A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

渋谷系シューゲイザーの復活~SALON MUSIC「Sleepless Sheep」

2012年11月30日 01時11分37秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


最近読んだ音楽誌のシューゲイザー関連記事がSALON MUSICに言及していて意外だった。私の記憶にある彼らは1980年代前半YMO周辺から登場し、芝浦インクスティックや原宿ピテカントロプスエレクトス周辺でMELON(元プラスチックス)、MUSCLE BEAT(元8 1/2)、スポイル(デザイナー横山忠正asを中心とするフェイクジャズ・バンド)、MUTE BEAT(こだま和文tp、屋敷豪太dsを中心とするダブバンド)などと共に活動していたニューウェイヴ第2世代のバンドで、ロックというよりラウンジ/テクノ系オシャレ・サウンドの印象が強い。

SALON MUSIC(サロン・ミュージック)は1980年結成の吉田仁(vo,g,b)と竹中仁見(vo.key.g)の2人組。イギリスで評価され1982年海外デビュー。日本では1982年に創刊されたカセット・マガジン「TRA」のVol.2に収録されたのが実質的なデビューか。1983年にデビュー・アルバムをリリース、高橋幸宏やムーンライダースとコラボして活動するとともに海外でカルト的な人気を誇った。



1990年吉田仁はフリッパーズ・ギターなどの他アーティストの作品のプロデュースやミックスを多数手がけるようになる。これを契機に小山田圭吾主宰のトラットリア(Tratttoria)・レーベルに移籍した。トラットリアはクルーエル、エレベーターと並ぶ渋谷系レーベル御三家のひとつ。レストランのメニュー仕立てのリリースとUKインディーのエル・レーベルに倣った拘りのアートワークが特徴で、コーネリアス、カヒミカリィ、ブリッジ(カジヒデキ参加)、ヴィーナス・ペーターなどの渋谷系アーティストと共に、”デス渋谷系”=暴力温泉芸者や、ハナタラシ、OOIOO、想い出波止場などボアダムス関連アーティストの作品もリリースしており、メジャーのポリスター配給ながらインディー精神に貫かれた90年代を代表するユニークなレーベルだった。

ピチカート・ファイヴやフリッパーズをはじめとする渋谷系は80’sニューウェイヴやギターポップ、ネオアコ、ハウス、ヒップホップ、70’sソウル、ラウンジといった当時知られていなかったジャンルを発掘し再評価・再現するという音楽マニア色の強いムーヴメントだったが個人的にはのめり込めなかった。というのも彼らはDJカルチャーと表裏一体であり、レコードを消耗品として乱雑に取り扱うDJ達には、貴重品として盤面に指紋が付くのも嫌う世代には許容し難いものがあったからである。また渋谷系アーティストの音楽もバブル熱に浮かれた軽薄なまがい物に聴こえて好きになれなかった。自分で自称サイケ・バンドをやっていたし、同時期に裸のラリーズの正規盤3作がリリースされ、ゆらゆら帝国、マリア観音、マーブル・シープ、サバート・ブレイズなど地下ロック・シーンが活性化したこともあり、もっぱらPSFやアルケミー等の作品に浸っていた。

そんなへそ曲がりだから渋谷系シーンでSALON MUSICがコクトー・ツインズやマイブラの影響モロ出しのシューゲイザー・サウンドを展開していたことは知らなかった。デビュー当時から洋楽への憧れを音にしてきた彼らだから時代の流れに応じてスタイルを変化させたのだろう。トラットリア時代の作品には渋谷系に顕著な洋楽コンプレックスが渦巻いているように聴こえる。渋谷系が衰退した90年代後半も活動を続け2002年トラットリア解散まで現役だったのも、他の便乗アーティストとは違って筋金入りの音楽ヲタクだったからに違いない。



2011年に9年ぶりの新作「Sleepless Thing」をリリース、相変わらずの洋楽マニアぶりを発揮している。これは世界的に通用するサウンドではなかろうか。



マイブラ復活+来日が話題の昨今、SALON MUSICの現在廃盤の旧作にもスポットライトが当たれば嬉しい。

サロン・ミュージック
ネイルサロンで
流れるか?

個人的に最大注目のアイドル・デュオ、バニラビーンズが渋谷系サウンドを継承しているのが面白い。

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浅井健一/アルカラ/キノコホテル@渋谷 O-East 2012.11.26 (mon)

2012年11月29日 00時28分12秒 | ロッケンロール万歳!


Tower Records presents
LIVE LIVEFUL! SHIBUYA 5DAYS! HOT HIT TOWER
浅井健一/アルカラ/キノコホテル

タワーレコード渋谷店リニューアル記念イベント5DAYSの第2夜。といってもアルカラの稲村氏がMCで言った通り来場者はタワレコ主催という事情は共有していないイベントだったことは確か。私も大好きなキノコホテルとベンジーが出演するし、アルカラもネットで調べたら面白そうだったのでロケンローしたくて参戦。満員ではないが雨の月曜日にしては悪くない動員。2列目ブロックの柵前を確保。年齢層は20~30代中心で男女比は6:4。

客電が点いたままでアルカラのメンバーが登場。神戸出身で「ロック界の奇行師」を自称する彼らだがサウンドはギター・ロック、パンク、オルタナ、プログレ等の要素を消化したオリジナル色豊かなもの。変拍子や転調を多用した演奏に刹那的なメロディが乗るスタイルはなかなかの実力派。「こんばんは、家入レオです」と繰り返したり、冒頭のMCのあと「今日は重要なお知らせがあります」と言って今週発売のAKB48東京ドーム公演DVDをTSUTAYAで買うようアナウンスするなど、皮肉っぽい態度が奇行師たる所以か。若いファンが飛び跳ねてノッている。MASS OF THE FURMENTING DREGSや黒猫チェルシー、踊ってばかりの国など個性的なバンドを排出する神戸シーンからの刺客に違いない。



2番目にキノコホテルの登場。12/5に3rdアルバム「マリアンヌの誘惑」をリリースする彼女たちだが、12月のサロン・ド・キノコ~四次元の美学ツアーで現従業員での営業を終了するとマリアンヌ支配人が声明を出し胞子達をやきもきさせている。ホントだとしたら残り少ないこの4人態勢の実演会である。イザベル=ケメ鴨川嬢のノイジーなフィードバック・ギターでスタート。支配人鞭を手に登場しドラムのフィルインで新曲のガレージ・サイケ・ナンバー「球体関節」が始まる。出来あがったばかりの新作のパッケージを見せてくれたが、限定デラックス盤は思ったより大きくてお得感たっぷり。しか熱演にも拘らず前列には胞子が余りおらず、両脇の一部の客が歓声を上げて盛り上がるのみ。あとでツイッターで知ったがキノコホテルを初めて観たという客が多かったようで、イマイチ盛り上がりに欠ける実演会だった。キノコホテルやアーバンギャルドのように独特の世界を作り込んだバンドには対バン形式のライヴは不利である。不完全燃焼の分は12月の東京キネマ倶楽部で発散することにしよう。



<Set List>
1 球体関節
2 キノコノトリコ
3 真っ赤なゼリー
4 愛と教育
5 ノイジーベイビー
6 悪魔なファズ
7 #84
8 キノコホテル唱歌

