第1回【輝く、盤魔殿レコード大賞!!!】
盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會Vol.31
地下音楽不法集会
2019年12月27日(金)阿佐ヶ谷TABASA
19:00 Open/Start ¥1000 + 1drink
2017年5月2日西麻布Bullet'sでスタートした"踊れないDJに特化した”DJイベント『盤魔殿』も2年半を過ぎた。4月12日に幡ヶ谷FORESTLIMITでライヴアクトを迎えて開催した盤魔殿スペシャル【∵23∵盤魔殿】は50人を超える大盛況、スピンオフイベントとして《哲学者の薔薇園》+盤魔殿コラボイベントや暗黒系アイドルNECRONOMIDOLのヲタクによる『ネクロ盤魔殿』を開催し、世の中に<盤魔殿精神 Esprit du Disque Daemonium>を拡張した。最近では踊れない筈の盤魔殿で踊るムーブメントが発生するなど、新たな現象が起こってもいる。
まもなく3年目に突入する盤魔殿の2019年の総轄として第1回『輝く、盤魔殿レコード大賞』が開催された。会場はいつもの渋谷から離れて、中央線のコア地帯・阿佐ヶ谷の小さなステージがあるライヴバーTABASA。年末仕事納めの日に10人を超えるお客さんが集まった。出演順はくじ引きで決め、各DJ持ち時間20分で自ら選曲した3曲(内1曲は新録新譜)をプレイしつつ曲の説明やエピソードをトークするという趣向。普段は黙々とレア盤をプレイするDJたちの蘊蓄とマル秘の逸話に溢れたトークに笑いや溜め息が起こる和やかなひとときを過ごした。
全員のプレゼンが終了したところで、お客さん、出演DJ、TABASAスタッフ全員の挙手で『盤魔殿レコード大賞』を選定した。
大賞 脳BRAIN / Surfin' L.S.D
2位 触媒夜 / 沈行
2位 巫女舞いろ / anima animus
4位 割礼 / のれないR&R
5位 Brion Gysin / Self-Portrait Jumping
5位 La Tene / Parade Du Soliat
この日来場者に無料配布されたZINE『盤魔殿アマルガム』特集:2019年私の収穫からの引用と共にイベントの模様を紹介しよう。
フランスの地下音楽レーベル"Afterhours Eden Prostitut"からリリースされた
”Mæditerhanean Youth Club”と”Cia Debutante”…
それぞれが別々の場所と異なる日時で行ったライブを収録したカセット作!!!
ジャケットに惚れ、西新宿のNEdSにて購入に至った。
先ず、A面に収録されているのはMæditerhanean Youth Club… カセットテープを介して伝わる激震に胸がグラグラと振動しているといつの間にか音々が混濁する渦に引きずり込まれ、瞑想状態に…
続くB面のCia Debutanteは闇雲の中心より呻くかの如き妖しげな声から始まる… 空間に広がるドープな黒煙に意識が捕らえれれば、護摩焚きを想起させる鈍重で深いビートに精神の奥底を打たれ、前述した瞑想状態から進んだ先の音の深層へ没入し、聴き終わったあとは何とも清々しい気持ちになる…
カセットでのリリースはより一層DIYを感じさせるのみならず、霧がかかったかのような少しくぐもった音質は奏者と音とが脈動し、衝突→閃光を放っていたであろう当時の現場の空気を"再生"し、鼓膜まで運んでくれている…そんなことを思わずにはいられないのである。
Gökçen Kaynatan - Cehennem
トルコの伝説的な電子音楽家Gökçen Kaynatanが1973年から75年の間に録音した未発表作品。一昨年にリリースされた編集盤に比べて、よりコンセプチュルな内容になっている。
Gökçenは50年代末からロックギタリストとして活動し人気を博していたが、滞在先のドイツでEMSのSynthi AKSと出会い 電子音楽に開眼する。ライディングなども駆使したサイケデリックなライブ活動の傍ら、1973年に2枚のシングルをリリースした。しかしその後作品のリリースをすることなく、もっぱらライブ活動とテレビ番組向けの楽曲制作を行った。
2017年、英Finders Keepersにより、長らく聴くことも難しかった2枚のシングルの楽曲に未発表曲を加えた編集盤がリリースされた。そして今回リリースされたアルバムはタイトルがCehennem(Hell)、音楽性はクラウス・シュワルツなんかに近いがより混沌としており、吹き洗ぶシンセの嵐に地の底から湧いて来るようなグルーヴはGökçen独自の世界観を作り上げている。当時のクラウドロックの名盤群と比てまても何の遜色もない驚くべきクオリティで、もし当時トルコでリリースされていたらプログレ、サイケファン垂涎のレア盤になっていたに違いない。
またGökçenは音楽制作の傍ら絵画も多く描いており、そのテーマの多くはアルマゲドン後の世界、環境汚染で荒廃した大地といった内容で、まさに彼の音楽をビジュアル化している。
アナトリアの大地に埋もれた秘宝、是非多くの人に聞いてもらいたい。
追悼 織茂しづ子
2019年9月5日 織茂しづ子は 地上より永遠に旅立った。 「巫女舞いろ」の活動を通じて平和と愛と大地との共生を訴え続けた彼女の生涯であった。
