A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【地下アイドルへの招待 】 闇営業と病み営業と地下営業~始発待ちアンダーグラウンド/沖縄電子少女彩

2019年08月30日 01時31分33秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


地下アイドルへの招待  
第21回:闇営業と病み営業と地下営業
~始発待ちアンダーグラウンド/沖縄電子少女彩

DJ Necronomicon ネクロノミコン(aka 剛田武)

お笑い芸人の闇営業が話題になったのは6月頃だが、気に入らないのは"反"社会的勢力との繋がりばかり話題にするマスゴミの姿勢である。闇営業の相手は"反=アンチ"に限らない。"非=ノン","不=イル","外=アウトオブ"を含む社会的勢力、つまり「非合法の活動を行う非公然の組織」つまり「地下組織」に他ならない。そして地下組織の活動、つまり「地下営業」こそ筆者が提唱・推奨・実践する『地下音楽/地下アイドルへの招待』の導く人生の理想型に違いない。翻って考えてみると、地下アイドルの世界では「闇」ならぬ「病み」営業が白昼堂々公然と行われて来た歴史があり「闇」も「病み」も許されるYummy(おいしい)な現場である。「病み」を前面に押し出せば、気分が乗らずドタキャンしてもOK、キレた挙げ句の暴力行為や自傷行為も問題なし。そのうちに、病みすぎてライヴ現場にメンバーが誰ひとり現れない究極の病み系アイドルが登場するかもしれない。その日の病みが比較的軽いメンバーが自室から固定画面で声だけのインスタライブで出演し、歌詞は歌わず、殆どが「みんな大嫌い」「死にたい」「草葉の陰から一生呪ってやるからそう思え」といった呟きのみ。特典会でチェキ券を1枚1000円で販売するが、メンバーが現場に居ないのでヲタクのソロチェキオンリー、ヲタクが自分で落書きする用にパステルカラーのポスカを用意してあるサービスが大好評。リリース音源はすべてアンタイレコードならぬアンタイストリーミング。Apple Music、iTunes、Line Music、Spotifyなど配信サイトで配信中だが、グループ名も曲名も非公開なので、誰ひとり聴くことが出来ない幻の音源、万が一聴いてしまったら恐ろしい運命が待ち受けているという都市伝説で人気爆発。楽曲制作費や衣装代・振り付け料どころか、メンバーも要らない(インスタライブは寝たきり老人の寝言を加工したテープ)ので、元手ゼロでアイドル運営が出来てぼろ儲け。そうだ、やったもん勝ちだから俺が最初にやってしまおうか等と非合法的な思考を重ねることが地下営業への近道かもしれない。

閑話休題、現在地下営業で目覚ましい成果を上げつつある注目の地下アイドルの最新作を紹介しよう。。


●始発待ちアンダーグラウンド『始発待ちアンダーグラウンド』


渋谷で終電を逃しちゃったから結成、2018年2月より活動開始。オクヤマ・ウイ、フカミ・アスミ、ムラタ・ヒナギクの3人グループ。初めて観たのは今年6月2日ネクロ魔、爆裂女子との対バンだったが、グループ名の「アンダーグラウンド」に相応しいグラムロック/GS/ロカビリー風サウンドとメンバーのロック女子ぶりが気に入った。デビューアルバム『始発待ちアンダーグラウンド』は60年代サイケポップやグラム歌謡の要素が色濃く、真夜中過ぎの地下鉄ホームの闇の中で始発を待つ女子の独白で綴る寺山修司の戯曲を思わせる曲もある。深夜を過ぎて寝る前のYummyな時間を彩るちょとだけ病んだ世界に浸れる。