トリは勿論浅井健一。観客の大多数が彼のファンで始まる前からベンジー・コールが湧きあがる。好きな割にはベンジーのライヴは久々3年ぶり。トレードマークのグレッチを持って登場したベンジーはやはりカッコイイ!の一言。いきなりブランキーの名曲でスタート。最前ブロックはモッシュ状態になり一緒に歌う観客の声が響く。ブランキー時代からのファンよりも解散以降の新しいファンが多い。ストイックに曲を畳み掛けるベンジー・バンド=浅井健一(vo,g)+渡辺圭一(b)+岡屋心平(ds)と、各自好き勝手に盛り上がるファンの呼吸が素晴らしい一体感を生み出す。来年ブランキー・ジェット・シティの映画「Vanishing Point」が公開されるが、若いロック・ファンにとってはブランキーは伝説のバンドなのである。さすが椎名林檎が「丸の内サディスティック」で♪ベンジー、あたしをグレッチで殴って♪と歌った男である。会場限定の先行シングル「OLD PUNX VIDEO」を購入。1/16リリースのニュー・アルバム「PIL」が楽しみでならない。



<Set List>
1 SWEET DAYS(Blankey Jet City)
2 FIXER
3 BPR(PONTIACS)
4 DEVIL(JUDE)
5 OLD PUNX VIDEO
6 サニーのチョコレート(JUDE)
7 内気なフランケンシュタイン(PONTIACS)
8 DELICATESSEN(PONTIACS)
9 LOVE LIVE LOVE(新曲)
10 白雪姫(JUDE)
11 SALINGER(Blankey Jet City)

★ライヴ・レポートはコチラ

ロケンローが
渋谷の夜を
熱く燃やす

★浅井健一「Pocky in Leatherboots Tour」


2013年2月6日(水)北海道 札幌cube garden
2013年2月8日(金)宮城県 仙台Rensa
2013年2月13日(水)岡山県 岡山IMAGE
2013年2月15日(金)福岡県 福岡DRUM LOGOS
2013年2月16日(土)大分県 大分DRUM Be-0
2013年2月26日(火)京都府 京都磔磔
2013年2月27日(水)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
2013年3月1日(金)愛知県 名古屋BOTTOM LINE
2013年3月4日(月)東京都 SHIBUYA-AX

-BAND MEMBER-
Vo,G 浅井健一
G,Cho 加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ/LOSALIOS)
B,Cho 渡辺圭一(JUDE/HEATWAVE)
Dr,Cho 茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ/FISHMANS)





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百鬼夜行の回想録~80'sインディーズ特集 第8回「第五列と阿部怪異」編

2012年11月28日 02時00分29秒 | 素晴らしき変態音楽


先日JUKE/19の記事を書くために古いFool's MateやMarquee Moonを紐解いていたところ、たいへん興味深い資料を発見した。恐らく1981年7月発行のMarquee Moon Vol.5に添付していたと思われる第五列テープのカタログである。第II期<第五列テープ>と第五列<ブートレッグ・テープ>のリストと解説が載っており入手方法は「第五列各代理人のもとにただ(1)空テープと(2)返信用切手が与えられたとき即ダビングされ貴茎(ママ)のもとに郵送される」という非営利的なものだった。記憶しているのは「Rutherford+Brotzmann+Kowald+Lovens」のライヴ音源をダビングしてもらったことだ。カタログを見ると第五列テープの「5C-EX<なっとう>(通称)<Improvised Works>(本名)/多数収録」というテープのところに印がついている。ということはこれも頼んだのか?当時は他にもいろいろ音源を注文したので覚えていない。

第五列のことは2001年にアルケミー・レコードから2枚のコンピレーションCDが出るまですっかり忘れていた。以下はそのうちの1枚「社長が出せって言えば出すからThe Early Fifth Column INDISCREET MUSIC 1976-1980)」についての"社長"ことJOJO広重さんによる紹介文である:

第五列とは、1970年代後半から1980年代前半にかけて、京都・東京・盛岡などを中心に音楽、詩、美術などに変わった興味を持つメンバーによって活動していた、非常にユニークなグループである。いわゆるバンド、もしくはミュージシャンという形態ではなく、「なにものでもないもの」として第五列は存在しており、ミニコミや、テープ、レコード作品などを発行していた時期もあった。当時の活動を知る人は素来なく、今ではマニアの間で語られる程度の認知度であったが、アルケミーレコードが第五列の初期音源集「社長が出せって言えば出すから(ARCD-128)」としてCDリリースした。
 この第五列は現在も都内で「チヨズ」というユニットで活動をしているgeso氏、盛岡在住のフリー・インプロヴァイザーのオニック氏が中心メンバーとして運営されていたもので、当時京都に在住していた非常階段、ウルトラビデなどのメンバーもセッションに多数参加していた。それらの録音源はこのCDにも収録されており、非常階段結成以前の録音テイクも聞くことができる。 
内容的にはノイズ、アヴァンギャルド、フリージャズなどをベースに、奇っ怪なラジオドラマ、パロディ、騒音などを巻き込んで、得体のしれない不可思議な音世界を構築している。詳細で難解な解説(英語対訳付き)も付録されている。ユニークなアルケミーレコードの作品群の中でも、第五列は最もヘンで極めつけに面白いアルバムと言える。 ーーtext/JOJO広重(Fujiyama HPより転載)

2枚目の「社長は判ってくれない(The Middle Fifth Column SUSPECTE MUSIC 1981-1990)」も併せて広重さんが書いているように本気か妄想か判断出来ない解説は殆ど役に立たない。この2枚に収められた音楽(のようなもの)は現代音楽、即興、ノイズ、プログレのまさに"百鬼夜行"で聴けば聴くほど頭が混乱してくる。すなわち14年のスパンを持ったコレクションにも関わらずどれも古さを感じる余地もなく未知の世界または黄泉の世界を彷徨っているのである。50年代のミュージック・コンクレートだと言われても昨日落合SOUPで録音されたノイズ演奏と言われても信じてしまうほどタイムレスなサウンドである。



ここで思い出すのが吉祥寺マイナー周辺の地下音楽である。それに関してはピナコテカ・レコード特集に詳しいので参照されたい。最近ではガセネタBOX、タコの2枚のアルバムのCD再発およびBOX、大里俊晴BOX、園田佐登志氏のCD2作等がリリースされ全容解明が進みつつある。再版された大里氏の「ガセネタの荒野」、地引雄一氏編集「EATER'90s インタビュー集:オルタナティブ・ロック・カルチャーの時代」さらに「捧げる....灰野敬二の世界」でも知ることが出来る。実際マイナー周辺と関西のどらっぐすとぅあ及び第五列とは人的交流が盛んでメンバーも重なっていたりする。非常階段の「A STORY OF KING OF NOISE」によれば1978年にJOJO広重さんとULTRA BIDEのヒデ氏が"ビデ&ジョジョ"として出演した同志社大学の学園祭に東京から竹田賢一さんのバンドが来て演奏したとある。その橋渡しをしたのが故・渡邉浩一郎氏だったという。渡邉氏の手により吉祥寺マイナー関連アーティストのテープが大量にどらっぐすとぅあに持ち込まれたそうだ。

ピナコテカ・レコードから発売されたカセットのひとつに「阿部怪異」なるバンドの作品があった。1982年5月発行のピナコテカのフリーペーパーAMALGAM#8に紹介がある:

阿部怪異は関西のバンド。メンバーは広重嘉之(JOJO、現 非常階段)、八太尚彦(現 ジュラジューム)、林直樹(現 NG)、猪狩亘(現 Eel Ghost)、美川俊治(現 非常階段他)などである。メンバーはそれぞれ別のバンドをやっており、阿部怪異という名のもとに集まって、本質的にはハイパワー・インプロヴィゼーションを30秒ずつ演るバンドである。<終末処理場(アンバランス)>に入っている全てのバンドからメンバーが集っているというのも、関西の流動的活動の素直さを象徴している。ものすごく大ざっぱに言ってしまえば「非常階段」を30秒ずつ演っていると思えば良い(良いわけがない)。



