どちらも孤高のアーティストであるPhew嬢と高橋悠治さんの初のデュオ公演。事前に予定曲目が発表されており、そこには「不屈の民」「民衆に訴える」「連帯の歌」「平和に生きる権利」「パレスチナの子どもの神さまへのてがみ」など政治的で硬派な曲名がリストされていた。
WWWには珍しくベンチ椅子が並べられており、じっくり聴いてもらいたいという主催者の意図が伝わる。確かにピアノと歌だけの静謐なコンサートはロックのライヴハウスよりはクラシックのコンサート・ホールの方が相応しかったと思う。
オープニング・アクトはSachiko M。サインウェーヴ奏者として知られる彼女のソロ演奏を観るのは初めてだったが、「ピー」というひとつの音だけを延々と奏でるスタイルは聴く者に相当の忍耐を強いる。まるでラ・モンテ・ヤングだ。50分間ひとつの音(およびその倍音)だけで貫いた彼女の演奏には強靭な意志を感じた。
高橋悠治さんとPhew嬢。予想通り真摯で硬派な歌とピアノの響きが会場を満たす。Phew嬢の凛とした歌声はロックやポップスといったジャンルを超越してニコやダグマー・クラウゼに通じる表現者としての風格に溢れている。高橋さんのピアノとオルガンは長年クラシック界に身を置きつつジャンルを飛び越えた活動をして来た求道者としての研ぎすまされたカリスマ性に満ちている。その両者の魂が交感し崇光な世界が姿を現す。魂が震えるパフォーマンスだった。
ただ不満を言えば、座った位置が悪く譜面台の陰になってPhew嬢の顔がほとんど見えなかったこと、ベンチ椅子が堅くてお尻が痛くて堪らなかったこと。出来ればちゃんとしたアコースティック音響のホールでの再演を望みたいところだ。
魂と
お尻が争う
コンサート
Phewは現代の巫女である。