A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

不失者@渋谷WWW 2012.9.27 (thu)

2012年09月29日 00時39分59秒 | 灰野敬二さんのこと


まぶしい いたずらな祈り
不失者
特別出演:やくしまるえつこ

ニュー・アルバム「まぶしい いたずらな祈り」レコ発東阪名ツアーの最終日は、灰野さんが昨年石橋英子嬢との対バンでソロで、AKRON/FAMILYのサポートで不失者で出演経験のある渋谷WWW。何回も来ているが天井が高く音響のいいホールだ。オールスタンディングの筈がアリーナ・フロアにブロックが並べてあり座っての観戦だった。客席が段になっていて観やすい会場なのでたまにはステージ全体を見渡せる後列から観ようかと思っていたが、やはりいつものように最前列右手の灰野さんの正面に座り込む。灰野さんのライヴで毎度見かけるお馴染みの顔が多い。偶然にも隣の青年はTwitterで相互フォローしている方だった。後ろの客席の状況が分からなかったが、かなりいい動員だった模様。

客電が暗転し、ドラムの山口元輝氏がトライバルなビートを叩き出す。ゲストのやくしまるえつこ嬢が登場し中央の椅子に座る。小型のライトセーバーを手に詩を朗読。ライトセーバーがPCのコントローラーになっていて手の動きに合わせて電子音が変調する。相対性理論は3~4年前に何度か観たことがあるが、最近はやくしまる嬢のソロ、しかも後楽園ホールのイベントの開会宣言やFREEDOMMUNE 0<ZERO>でのビデオ出演といった一風変わったパフォーマンスばかり。この日も15分の短いステージだった。彼女は前日にニュー・シングル「ヤミヤミ・ロンリープラネット」をリリース。「ヤミヤミ」はNHK「みんなのうた」用に書き下ろした童謡風の曲。「ロンリープラネット」は5パートからなる16分の大作。公開されたばかりの「ヤミヤミ」のPVは、立ちこめる霧の中、やくしまる嬢が描いた女の子や幽霊たちが妖しくもキュートに動く幻想的なモノ。監督はツイン・ドラム+映像の変則トリオd.v.dを率いる若手映像作家の山口崇司氏。来月ペンギンカフェの対バンで久々に相対性理論を観るのが楽しみだ。



セットチェンジの後ステージが暗くなり、不失者の演奏がスタート。灰野さんのアンプはハイワット4発。名古屋同様にサブ・ギターが用意してある。名古屋公演ではRyosuke Kiyasu氏のドラムと亀川千代氏のベースの演奏が10分間続いた後にやっと灰野さんがギターで入ってきたが、今回はすぐに歌い始める。しかも「運命よ かかってこい!」というハイ・テンションな絶叫ヴォーカル。そのままギターを持ち不失者のテーマ(?)に突入、激しいアクションで弾きまくる凄まじいステージング。名古屋の方には申し訳ないが、気合いの入り方が格段に違う気がする。TOKUZOでは三位一体となった団子状の爆音が耳を圧したが、会場の音響システムの違いもあり、相当な音量にも関わらず各楽器&ヴォーカルが分離良くクリアなサウンドでダイレクトに伝わる。特にドラムとベースの重たく激しいサウンドが地面を揺さぶり、座っているブロック椅子がビリビリ震えるのを感じる。映画「ドキュメント灰野敬二」で不失者の演奏が勢いに任せた即興ではなく灰野さんの綿密な指示のもと徹底的に訓練され構成された演奏であることが明らかになった。映画を観た人ならお分かりのように、フレーズやテクニックの問題ではなく「一音一音を大切にする」という灰野さんの信念をとことん理解し、独創性に溢れる抽象的な図形譜面をどう解釈するかという精神的な鍛錬である。

前半はかなりハードな演奏が続き、このトリオ特有のヘヴィネスを持った「暗号」に突入。所々で灰野さんが大きく両手を上げて指示を出す。一瞬ドラム・ソロのようなパートがあり、Kiyasu氏の強力なドラミングが雷鳴のように鳴り響き感動で涙が出てきた。引き裂かれ泣き叫ぶギターのフレーズが断続的に奏でられ緊張感溢れるナンバー「とぎすまされるとは」、再びヘヴィな「おまえ」。最後は今までになくシンプルなコード進行のスピード・チューン「なしくずし」で10:00PM丁度に終了。アンコールの拍手が続くが無情にも客電が点きジ・エンド。余りに濃厚な2時間の演奏に観客も充分納得した様子。この日の不失者は今まで以上にヘヴィ・ロック色が濃かった。



知り合いや大学のサークルの後輩と談笑しているといつの間にか客席はほぼ空になり、会場スタッフが退場を促していた。楽屋の入口で下山のメンバーに会い挨拶。クラムボンのメンバーもいる。灰野さんは上機嫌でゲストと記念撮影に応じている。バーで軽い打ち上げ。WWWは音出しが10:00PMまでと決まっており、15曲用意していたのに10曲しか出来なかったと灰野さん。道理でアンコールが無かった訳だ。

Kiyasu氏にドラムが凄く良かったと伝えると、演奏中は無我夢中で余り覚えていないとのこと。このトリオの初ステージはまだ"不失者"になる以前の昨年2月高円寺Club Mission'sだった。しかも当日まで亀川氏とKiyasu氏の参加は発表されなかった。Kiyasu氏によると本当に前日に灰野さんから「明日Mission'sへ来てくれ」と連絡があり、殆どぶっつけ本番での演奏だったという。灰野さんに口止めされていたのだがもう時効だと思うので披露するが(灰野さんに怒られるかも....)、その日楽屋で対バンの鳥を見たのベースの山崎氏(今回の不失者ツアーにローディーとして同行)と私を前に灰野さんから「何であの二人を呼んだと思う?」と聞かれた。首をひねっていると「秘密だよ。"長髪トリオ"をやりたかったんだよ」と灰野さん。うわぁカッコいい!と感動した。映画「ドキュメント灰野敬二」のエンディングを「髪を昔のように腰まで伸ばすのが夢。だって好きだから」と締める灰野さんの美学が実現した理想のトリオという訳だ。

10/4からFushitsushaとしてヨーロッパ・ツアー。初日はイギリスの教会で演奏する。この日のような凄いライヴを披露したら演奏の善し悪しに素直に反応する海外の観客は最高に熱狂するに違いない。そのツアーでさらに強力なトリオに成長するのは間違いない。凱旋公演が楽しみでならない。

不失者の
成長ぶりは
驚異的

灰野敬二スケジュール:
11/12(月)<研ぎすまされた『愛している』という響き> 灰野敬二ソロライヴ@南青山MANDALA
12/21(金)不失者 SDLX十周年記念ワンマンLIVE@六本木 Super Deluxe
12/24(月・祝)静寂 ラストワンマンライヴ@秋葉原 CLUB GOODMAN
その他にもいくつか興味深いイベントが予定されている。情報解禁になったらお知らせします。