織茂敏夫・しづこ夫妻は70年代末期ロックバンド「いろ」を結成。インディーズシーンで活動。この時の演奏はしづこがギター、敏夫がドラムを担当し、いでたちはパンクロッカーそのもので、フリーなインプロビゼーションと絶叫するボーカルといった風情であった。1986年のチェルノブイリ原発事故以降は電気を使った演奏はやめ、アコースティックギターにピアノやドラムといったフリーミュージック然とした編成となる。敏夫の家が代々富士講の行者であったこともあり、フリー・シャーマニック・インプロビゼーション・ミュージックへと変化し、御神楽や能など民族音楽の影響を受け、独自の表現方法による「巫女舞・いろ」を始める。演奏場所も田中正造を祭る神社である田中霊祠での奉納演奏、各地の神社仏閣での奉納演奏、真鶴ガンダーラなどでの野外イベントというようにライブハウスでの演奏は基本行わない方向になっていく。白楽ビッチェス・ブリュー、21世紀になっては阿佐ヶ谷イエローヴィジョンなどが例外的に出演するライブハウスであった。そのため一般の音楽ファンよりもヒッピー系イベントに参加する人や反核活動家といった層において知る人ぞ知る存在であった。年に二回5月15日のしずこバースデイや12月21日の冬至祭において、織茂氏自宅スタジオ兼工房である「月見堂」で行われるライブ儀式には、小田原や浜松からヒッピー系のミュージシャンが集い、夜通し演奏が続けられた。なおこのスペースはパンクアクセサリーショップでもあり、自作の金属製アクセサリなどが販売されていて、高校生だったころの山ノ内純太郎(ゲロゲリゲゲゲ)も足しげく通っていた。後述のカセットのいくつかはVIS A VISから再発されている。
2019年オーストリアの映像作家HEIDRUN HILDEFEINDにより彼らの記録映画Time is nowが制作され、2019年1月31日から3月31日までウイーンのcecessionギャラリーで上映され、サントラ盤もアナログ12インチで発売された。この映画に触発されて、スイスの映像作家による映画が別途製作されていたが、織茂しづこは、その完成を見ることはなかった。
《フィリップス現代音楽シリーズ・第5巻》「実験的現代音楽の展望」制作:ピエール・アンリー
2019年1月、松村正人著『前衛音楽入門』が出版された。バンド湯浅湾のベーシストにして、拙著『地下音楽への招待』のあとがきを担当した編集・文筆家でもある松村が、学究的なイメージのある現代音楽を分かりやすく解説した入門書である。予てより現代音楽に惹かれ、理論や思想を知らないまま愛聴して来た筆者にとってはなるほど感慨深い出版であるが、結局「音」を「音」として自分なりに歪曲して楽しむ聴取姿勢に変化はない。筆者が偏愛するフランスの現代音楽家ピエール・アンリは、あらゆる「音」を「個性的な物体Object」として蒐集することに79歳で死ぬまでこだわり続けた。そしてポップミュージックは異教の儀式であり、エレクトリックミュージックは音楽の汚染であると弾劾した。そうした頑迷さこそが過去のアヴァンギャルディストの神髄であり、『前衛音楽入門』の帯に“アヴァンギャルド”とはなんだったのか!?と過去形で記されたことは、境界を越え、柔軟さを良しとする現代への逆説的なアンチテーゼと言えるかもしれない。60年代半ばに日本ビクターから発売されたこの2枚組LPボックスには、アンリの手で制作されたベリオ、クセナキス、カーゲル、フェラーリ、プッスールなどの電子音楽&ミュージックコンクレートの古典が収録されている。藤原義久氏によるライナーノーツの最後に書かれた「提示された音を虚心に聴くことが一番大切なこと」という一文に、現代も過去も「音」の感受の在り方に違いがないことを実感したことが2019年の収穫だったと言えよう。
改めて2019年度を振り返ると、個人的に音楽に対する接し方が「激しく」変わったことを実感。この変化はヴェイパーウェイブからの影響が大きい。音楽に対しての知識欲が大きくなるのと反比例するようにレコードやCDなどへの物欲は激減していった一年だった。そんななかで今年の一枚といえばコレ。DVD-R作品なので反則気味だが、クラブカルチャーの極北的な何かがこの作品には凝縮されているので紹介したい。
脳BRAIN / Surfin’ L.S.D (L.S.D L.T.D) 2019
かつて90年代一時的にインディー・ミュージック界で局地的に話題となったLo-Fiムーブメントが突如墓から掘り起こされたテン年代。そのテン年代も終わりを告げようとする現在、ヴェイパーウェイブからLo-Fi HipHopまで、ネット内を中心に憑依し続けたポストLo-Fi運動のシンセミアと呼ぶべき存在が脳ブレインである。スカムなコラージュ・ノイズとアシッドなビートがもつれあう曲がりまくったそのサウンドもさることながら、脳ブレインの重要性はそのビジュアル面にも大きくある。例えばヴェイパーウェイブがバブル期のビジュアルを使用することでアシッド・キャピタリズムを召喚したのに対して、脳ブレインは70’s~80’s映画のイナたいエグみのみを抽出しドリームマシーンのようにグルグル回転させることで上野オークラ劇場2Fをイリーガルなレイブ会場へと変換させる。「ゴダール映画史へのスカムサイドからの返答」という謳い文句も納得するしかない走馬燈映像MIX作品。
というわけでみなさん良いお年を!!!