阿部怪異の音源はヴァニティ・レコード特集のおまけに付けたので聴いてみてほしい。第五列と直接関係があったのかどうかは判らないが、そのごった煮音響に同じ姿勢を感じる。第五列について調べていて凄いサイトを発見した。おそらく中心メンバーの藤本"ゲソ"和雄氏のサイトだと思われる第五列 The Fifth Column。ここには第五列が発表した印刷物、レコード、テープ、CDの一覧が附され、その殆どがダウンロードできる。そこにJOJO広重さんが1979-80年に録音したソロ・カセットがある。たぶんこのカセット以外では発表されていない音源で初期非常階段、ULTRA BIDE、螺旋階段の音源も収録されている。サンプルとして頭士奈生樹氏とのデュオ=非常階段の音源をお聴きいただきたい。





このサイトにはピナコテカ・レコードの最終作「なまこじょしこおせえ/賣國心」が近日CD化予定と書いてあるので期待して待つとしよう。

★伝説の阿部怪異の奇蹟の復活ライヴが開催!!!!
doubtmusic presents 阿部怪異と集団投射



当時メンバーだったJOJO広重さんと美川俊治さんに加え豪腕ドラマー吉田達也さんとBar Isshee店長でバンド共犯者のIssheeさんによる演奏。恐らく広重さんと吉田さんは初共演ではなかろうか?昔の混沌とした音世界が再現されるのか全く新しい音響美学が構築されるのか興味は尽きない。対バンはこれまた日本の前衛音楽シーンに多大な影響を与えた故・高柳昌行さんの意志を受け継ぐ集団投射。究極のコレクティヴ・インプロヴィゼーションが堪能出来る筈だ。多分二度と観られない組み合わせは、もしかしたら今年最狂のコンサートかもしれない。これを見逃す手はないゾ!

阿部怪異
子連れ狼の
キャラクター

それにしてもまだ終わってないけど今年はノイズが大暴れした一年だった。このブログも書き甲斐があるってモノ。
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パンク meets テクノ~P-MODEL「ワーナー・イヤーズ・シングル・ボックス」

2012年11月27日 00時21分55秒 | ロッケンロール万歳!


デビュー当時のP-MODELはめちゃくちゃカッコ良かった。プラスティックス、ヒカシューと共にテクノポップ御三家と呼ばれていたが、他のふたつがリズムボックスによるクールなサウンドを奏でていたたのに対しP-MODELは生ドラムがタイトなビートを叩き出し熱く強烈なロック色を打ち出していた。歌詞も♪美術館に火をつけてやる♪♪不親切な住民エゴ♪など直截的な怒りを内包しており、鬼の形相で歌う平沢進氏の激情が迸っていた。最初の2枚のアルバム「イン・ア・モデル・ルーム」「ランドセル」はテクノっぽいシンセやマシーン・ビートは入っているがあくまで装飾的でありテクノポップというよりパンクの名盤といえるのでは無かろうか。平沢氏本人が「テクノポップからの脱却」と語っている3rd以降のエスノ・プログレ的シンセ・サウンドの方がテクノ寄りに聴こえるのは私だけだろうか?1979年に法政大学学生会館でグンジョーガクレヨンとの対バンで観たライヴは過激なパンクそのものだった。デビュー当時の彼らはナイロン100%やS-Kenスタジオなどの小さいスペースでライヴをしつつヴァン・ヘイレンのサポートで武道館など大ホールのステージを踏むという分裂症的な活動をしていた。






3rd以降音楽性を変化させメンバーは流動的になり「凍結」「解凍」「改訂」「培養」と称した活動休止・再始動を繰り返し現在は停止中。平沢氏はソロ活動を継続、いち早くコンピューターに着目し、会場に仕掛けられた様々なインターフェースによって観客の行動がライヴの展開に反映される「インタラクティヴ・ライヴ」を1994年から開始する。渋谷公会堂でのライヴを観たがまだ未開発なインターフェイス装置がうまく作動せず凄いんだかどうだか良く分からないステージ進行になった記憶がある。インターネットでの配信や中継も積極的に行ない、作曲家として他のアーティストに楽曲提供したりアニメ音楽を手掛けそのマニアックな音作りからヲタ系ファンにも名を知られる。特に「けいおん!」のメインキャラの平沢唯との関連性がファンの間で取りざたされ再評価のきっかけになった。
[11/27追記:まったくの偶然だが本日は平沢唯の誕生日だそうだ。]



初期の正式なライヴ盤はリリースされていないが、1999年にVIRTUAL LIVEシリーズして1979年S-Kenスタジオ、1980年ナイロン100%、1982年京大西部講堂の演奏をコンピューターで再現した架空のライヴCDをリリースしている。何も知らずにこのCDを見つけた時には狂喜したが、よく聴くと客の歓声が偽物っぽかったりドラムマシーンだったりで騙された、と思ったが見事な再現ぶりに最初に観た頃のカッコ良さが蘇る好企画盤である。出来れば本当のライヴ音源を発掘して欲しいが….。

新装オープンした渋谷タワーレコードでこのタワーレコード限定発売の「ワーナー・イヤーズ・シングル・ボックス」を見つけ即購入。写真のように7インチ・アナログ盤サイズの紙ジャケ仕様である。オリジナルのシングル用マスターテープを使用したらしく、アルバムと聴き比べるとテイクは同じだがレベルが大きく低音の効いた音になっており、当時シングルをラジオ向けに低音と高音を強調した所謂ドンシャリでマスタリングしていたことが分かる。とにかくファンなら必携のカワイイ箱入り娘である。


2009年に初めてアーバンギャルドのライヴを観た時、完全なバンド・サウンドなのに”テクノポップ”と自称するのが不思議だった。何度も観るうちにP-MODELへの憧憬が伝わりテクノポップに拘る理由が分かった気がした。平沢氏の12作目のニュー・アルバム「現象の花の秘密」がリリースされたばかりだが、個人的にはこの初期音源の世界に浸っていたいというのは一種のモラトリアムだろうか。

P-MODEL
モデル・ルームが
ピンクに染まる

1992~3年の作品「P-MODEL」&「big boy」の2in1 CDも廉価盤で再発される。
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ハーフコインの花園 第2回~80's ジャパニーズ・ガールズ・ロック特集

2012年11月26日 00時23分18秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


プリンセス プリンセス再結成ライヴ<PRINCESS PRINCESS TOUR2012 ~再会~>@日本武道館 2012.11.24 (sat)

全盛期のプリンセス プリンセスを特に好きだった訳ではないが、16年ぶりの再結成にノスタルジアを感じて抽選制チケットを申し込んだら当選。学生時代の友人と観に行った。武道館4日連続公演の最終日。立見席まで満員の武道館を埋めたのは40~50代が圧倒的。武道館は16年前のプリプリ解散コンサート以来というファンも多かったのではなかろうか。震災をきっかけに5人が集まりみっちり練習したという演奏は昔と遜色なく素晴らしく総立ちで手拍子し腕を振り上げ歌いジャンプし10000人の同窓会と化した。アーバンギャルドのギターの瀬々信氏のアイドルコールの決め台詞は「秋葉原はオレの庭!」だが、プリプリはMCで「私たちの庭、武道館へようこそ」と言っていたのが印象的だった。その通り彼女たちは1989年から96年まで毎年正月に武道館公演を行っている。当時は「歌謡ロック」「産業ロック」と揶揄していたが、20年経ってそれも悪くないと思えるようになった。彼らの曲はとにかく明るく元気いっぱいで何の迷いもない。「元気をもらえる」というのは私が音楽に求める要素ではないが、震災復興にはピッタリである。