映画「ドキュメント灰野敬二」も全国各地での公開が続々決定。

[9/29 13:40追記]
不失者の新アーティスト写真公開



コメント (4)
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ハーフコインの花園~90's女性シンガーソングライター特集

2012年09月28日 01時03分59秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


不失者、JAZZ非常階段、広瀬淳二、グンジョーガクレヨンと手強いライヴが続く9月下旬だが、一方で心温まる優しい女性の歌声に包まれた日々を送っている。

きっかけは近場のBOOK-OFFに何の気なしに入ったことである。10年前はこの手の新古本店があちこちにあり、通勤帰りに寄って安い中古CDや音楽雑誌を買い漁ったものだが、次々と閉店し、今ではBOOK-OFFくらいになってしまった。CD250円均一コーナーを発見。一昔前にヒットした時代遅れのCDや誰も知らない無名CDばかりだと思いつつ眺めていて、ふとスザンヌ・ヴェガのCDが目に止まった。ヴェガちゃんは1985年のデビュー当時から好きで今年1月の来日公演にも行った。CDは持っていたが引っ越しで処分してしまい手元にないものもある。それが250円コーナーに並んでいる。しかも帯・解説付きの日本盤。ジャケットが懐かしくて買い直して聴いてみたら全く古びていないどころか最近ラジオから流れるダンスかぶれの洋楽ヒット曲よりもずっと新鮮に響いて心に滲みた。

1987年の2ndアルバム「孤独~ひとり~」収録の「ルカ」や「トムズ・ダイナー」の大ヒットのせいで一発屋のイメージが付いてしまったヴェガちゃんだが、90年代にはバングルスやロス・ロボスの名作を手掛けた売れっ子制作チーム、ミッチェル・フルーム&チャド・ブレイクと組んで「微熱」と「欲望の9つの対象」という傑作を発表し先鋭的なサウンドで高い評価を得た。フルームとヴェガちゃんは暫く結婚していた。現在は昔の作品をテーマ別に再レコーディングし「クローズ・アップ」シリーズとしてリリース、今月半ば全4作が完結したばかり。



ヴェガちゃんのヒットをきっかけに80~90年代アメリカから次々登場した新世代女性シンガーソングライターたちを思い出し聴きたくなった。250円コーナーへ行くと懐かしい名前のアーティストのCDがたくさんある。何しろ安いので気になったCDは全部買い込む。街を歩いていてBOOK-OFFがあるとチェックしないと気が済まない。おかげで1週間で30枚以上のCDを購入してしまった。

ヴェガちゃんと同時期に新世代女性フォークの騎手としてヒットしたアフリカ系シンガーソングライター、トレイシー・チャップマン。メッセージ色の強い歌詞と黒人ならではのソウルフルな歌声はヴェガちゃんや他の白人歌手とは明らかに違った強烈な個性がある。2009年までツアー記録があるが、現在どうしているのかは不明。



ミズーリ州出身、マイケル・ジャクソンのコーラス・シンガーとして来日経験もあったシェリル・クロウ。1993年ソロ・デビュー、「オール・アイ・ワナ・ドゥ」が大ヒットしグラミー賞を受賞、アラニス・モリセット等女性ロック・シンガー・ブームの先駆けとなった。エリック・クラプトン、キース・リチャーズ等と浮き名を流しゴシップ紙を賑わせもした。私生活でもいろいろあったが現在も活動は盛んに行っている。



ボストン育ち、80年代後半オルタナ・バンド、ブレイク・ベイビーズで活動した後1992年ソロ・デビューしたジュリアナ・ハットフィールド。「90年代のギターポップの新しきヒロイン!」というキャッチコピー通りのギターロックにロリータ風コケティッシュ・ヴォーカルを聴かせ、そのキュートなルックスでオルタナ・アイドルとして人気に。現在はエヴァン・ダンドー率いるオルタナ・バンド、レモンヘッズと共に活動中。



シカゴ育ちのリズ・フェアは1992年ニューヨークのインディー・レーベルMatadorからスティーヴ・アルビニのプロデュースでデビュー。赤裸々にセクシャルな歌詞が話題となりオルタナ・クイーンの座につく。1994年シングル「スーパーノヴァ」でグラミーにノミネート。2003年にメジャー・レーベルと契約、現在もオルタナに拘らぬ幅広いスタイルで活動中。



ナナ・ムスクーリ以来の"メガネ美人"の伝統を継承するリサ・ローブ。テキサス州出身、1994年公開の映画「リアリティ・バイツ」のサントラに収録された「ステイ」がメジャー契約が無いのに全米No.1になるというセンセーションを巻き起こした。1997年ヴェガちゃんと来日日程が重なり、お互いのライヴを観に行ったというニュースが音楽誌に載ったのを覚えている。ハロー・キティとコラボレートしたり子供のためのCDをリリースしたり精力的に活動中。



1996年にデビューし、いきなりプラチディスクを獲得、大スターになったフィオナ・アップル。椎名林檎嬢とひとつ違いで、芸名に何か関係あるのかと思ったが偶然のようだ。キャッチーな名前とあどけないルックスの割に渋い歌と重いサウンド、きわどい衣装のビデオ、幼年期のレイプ体験や有名になってからの音楽業界批判などで話題を撒いた彼女だが、現在でも元気に活動中。



バミューダ諸島生まれのヘザー・ノヴァ。1993年にインディー・デビュー、1995年のメジャー・デビュー作「オイスター」が大ヒット、その年最高の新人女性シンガーとして話題を呼んだ。元スウェードのバーナード・バトラーと共作を発表するなど活躍。清楚さと官能美が同居した歌の魅力に加え、ドラマチックな曲作りの上手さが光る。現在まで途絶えることなくアルバムをリリース、バリバリの現役である。



どのアーティストも20年経っても現役で活動しているのは、やはりエヴァーグリーンなメロディと地に足の着いた活動故であろう。それは今聴くと時代を感じさせるグランジやオルタナ、エレポップなどと違った彼女たちのスタイルのブレのなさを証明している。癒しとかヒーリングという言葉は使いたくないが、聴いていて心の安静を取り戻せる音楽である。

何故でしょう
スザンヌ・ヴェガだけ
ちゃん付けです

250円コーナーには置いてないが、昔から愛聴している女性シンガーソングライターがキャット・パワー。1995年デビューだから上記のアーティスト達と同世代である。ソニック・ユースやモグワイなど人気オルタナ・バンドのフェイバリット・シンガーとして知られインディー・シーンを代表する女性アーティストである。今月リリースされた最新作「サン」も秀逸なメロディに溢れた傑作。