とにかく今年2019年は、十数年ぶりにウィリアム・バロウズ研究にハマった一年だった。
きっかけは2つある。
ひとつは『バースト・ジェネレーション Vol.2』で、90年代サブカル特集をしたことだ。鬼畜・悪趣味ブームと言われた90年代の日本の出版業界で起きた社会現象において、その仕掛け人である青山正明と村崎百郎がともにバロウズから多大なる影響受けていたことによる。
もう一つは、言わずもがな、盤魔殿のレギュラーDJにして、インダストリアル・ミュージック研究における日本の第一人者、持田保とのDJトークイベント「クレイジーミュージック探訪」(ロックカフェロフト)での一連の共同リサーチから、帰着するべきカリスマとして、バロウズにたどり着いた。ジェネシス・P・オリッジしかり、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンしかり、ビル・ラズウェルしかり、バロウズなくしては、彼らがあれほどの果敢な音楽的実験に挑むことはできなかっただろう。
もちろんここでは、バロウズに「カットアップ」というアイディアを授けたブライオン・ガイシンの存在も忘れてはならない。
さらに踏み込むなら、ビート世代の一人であったバロウズが、『裸のランチ』で名を上げた異端の小説家の枠を超え、パンク以降の世代に大きな影響力を及ぼすことになるのは、彼自身が自作の朗読をもとに数々の音響実験を繰り返していたこと、さらに74年にニューヨークに拠点を移し、セックスピストルズに先駆けて起こったNYバンクの発祥に関わっていたことが大きい。
では具体的にはどのような関わりがあったのか?
そのヒントのひとつに、1976年、『ロックマガジン』の阿木譲がNYを訪れ、パンクおよびのちのオルタナティブ・ミュージックの萌芽の現場を目撃し、プログレ主体だった雑誌の方針を大転換させたという話がある。そのことは、日本の地下音楽にも多大なる影響を及ぼしたことだろう。
2020年も、狂気音楽探究の旅は続く。
"血のように赤い"、その使い古された言葉は、円盤が蘇った時に力を持つのかもしれない。
フランキーの絶望は日本語でも語られたけれど、全てを聞き取れない私たちにも確実にパッションが伝わる。
初めて観たアラン・ヴェガは贅肉をたっぷり身に纏い、あたかも煉獄で足掻くエルヴィス・プレスリーの様だった。薄汚れて、荒んだ空気に満ちた古いビルのライブハウスに、実に相応しい演奏だった。。。あの頃のニューヨークの地下のムード。。こんな具合なのではなかったろうか?
今はもうその会場は無いし、アラン・ヴェガも相棒を残して天に召された。私は泣かなかった。どんなに愛していても、住む世界の異なるアーティストの死に涙する事は滅多にない。せいぜいレイ・マンザレク位。大体今丁度喘息の発作が起こっておりそっちの方が辛い。
一体人は何に対して、焦燥感を抱くのだろうか。欲しいものが手に入らない時か、明日の行方がわからないからか、もう、時間が無いからか?それとも姿の見えない影に怯えているだけなのか?
冷酷な電子音と叫び。刻まれた古い音は、世紀が改まった今でも同じ魂に響くのかも知れない。彼らの音は紛れもなく、とても重要な何かを手に入れていない者の奏でる音である。皆同じ仲間だとしか思えない。はたちの頃から数えて、同じ音の盤を、もう何枚手に入れた?最初は黒、次は虹色に輝いて、次は、赤い。はたちの頃から同じ音ばかりを、飽きもせず何度聴き返した?