始発待ちアンダーグラウンド - 風街タイムトラベル【MV】】



●沖縄電子少女彩『黒い天使』


高校を卒業し、8月に19歳になったばかりの沖縄出身のアヴァンギャルドアイドル&ノイズミュージシャン。生誕ライヴは、昼の部アイドル(キスエク、めろん畑、リリカオ等)、夜の部ノイズ(灰野敬二、ドラびでお、美川俊治、ASTRO等)、昼と夜/陰と陽/光と影の両面備えた本領を発揮。2ndアルバム『黒の天使』は、ドラびでお、美川俊治、森田潤、魚住有希、宇川直宏等がゲスト参加。ポップス〜ノイズ〜テクノ〜民族音楽〜昭和歌謡〜ダンスミュージックが並列に並んだバラエティ豊かなアルバムになっている。以前盤魔殿にゲスト出演した東京リチュアルのバンギ・アブドゥル氏と繋がりが判明。近々盤魔殿出演が実現するかも。


沖縄電子少女彩『黒の天使』MV / Okinawa Electric Girl Saya『Black Angel』


注:この2アーティストの音源はストリーミングでもちゃんと聴けますのでご安心ください。

闇の中
病んだ魂
地下活動

ULTRA DARK IDOL FROM JAPAN
NECRONOMIDOL // Live at NärCon 🇸🇪 July 27,2019

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ハイパー能『睡蓮』桜井真樹子/灰野敬二/加藤ひろえ@成城学園 アトリエ第Q藝術 2019.8.23 fri

2019年08月26日 00時56分20秒 | 灰野敬二さんのこと


ハイパー能『睡蓮』

開場:19:00
開演:19:30 (21:00 終演予定)
入場料:前売り¥3,500 当日¥4,000 

アーティスト
シテ:桜井真樹子(妖精、ジャンヌ・ダルク、龍笛)
ワキ:灰野敬二(クロード・モネ、ポリゴノーラ)
後見:加藤ひろえ(蓮、生け花)



ハイパー能「睡蓮」は桜井真樹子の書下しによるストーリーを持った舞台藝術である。入場時に配布された資料には、植物学者である兄の櫻井直樹氏が考案した楽器ポリゴノーラと灰野敬二の関係⇒別の場で出会った生け花パフォーマー加藤ひろえからの共演の誘い。そこから、花⇒蓮⇒クロード・モネ⇒ルーアン大聖堂⇒ジャンル・ダルクの処刑⇒セーヌ川⇒睡蓮の庭⇒写真技術の登場と連想が繋がり、最後に辿り着いたのが「モネが出会ったジャンヌの物語」だったと綴られている。筆者が「えいたそモダニズム」をはじめとするブログ記事で時折展開する妄想論によく似た手法と言えないだろうか。しかし筆者の妄想がアトランダムな奇想の羅列に過ぎないのに対して、桜井は個々の連想を深く吟味してひとつの幻想譚に纏め上げているのが表現者たる所以である。



天井から睡蓮の葉が吊り下げられている。右手のテーブル奥に灰野が立ち、銅鑼のように垂直に吊るされたポリゴノーラを演奏する。水平に置かれる場合と異なり、叩く面の裏と表に関係なく音が解放されるので、文字通り通りのいい伸びやかな音が広がる。左手後ろから謡いながら桜井が登場、ステージ中を舞いながら呪文/祝詞を謡う。モネ役の灰野が朗々とした声で台詞を歌う。謡と歌、祝詞と台詞、その違いはパフォーマーとしての出自と経験の違いを反映している。桜井が龍笛を吹き、灰野がシンバルを手に激しい舞踏。桜井が手にぶら下げたポリゴノーラを叩く。二人が舞う中で加藤が天井に吊るした睡蓮の花をひとつひとつ地面へ下ろす。桜井が丸い和紙の葉を撒きながら祈りを捧げると、天から光が沼の中に降り注ぐ。加藤が藤の蔦を花瓶に差して龍の舞のような生け花を作り上げ、灰野がいろんな形のポリゴノーラから時に銅鑼のような、時に鈴のような、時に弦楽器のような多彩な音色を紡ぎ出し、桜井が凛とした声で謡いながら舞う。3人の意志の力で聴き手の全身が目になり耳になり、集中力が研ぎ澄まされっぱなしの90分の濃厚な時間は、崇光な美と豊潤な表現性に満ちあふれていた。



能に似たシリアスな舞台ではあるが、邦楽の範疇には収まらない汎音楽の試み。スーパー(超)でもウルトラ(極)でもなくハイパー(超越)と名付けた意図が理解できた。ジャンルやスタイルを超越するパフォーマンスの真髄に触れた1日だった。