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ノイズ大学~JOJO広重+坂田明@渋谷UPLINK FACTORY 2012.9.25 (tue)

2012年09月27日 00時34分01秒 | 素晴らしき変態音楽


JOJO広重のノイズ大学 Vol.6(ゲスト:坂田明)

ノイズバンド非常階段のリーダー、JOJO広重が「ノイズ」という音楽表現についてトークと実演で詳らかにし、その魅力を紹介するシリーズ講義「ノイズ大学 /渋谷分校」(本校は大阪なんばベアーズ!)。第六回目となる今回は、新宿PIT INNでのライブが話題の『JAZZ非常階段』のメンバーであり、非常階段との共演盤のリリースが決定しているサックス/クラリネット奏者の坂田明さんを ゲストにお招きします。(UPLINK FACTORY HPより)
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JOJO広重さんは2001年から10年間「こころの歌・最後の歌」とういうコラムをアルケミーレコードのサイトに連載しており、2004年には同タイトルのトークイベントを移転前のUPLINK FACTORYで開催していた。町田康さん、遠藤ミチロウさん、三上寛さん、灰野敬二さん、山本精一さん、インキャパシタンツなどの豪華ゲストと音楽談義をするという内容で、灰野さんがゲストの時に行こうとしたがUPLINKの場所がうろ覚えで辿り着けず結局行けずじまいだった。コラムは100回の連載でプログレ、ハードロック、サイケデリック、パンク、ジャズ、フォーク、日本のロック、歌謡曲など幅広い音楽知識を活かして自らの経験を絡めて書かれた興味深い内容で、イベントもゲストの音楽体験を探求する貴重なものだったろうと想像する。

広重さんはライヴのMCが面白く、特にソロ・ライヴでの話は含蓄豊富で勉強になる。昨年末、新宿ピットインに大友良英さんとデュオで出演した時は二人のトーク、特に"ツイートしたら駄目だよ"と釘を刺しての裏話はまさにその場にいる者しか知り得ない貴重かつ抱腹絶倒な内容だった。

2011年8月から難波ベアーズで「ノイズ大学」というトークイベントを開始し、今年3月から渋谷分校としてUPLINK FACTORYでも月イチで開催されるようになった。今まで登場したゲストは美川俊治さん、山本精一さん、勝井祐二氏など異能音楽界の個性派揃い。第6回となる今回は2日前にJAZZ非常階段で共演したばかりの坂田明さん。共演CD2作も発売されたばかりだし、坂田さんもソロ・ライヴのMCでいきなりミジンコの生態について語り始めたりしてとても楽しいので、どんな会話が飛び出すか興味津津。


トークの内容を事細かに書くのは野暮というものだから、特に面白かった話を少しだけ記す。
広重さんが非常階段を始めるヒントに山下洋輔トリオのレコードを聴いて「こんな音楽が世の中にきっとある、と思っていた音楽がそこにあった」と衝撃を受けたのは有名な話。何と坂田さんは1982年新宿ロフトで非常階段を観たという。汚物や生魚やゴカイやミミズなどを撒き散らし女性メンバーが放尿するという過激なパフォーマンスでスキャンダラスな話題になっていた頃で、それを観た坂田さんは「こいつらにはついていけない。いい加減にしてほしい」と思ったそうだ。広重さんは楽屋で坂田さんが観に来ているらしいという話を聞いたが半信半疑だったとのこと。

それが27年後の2009年3月スウェーデンのノイズ&フリージャズ・フェスで再会し、それをきっかけに2009年8月難波ベアーズでの非常階段結成30周年記念ライヴのゲストとして坂田さんを呼んだのが初共演。坂田さんは「生魚だけは勘弁してほしい」と思ったが、ちゃんとした演奏だったので安心したとのこと。その縁で昨年坂田さんのソロ・アルバム「平家物語」のライナーを広重さんが書くことになり、今年4月の新宿ピットインでのJAZZ非常階段、さらにはスタジオ録音と今回の2回目のJAZZ非常階段に繋がった訳だ。「こうなるまでに30年近い年月がかかったけど出会いというのはホントにちょっとしたきっかけに過ぎない」と坂田さん。次は魚市場へ突っ込むしかないな、と冗談を飛ばす(ってかマジかも)。

山下洋輔トリオ時代の自分と今の自分は別人だと言いつつ、トリオに参加する経緯も色々話してくれたが、その橋渡しをした大阪の名物マネージャー阿部登さんの話や、テレビ番組で森山威男さんと30分間目茶苦茶な演奏をしたこと、80年代に打ち上げ宴会芸の新童謡がバカ受けしタレントとして人気を得るが自分では違和感を感じていたこと、ビル・ラズウェルやジム・オルークとの出会いと彼らへの感謝、イタリア・ツアーの凄まじく笑えるエピソード、などトークは2時間近く続いた。「ノイズ大学」というから"ノイズとは何ぞや?"という音楽論になるかと思っていたが、坂田さんの半生記に終始しとても面白かった。音楽論についても別の機会にお尋ねしたいものである。

その後デュオでセッション。二人だけではライヴでもCDでもやってないので史上初共演。15分ほどの短い演奏だったが大変貴重な魂の交感を経験できた。



ノイズ大学渋谷分校は10月にコサカイフミオ氏、11月に「蔵六の奇病」の作者の漫画家、日野日出志さん、12月には美川さんの「酒とノイズ」との合同イベントが開催される。また11/18に四谷アウトブレイクで大友良英さん、山本精一さんを迎えて四谷分校も開講。その現場でしか聞けないトークが展開されるのでご興味のある方はぜひご参加を。

11/29には80年代初期に大阪の第五列のメンバーがやっていた幻のユニット阿部怪異として広重さん+美川さん+吉田達也氏+Issheeさん(Bar Issheeのマスター)でイベントが開催される。対バンは高柳昌行さんの遺志を継ぐ集団投射。これまた見逃せないイベントである⇒doubtmusic presents 阿部怪異と集団投射

大学で
ノイズを学ぶ
ステキなり

10月にテイチクよりリリースされる「蔵六の奇病」30周年記念盤のチラシに「中坊時代にこのアルバムを聴いてぶっ飛んだ」という氣志團の綾小路翔氏がコメントを書いている。Twitterで広重さんが「"氣志階段"やりましょう」と呼びかけていたが、あながち夢じゃなさそうだ。実現したら凄えな~。


コメント (2)
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ダニエル・ブエス+広瀬淳二+吉本裕美子@阿佐ヶ谷 Yellow Vision 2012.9.24 (mon)

2012年09月26日 00時35分44秒 | 素晴らしき変態音楽


Daniel Buess来日公演
Special Session feat. SALK (Daniel Buess + Kumiko Okamura)

