灰野敬二 with 狩俣道夫
【出演】灰野敬二 + 狩俣道夫、亞弥 + 本田ヨシ子(オープニングアクト)
昨日の灰野・オルーク・アンバーチは活動6年目だったが、灰野・狩俣デュオはその倍の歴史を持つロングプロジェクト。調べたら前回が2010年7月だから、観るのは4年3ヶ月ぶり。渋谷Last Waltzは初登場である。前日のSDLXの盛況ぶりに比べれば、グッと少ないが、地下芸術に蘊蓄のありそうな雰囲気の観客が静かな炎を灯している。オーレン・アンバーチもひとりで観にきていた。
●亞弥+本田ヨシ子
(写真の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)
オープニングアクトはどちらも初見のヴォイスとダンスの女性デュオ。Last Waltzのステージは広くて舞踏に適している。下手に本田が座り、マイクを持って息を吹きかけると、深いリバーヴが空中に声を拡散させる。上手から亞弥が静かに歩み寄る。本田の声がサンプラーを通して幾重にも重なり合うと、亞弥の動きが大きくなり、パイプ椅子を使ってパントマイムの様に舞う。客席も使ったダイナミックなダンスが変幻した声の波をかき混ぜ、頭に飾った花が天使のファルセットに揺れる。ふたりの女性の発する静寂の粒子が、空気を群青に染めた30分だった。
⇒亞弥公式サイト
●灰野敬二+狩俣道夫
灰野のライヴに通い出した2003年頃、狩俣とのデュオは高円寺ペンギンハウスで定期的にやっていた。その頃の灰野は、高円寺ShowBoatで不失者(小沢靖デュオ)、渋谷アピアで哀秘謡、西早稲田ジェリージェフでサンプラーソロ、横浜ドルフィーで梅津和時デュオ、大泉学園inFで即興セッション、と会場に応じて特徴ある活動をしていた。だからこのデュオにはペンギンハウスの香りを感じる。
灰野がテーブルに並べた円盤状のパーカッションをハンマーや木片で叩き、ガムランのようなサウンドを鳴らす。狩俣はフルートでアタックの強いプレイ。ハードコアだったSDLXのトリオ演奏に比べると、牧歌的といえる程隙間の多い演奏だが、発する気合いは変わらない。ダラブッカや竹笛やリコーダーを持ち替え、無心に奏でる自由度の高さは、寧ろこの日の方が勝っている。ソプラノ・サックスの狩俣がアルトを吹いたのが新鮮だった。灰野はギターを弾くことなく第1部は終了。
休憩時間にアンバーチと話す。今回は単身の来日だが、来週クリス・コールと合流し、タイで共演ライヴを行い、オーストラリアにも行く。灰野を初めて観たのは、1992年ニューヨークでのジョン・ゾーンとミック・ハリスとのトリオ。それ以来アメリカ/ヨーロッパ/日本で何度も灰野を観てきた。何度となく共演したが、まだ一対一のガチンコ共演はない。「是非ともデュオの実現を」と頼むと「恐れ多くて」との返事。
第2部では灰野がドラムを叩く。独特のリズム感と閃光一撃の気合いで叩き付ける打撃音は、一度観たら忘れられない程個性的。ふたり不失者で叩いていたが、小沢亡き後は狩俣デュオでしか観れない。不規則なビートに絡む流麗なアルトが美しい。続いて椅子に座ってギター演奏。爆音の壁ではなく、"Another Side of Keiji Haino"のシャープな即興プレイ。サンプラーも使ったアブストラクトな演奏は、10年前のジェリージェフを想起させもした。かつてデレク・ベイリーとタイマンを張ったこのスタイルも近年余り目にすることはない。エンディングで再びガムラン風パーカッションに回帰したのは、前日のトイピアノとのリエゾンだろうか。
【ARCHIVE】灰野敬二・狩俣道夫DUOの12年間
2002
10.4 デュオwith狩俣道夫(ss,fl,voice)
2003
1.24 デュオwith狩俣道夫(ss,fl,voice)
4.25 デュオwith狩俣道夫(ss,fl,voice)
8.15 デュオwith狩俣道夫(ss,fl,voice)
11.14灰野敬二(vo,g)、 狩俣道夫(ss,fl,voice)、河合拓始(p)(代官山クラシックス)
2004
6.18 灰野敬二(ds,g,vo) with 狩俣道夫(ss,fl,vo)、沢田譲治(b)&坂本健吾(b)(公園通りクラシックス)
7.2 灰野敬二(g)+狩俣道夫(ss,fl,vo)+金澤美也子(p)
9.17 デュオ with 狩俣道夫(ss,fl,voice)、ゲスト:ヒグチケイコ、モリシゲヤスムネ
2005
1.26 デュオ with 狩俣道夫(ss,fl,vo) ゲスト:新井陽子(pf)
⇒灰野敬二さん2連発
4.28 灰野敬二+狩俣道夫(ss,fl,vo)+a qui avec Gabriel+河村純
⇒高円寺ペンギンハウス
2006
1.18 デュオ with 狩俣道夫(ss,fl,vo)
9.25 灰野敬二(vo,g,etc)+狩俣道夫(ss,fl,vo)+沢田守秀(ds)
2007
4.27 デュオ with 狩俣道夫(ss,fl,vo)
⇒灰野敬二x狩俣道夫@高円寺ペンギンハウス
2008
1.22 デュオ with 狩俣道夫(ss,fl,vo)
5.28 デュオ with 狩俣道夫(ss,fl,vo)
2009
4.1 デュオ with 狩俣道夫(ss,fl,vo)
2010
7.4 灰野敬二 +狩俣道夫+上地“gacha” 一也
⇒灰野敬二、狩俣道夫、上地一也@高円寺ペンギンハウス10.7.4(sun)
こりゃ驚き
最初のブログが
狩俣デュオ
⇒阿呆船/愚弁/水晶の舟/Guignols Band@高円寺 ShowBoat 2013.1.14 (mon)
⇒広瀬淳二+狩俣道夫@渋谷Bar Isshee 2011.4.26(tue)