そんなことを考えていたら当時のガールズ・ロックが懐かしくなり「オレの庭」であるBOOK-OFF 250円コーナーに足を運んだ。アレもコレもといろいろ見つかったが、余り詳しくないのでさらっとご紹介。

プリプリと並ぶ日本のオール・ガールズ・バンドの先駆者SHOW-YA。ハードロック色が強く派手なルックスは後のジャパメタ/ヴィジュアル系に影響を与えた。プリプリも出演していたイベント「NAONのYAON」を主催。1998年に解散するが2005年再結成「NAONのYAON」を始め積極的にライヴ活動を行っている。



プリプリ、SHOW-YAの先輩格NOKKO率いるレベッカ。これまた元気溢れる歌で大ヒットした。女性ボーカル+男性バンドという構成は当時は珍しかったが、レベッカ以降の音楽シーンではその編成のバンドが多く登場することになる。2000年に再結成した。



KONTAと杏子による男女ツイン・ヴォーカルが特徴のBARBEE BOYS。編成はシンプルなギタートリオだが、サックスを取り入れたトリッキーなサウンドと男女の恋のやり取りのような歌詞が特徴。1992年に解散後、杏子はソロに転向し、山崎まさよし・スガシカオと共に福耳というユニットでもヒットを飛ばした。結成25周年の2009年に再結成し翌年まで活動した。



ヴォーカルのJILLを中心とする4人組PERSONZ。AUTO-MODのメンバーが参加しており、ルックス的に元祖ヴィジュアル系といえるバンドである。JILLの存在感たっぷりの歌とビートの効いたサウンドはとても爽快。1983年の結成以来解散することなく現在も活動中。オリジナル・アルバムは19作を数える。



アイドル歌手としてデビューした渡瀬マキが結成した4人組LINDBERG。デビュー時は「アイドルがロックに転身?」と疑問符付きだったが、アイドル出身ならではの溌剌としたヴォーカルを武器に大ヒット。2002年に解散するがデビュー20周年の2009年に1年間限定で再結成。



札幌出身のオール・ガールズ・バンドGO-BANG'S。忌野清志郎が偶然デモテープを聴き「いいじゃん!」と言ったことがデビューのきっかけ。メジャー・デビュー前にナゴムレコードのオムニバスに参加したこともあり、乙女チックな弾け方が魅力だった。2010年に「SMAP×SMAP」出演のため一夜限り再結成した。



メジャーどころを紹介してきたがガールズ・バンドの元祖としてはこのバンドを抜かす訳には行かないだろう。日本で一番無名な世界的人気バンドと呼ばれた少年ナイフ。関西インディ・シーンから登場し、シンプルなギター・ロックがアメリカのオルタナ界で話題になりニルヴァーナと共にUKツアーをした。ソニック・ユース、レッド・クロスなど人気バンドにファンが多いが、いたってマイペースに活動、現在でも数百人規模のライヴハウスで演奏し、毎年海外ツアーを行っている。



こうやって聴いてくると、1980/90年代のガールズ・ロックには普遍的なポップ感覚が息づいていることがわかる。プリプリの岸谷香がMCで言っていたように「バンドが終わっても音楽は生き残る」のである。彼女たちの歌は永遠のスタンダードとして歌い聴き継がれて行くに違いない。

産業ロックと
インダストリアル・ミュージックは
違います

ガールズ・パワーが地球を救う。

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即物ノイズの到達点~大竹伸朗「ドクメンタ13 マテリアルズ:08 #67」

2012年11月24日 02時36分58秒 | 素晴らしき変態音楽


日本で最初にノイズのLPをリリースしたのは1980年JUKE/19というグループだった。当時朝日新聞の夕刊に月1回見開きの音楽ページがあった。今から思うと信じ難いが、紹介される音楽/アーティストは滅茶苦茶マニアックだった。覚えているのはマーティン・マルという日本で全く無名のアメリカのSSW。本国ではコメディアンとして知られる彼のアルバムを2ページに渡って詳細に紹介した記事を読んで翌日輸入盤店に走ったものだ。中国初のパンク・バンドとして話題になったドラゴンズの分析記事もあった。天下の朝日新聞にこんなページがあるとは編集部の上層部に相当の音楽マニアがいたのだろう。

JUKE/19のことを知ったのもそのページだった。コラムでマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンを引き合いに絶賛していた。45曲入ということに仰天した。スロッビング・グリッスルが表紙のFool's Mate Vol.16(1981.3)の国内盤レビューに非常階段etc.「終末処理場」、ノイズ「天皇」と並んで掲載され、秋田昌美さんが意味不明の言葉を並べたコメントを書いていた。衝撃の余り論理的思考を放棄するしかなかったようだ。


また同誌のVol.17(1981.7)で「Hypertrophic Music」としてTG、キャバレー・ヴォルテール、DOME、LAFMSなどをメインに当時のオルタナティヴ・ミュージックを分析した特集ではJUKE/19の2ndアルバム「Ninety Seven Circle」がディス・ヒートとペル・ウブの間でレビューされている。MARQUEE MOON Vol.5(1981.7)には明大前モダーンミュージックの広告にJUKE/19の1st,2nd LPとEPが掲載されている。


1st LP「Juke/19」(1980.12)は近くの貸しレコ屋で借りた。赤字に白で表にカバ、裏にチューリップが印刷され中に2枚のインサート。1枚は曲目リスト、もう1枚は木の枝のイラスト。PLAY AS LOUD AS YOU CANと書いてあるだけでメンバー名など一切記載がない。長くて2分、最短で6秒という細切れの音響が羅列される。ギターの一音だったり集団即興だったりミニマルの断片だったり、その音世界はそれまで聴いた何モノとも違っていた。音楽というより"音"そのもの。擦ったり叩いたりする対象は楽器だがそこに意志はない。音であれば何でもいい、という物質主義=マテリアリズム。

次に出た4曲入EP「19」(1981.2)にはSleeve Design:EINSTAINとの表記があった。4曲とも2~3分のノンメロディのノイズ音響だが1st LPに比べればロックっぽい。個人的にはこのEPが一番好きだ。四方八方に発散していた表現欲求がひとつのベクトルに突き進みエネルギーの塊と化す。オーヴァーレベルで歪んだ音響が耳を脅迫する。このEPの影響で多重録音を始めた。

19/JUKE (Shinro Ohtake) 4 Track 7" 1981


2nd LP「Ninety Seven Circle」(1981.3)にはジャケットと同じ絵柄の大判ポスターが付いていてEINSTEINのスタンプが押してあるアート作品。EPのサウンドを発展させたノイズの金字塔的傑作である。ボアダムズの山塚アイ氏が多大な影響を受けたという3rd LP「PIECES」(1981.12)ではガラッと変わってループが延々と続くミニマル・サウンドを聴かせる。これにも大判のコラージュ・ポスターが付いておりSHINRO-OHTAKEのクレジットがある。4th LPにして最終作「SOUND TRACK」(1982.9)は以前のガラクタノイズとミニマリズムを融合した作品で一番聴きやすいと思う。このアルバムでメンバー表記がありJuke/19がShinro Ohtake(b,g,tape,object)、Takuji Nomoto(ds,g,tape,object)、Tashiaki Ohyama(g,b,tape,object)、Yoko Ohta(vo,vln,object)の4人組であることが明らかになった。全員担当楽器にオブジェが入っているのが面白いが、当時は大竹伸朗氏は知られてなかったのでメンバー名が判っても特に感慨はなかった。