スイス・バーゼルを拠点に活動するドラマー/パーカッショニスト/エクスペリメンタル・ミュージシャンのダニエル・ブエスの来日ツアー。この日は女性ギタリストKumiko Okamura嬢とのデュオ"SALK"を中心としたライヴの予定だったが、Okamura嬢が急病で欠席、広瀬淳二さん、吉本裕美子嬢との3人のセッションになった。今回のツアーは六本木Super Deluxe 3Daysを始めとする「EXTREMITIES~JOLT JAPANESE AUSTRALIAN SONIC FESTIVAL 2012」を中心に東京・名古屋・大阪・京都の4都市7公演行われる。

吉本嬢からビデオ撮影を頼まれていたのだが、デジカメと三脚は持ってきたのに電池を充電したまま忘れるという失態を犯し急遽iPhoneとiPod、吉本嬢のスマホを使って撮影することに。さらに開演前にビール瓶をひっくり返し迷惑をかけてしまった。前日のJAZZ非常階段の後遺症だろうか?

Yellow Visionはカウンターとテーブル3つだけの小さなスペースで演奏が目の前で楽しめる。ブエスと共に来日中のミュージシャンも来店し賑やかな雰囲気。広瀬さんは福島ノイズ電車以来。電車は人が一杯で大変だった、と言うが一番歩き回っていたのは広瀬さんだった。前日ピットインで聞いた勝井祐二氏と岡野太氏とのバンド"太陽の塔"に触れると「ライヴは一回しかやってないかな~」とのこと。正に幻のバンドだったようだ。

最初にトリオのセッション。ブエスはエレクトロニクスとドラムを演奏。蕎麦打ちの麺棒の親玉のような自作楽器も使用する。広瀬さんのフリークトーンのテナーが炸裂、吉本嬢のギターもアブストラクトなフレーズを畳み掛けて三つ巴の爆音演奏。特に"麺棒"が凄まじいノイズを発し、JAZZ非常階段にも負けない異種格闘技の様相を呈する。20分の演奏。



続いてブエスのソロ。パソコンは使わず、テーブルに並べた電子楽器と自作楽器を駆使してユニークなエレクトロ空間を産み出す。海外ノイジシャンに多いドローン演奏ともハーシュ・ノイズの嵐とも違った美と破壊が共存したメリハリのある素晴らしいもの。ノイズ・ミュージックが如何に芳醇な世界か実感できる。ZENI GEVAのT-シャツが素敵だった。



休憩の後組み合わせを変えての3パターンのセッション。最初は広瀬さんと吉本嬢。サックスとギターのデュオというと阿部薫&高柳昌行の解体的交感を思い出すが、細かいタンギングで空気を切り刻む広瀬さんとE-BOW2個使いという反則技まで繰り出す吉本嬢の演奏はだれるところがなく即興のスリルに満ちたものだった。



続いてブエス+吉本嬢。ブエスの自由自在なエレクトロに引けを取らない吉本嬢のノン・イディオマティック演奏が印象的。女性ギタリストでこういう非ジャズ/非ロック的な演奏は珍しい。ギター歴20年、即興歴6年とのこと。最近とみに非イディオムな方向になってきたそうだ。ライヴ活動も盛んにやっているようだし、今後に期待できるギタリストである。



最後にブエス+広瀬さん。初顔合わせだそうだがインプロに国境なし。広瀬さんはその経歴から分かる通り、1980年代末まではフリー・ジャズ界で活動していたが、80年代末大友良英さんとの出会い以来所謂ジャズを遥かに凌駕した活動を行っている。ノイズ系のミュージシャンとの共演も多く、もっとロック寄りのファンにも知られてもいいと思う。エレクトロ・ノイズとジャンル分け不能のサックス・ノイズが共鳴し合った神々しい演奏だった。



非常階段程の知名度はないが、目指す方向が同じアーティストによるセッションは”JAZZ非”としてとても貴重な経験だった。

終演後ブエスと話をしたら来日はもう7、8度目だという。MIRやBuggatronic、BOLT Ensembleなど数多くのプロジェクトに参加し、ヘンリー・カウのティム・ホジキンソンとも交流があるという。ヨーロッパのフリーミュージック・シーンの進化には今後も注目していきたい。

スイスから
やって来たよ
ゼニゲバ好き

<ダニエル・ブエス ジャパン・ツアー>
9/26(水) 名古屋 K.D.ハポン
TestToneMusic presents vol.12[Daniel Buess+Cal Lyall+ 菊池行記 / BOLT Ensemble / Philip Brophy / Robin Fox / 岡野太+小埜涼子+武藤宏之]

9/27(木) 大阪 難波ベアーズ
<EXTREMITIES: JOLT JAPAN AUSTRALIAN FESTIVAL TOUR 2012>BOLT Ensemble (Australia) + Daniel Buess (Switzerland)/Yamamoto Takahiro(ex.busratch)+Naka Takuji/Philip Brophy(Australia)/Robin Fox(Australia)

9/28(金) 京都 アバンギルド
「EXTREMITIES: JOLT JAPAN AUSTRALIAN FESTIVAL TOUR 2012」Tim Olive + Cal Lyall/BOLT Ensemble (Australia) /Philip Brophy (Australia) /Robin Fox (Australia)/毛利桂

<広瀬淳二+組原正(グンジョーガクレヨン)>
11/17(土) 入谷なってるハウス
「やんてらのやぶれかぶれVol.2」組原正(g)広瀬淳二(ts)




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JAZZ非常階段@新宿ピットイン 2012.9.23 (sun)

2012年09月25日 00時59分36秒 | 素晴らしき変態音楽


JAZZ 非常階段 CD発売記念 GIG !
【MEMBERS】JOJO広重、T.美川、コサカイフミオ、JUNKO、岡野 太、坂田 明、豊住芳三郎、勝井祐二

先日お伝えしたように今年4月9日に開催されたJAZZ非常階段のライヴ盤「メイド・イン・ジャパン ~ live at Shinjuku Pit Inn 9 April, 2012」+坂田明さんを迎えての非常階段8年ぶりのスタジオ盤「メイド・イン・スタジオ」のレコ発イベントが開催された。ジャズの聖地ピットイン初出演、FREEDOMMUNE 0<ZERO>出演、福島でのノイズ電車・ノイズ温泉、と今年は非常階段のスペシャルな活動が目白押しだが、この2作同時リリースとパワーアップしたJAZZ非常階段のこの日のライヴはひとつのハイライトに違いない。前回も大盛況だったが、今回は噂が噂を呼んで好評でそれ以上の動員だった模様。ノイズ系ライヴで良く見る顔やFB/Twitter繋がりの人とも会った。

