現レベルへアップするチャンスだ!

●白石民夫 Tamio Shiraishi


野外サックスの先駆者と言えば70年代末から地下音楽界のリーダーとして活躍するサックス奏者・白石民夫だろう。リードをきつく嚙んで悲鳴のようなフリークトーンを鳴らす演奏は日本地下音楽の象徴である。ニューヨークでは地下鉄のホームでの演奏が定番だが、帰国時には新宿カリヨン橋で野外演奏を敢行する。高層ビルに反響するハイトーンサックスは都会の癒しの音色である。

白石民夫/2020/07/12@新宿カリヨン橋



●阿部薫 Kaoru Abe


日本のフリージャズ界の伝説的アルトサックス奏者・阿部薫は高校時代から高速道路沿いの多摩川の河原でサックスの練習をしていたという。独学で身に付けた驚異的なテクニックと誰よりも速いスピードは、クラクションを鳴らしながら通り過ぎる自動車を威嚇しようとして生まれたのかもしれない。

「13人連続暴行魔」より 阿部薫



●川島誠 Makoto Kawashima


若手即興サックス奏者・川島誠は以前は川越駅前の陸橋で野外演奏していたが、昨年以降は埼玉県を流れる越辺川沿いの橋の下で演奏することが多い。敬愛する阿部薫に倣ったのではなく、元々自然の中で暮らすのが好きな彼自身の性向によるものだ。越生の山猫軒や近江八幡・酒游館など、川島が好きな演奏の場は自然に近い環境にある。

川島誠 高坂橋下 Makoto Kawashima



●クリス・ピッツィオコス Chris Pitsiokos


2020年のパンデミック以降すべてのライヴ会場が閉鎖されたニューヨークでは、ミュージシャンの演奏の場はストリートしかなくなった。ブルックリン即興シーンを代表する若手アルトサックス奏者クリス・ピッツィオコスもストリートに出て街や風景との対話を通じて演奏することで、新しいスタイルやサウンドを追求し続けている。

Chris Pitsiokos - solo alto saxophone - in Red Hook Brooklyn - Aug 23 2020



●フローリアン・ヴァルター Florian Walter


ドイツでもすべてのコンサートが中止され演奏の場が失われてしまった。2021年半ばになっても屋内のコンサートは禁止され、ミュージシャンは屋外で演奏することしか許可されていないという。そこでエッセンでは即興サックス奏者フローリアン・ヴァルター等を中心に、ミュージシャンがクレーンに乗って建物の高層階の部屋の前で演奏するコンサートが企画された。ヴァルターは自作楽器Hechtyphoneを手にクレーンに乗る予定。

Kläääsch Fassadenservice


Das Hechtyphon | Unser instrumentales Maskottchen des Internationalen Musikfests 2021



●マーシャル・アレン Marshall Allen


異能サックス界の最長老にしてサン・ラ・アーケストラの総統であるマーシャル・アレン師も野外プレイ好きで知られる。野外フェスへの出演も多いが、昨年8月にはフィラデルフィアの「サン・ラ・ハウス」の裏庭でクインテットのコンサートを開催した。アーケストラの選抜メンバーのコズミックな演奏に庭の木々や野鳥や虫たちも喜んだことだろう。

MARSHALL ALLEN'S COSMIC TONES: We Out Here 2020


野外プレイ
解放感が
気持ちいい

▼今年1月に配信されたオンラインライヴの映像。23:20~40:20クリス・ピッツィオコスがニューヨークのストリートでソロ演奏している。
Pool 21 | Winant | Chase | Pitsiokos | Fraser

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【日本サイケDisc Review】美麗ジャケットの愛蔵盤LP2作がフランスから登場~川口雅巳『Self-Portrait 自画像』/うすらび『Remains Of The Light 灯の名残』

2021年07月06日 01時25分16秒 | 素晴らしき変態音楽


日本のアンダーグラウンド・ミュージックをメインに、シルクスクリーン印刷の美麗ジャケットにポストカードやフライヤー等のインサートを封入した豪華レコード盤のリリースで定評のあるフランスの An'archivesレーベルから、日本の現行サイケデリック・ミュージックの注目作2作が登場した。日本でも知る人ぞ知る地下音楽の現在進行形を、数量限定とはいえ制作者の愛に満ちた芸術作品として世界中の愛好家に届る努力は、サブスク中心の流通業界へのアンチテーゼというよりは「良心」「真心」と呼ぶべきだろう。勿論音楽自体も音楽家の良心と真心がたっぷり込められているからこそ成り立つ、音楽愛好家に最高の歓びを与えてくれるプレゼントなのである。

An'archives公式サイト

●川口雅巳 Masami Kawaguchi ‎/ Self Portrait (An'archives ‎– [An'23])


A1 Blindfold Blues
A2 Awake
A3 Song For Golden Hair
A4 Visions Of Marianne
B1 Nothing
B2 Tea
B3 Drinking With Mr. K
B4 On The Rooftop