バイオによるとJuke/19解散直後から個展を開きアートの道を進み、80年代後半にはガラクタアートで美術界に名を覇し、愛媛県宇和島を拠点にガラクタや巨大なゴミを媒介にした作品を発表、時代の寵児となるが、大竹氏が幅広く世間に知られるようになったのは1990年代の「ジャリおじさん」「カスバの男」といった絵本を通してであろう。膨大な作品を観ると大竹氏にとって音楽が常に中核を成す重要なテーマだったことが判るが、その音楽活動にスポットライトがあたるのは1995年に山塚(ヤマンタカ)アイ氏とCDブック「パイプライン/ヤマンタカ日記」をリリースした時である。ボアダムズが日本のオルタナティヴ・ロックの第一人者として世界的に活躍していた頃でもあり、大竹氏とのコラボは大きな脚光を浴びた。翌年には二人でパズルパンクスを名乗ってアルバム「BUDUB」を発表、同時にJuke/19時代の作品がCD再発された。"Shinro Ohtake"が大竹伸朗氏であることに気がついたのはこのときだった。再発CDのライナーで大竹氏がJuke/19の歴史を詳細に書いている。謎のノイズユニットが山下洋輔トリオの演奏の衝撃から生まれたことを知った。大竹氏の芸術活動において「体の内側から湧いてくる、正体のわからない衝動」が原動力であり、ガラクタとゴミの集合体を作品として提示する即物的手法にブレがないことに感動する。

2006年東京都現代美術館で大回顧展「大竹伸朗 全景 1955-2006」開催。企画展示室の全フロアを使用するという、日本人作家としては初めての規模で個展を催し、5万人をゆうに超える幅広い観客を集めた。広大な展示場を埋めるゴミとガラクタのオブジェの膨大さに大竹氏の異常なまでのモノへの執着心を実感した。音楽作品コーナーにJuke/19のLPのジャケットやポスターが並んでいて芸術作品としての完成度の高さに改めて感心した。他にも氏の自動音楽発生装置の集大成である遠隔演奏ノイズバンド「ダブ平&ニューシャネル」を始めとする様々な楽器オブジェも展示されていた。パズルパンクス×ダブ平&ニューシャネルのライブ・イベントも開催されたという。


今回リリースされたCD-Rは、2006年のパズルパンクス名義での「PUZZO」、内橋和久氏とダブ平&ニューシャネルの「内ダブ」以来6年ぶりとなる音響作品である。アーティスト名は2[SHINRO OHTAKE MASARU HATANAKA]、アルバム・タイトルは「dOCUMENTA[13] MATERIALS:08 #67」となっている。"2”は大竹氏とサウンド・アーティスト畠中勝氏とのユニット名。東京と宇和島で両者がフィールドレコーディングした音を重ねあわせて生まれたコンクレート音響は、Juke/19の即物性と純化作用が究極まで追求されたストイックなマテリアリズムの結晶である。大竹氏が参加したアート・プロジェクト「ドクメンタ13」のインスタレーション音源でもある。ガサガサいう音、遠い足音、雨風の自然音、街の雑踏、魚市場の競りの声、異国の民俗音楽を思わせる囃子歌、廃品回収車のアナウンス、金属の打撃音、動物の鳴き声、電子音.....様々な具体音が発生源から切り離され単なる音という物体の重層となり流れ出す。一切の意味性を剥ぎ取られたトーンクラスターのうねりの中に脈打つ生身の人間の生命感。大竹氏の美術作品を貫く正体のわからない衝動がこの作品にも溢れている。



ノイズから
生まれた芸術
ゴミアート

本作品の初版100部は知る限りではDisk UnionとSTORE15NOV online shopで販売中。
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MERZBOW/スガダイロートリオ@代官山 晴れたら空に豆まいて 2012.11.21 (wed)

2012年11月23日 00時25分25秒 | 素晴らしき変態音楽


圧倒的音群!!! ~MERZBOW/スガダイロートリオ~

スガダイロー氏は今年3月にピットインで”東洋一のフリージャズ・トリオ”=芳垣安洋+広瀬淳二+井野信義にゲスト参加した時の山下洋輔さん直伝のドシャメシャ奏法を増幅した激しいピアノが印象的で一度自己のグループで観たいと思っていた。スガ氏は荻窪ヴェルヴェット・サンを本拠地にしており、同じ沿線なのでいつでも観れると高をくくっていてなかなか観れないまま半年が経ってしまった。2ヶ月ほど前何かのライヴで配布されたフライヤーにMERZBOWとの共演とあり、これは絶好のチャンスと思ったが何故かフライヤーに会場名が記載されておらず、スケジュール帳に日付を記したまま忘れかけていた。その後別のライヴで同じフライヤーを入手。良く見たら会場名がスタンプで押してあった。印刷時に入れ忘れたのか意図的なものなのかは分からない。晴れたら空に豆まいて(以下晴れ豆)ではMERZBOW/吉田達也+菊池雅晃デュオ/TADZIOの3マンやピーター・ハミル来日公演を観たことがあり、代官山というシャレオツな街にしてはディープなラインナップを聴かせるハコという印象がある。名前で分かる通り青山・月見ル君想フの系列店である。

今年はJAZZ非常階段により<ジャズ+ノイズ>が注目を集めている。歴史を辿ればやサン・ラー、デレク・ベイリー、高柳昌行さんなどフリージャズ界ではノイズ的サウンドの追求が行われてきたし、タージ・マハル旅行団、ボルビトマグース、音源は残っていないが軍楽隊(阿部薫+灰野敬二+竹田賢一)など現代音楽/ロック/ジャズ/ノイズの融和も数多い。ジャズとノイズの関係は実は親密なのである。近年目立つのはかつてはカッコつきの「ノイズ」として特殊音楽に分類されてきたアーティストが積極的に他ジャンルへアプローチするようになったことだろう。非常階段、MERZBOW、ヘア・スタリスティックス、ASTRO、マゾンナなどが多彩な異種交流試合を通し「ノイズ」の壁を突き破り幅広いリスナーにアピールしてきた。先日レポしたようにBiS階段で<アイドル+ノイズ>まで実現してしまった。今まで”雑音”と訳され音楽を阻害する存在と敬遠されてきた「ノイズ」が低迷する音楽シーンの起爆剤のひとつとなるのは間違いない。

今回の2マンのタイトルは「圧倒的音群!!!」である。MERZBOWの音圧の凄さは周知の事実だが、対するフリージャズの音群とは如何に?その秘密はスガダイロートリオ=スガダイロー(pf)+東保光(b)+服部マサツグ(ds)の演奏で明らかになった。

スガ氏の流麗なピアノでスタートする。ブルース調の美しいフレーズが次第に熱を帯びてきたところに手数の多い細かいストロークのドラムが加わる。次第にに鍵盤を破壊するような激しいピアノ・プレイが炸裂。私の無人島レコードの一枚であるアルバート・アイラー「スピリチュアル・ユニティ」でのゲイリー・ピーコックの激情プレイを髣髴させるエモーショナルなベースが駆け巡り、3人が一斉に全力疾走。最近CD化された山下洋輔トリオの1973年オープンリール・テープのみのリリース音源「山下洋輔トリオ」の凄まじさに通じる武闘派フリージャズ。スガ氏は洗足学園で洋輔さんに師事、山下洋輔トリオの代表曲「キアズマ」をレパートリーにし、さらに「山下洋輔」という曲まで作った程その影響を詳らかにしている。1970年にホールで演奏中、音が隣の大ホールで行なわれていた読響「第九」演奏会にまで響きわたり、後日読響が『小ホールの騒音のため御迷惑をおかけしました』と新聞に謝罪広告を掲載した、というエピソードを持つ山下洋輔トリオの爆音演奏。スガダイロートリオの演奏はそれを想起させる迫力で爆発する。スガ氏の両手は目に見えないスピードで88鍵の上を自由自在に走り回る。キンキンに張ったスネアのカーンという甲高い破裂音がアクセントを加え、ベースの低音がのたうつ。特に印象的だったのは3曲目のバラード。弓弾きのベースが大らかなメロディを奏でるうちにピアノから亀裂が生じ始め全体が破綻し混沌へと導かれる。崩壊する一歩手前で留まり何事もなかったようにテーマへと回帰する。これほどのカタストロフに満ちた演奏を聴くのは坂田明さんの「ちかもらち空を飛ぶ」ライヴ以来だった。