前回向かって右手の前から3列目に座り、コサカイ氏のまさかのダイヴ攻撃に襲われた教訓から、今回は左手、美川氏側の2列目に席を定める。ツイン・ドラムは先日のポール・ニルセン・ラヴ&ケン・ヴァンダーマークのライヴで予習済なのでその迫力は想像できる。開演前の観客の会話にメルツバウやインキャパの名前やFREEDOMMUNE 0の話題が聞こえ何となく嬉しい。

開演時間になると広重さん、JUNKOさんに加え今回初参加の岡野太氏と勝井祐二氏の4人が全員黒T-シャツで登場。前回同様「今日はちゃんと演奏します」との広重さんのMC。岡野氏と勝井氏は17年前にROVOの前身である太陽の塔というバンドで一緒だったという。そのバンドには山本精一氏や広瀬淳二氏なども参加していたが、音源は発表していないそうだ。

まずはこの4人での演奏。比較的抑えめの広重氏のギターに勝井氏のスペーシーなヴァイオリンが交錯する。左のドラムの椅子に座ったJUNKOさんが金切り声を上げると雰囲気は一気に非常階段になる。90年代に"大阪の奇蹟"と呼ばれたへヴィ・サイケ・バンド、サバート・ブレイズのメンバーだった岡野氏の激しく乱打するドラミングが混沌を拡張する。勝井氏は途中からエフェクターで電子音を操作。次第に熱を帯びるが、後半の全員での演奏に備えてか爆発寸前で留めた小手調べ的な25分の演奏。



続いて美川氏、コサカイ氏、坂田さん、SABUさんの4人組。今度は3人が白い服。非常階段には4月以来の参加のコサカイ氏がノイズ・バンドSLOGANのT-シャツを着ているのが素敵。SABUさんは二胡を演奏。2001年に購入し2005年からライヴで演奏しているとのこと。インキャパ組のエレクトロ・ノイズと融合したアンビエントな音響の中に坂田さんのクラリネット、歌、アルトが屹立する空間は非常階段とは違った幻想的な雰囲気があり面白い。スタジオ盤にはインキャパ+坂田さんのトラックが収録されておりエレクトロ音響をサックスが切り裂く聴覚的にも気持ちいい。30分の演奏。Session 1、Session 2ともに擦弦楽器が加わることにより無愛想な非常階段サウンドに叙情性が加わり新鮮な感覚だった。



第2部はいよいよ8人揃っての集団ノイズ即興。コサカイ氏がさりげなくボルビドマグースのT-シャツに着替えていたのにニヤリ。「おー行くぞ!」という広重さんの掛け声で一斉にパワー全開の怒涛演奏開始。非常階段としては小音量だろうがピットイン史上最大音量であることは間違いない。とにかく音量に関係なく音の強度は普段の非常階段以上のものがある。ツイン・ドラムの迫力は筆舌に尽くしがたい。親子以上に歳の離れたSABUさんと岡野氏が対等に張り合って叩きまくるエントロピーは1+1=3以上のエネルギー。初っ端から凄い演奏だったのにどんどんパワーアップしていく。広重さんはギターを振り回して観客と演奏者を煽る。坂田さんが辛抱たまらずデス声で吠え始める。絶叫している時は鬼の形相なのが歌い終わるといつもの温和な表情に戻るのが面白い。広重さんが坂田さんを指さして鼓舞するジェスチャー。爆走するエネルギーは誰かが演奏を休んでも変化なく持続する。30分過ぎに広重さんがしきりにコサカイ氏ににじり寄り火に油を注ごうとする。比較的痙攣具合が大人しめだったコサカイ氏が遂に動く。いきなりアンプを抱えて客席乱入、そのまま通路を最後尾まで突進する。待ってましたとばかり観客は大喜び。しばし客に埋もれて暴れた後、ステージへ戻る途中、何と正に前回私が座っていたのと同じ席の客の上に倒れ込む。”ピットイン右3列目危険地帯説”はやはり本当だった!ステージでは広重さんがギターを最前列の客に押しつけて攻撃中。コサカイ氏のエフェクターボードはとっくに破壊されている。



80年代初期の汚物に塗れた過激パフォーマンスが出現してもおかしくない程の阿鼻叫喚地獄。観ている内にこの状況の異常さに気がついた。ぐしゃぐしゃのカオス状態が炸裂するステージに対して、観客は行儀よく座って眺めているのだ。動物園の檻を覗いているような断絶した世界。安全地帯に身を置いて戦争シーンを見ているような安穏感。これは正しい非常階段のライヴの観方なのか。観客自身もパフォーマーと一体化して自らの攻撃本能を曝け出してこそこの演奏に相応しいのではないか。こんなことなら敢えて前回と同じ席に座ってコサカイ攻撃を受ければよかった、などと考えちょっと居心地の悪さを感じたのも事実。45分の演奏は前回以上に素晴らしい混沌の美だったし、まだ足りないと前回やらなかったアンコールを嬉々として披露してくれてリスナーとしては大満足だったが、次回はピットイン初のオールスタンディング・ライヴなんて実現できないかな~。

たぶん今日のライヴを一番楽しんだのは「これが出来るようになるまで40年かかった」「昔の山下洋輔トリオみたいだった」と感想を漏らしていた坂田さんかもしれない。メンバー全員とても楽しそうに機材を片付けていたのが印象的だった。

JAZZ非とは
JAZZに非ずと
いう意味か

帰宅して会場で購入した「メイド・イン・ジャパン」をパソコンに入れて出てきたアーティスト名/曲名に思わずヤラレた!と思った。ネタばれになるので詳しくは書かないがさすが広重さん、この悪戯は史上最高ですな。

[10/1追記]
地引雄一さんのサイトに当日のリハ&ライヴ写真が掲載されています。
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この絵の画材は何かわかる? ブラジル・アーティストのマリファナ・アートが話題に

2012年09月24日 00時26分24秒 | アート!アート!アート!