睡蓮の
形に似てる
ポリゴノーラ

<灰野敬二ライヴ情報>
9月15日 (日) 東京 下北沢 Lady Jane
立待の月聴覚の月

start 7:30 pm 2 stages
charge:¥3,300(予約¥2,800)+ Drink Fee

灰野敬二 (g, polygonola)
太田惠資 (vln, voice)
西瓜を眺めていた櫻井博士が生んだポリゴノーラという、音階を持って倍音を奏でる手強い多角形楽器に挑む、悲しみのヴァイオリニストであり妖かしのヴォイスも油断大敵なのだ。




9月23日(月祭)東京・秋葉原CLUB GOODMAN
RICHARD PINHAS LAST JAPAN TOUR

open18:30 start19:00
adv.¥3300 door¥3800 (+drink order)

出演:RICHARD PINHAS/灰野敬二/吉田達也/武田理沙




10月18日(土) 福岡UTERO
GOUACHE fukuoka mens & meld presents
『不失者ライブ』

OPEN/START 18:00/19:00
ADV/DOOR 4,000/4,500 (ドリンク別)

不失者(灰野敬二、ナスノミツル、RyosukeKiyasu)
ドンマツオ(ズボンズ)
Nyantora(ナカコー)+duenn

TICKET予約:
twitter @meld_fuk
instagram @meld_fuk
のそれぞれのDM
または
gouache.nakamura@gmail.com




10月27日(日) 東京・渋谷 宇田川町空き地
DANCE TRUCK TOKYO : 2019

2019年10月26日(土)・27日(日)
18:00-20:00
入場無料(事前予約不要)
*灰野敬二は10月27日(日)に出演

出演:Abe"M"ARIA、五十嵐結也、川村美紀子、きたまり、しでかすおともだち、白井剛/Dill、灰野敬二、東野祥子、メガネ(座)、森下真樹/森下スタンド、山川冬樹、ロクディム

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【拡散希望】9/1(日)不思議音楽DJイベント『盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會Vol.28:Fête d'observation de la lune noire 暗黒月見会』

2019年08月25日 00時20分02秒 | 素晴らしき変態音楽


盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會Vol.28
Fête d'observation de la lune noire 暗黒月見会


渋谷 DJ Bar EdgeEnd
2019/9/1 sun

18:00 Open/Start 
1000yen incl. 1drink

Avant-garde, Noise, Industrial, Dark Ambient, Neofolk, Punk, Hardcore, Black Metal, Underground Idol, Middle-east, Ethnic, Ritual, Medieval… Everything Weirdness About Music!

DJ Bothis / DJ Necronomicon / DJ Vaby / DJ BEKATAROU / DJ Paimon / DJ ケロリン (ケロッピー前田) / DJ SatosicK / DJ emamouse / VJ Qliphoth

異端音楽レギュラーDJに加えてスペシャル・ゲストDJが3人参加。
☆TBS TV『クレイジージャーニー』で人気のケロッピー前田ことDJケロリン
☆ゴス/インダストリアル・シーンで人気の女性DJ SatosicK
☆ForestLimit等で活躍するアヴァンギャルドな覆面女子DJ

来場者全員にマニアックな音楽ZINE『盤魔殿アマルガム』を無料進呈
目次
・地下アイドルへの招待〜沖縄電子少女彩/始発待ちアンダーグラウンド
・ターン・オン、チューン・イン、スピン・アウト!!!〜未来魔女会議について
・埋もれた地下音楽家〜ASKA TEMPLE
・スプラッター千夜一夜〜センチネル[原題: The Sentinel]
・完全セットリスト〜盤魔殿vol.27
and more....