10年ほど前から「ハードコア・ジャズ」という名でフリージャズの再評価が進んでいる。サン・ラー、アルバート・アイラー、セシル・テイラー、ドン・チェリー、デレク・ベイリー、ミルフォード・グレイヴス、阿部薫、高柳昌行・・・。60~70年代フリージャズの闘士の演奏はまさに「ハードコア」そのものであった。この日のスガダイロートリオの演奏は「ハードコア」時代のジャズの香りが濃厚に漂っていた。和風のステージ意匠も相まって強烈に昭和の匂いを感じた。この演奏が「インスピレーション&パワー14」に収録されていても何の違和感もない。「21世紀の日本でただ一人のフリージャズピアニスト」の真髄が漲った演奏に完全にノックアウト。



続いてMERZBOW。8月のFREEDOMMUNE 0<ZERO>の演奏も強烈だった。この日は最前列スピーカーの真ん前で聴いたのでその大音量のシャワーを全身に浴びた。Macがセットしてあるがサウンドの殆どは無数に並んだエフェクター群により生成される。丸い金属板に針金やスプリングを付けたオリジナル楽器をヴァイオリンの弓や空き缶で擦ってガギギギギという爆音を発する。ペダルで音色を変化させ空間を捩じ曲げワープさせるサウンド・ストーム。インキャパシタンツやマゾンナのように視覚的要素がある訳ではないし、ヘアスタのユーモアもない。ひたすらシリアスに轟音を放出するだけの純正ピュアノイズ。一見(一聴)同じように聴こえるノイズも聴けば聴くほど多彩な世界を発見し味わいの豊かさが判るようになる。MERZBOWが何百種類も作品をリリースし続けるのはその枚数分の多様性を表現しているからに他ならない。光のスピードで放出されるエネルギーに身を委ねていると次第に魂が離脱して浄化されていく。





最後にスガダイロー氏とMERZBOWのセッション。電気増幅されたノイズにアコースティック・ピアノで太刀打ち出来るのだろうか。MERZBOWがジャズメンとセッションするのは初めてではなく、昨年ピットインで坂田明&ちかもらちとの共演を観た。しかし会場がジャズクラブだったのでいつもの大音響ではなかった。晴れ豆なら何の遠慮も要らないので最大音量の轟音セッションが期待できる。スガ氏が鍵盤を叩くように弾き始める。MERZBOWがギアをトップに入れてノイズを奏でる。それにお構いなく細かいパーカッシヴな連打を重ねるスガ氏。両手がまたもや霧散してしまうハイスピード。ピアノから発する音の弾幕で襲いかかるノイズの壁を突き破る勢い。無表情のままひたすら叩き続けるスガ氏。空中でぶつかり合い火花を散らす二つの音。楽器は違うがこれはまさに「解体的交感」=阿部薫+高柳昌行の現代版である。寄り添うことなく絡み合い反発しあう音の中に生まれる魂の交感。張り詰めた緊張感のめくるめくスリルに酔い痴れる。15分間譲り合うこと無く走り続けた果てに拓かれた新天地。満員の客席から大歓声と拍手が沸き上がる。一歩も引かず闘い抜いたスガ氏に心から拍手を送りたい。死闘だったのか、とスガ氏に尋ねたら「相手の音を聴かないのもひとつの方法だと思って」との答え。なるほど。手前味噌になるが私が30年前にやっていたOTHER ROOM(遠い部屋)のコンセプトは"別々の部屋での演奏を同時に聴かせる"というものだった。スガ氏の返事にそれを思い出した。

物販で志人とスガダイロートリオの共演アルバム「詩種」を購入。蓮の花のように開く特殊パッケージ。PCに入れるとジャンルはRapになっている。しかし"チェケラ!"のラップではなく吟味した言葉を時にゆったり時に高速で連射する歌はジェンル分け無用のオリジナリティに溢れている。NHKのアナウンサーのような真面目一徹の語りはやはり極めて昭和っぽい。<詩+ジャズ>は1950年代から模索されて来た歴史がある。このCDは原点に戻り真面目に両者の並走を突き詰めた作品。その不器用なまでの生真面目さは昭和的としか言いようがない。



今回のイベントは2010~2011年にスガダイローの「即興八番勝負」として様々なミュージシャンとプロレス的な硬派なバトルを展開して来たスガ氏の新たなる挑戦の始まりと言えるだろう。

タイマンで
向かって来いよ
敵に不足なし

ピアノの闘士スガダイロー氏に音楽の将来を賭けてみたい。

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アイドル界のダークサイド・ヒロイン~メタルダンスユニットBABYMETAL

2012年11月22日 01時00分39秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


この3人組のことを初めて知ったのはBiSやでんぱ組.incなどの動画を検索していた時におススメ動画として表示された「ヘドバンギャー!![Headbangeeeeerrrrr!!!!!] 」のPVだった。英語表記のタダならぬオーラと”赤ちゃんメタルのヘッドバンギング"という響きが気になり再生してみた。セーラー服の女の子が荘厳なオルガンに乗せて歌謡曲メロディを歌い始めたと思ったらいきなり炸裂するメタル・ギター。♪ヘドバン、ヘドバン♪というアニメっぽい掛け声とひたすら首を振る女子高生。過激なヘビメタ・サウンドに乗ったメロディは明るい歌謡ポップス。最近流行りの「ヘビメタやってみました」的なアイドルとは違う”本気”を感じた。サウンドはメタルだがヴォーカル&パフォーマンスが完全なアイドルに徹しているところが肝である。



メイン・ヴォーカルの娘はともかく、左右で無邪気に踊りステージでは一直線に"ウォール・オブ.デス"(かけっこ)する二人はどう見ても小学生。なんじゃこりゃとググったら平均年齢13.3歳だという。BABYMETALのメンバーはSU-METAL(Vocal, Dance/アイドル・グループさくら学院の中元すず香ちゃん14歳)、MOAMETAL(Scream, Dance)、YUIMETAL(Scream, Dance)。「アイドルとメタルの融合」をコンセプトに2010年に結成された。デビュー曲「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のPVがYouTubeで国内外で話題となり、2011年10月新宿ロフトのタワレコ主催アイドルイベントでは激しいメタルサウンドとパフォーマンスが繰り出され、アイドルイベントのはずがフロアはMOSH とサークルピットが発生し「カオス」と化したという。今年3月京都出身のヲタイリッシュ・デスポップバンド「キバオブアキバ」とのスプリット形式で初の音源作品「BABYMETAL×キバオブアキバ」を、7月に初の単独シングル「ヘドバンギャー!!」をリリース。10月に渋谷O-Eastで初のワンマン・ライヴを成功させ、来年1月9日シングル「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でメジャー・デビューを果たす。この曲はライヴで人気の”世直しメタル”ソング。今回の総選挙の焦点のひとつに「いじめ対策」があるが、無能な政治家が理屈をこね回すより、この曲に合わせて♪イジメ!ダメ!♪と国会でコールしたほうがよっぽど効果的では?予告編の映画仕立ての作りに期待が高まる。



新世代アイドルの世界は相当奥深くまだまだ表面を彷徨っているに過ぎないが、いろいろ聴いたり観たりした中で音楽的に最も気になるのは”北欧の風”バニラビーンズである。洗練されたシャレオツなバニビの真逆の音楽性のBABYMETALはその突き抜けた存在感が爽快極まりない。今後の活躍に注目していきたい。

ヘビメタさん
ってテレビが
あったよね

客席をモッシュピットと呼ぶBABYMETALのファンのノリの凄まじさを生で観てみたいものだ。

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裸のラリーズが鳴り響くファッション・ショー~LAD MUSICIAN「MINIMAL ART ROCK 77」

2012年11月21日 00時37分38秒 | アート!アート!アート!