ここに1枚の絵がある。セピア色が美しいステンシル画だ。色にムラがあるのがまたノスタルジックで味わいがある。

一体どんな画材を使ったらこのような味が出せるのだろう。なんとこの絵は、マリファナ(大麻)の煙で描いたというのである。

マリファナ・アートを試みているのはブラジルのアーティスト Fernando de la Rocqueさんだ。彼は世の中にマリファナについての議論を巻き起こしたいとしているそうだ。

絵の描き方は以下のとおり。まずステンシルの板を紙の上に置き、そこに煙を吹きかける。1週間置いておくとアートが完成するという。Fernando de la Rocqueさんの作品を報じたメディアは「マリファナの煙の成分からして1週間放置しただけで紙に色が定着するというのは考えにくい。恐らく特殊加工された紙か薬品など彼の "企業秘密" があるのでしょう」としている。

この"画材"については、いくら違法でない地域だったとしても賛否は両論だ。「彼の議論を巻き起こす」という点では成功したと言えるのではないだろうか。元手もかなりかかるので同じ手法を用いる芸術家が今後現れるかどうかもわからない。しかし、彼の作品は1枚2500ドル(約19万5000円)の価値がつくほど評価されているそうだ。
(Rocket News 24)



大麻吸い
ラリって描く
ラリアート

うらやまし、合法トリップ芸術家。

▼"キャプテン・トリップ"の芸術的演奏

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不失者@名古屋 TOKUZO 2012.9.21 (fri)

2012年09月23日 00時56分35秒 | 灰野敬二さんのこと


『まぶしい いたずらな祈り』
・不失者

9/18リリースの不失者のニュー・アルバム「まぶしい いたずらな祈り」レコ発東阪名ツアー~難波ベアーズ2 days/名古屋TOKUZO/渋谷WWW。昨年1月に心斎橋クラブクアトロに不失者を観に行った友人と再び地方遠征することにした。昨年は友人がひとりで自動車を運転して2泊1日の強行軍で多大な苦労をかけたが、今回はバスで名古屋ヘ行くことになった。東京にいると日本のアーティストのライヴなら大抵何でも観ることが出来る。特に灰野さんは都内で月数本のライヴを行っているのでいつでも観ることは可能だ。しかし地方ではそういう訳には行かず、年に1~2回くらいしか来ないアーティストのライヴにお客さんもアーティスト本人も東京とは違った気合いと熱気が感じられて新鮮である。また、ベアーズやTOKUZOのような有名なライヴハウスには一度は行ってみたいと思っていた。

朝新宿を出て6時間、夕方4時に名古屋に到着。10数年ぶりだ。栄周辺はうっすら記憶に残っているが、ショッピング・ビルは殆ど建て変わっている様子。まずは今池にあるTOKUZOへ場所確認も兼ねて向かう。一階が飲み屋の青いトタンの建物の2階。不失者のサウンドチェックの音がだだ漏れだ。友人の話だと騒音問題で夜10時以降は音出しが出来ないとのこと。今回TOKUZOのHPとパンフレットの不失者の紹介文を書かせてもらったのだが、依頼いただいたTOKUZOのPA担当で自主レーベルオーナー兼ギタリストの臼井康浩氏に挨拶する。"音楽する赤ちょうちん。ライヴの後は朝までやってる呑み屋"と称するTOKUZO(得三)はまさに天井が高いビアホール風居酒屋という風情のユニークな空間である。ステージの昭和の香り漂う作りもいい感じ。

名古屋といえばひつまぶし、と友人が数年前に行ったというウナギ屋へ行ったら値上がりしていてウナギには手が出ずその店の一番人気という豚ロース照焼き定食を食す。開場時間が近づいてきたので、常に最前列を目指す我々は先頭を確保すべくTOKUZOへ向かうが既に5人位並んでいた。ひとりは東京の灰野さんのライヴ友達の女性で大阪・名古屋3日連続で観に来たという。

椅子が並んでいてリラックスした気分で観られる。地元のミュージシャン/アーティスト関係のお客さんもいるようで個性的な人が多いが、東京よりも和気あいあいとした雰囲気で、灰野さんのライヴの定番のヴァイオリンのSEやお香の香りも厳粛な雰囲気にはならないのが面白い。丁度この日まで映画「ドキュメント灰野敬二」が公開されていたのでお客さんの殆どが観ている筈。映画の中の不失者のスタジオ・シーンを観れば、実際のライヴ演奏がどのように生まれたのかが判り興味深い。

10分遅れで3人がステージに現れる。新作CDのレコーディング・メンバーはナスノミツル氏(b)&高橋幾郎氏(ds)だが、ライヴは若手の亀川千代氏(b)&Ryosuke Kiyasu氏(ds)の長髪トリオ。まずはドラムの断続する打撃音に徐々にベースが加わる展開でスタート。10分くらいそれが続いた後、灰野さんがクリアトーンのギターをつま弾きながら歌う。 曲の途中で「Eの1」というような言葉や大きなジェスチャーで演奏の指示を出す。厳格に抑制されたストイックな演奏が続く。会場のエアコンが結構寒いが演奏も氷のようなクールネスを発散。灰野さんはギターよりも歌=言葉に重きを置いたパフォーマンス。言葉の一語一句がナイフのように空間を引き裂く。亀川氏とKiyasu氏のインタープレイは丁々発止とした居合い抜きのようだ。1時間近くピンとした緊張感に溢れた演奏が続き、徐々にヘヴィ・ロックに転換。ロック本来の原初性とエネルギーを放出する「暗号」の30分に亘る重たくうねる演奏はこの新生トリオの真骨頂、この日のハイライトだった。珍しく灰野さんはサブ・ギターを用意している。ニューモデルの赤いギブソンSG。途中で持ち替えて演奏。最近は愛用の茶色のSG以外のギターを弾く姿を観てなかったので何だか新鮮だ。「あっち」「おまえ」といった代表ナンバーを挟みつつ新作の「まぶしい いたずらな祈り」も披露。前回のFREEDOMMUNE 0<ZERO>からさらにどっぷりと深化した演奏を展開した。コメントにも書いたが文字通り"唯一無二"の灰野ワールドを体験できた150分だった。観客は唖然とした様子でアンコールの拍手も起らなかった。後で聞いたら実はアンコール曲を用意してあったそうだが。



今回のツアーは機材一式をヴァンに積んで持ち込みライヴだったとのこと。サブ・ギターも東京から持ってきたという。ローディーとレコード会社の人が同行したが、灰野さんはさすがに3連チャンで声がキツかったと言っていた。

ライヴの後そのまま飲み屋に変わるのがTOKUZOならでは。お客さんがグループ同士で談笑を始める。深夜バスで東京へ帰るので灰野さんと臼井氏に挨拶して名古屋駅へ向かった。先日の福島遠征の教訓で深夜バスの必需品、空気枕を持って来たので狭い座席でも快適に眠れた。

得三の
不失者ライヴ
昭和風

9/27の渋谷WWW公演にはやくしまるえつこ嬢がスペシャル・ゲストとして朗読ライヴで参加が決定した。
10月上旬から不失者としてヨーロッパ・ツアーへ出発する。


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シベールの日曜日/los doroncos@幡ヶ谷 forestlimit 2012.9.20 (thu)

2012年09月22日 00時03分18秒 | ロッケンロール万歳!