TIME TABLE
18:00-18:30 Free Zone (自由参加)
18:30-19:00 DJ Bothis aka 山田遼 
19:00-19:30 DJ BEKATAROU aka 伊藤元 
19:30-20:00 DJ SatosicK 
20:00-20:30 DJ Necronomicon aka 剛田武 
20:30-21:00 DJ ケロリン aka ケロッピー前田
21:00-21:30 DJ Vaby aka 大場弘規 
21:30-22:00 DJ emamouse 
22:00-22:30 DJ Paimon aka Moppy 


【出演DJの聴かせどころ】
Guest DJs:
●DJ ケロリン aka ケロッピー前田
好評イベント『クレイジーミュージック探訪』のDJバージョン、11月11日開催予定の「ウィリアム・バロウズ&ブライオン・ガイシン編」を先取りして、オルタナティブ、フリージャズ、電子音楽までをカットアップ&フィールドイン! サウンドのネイキッド・ランチに挑む! 祝『バースト・ジェネレーション』Vol.2 刊行!Nothing is true, everything is permitted.








●DJ SatosicK
盤魔殿初登場。
以前こちらに遊びに来た際、DJ概念を見事にぶち壊されました(笑)
今回普段なかなかかけない(かけられない)ものから、音楽を聴きたくない時期に聴いていた音楽(矛盾)などもまわす予定です。
面白い音が沢山聴けるイベントなので楽しみです!

ゴスイベントなどでダークパンク/ポジティヴパンクをメインにspookyかつストレンジなスピンを展開。
Goth, PositivePunk, Deathrock, DarkPunk, IndustrialNoise, DarkAmbient, etc




●DJ emamouse
現代アート的電波アイドル風ハードコア調シンガー・トラックメイカー。
現実逃避で没入したゲームの世界(仮想空間)を、仮装することで現実世界とアイデンティファイしている。
つまり皮膚という設定のマスクを被って2015年よりLIVE活動を開始。自身をモチーフとしたイラストレーションや動画、実際には無いゲームのサウンドトラックや、自分が存在する世界とは少しレイヤーのズレた様々な世界をテーマとしたアルバムなどを制作。自身の表現全体を使ってもう一つの別次元を作る活動をしている。
Psalmus Diuersae、Quantum Natives、Primordial Void等のレーベルから音源や映像作品等をリリース。2018年にBandcamp、2019年、The Japan Timesに単独インタビューが掲載される。

DJは素材として他人様の曲を使った作曲だと思っているので、基本的に現代のアンダーグラウンド音楽をアンダーグラウンド音楽でマッシュアップしつつ、長めの素敵な一曲を作れたらと思っています。「踊れてキモくて素敵で楽しい辺境のニュー民族音楽」がテーマです。




Regular DJs:
●DJ Bothis a.k.a. 山田遼
ramlehを中心にbroken flagレーベルを特集し、初期ノイズに回帰します。




●DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
【DEATH EASY LISTENING】90年代渋谷系ブームの裏でデス渋谷系と呼ばれたのが中原昌也こと暴力温泉芸者であった。それに先立つ70年代ラジオや街中のBGM、校内放送でもてはやされたムード音楽やイージーリスニングの裏にはドロドロしたデス系が存在した筈だ。イージーリスニングとその対極のハーディーリスニング、そしてラヴサウンドの裏に隠れたヘイトサウンドを暴き出すDJプレイをお聴かせします。






●DJ Vaby a.k.a. 大場弘規
Even Anti-Art Is Art... That Is Why We Reject It!胸に手を当てTNBのマニフェストを叫んだところで、今回のテーマはオールTNB(関連)、しかもヴァイナル・オンリーで攻めたいと思います。伝説のTwo Thousand Maniacsの限定50枚7inchやオフィシャルでありながら10枚限定の幻のアレとかもアレしちゃうかも?(笑)とにもかくにも今回のVaby's Choiceは100%ピュアなHarsh(ハーシュ)なので覚悟して来やしゃんせ。




●DJ BEKATAROU a.k.a. 伊藤元
この度は金属等の雨を降らせる所存であります…




●DJ Paimon a.k.a. Moppy
過ぎ行く夏を惜しみながら(嘘)ON-U Soundを中心にUKのダブやレゲエを選曲します。




●DJ & VJ Qliphoth a.k.a. 宇田川岳夫
Qliphothは今回はVJに徹しますが、最初のフリーゾーンでDJしながらVJします。映像はすべてオーディオリアクティブ。Touch Designer でシンセサイザーを作り、その音に合わせて図形を変化させることを5分くらいしたらDHとVJします。ミニミニライブ・アンド・VJ