このブログでファッション・ショーの紹介とは読者の方には意外かもしれない。実際書いている本人にも想定外である。

今朝ツイッターをチェックしていたら「裸のラリーズからイメージしたファッション・ショー」についてのツイートを発見しリンク先へ飛んだら何と!!水谷孝さんと灰野敬二さんのコスプレのオンパレードで思わず電車の中でひっくり返りそうになった。

LAD MUSICIAN(ラッド・ミュージシャン)という創立12年目のユニセックス・ストリートブランドで、コンセプトは「音楽と洋服の融合」だという。ファッション音痴なので下手なことは書けないが、音楽、特にロックとファッションは切り離せない関係にあることはいうまでもない。山本寛斎、三宅一生、ミチコロンドン、マリー・クワント、ポール・スミス、ヴィヴィアン・ウェストウッドなど音楽と関わりのあるファッション・ブランドは数多い。プラスチックスはファッション・デザイナーやスタイリストによるバンドだった。「ファッションと音楽」でググったところ、ファッション系サイトの記事が見つかった。また高橋幸宏さんとユナイテッド・アローズ顧問の対談も面白い。

こうしたファッション業界からのラヴコールに対してロック界からは「ファッション野郎にロック・スピリットが分かってたまるか!」という意固地な思い込みがあることは確かである。多くのロック・ミュージシャンとファンにとってファッション業界はハイソな別世界であり、心の中ではファッション・モデルに憧れながらも、ロック・セレブ以外には無縁の人種として排斥する方向にあった。サイケもパンクもグランジもファッション界との相互作用により世界的ムーヴメントになったのは事実なので、ロック界の最後の砦がフリージャズとアングラ音楽だったのではないだろうか。しかし遂にコアなロック・ファンの聖域である裸のラリーズがファッション界に取り込まれてしまった!こうなったら潔く負けを認めよう。リッチな異母兄弟であるファッション界に頭を垂れて許しを乞うしか無かろう。



ファッション・デザイナー黒田雄一氏によるLAD MUSICIANは今までもフェンダーとコラボしたり、ファッション・ショーに若手ロック・バンド、ノーヴェンバーズの生演奏をフィーチャーしDOMMUNEで配信したりとコンセプト通りの革新的試みを実行している。裸のラリーズにインスパイアされ「MINIMAL ART ROCK 77 Les Musician Denudes」(!)とタイトルされた2013年春夏コレクションも黒田氏のロックへの拘りが結実したものである。興味深いのは入手が容易なブート音源ではなく、ラリーズの数少ない公式音源「'77 LIVE」を使ったところだ。黒田氏が音楽を本当にリスペクトしていることが良く分かる。氏は間違いなく灰野敬二ファンでもある。一見無縁な暗黒のロッカーと華やかなファッション・セレブの出会いが化学反応を起こし音楽を超えて世界的カルチャーに影響を与えることになれば痛快至極である。




▼女性アーティストの世界ではファッションと音楽の関係は常に密接であった。



漆黒が
スポットライトに
照らされる

単行本「捧げる 灰野敬二の世界」が発売された。ウラゲツさんの書評をご一読いただきたい。
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非常階段/BiS/QP-CRAZY/_ _ _ _*(テイヘン)etc.@四谷アウトブレイク 2012.11.18 (sun)

2012年11月20日 00時42分01秒 | 素晴らしき変態音楽


自家発電 vol.00 
【第1部】JOJO広重のノイズ大学 四ツ谷分校 ACT:非常階段/山本精一/大友良英
【第2部】ライブとショウ ACT:BiS/非常階段/QP-CRAZY/_ _ _ _*(テイヘン)/谷桃子・古崎瞳/ギュウゾウ(電撃ネットワーク)/ザ ショッキング/師範 勝村筑蟇/DJオッチー

8月末の発表の時から楽しみにしていた非常階段絡みのイベント「自家発電 vol.00」が遂に開催。発表当初マル秘だった新世代アイドル・グループBiSの出演が10月に公表されるや否やアッと言う間にチケットはソールド・アウト。アウトブレイクはキャパ200人くらいなのでBiS以外の面子でも動員的には問題なかったかもしれない。しかしイベントの意義としては異分子の注入のがあるなしで大きな違いがある。BiSの出演、および非常階段との合体「BiS階段」の実現があったからこそ「自家発電」というイベントが重要な意味を持つのだと思う。

開催前日に主催者から発表された【ご来場のお客様へ*注意事項一覧】に下記の文章が掲載されていた。

観覧のご注意点>>演目によっては、お客様の衣類や持ち物が汚れたり、野菜炒め的なにおい他が立ちこめる可能性があり ます。怖い、汚い、ことは一切ありませんが、念のため、心臓の弱い方、逃げ足の遅い方は中後方でのご観覧をオススメします。※衣類等の汚れ、怪我、盗難に ついては、主催者、演者、会場も一切責任を負いませんので、ご自身での管理を宜しくお願い致します。

「野菜炒め的なにおい」って妙に具体的だが、ライヴハウス内で野菜を炒めるのだろうか?
「怖い、汚い」ことはないと言いながら「逃げ足の遅い方」とは逃げる必要が生じるってこと?それは危険で怖いってことでは?
突っ込みどころ満載の注意点に心がウキウキしてくる。

第1部は大阪本校で2回、渋谷分校で8回開催されてきた「JOJO広重のノイズ大学」。四谷分校となる今回は非常階段のT.美川さんとJUNKOさんに山本精一さん、大友良英さんを迎えた豪華版。客席の前半分の椅子席は勿論、後方の立ち見席も満員となる盛況ぶり。計10回のトークでノイズについては語りつくしたと広重さんが言って、特にテーマを絞らずフリートークになったが、それ故にこの場でしか話せないヤバい話の連発。「絶対ツイッターやブログに書いちゃダメだよ」と念を押されるまでもなく、とても外には聞かせられません。主な話題は尖閣列島/福島/車掌/ストーカー/内閣であったことだけ記しておく。

1時間強のトークの後この5人でセッション。精一さんはフライングVベース(お店にあったものか?)を弾く。フェスティバル福島でのノイズ温泉に精一さんが加わった編成で、ベテラン同士の激しい演奏は渾然一体となり出口のないノイズトンネルを形作るドローンの渦を産み出し、その真ん中をJUNKOさんのスクリームが突き抜ける。25分の演奏。



入替制なので第1部が終わると観客は追い出される。1階のカフェで30分ほど時間を潰す。開場時間になると若者たちが列をなす。黒のBiS Tシャツと黒地に「殺」の殺害Tシャツが目立つ。私の前に並んだ青年は黒い殺害マスクの暴走族風の強面だが話しかけたら礼儀正しい反応だったので心和んだ。入場時に受付でマスクが配られる。野菜炒め対策かな?と思いワクワク感倍増。会場を埋めた若者たちの大半がマスク着用なのでまるで伝染病患者の集会のような雰囲気。気がつくと第1部に来ていた顔見知りの客が殆どいない。非常階段ファンの大半は第1部だけで帰ってしまった模様。これからがお楽しみなのにな~、もったいない。