「村の緑の保全協会」
シベールの日曜日/ロス・ドロンコス/DJ:永田一直

先日もお伝えしたようにベースの早川氏が脱退するため、現メンバーでのシベールの日曜日のラスト・イベントが開催された。ニュー・アルバム「Gypsy House」を手売りで販売し購入者の名前と連絡先を把握しており、9月上旬にこのイベント「村の緑の保全協会」の告知を兼ねた暑中見舞いのハガキが届いた。「Gypsy House」は森を意識して制作した、との坪内氏からのメモが記されていた。新作のジャケットが野外写真だったりレコ発ライヴを河原で行ったり、坪内氏は自然保護意識に目覚めたようだ。詳しくは本人に確認したいものだ。誰かインタビューしてくれないかな~。「Gypsy House」購入者にはそのダブ・ミックスCDをプレゼントということで会場の物販で「Cosmic Gypsy House」という7曲入りCDをゲット。
[9/23追記:イベント・タイトルはキンクスのアルバム「The Kinks Are the Village Green Preservation Society (1968年)」から取られている]

共演は元裸のラリーズのdoronco氏(vo.g)、ニューロックシンジケイトを率いる川口雅巳氏(b)、マヘル/マコメロジーの長谷川真子嬢(ds)、seven氏(g)の4人組los doroncos。彼らを観るのは数年ぶり。

DJの永田一直氏がモンド歌謡、ストレンジ電子音楽、変態アヴァンポップ満載のエグい選曲で会場を不思議な空気で満たす中、徐々に観客が入ってきた。スタンディングだったが最前列に椅子を見つけ座ってゆっくり鑑賞。

事前の告知ではシベールが先攻ということだったが、順番が逆になりlos doroncosからスタート。会場は広くないので私の目の前に川口氏が立つ。doronco氏はラリーズではベースだったが、今はギター&ヴォーカル。10年くらい前dasというバンドで法政大学学生会館で観たことがある。los doroncosはリラックスしたハッパ系のサイケデリック・ロック。メロディを活かしたアコースティック・ライヴも行っているが、エレクトリック編成では自由度の高いビートの上をdoronco氏のファズ・ギターが暴れるというラリーズを彷彿させるサウンドを展開する。全曲10分を超える長尺演奏。幻惑的なライトショーも手伝って夢幻の世界に意識が浮遊する。1時間のステージ。



続いてシベールの日曜日。坪内氏は何度もエフェクターのチェックをしている。このトリオになって、以前のラリーズ系フィードバック・ギター色が薄れ、よりタイトでファンキーなヘヴィ・サイケ・ロックを色濃くした。この日は「Gypsy House」レコ発でもあるので新曲中心のセットリスト。といってもアルバムの特徴のひとつであるインド風アシッド・フォークではなく、豪快なロック演奏。以前も書いた通り、レコードとライヴを別モノと考える姿勢にブレはない。最近ギターの弦が切れ自分のギターを弾けないことが続いたが、この日は愛用のストラトの機嫌もよく最後まで坪内氏本来のプレイを貫いた。1時間で本編は終了するが、早川氏のラスト・ライヴという感慨もありもう1曲演奏。この最強トリオが観れなくなるのは誠に残念である。



ドロンコと
シベールは
相性よろし

早川氏は愛のために死すには10月半ばの難波ベアーズのライヴまで参加するとのこと。





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NO CULTURE, NO FUTURE~アーバンギャルド「さよならサブカルチャー」

2012年09月21日 00時54分04秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


自分のアイデンティティは何処にあるのか?------------10代の頃そんな疑問を常に心の片隅に抱いて生きてきた。図書館で借りてきた古今東西の文学を読み漁り、名画座で小難しいヨーロッパ長編映画3本立てを観て、薄暗いレコード店の埃を被ったレコを掘る日々を過ごした。大衆的な人気を得た作品には背を向けて誰も知らないような虐げられた存在に憧れた。wikiによれば『「サブカルチャー(subculture)」とは、主流文化に対し、一部の集団(一例として若者)だけを担い手とする独特の文化である。』とある。その意味では私の10代はゴリゴリのサブカルだったわけだ。この歳になってこんなブログを書いているとサブカルの香りはどの時代にも常に魅惑的に囁きかけ多くの若者が感染してきたのだと実感する。

アーバンギャルドの2012年3枚目のシングルのタイトルは「さよならサブカルチャー」。前作の「病めるアイドル」で現代の主流の一つである偶像=アイドル賛美に警鐘を鳴らしたと思ったら、次のターゲットは自分達自身が属する非主流派たるサブカルへの決別宣言である。松永天馬氏の饒舌なコンセプト激文を引用しよう。
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アニメやマンガがCool Japanの象徴となり、アイドルやボーカロイド、同人音楽が音楽業界を席巻し、 純文学はラノベからの流入を避けられず、もはやサブカルチャーがハイカルチャー以上に影響力を持つ時代。
それはもはや、本来の意味の"サブ"カルチャーではない。
では、形式上残された「サブカル」という言葉に沁みついた、権威は、ファッションは果たして何なのか。
「サブカルっぽい」とも揶揄され、サブカルバンドの代名詞として語られることも少なくない
アーバンギャルドの新作のテーマは、ずばり「サブカル」との出会いと別れだ。

誰も知らなかった、
誰かに知られたくなかった、
誰かに聴かせたかった、
僕だけのサブカルチャー。
それからの決別は、即ち、これまでのアーバンギャルドからの決別を意味する。

子どもたち、お別れの時間だ。花をたむける代わりに、投げ捨ててくれ。
本を、レコードを、フィルムを、愛を。

(松永天馬)
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アップテンポのハードコア・テクノ・ビートによこたんのハイトーン・ヴォイスで♪さよならサブカルチャー/生きたいわたし サブカルチャー/鏡の中 わたしを殺したの♪という生死の境界を曖昧模糊とした空間へ放り投げるような歌詞が歌われる。ライヴのハイライトを飾るべく作られた曲調に自らのアイデンティティの放棄を託したアーバンらしい逆説的ナンバーである。常に冷静に分析的・諧謔的な世界を描いてきた天馬氏の戦略を見事に表現したPVも秀逸。カップリングのエスノ・ダンストラック「何となく、カタルシス」でも”死による浄化”を歌っている。このシングルのテーマは"死ぬことによる再生"であり、童貞処女、オタク、リスカ、病気といったマイノリティへの愛と叱咤激励を込め現代日本の病理とシンクロした世界を描いてきたアーバンギャルドの新たなる旅立ちへのステイトメントなのである。

「さよならサブカルチャー」PVはコチラ

3曲目には木村承子監督映画『恋に至る病』主題歌をリアレンジした「子どもの恋愛 OTONA remix」を収録。

真っ白な
灰になって
甦る

10/6(土)渋谷WWWにて80年代後半インディーズ御三家のひとつ"有頂天"で活躍するとともに、伝説の"ナゴムレコード"主宰者としてサブカルの象徴だったケラリーノ・サンドロヴィッチ氏率いるケラ&ザ・シンセサイザーズと対バンする。

そしてふたたび全国ツアー開催!!!!!!
『アーバンギャルド 病気の再来ツアー(仮)』
10/26(金)仙台 LIVE HOUSE enn 2nd 
10/28(日)札幌 DUCE
11/3(土・祝)名古屋 ell.FITSALL
11/4(日)大阪 Music Club JANUS 
11/11(日)赤坂 BLITZ 
11/16(金)京都 MOJO
11/18(日)福岡 VIVRE HALLopen
11/19(月)広島 ナミキジャンクション
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ロリータ18号/八十八ヶ所巡礼/Droog@下北沢 CLUB Que 2012.9.18 (tue)

2012年09月20日 00時39分29秒 | ロッケンロール万歳!