盤魔殿
月世界への
音楽旅行

[日本語字幕]『月世界旅行』(1902)"Le Voyage dans la Lune / A Trip to the Moon"
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【私のB級サイケ蒐集癖】第23夜:歌も顔も名前もないサイケ歌謡『アニメイテッド・エッグ』『アンダーグラウンド・セット』

2019年08月23日 02時05分45秒 | 素晴らしき変態音楽


テレビの歌謡曲やアニメ主題歌は好きだったが特別音楽好きではなかった筆者がレコード蒐集を始めたキッカケは、小学校高学年だった1974年頃、母親がポータブルレコードプレイヤーを買ってくれたことだった。電蓄と呼ばれるプラスチック製の安物だったが、スピーカーが二個付いていて初めてステレオ効果を実感した。その時一緒に金沢市片町のレコード店山蓄で買ったシングル盤が映画『アラン・ドロンのゾロ』の主題歌。とりわけ映画好きでもなかったが、アラン・ドロンは有名だったし、歌謡曲よりもお洒落で憧れていたのだろう。イタリア語の陽気なテーマ曲は日本のウェットな歌謡曲にはないハイカラなお洒落感があった。その後暫くは映画音楽、特に西部劇のテーマ曲のシングル盤を集めることに専念した。特に好きだったのは『続・夕陽のガンマン』。アワアワワ〜というコーラスも面白いが、エレキギターの乾いた音色がカッコ良かった。

「続・夕陽のガンマン The Good, the Bad and the Ugly」サウンド・トラック Sound・Track


1975年に中学に進学して洋楽ポップスに目覚め、ジョン・デンバーに憧れてマーチンの12弦フォークギターを買おうと思っていた筆者が、やっぱりエレキギターが欲しい!と思いはじめたキッカケはベンチャーズだった。ラジオで聴いた「10番街の殺人」「ウォーク・ドント・ラン」「ダイヤモンドヘッド」などの電気加工されたギターサウンドは、未来の音楽のように聴こえて、スピード感あるビートに心をときめかせた。エルヴィス・プレスリーやビートルズも悪くなかったが、エレキギターが主役のベンチャーズには叶わなかった。当時販売されていた日本製モズライトギターのカタログを眺めていた。だがその後、76年にKISSやエアロスミス、ジョニー・ウィンターといったアメリカンロック、77年にパンクロックに痺れてヴォーカル入のロックバンドに興味が移ったのでベンチャーズのようなインストゥルメンタルを聴くことは少なくなった。ちなみに最初に買ったエレキギターはジョニー・ウィンターに憧れてグレコのファイアーバード・モデルだった。

The Ventures (1966)


しかしながら80年代から細々とはじめたサイケレコード蒐集の中で筆者のギター初期衝動のエレキインストとの出会いが増えて来た。そのひとつがデイヴィ・アラン&ジ・アロウズ Davie Allan & The Arrowsをはじめとするバイク映画サントラのファズギターである。映画のサントラ用に集められた無名のミュージシャンによる歌も顔も名前もないインスト曲は、十代の暴動を描いたセックス・ドラッグス&ヴァイオレント映画に相応しかった。さらにB級サイケの奥の細道に入り込んだ筆者は、他にも匿名プロジェクトによるエレキインストが多数存在することを知ったのである。大震災で歪んだままのレコード棚から歌も顔も名前もないサイケ企画盤を引っ張り出して聴きながら夏休みを過ごしている。
【私のB級サイケ蒐集癖】第8夜<バイク映画のファズギター>デイヴィ・アラン&ジ・アローズ

●The Animated Egg ‎/ The Animated Egg
Alshire ‎– S-5104 / 1968


“卵が先かニワトリが先か、という昔からの質問に答えはない。しかしここにアニメイテッド・エッグが登場した。才能豊かな「ニュー・サウンド」のミュージシャンによるエキサイティングなアシッドロックのメッセージ”(ライナーノーツ翻訳)