あなたは、一体、何が欲しい??
Nurse With Wound / Merzbild Schwet(リマスター、デジパックCD)
オリジナルは1980年リリース。カセット、LPで何度か再発されているものの単独と言う形では(過去に4枚組BOXとしてCD再発有り)初めての再発なのではないだろうか?しかも今回は12分に及ぶシークレットトラックが追加されつつも(憶測ですが)Steven が流通に規制をかけてるようでUnionら大手Shopには入荷の兆しが未だ見られず、現状、ほんの一部でしか取り扱われていないので入手には少々苦労が必要かもしれません。「Dada X」では、酩酊したテナーと引きずるようなビートにギターやオルガンが配合され、こうして出来上がったドロドロのマテリアルに劇団「東京キッドブラザース」が1971年東京後楽園ホールにて上演した「帰ってきた黄金バット」の台詞つき劇中歌をずたずたにカットアップし、再構築したノイズとなっており「東京の薔薇…」という日本語の歌詞が妙に耳にまとわりつく傑作として仕上がっています。約30年前、下北のアパートの一室で営業をしていたNedsにて、私が聴いた初めてのNWWの音源で、その内容に衝撃を受けつつも当時で¥38,000というプライスに泣く泣く購入を諦めた想い出が昨日の事のように思い出されます。
1980年にスロベニア(旧ユーゴスラビア)で結成されたインダストリアル・ロックバンド「Laibach」。2015年に欧米のロックバンドとしては初めて北朝鮮の首都平壌でコンサートを行なったことでお馴染みの彼らであるが、その平壌で行われたコンサートから会得した妙諦を再構築し、録音されてできたのが、2018年MUTEより発表の作品『The Sound of Music』である。本作は、北朝鮮の学校において、外国語の授業で使用される教材としても扱われる、1965年アメリカで公開された同名のミュージカル映画で使用された楽曲のカヴァーが大半を占めており、その音楽キャリアにおいて様々な既存の楽曲を、誰にも真似できない彼ら流の作品に再構築してきたのと同様に、今回も唯一無二のセンスが光る楽曲へと昇華する事に成功している。崩壊した社会主義国家である旧ユーゴスラビア出身の彼らが、現実に存在する社会主義国である北朝鮮でコンサートを実現させた意義と、彼らが創るからこそ説得力を持つ「全体主義のパロディー化」という手法が持つ強靭さを、つまらない左右のイデオロギーに毒される前に是非とも耳を傾けて欲しい。ちなみにダントツでオススメは8曲目の『So Long, Farewell 』。是非オリジナルと聴き比べてみてください。
盤魔殿
2020(ニコニコ)笑う
バンマーキング
<―――――――――――――――――NEXT PARTY――――――――――――――――>
盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會Vol.32
Nouvel an sous terre tot 新春地下はじめ
2020年1月26日sun 渋谷EdgeEnd
18:00 Open/Start ¥1,000 (1drink込)
Regular DJs + Special Guests
盤魔殿DJによる新春異端レコード廻し姫ハジメ。
令和2年の地下音楽シーンを占う開運祈願の初夢体験。
<―――――――――――---- EVENT INFORMATION――――――――――――――>
●Rie Fukuda
2020年1月25日(土)渋谷頭バー
19:00開場20:00 開演 一杯目1000円〜
2020年1月28日新大久保アースダム
「異端審問の夜」
前売2000円当日2300円+飲物
●宇田川兵夫
2019 12月29日(日) 足利 Jazzオーネット
きぃちゃんに会いに Vol.8
NORTHERN PSYCHEDELIA 2020
18:00-20:00 2000yen+drink500yen
Part 1 Live VJ Qliphoth & Omega Point Organization
Part 2 Talk 齋藤数馬, 宇田川岳夫, 長島弘幸
12/31(日)18-23 @喫茶茶会記
《哲学者の薔薇園》盤魔殿Musica Rosarium
1000円+2D
◎DJ:DJ Qliphoth/DJ SubRosa/DJ AURA NOIR/DJ stutter
◎出演:いろ/MONT★SUCHT◎トーク:宇田川岳夫
2020年2月16日(日) 東高円寺UFO CLUB
REAL MODERN MUSIC Talk Show Part 1
明大前のカルトレコード店1980年の開業からPFS以前まで
12:00~ Charge:¥1000+D
出演:宇田川岳夫/松谷健/石原洋/小山雅徳/高桑聡郎
●ケロッピー前田
1/26(日)15:00 - 22:30
Oneness Meeting @代官山UNIT
「縄文族 JOMON TRIBE」16:00 - 16:40
3/9(月)19:30 -
狂気音楽 @RockCafeLOFT
持田+ケロッピー 「マルコム vs ライドン」