90年代からブルームダスターズ、みみのこと、LSD March、哀秘謡などのバンドに参加し、現在は川口雅巳ニューロックシンジケイトを中心にソロやセッションで精力的に活動する川口雅巳が2018~2020年にかけて制作したソロ・アルバム。ニューロックシンジケイトやブルームダスターズのメンバーをサポートに迎え、自宅や近所のスタジオでじっくりレコーディングされた。バンドではサイケデリックなギターを中心としたガレージロックの印象が強いが、このソロ作は『自画像』というタイトル通り、ブルースやフォークをルーツとしたプライベートな面を強調したアルバムになっている。シド・バレットを思わせるアコースティック・ブルース「Blindfold Blues」、キャプテン・ビーフハート風のアシッド・ジャム「Awake」、MOOGを取り入れたサイケポップ「Song For Golden Hair」は初期ピンク・フロイドとブルー・チアーが合体したような曲。1955年の映画『わが青春のマリアンヌ』にインスパイアされたという「Visions Of Marianne」はリズム・ボックスを使った多重録音のローファイ・フォーク。ブルームダスターズのメンバーを迎えた「Nothing」は川口が19歳の頃作曲したナンバー。同じメンバーによる「Tea」は、チューバ風のベースラインの牧歌的な曲だが、後半サージェント・ペパーズを思わせるストリングスがシュールな世界へ導く。「Drinking With Mr. K」は故・金子寿徳(光束夜)と毎晩飲み歩いた思い出を歌う。狂ったギター・ソロは金子へのオマージュか。ラストナンバー「On The Rooftop」は、ローリング・ストーンズの「As Tears Go By(涙あふれて)」へのアンサー・ソングで、自室の窓の外の屋根の上で遊ぶ猫を見ながら作ったという。アルバム中最も内省的な宝石のような曲でアルバムは幕を閉じる。

川口の個性はサイケデリックなギター・プレイにもあるが、このアルバムを聴いて感じるのはヴォーカリストとしてのユニークさである。サイケやブルースにありがちな熱唱・絶唱とも、アシッドフォークの囁きとも異なる。艶がありよく伸びる歌声だが、何となく演奏の斜め上を行くようなヴォーカルは、声質は異なるがスコット・ウォーカーの朗々とした、しかし耐え難い孤独感を湛えたテノールに近いものを感じる。川口が孤独だ、と言う訳ではないが、唯一無二のヴォーカルスタイルは、どんな相手と共演しても「個・孤」として屹立するに違いない。自我が強そうな、それでいてどこか寂しげなジャケットのモノクロームのポートレートに、ひとりの独創的な音楽家の本音が伺える私小説ならぬ「私音楽」である。


●うすらび Usurabi ‎/ 灯の名残り Remains Of The Light (An'archives ‎– [An'22])


A1 ラジアルループ = Radial Loop
A2 ブルネラ = Brunnera
A3 声が = Until Your Voice Disappears
B1 秋の雨 = Autumn Rain
B2 ずっとそう = Always
B3 星座 = Constellation

Doodlesやあみのめといったフィメール・バンドで活動してきた利光暁子(vo, g, org, acco)と川口雅巳(g, b)、ブルームダスターズ、魔術の庭、宇宙エンジンなどに参加する諸橋茂樹(ds)によるトリオ、うすらびのデビュー・アルバム。利光(当時は寺島姓)と川口は、90年代後半からDoodelsとブルームダスターズで共演しており、2001年には川口のレーベルPurifivaからDoodlesのCD-R『Disc One』をリリースしている。また、2017年にはAn'archivesレーベルの情趣演歌シリーズ10インチLPでA・B面を分け合った。「うすらび」とは弱い陽の光(薄ら陽)の意味であり、夜と朝の間のほんの僅かな時間現れる薄暮の光と希薄な空気を纏った音楽を志向する。全曲利光の作曲で、繊細な抒情を描いた詩とやわらかいメロディ、存在の儚さを悲観しながらも生きる意志を感じさせる歌声、行方知らずに発せられるギターやアコーディオンやオルガン、寄り添いながら別の世界への出口へと導くベースとドラム、それらが走馬灯のようにグルグル回り、聴き手の心をうすらびの世界へ世界へ解き放つ。歌の印象でいうと、川口の個性の塊のような歌に比べて、空気のように軽い利光の歌声は、誰の心の中にでも抵抗なく忍び込む親和性を持っている。その意味で言えば地下音楽やサイケデリック・ミュージックに留まらず、違った文脈で多くの人々に聴かれる可能性を持っていると言えよう。

意識したわけではなかろうが、アルバム・タイトルが、映画『アメリカン・ユートピア』で話題のデヴィッド・バーンのトーキング・ヘッズ時代の代表作『リメイン・イン・ライト(Remain in Light)』(1980)を思わせる。ニューウェイヴにアフロビート、ファンク、アヴァンポップなど多様な音楽性を取り入れたトーキング・ヘッズが「光の中にとどまる」と宣ったのに対して、無駄な要素をすべて排して、利光暁子から生まれる世界だけにフォーカスしたうすらびが「光の残りもの」と表明したことは、マキシマムからミニマムへと至る芸術表現のオルタナティヴな在り方を証明しているようで興味深い。

「川口雅巳&うすらびレコ発ライブ」 6/27 sun. ON AIR


地下だけじゃ
満足できない
表現欲求

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