SALON MUSIC(サロン・ミュージック)は1980年結成の吉田仁(vo,g,b)と竹中仁見(vo.key.g)の2人組。イギリスで評価され1982年海外デビュー。日本では1982年に創刊されたカセット・マガジン「TRA」のVol.2に収録されたのが実質的なデビューか。1983年にデビュー・アルバムをリリース、高橋幸宏やムーンライダースとコラボして活動するとともに海外でカルト的な人気を誇った。
客電が点いたままでアルカラのメンバーが登場。神戸出身で「ロック界の奇行師」を自称する彼らだがサウンドはギター・ロック、パンク、オルタナ、プログレ等の要素を消化したオリジナル色豊かなもの。変拍子や転調を多用した演奏に刹那的なメロディが乗るスタイルはなかなかの実力派。「こんばんは、家入レオです」と繰り返したり、冒頭のMCのあと「今日は重要なお知らせがあります」と言って今週発売のAKB48東京ドーム公演DVDをTSUTAYAで買うようアナウンスするなど、皮肉っぽい態度が奇行師たる所以か。若いファンが飛び跳ねてノッている。MASS OF THE FURMENTING DREGSや黒猫チェルシー、踊ってばかりの国など個性的なバンドを排出する神戸シーンからの刺客に違いない。
第五列のことは2001年にアルケミー・レコードから2枚のコンピレーションCDが出るまですっかり忘れていた。以下はそのうちの1枚「社長が出せって言えば出すからThe Early Fifth Column INDISCREET MUSIC 1976-1980)」についての"社長"ことJOJO広重さんによる紹介文である:
2枚目の「社長は判ってくれない(The Middle Fifth Column SUSPECTE MUSIC 1981-1990)」も併せて広重さんが書いているように本気か妄想か判断出来ない解説は殆ど役に立たない。この2枚に収められた音楽(のようなもの)は現代音楽、即興、ノイズ、プログレのまさに"百鬼夜行"で聴けば聴くほど頭が混乱してくる。すなわち14年のスパンを持ったコレクションにも関わらずどれも古さを感じる余地もなく未知の世界または黄泉の世界を彷徨っているのである。50年代のミュージック・コンクレートだと言われても昨日落合SOUPで録音されたノイズ演奏と言われても信じてしまうほどタイムレスなサウンドである。
ここで思い出すのが吉祥寺マイナー周辺の地下音楽である。それに関してはピナコテカ・レコード特集に詳しいので参照されたい。最近ではガセネタBOX、タコの2枚のアルバムのCD再発およびBOX、大里俊晴BOX、園田佐登志氏のCD2作等がリリースされ全容解明が進みつつある。再版された大里氏の「ガセネタの荒野」、地引雄一氏編集「EATER'90s インタビュー集:オルタナティブ・ロック・カルチャーの時代」さらに「捧げる....灰野敬二の世界」でも知ることが出来る。実際マイナー周辺と関西のどらっぐすとぅあ及び第五列とは人的交流が盛んでメンバーも重なっていたりする。非常階段の「A STORY OF KING OF NOISE」によれば1978年にJOJO広重さんとULTRA BIDEのヒデ氏が"ビデ&ジョジョ"として出演した同志社大学の学園祭に東京から竹田賢一さんのバンドが来て演奏したとある。その橋渡しをしたのが故・渡邉浩一郎氏だったという。渡邉氏の手により吉祥寺マイナー関連アーティストのテープが大量にどらっぐすとぅあに持ち込まれたそうだ。
阿部怪異は関西のバンド。メンバーは広重嘉之(JOJO、現 非常階段)、八太尚彦(現 ジュラジューム)、林直樹(現 NG)、猪狩亘(現 Eel Ghost)、美川俊治(現 非常階段他)などである。メンバーはそれぞれ別のバンドをやっており、阿部怪異という名のもとに集まって、本質的にはハイパワー・インプロヴィゼーションを30秒ずつ演るバンドである。<終末処理場(アンバランス)>に入っている全てのバンドからメンバーが集っているというのも、関西の流動的活動の素直さを象徴している。ものすごく大ざっぱに言ってしまえば「非常階段」を30秒ずつ演っていると思えば良い(良いわけがない)。
阿部怪異の音源はヴァニティ・レコード特集のおまけに付けたので聴いてみてほしい。第五列と直接関係があったのかどうかは判らないが、そのごった煮音響に同じ姿勢を感じる。第五列について調べていて凄いサイトを発見した。おそらく中心メンバーの藤本"ゲソ"和雄氏のサイトだと思われる第五列 The Fifth Column。ここには第五列が発表した印刷物、レコード、テープ、CDの一覧が附され、その殆どがダウンロードできる。そこにJOJO広重さんが1979-80年に録音したソロ・カセットがある。たぶんこのカセット以外では発表されていない音源で初期非常階段、ULTRA BIDE、螺旋階段の音源も収録されている。サンプルとして頭士奈生樹氏とのデュオ=非常階段の音源をお聴きいただきたい。
1st LP「Juke/19」(1980.12)は近くの貸しレコ屋で借りた。赤字に白で表にカバ、裏にチューリップが印刷され中に2枚のインサート。1枚は曲目リスト、もう1枚は木の枝のイラスト。PLAY AS LOUD AS YOU CANと書いてあるだけでメンバー名など一切記載がない。長くて2分、最短で6秒という細切れの音響が羅列される。ギターの一音だったり集団即興だったりミニマルの断片だったり、その音世界はそれまで聴いた何モノとも違っていた。音楽というより"音"そのもの。擦ったり叩いたりする対象は楽器だがそこに意志はない。音であれば何でもいい、という物質主義=マテリアリズム。
ファッション・デザイナー黒田雄一氏によるLAD MUSICIANは今までもフェンダーとコラボしたり、ファッション・ショーに若手ロック・バンド、ノーヴェンバーズの生演奏をフィーチャーしDOMMUNEで配信したりとコンセプト通りの革新的試みを実行している。裸のラリーズにインスパイアされ「MINIMAL ART ROCK 77 Les Musician Denudes」(!)とタイトルされた2013年春夏コレクションも黒田氏のロックへの拘りが結実したものである。興味深いのは入手が容易なブート音源ではなく、ラリーズの数少ない公式音源「'77 LIVE」を使ったところだ。黒田氏が音楽を本当にリスペクトしていることが良く分かる。氏は間違いなく灰野敬二ファンでもある。一見無縁な暗黒のロッカーと華やかなファッション・セレブの出会いが化学反応を起こし音楽を超えて世界的カルチャーに影響を与えることになれば痛快至極である。
BiS Tシャツが前列に集まって来た。いよいよお待ちかねBiSのステージである。PAから重低音のテクノビートが響きメンバー登場。メンバーの動きに合わせ一斉にしゃがみ込むヲタたち。観客の6割がBiSファンだったことが判明。さっきQP-CRAZYでダイヴしていたファンが交じっているのが面白い。イマイチ締まりがないメンバー紹介、先日同様メンバーがひとり欠席だったが関係なしのパフォーマンスと歓声、Oi! Oi!という掛け声、一斉にステージへ押し寄せる人の波、「オナニー」「うんち」「おしっこ」と口にする非アイドルなMC、ラストのデスメタル・ナンバー「IDOL」では気の狂ったようなモッシュ大会、と新生アイドルのライヴならではのヲタノリが最高に面白い。一見の価値あり!