主催者からは繰り返しドリンクとフードと物販の案内に加え、何かあったらピンクのTシャツのスタッフまで、というアナウンス。確かにライヴハウスにしてはスタッフの人数が多い。DJオッチーがテクノ・ナンバーをプレイするうち開演時間に。ステージ前のスクリーンにビデオが投射される。何と田原総一郎さんが登場、自家発電の開催宣言をする。こりゃまた面白い。

トップ・バッターは_ _ _ _*(テイヘン)。何の予備知識もなかった。ドラムがモヒカンなのでパンクかと思ったらフラメンコ風のドレスの女性ヴォーカルが登場、スージー&ザ・バンシーズを想わせるポジパンで「時の葬列」系統のバンドかと思ったら2曲目からはハードパンクで髪振り乱して歌い客席に乱入してくる。初めは大人しかった観客も煽られ熱くなってきたが、ノリ方が頭上で手拍子のアイドルノリなのが可笑しい。あとでググるとアウトブレイク一押しの過激なパフォーマンスで知られるトランス&ロール・バンドとのこと。ビデオにもその過激さが伺える。この日の演奏は比較的おとなしめだったか。



「皆さん、マスクを使うのは今です」とのアナウンスでQP-CRAZYが登場。ゲテモノ専門レーベル殺害塩化ビニールの「バカ社長」ことTHE CRAZY SKB率いるハードコア・バンドである。このイベントのことをノイズ好きの友人に話したら、QP-CRAZYは危ないから気をつけろ、と言われた。殺害ファンとおぼしきイキのいい若者が前方に集結。「地獄行き特急列車のスタートだ!」との掛け声でバンドが演奏を始めると激しいモッシュが起こる。そこに釘付きバットの先から火花を発射しながら”パンク版デーモン小暮閣下”=THE CRAZY SKBが登場、モッシュの波が広がる。殺害系バンドを観るのは初めてだがただのゲテモノだと思ったら大間違い、80’sジャパニーズ・ハードコアの伝統を継承するタイトなサウンドと豪快なヴォーカルは極めて質が高い。90年代以降のハードコアがミクスチャーやスカコアへ走り忘れられたHC本来のストレートな衝動をそのままに体現している彼らは素晴らしいというしかない。最後の曲で火炎放射攻撃。フロアの前方の客が雲の子を散らすように非難する。焦げ臭い煙にマスクが役立った。プロレスラーでもあるTHE CRAZY SKBならではのサービス精神旺盛でエキサイティングなステージは最高だった。



続いて谷桃子feat.古崎瞳のエンターテイメントショー。グラビアアイドル&テレビタレントの二人の爆裂コント。カラオケで歌う桃子嬢の隣で瞳嬢がお好み焼きを調理するというシュールなパフォーマンス。観客の男性をステージに上げ出来あがったお好み焼きを食べさせる。何の意味があるのか分からないが普通じゃないことは確か。観客も楽しんでいる。


(*このパフォーマンスは撮影OKでした)

次は本イベント最大の謎、勝村筑蟇師範による筑波山ガマの油売り口上。幕が開くとそこには羽織袴のおじさんと昔ながらの街頭屋台。普通なら白けるかもしれないが、師範の名調子に座り込んだ観客全員が魅了されている。繰り出す語りや刀による実演に大きな拍手と歓声が起こり大道芸そのものの一体感が生まれる。もしガマ油が物販にあったら買ってしまいそうな魅力的なパフォーマンスだった。貴重なものを見せていただき主催者に感謝。


続いてギュウゾウ&ザ・ショッキングによる【電撃ネットワークの公開実験室・四谷特別編】。電撃ネットワークのサソリ芸や花火芸はテレビで観たことがある。しかし生とテレビでは大違い。ステージ前列の客の上にビニールシートをかける。ギュウゾウ氏得意のサソリを使った芸「サソリ男」、グラインダーの火花でタバコに火をつける「火花大好きサンダー野郎」、クラッカーを口で受け止める「クラッカー口内爆裂」と披露し、BiSのメンバーをステージに呼び込む。BiSのミッチーちゃんとザ・ショッキングのハプニングの「布団圧縮袋即身仏」には観客も他のBiSメンバーも大喜び。過激な体当たりパフォーマンスは凄い迫力。素晴らしいエンターテイメントだった。終了後立ちこめる煙を換気するため暫し休憩。

(*この場面は撮影OKでした)

続いて非常階段。第1部には出なかったドラムの岡野太氏が参加した4人での演奏である。激烈ノイズにパワー・ドラム。ここまでの盛り上がりから3年前のHMV渋谷閉店ライヴのような混乱を期待したが、始まってみると意外にも観客は佇んで眺めるのみ。もしかしたら観客の大半は非常階段およびノイズのライヴ初体験なのか!と気がついた。興味はあるようだがどう対応してよいのか戸惑っているのかも。それでも広重さんがギターを頭上に振りかざすと歓声が上がるし、痙攣する美川さんに興奮して腕が挙がる。演奏自体はドラムがある分第1部よりずっと輪郭がハッキリしてパワフルで素晴らしかった。25分の演奏が終わると大きな拍手と「ジョジョさーん!」というコールが起る。初めて観るノイズ・アーティストとして非常階段は最適である。この若者たちにノイズの魅力を少しでも伝えられれば大成功。



BiS Tシャツが前列に集まって来た。いよいよお待ちかねBiSのステージである。PAから重低音のテクノビートが響きメンバー登場。メンバーの動きに合わせ一斉にしゃがみ込むヲタたち。観客の6割がBiSファンだったことが判明。さっきQP-CRAZYでダイヴしていたファンが交じっているのが面白い。イマイチ締まりがないメンバー紹介、先日同様メンバーがひとり欠席だったが関係なしのパフォーマンスと歓声、Oi! Oi!という掛け声、一斉にステージへ押し寄せる人の波、「オナニー」「うんち」「おしっこ」と口にする非アイドルなMC、ラストのデスメタル・ナンバー「IDOL」では気の狂ったようなモッシュ大会、と新生アイドルのライヴならではのヲタノリが最高に面白い。一見の価値あり!



そのまま続けてイベントの目玉BiS階段に雪崩れ込む。BiSがオケに合わせて歌い踊る横で広重さんと美川さんが激しいノイズを鳴らしJUNKOさんの高周波スクリームが響くという何とも言えない違和感がたっぷり。「アイドル界のラリーズ」の爆音とヲタの方々の滅茶苦茶な大熱狂には流石の非常階段も歯が立たないという印象。そのうちBiSの娘たちが何かを客席に投げ始めた。後で見ると生麺や鶏肉や臓物だった。アイドル界のスターリンでもあったとは!会場中に興奮の渦を巻き起こして2曲で終了。始終嬉しそうな広重さんの笑顔が目に焼き付いた。

▼イメージ映像を作ってみた。全然違うけど雰囲気が少しでも伝われば幸いである。









(*ブログ「プー・ルイの絵日記帳~アイドルグループの作り方~」より無断転載)

6時間に亘るイベントの締めは田原総一郎さんが再登場。終わってみると確かに注意書きにあったように観客に被害はなかったがかなりアブナい場面もあった。こんな楽しいイベントは滅多にない。次回「自家発電 vol.1」は来年6月の予定だとのこと。今回を超えるサプライズとハプニングが産み出せるか成り行きが楽しみ。

自家発電
してばっかりでは
身体がもたぬ

このイベントの模様は12/25 23:00~24:00スペースシャワーDAXで放映予定。ノイズ/ハードコア/アイドル他すべての音楽ファン必見である。

BiS階段を成功させた非常階段の次のプロジェクトは何と初音階段。コラボCDとレコ発ライヴが予定されている。
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