"CLUB Que shimokitazawa 「新夜想曲第十八番・ウタゲアリキ」 No.18 anniversary"
-18周年だけにカツテないスペシャル!!-
ロリータ18号/八十八ヶ所巡礼/Droog

下北沢CLUB Queが18周年を迎えスペシャル・イベントを開催中である。1994年10月オープン。渋谷系に対して「下北系」と呼ばれるシーンの中心地として活躍してきたライヴハウスである。オープン当時のスケジュールを見るとSECRET GOLDFISH、GREAT 3、スターワゴン、エレクトリック・グラス・バルーン、CORTAR OF THE DEEPERSなど90年代ロックを象徴するバンドが出演している。渋谷系は死語になったが、下北系は今でも日本のインディー・シーンのいちジャンルとして使われている。

この日は「18日」ということで数字の8に因んだバンドを集めたイベントだった。こじつけっぽいがDroogもロゴを縦にすれば8になるという。このイベントを知った時なぜロリータ18号と八十八ヶ所巡礼が共演を?と思ったものだ。人気急上昇で取りにくい八八のライヴ・チケットがロリータ経由で取れて良かった。ロリータとDroogは一度対バンしたことがあるが、八八とは初顔合わせ。

会場は若いファンで満員。背のちっちゃな女の子が多いので後列からでもステージがよく見える。会場に着いたとき丁度最初のDroogが始まるところだった。大分出身の彼らはこの春にメジャー・デビューし新聞でも取り上げられたので名前だけは知っていた。九州の恐るべき十代パンクスと話題になったそうだ。不敵な面構えのイケメン4人組で熱狂的なファンがステージ前でモッシュする。ハードなパンク・ナンバーに加え腰の座ったロックやバラードもあり、ただの若さまかせの暴走野郎じゃないと感心した。ニューヨーク・ドールズやジョニー・サンダースを思わせるグラム・パンクは古くは村八分やサンハウス、最近では毛皮のマリーズを思わせる。ヴォーカルが最近の若手にはない妖しいヤバさを持っていてなかなかいい。もしかしたらマリーズのように化ける可能性を秘めた要注目のバンドである。



Droogが終わると後列で眺めていた女子が一斉にステージ前に移動する。1年前は男女半々だった八十八ヶ所巡礼のファンが圧倒的に女子中心になっていて驚いた。新作「○△□」を出してからのライヴは初めて。新作を出してもあまりメディアには登場していないのにこの人気沸騰ぶりは凄い。クチコミとライヴだけでやってきた稀有なバンドである。楽曲/演奏が他のバンドと一線を画しているのは彼らのPVを観れば一目瞭然だ。私は”妖怪プログレ・ハードロック”と呼んでいるのだが仏教や霊界をテーマにした個性的な歌詞と超絶変態ギターを武器にした異能サウンドは、寺山修司のアングラ風味、三島由紀夫の武士道精神、夢野久作のドグラマグラの21世紀的展開といえる。敢えていえば筋肉少女帯、人間椅子、ゆらゆら帝国の流れを受け継いでいる。しかしそのどれとも違う非日常世界が八八の持ち味である。マーガレット廣井氏はMCで「親孝行バンド八十八ヶ所巡礼です」「愛国心はありますか、貴様ら」と言ったり君が代」を歌ったりするが、この道徳心/愛国心がマジなのかパロディなのか謎なのも興味深い。新曲も完璧な演奏、最後はKazuya Shimizu氏がギターをお尻で弾くという技を見せた。



八八が終わると女子が大挙して帰り観客が半分位になってしまった。この日の盛況ぶりは八八目当てだったのだ。最前列へ移動し先日の誕生日ライヴに行けなかった40歳石坂マサヨ嬢の御姿を間近で拝見。いつもの脳元気なマーチのSEに乗せてロリータ18号のメンバーが現れる。マサヨ嬢は「DESTROIN」の旗を持って登場。少し寂しい客席へ激を飛ばす。♪餓鬼の戦車で突撃だ Oi!♪の「デストロイン」からスタート。観客のほとんどが初ロリータだったが「お客さん、曲を知らなくてもOi Oi言ってればいいんですよ」というMCに次第にOiの合唱に。「ひとこと言っていいですか?ここは乾燥してるね~」と言って始まる水吹き大会も盛り上がる。CLUB Queは久々だと言うが二位店長がQueを始める前に下北沢屋根裏の店長だった頃、高校生のマサヨ嬢がデモテープを持参して以来の付き合いだとのこと。因みに屋根裏ではテープ審査に2度落ちたそうだ(笑)。「CLUB Que18周年はおめでたいけど、ロリータは結成23年。5年年上ですよ」とアピール。最前列でポゴダンスをしていたスキンヘッドの古参のファンが隣で踊っていた若者を肩車して盛り上がる。マサヨ嬢は客席へ降りてきて歌う。11月に久々の新作CD「YES, PUNK ROCK call with me!!!」をリリースすることを発表。最後の曲ではCDタイトルを書いたプラカードを持って歌う。初めて観たお客さんも大喜びでアンコールを求めての「Oi!Oi!」のコールは客電が点くまで10分近く続いた。



異色の組み合わせのイベントはとても楽しめた。ロリータと八八の対バン、また観たいな~。

8繋がり
末広がりで
おめでたい

10月は八十八ヶ所巡礼の全国ワンマンツアー。渋谷クアトロのチケットは本日の時点ではまだ購入できたがSold Out必至。今すぐ予約に急げ!
<八十八ヶ所巡礼ワンマンツアー○△□>
2012/10/05(fri) 仙台PARK SQUARE
2012/10/12(fri) 渋谷CLUB QUATTRO
2012/10/19(fri) 札幌COLONY
2012/10/26(fri) 大阪MUSE
2012/11/02(fri) 福岡graf
2012/11/10(sat) 広島4.14
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