どう見てもジャケット写真のメキシコ系の男女グループが演奏しているとは思えないファズやエフェクト全開のサイケギターによるラリったサーフロックが秀逸な1枚。メンバー名も作曲者名も書かれていない。リリース元のAlshireレーベルは廉価盤専門レーベルで、イージーリス二ングの101ストリングスをはじめとするファミリー層向けのレコードを多数リリースしている。そんな中に時代の悪戯で紛れ込んだこのアルバムは、西海岸のセッション・ギタリスト、ジェリー・コール Jerry Coleを中心としたスタジオ・セッションの作品である。コールの記憶によると他の参加ミュージシャンは、 エドガー・ラマー Edgar Lamarとドン・デクスター Don Dexterがドラム、とミー・リー Tommy Leeとグレン・キャス Glenn Cassがベース、ビリー・ジョー・ヘイスティングズプレストン Billy Joe Hastingsとノーマン・キャス Norm Cassがギター、ビリー・プレストン Billy Prestonがオルガン。ジェリー・コールの同じセッションは他にも様々なグループ名を冠した「サイケ企画盤 psychsploitation」がリリースされており、それらを集めたコンピレーション『The Animated Egg / Guitar Freakout』が2008年にSundazedからリリースされている。

THE ANIMATED EGG - A Love Built On Sand


●The Underground Set ‎/ The Underground Set
Pantonic ‎– PAN 6302 / 1970


ファズギターと共にハモンドオルガンが大幅にフィーチャーされ、プログレ/ハードロック風味の強いサイケポップを聴かせる。イギリスのバンドだと思われがちだが、イタリアのプログレッシヴロックバンド、ヌーヴァ・イデア Nuova Ideaが契約上の理由で変名で制作したプロジェクトである。この1stのあとに2ndアルバム『War In The Night Before』(71)をリリースした。また、ザ・サイケグラウンド・グループ The Psycheground Groupという変名で『Psychedelic And Underground Music』(71)というアルバムもリリースしている。プロデュースはヌーヴァ・イデアの他にレ・オルメを手がけるジャン・ピエロ・レヴァルベリ Gian Piero Reverberi。イタリアらしいモンドなグルーヴナンバーやスキャット風のコーラスはサイケに限定されない60年代ヨーロピアンポップの魅力を伝える。

ヌーヴァ・イデアは1969 – 1973の間に3枚のアルバムをリリースし解散。メンバーの何人かはニュー・トロルスに参加。日本での知名度は低いが、オルガン中心のシンフォニック・ロックの完成度は高く、ニュー・トロルスやオザンナに引けは取らない。現在はドラマーのパオロ・シアー二 Paolo Sianiをメインに再結成され活動中。

Underground Set - 1970 The Underground Set - 10 7' meridiano


エレキギター
弾けば電気が
ビリビリだ

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灰野敬二+HIKO+T.美川+ドラびでお/LINEKRAFT+D.Maekawa/Numb+M.Sakaguchi/ASTRO+進入禁止@秋葉原Club Goodman 2019.8.17(sat)

2019年08月21日 00時40分33秒 | 灰野敬二さんのこと


<GIGA NOISE SPECIAL! レジェンド オブ ノイズ 2nd>
開場 18:30 / 開演 19:00
予約 ¥3,000/当日 ¥3,500(+1drink)

灰野敬二+HIKO+T.美川+ドラびでお
LINEKRAFT+Daisuke Maekawa(GRIM)
Numb+Masayoshi Sakaguchi+VJ M.U.//Mikudarihan Uppercut
ASTRO+進入禁止



2016年5月にスタートしたノイズ塗れの長時間イベント「GIGA NOISE」の特別編。大御所から若手まで4組のスペシャルユニットによるノイズ伝説の現在進行形を詳らかにするイベントである。そしてこの日は"King of Noise"非常階段のメンバーにしてJapanoiseの中核Incapacitantsの美川俊治の59歳の誕生日。まさにBirthday of Legend of Noise(ノイズ伝説生誕祭)でありClecbration Day(祭典の日)に相応しい奇跡のライヴとなった。

●ASTRO+進入禁止


Incapacitantsと並ぶJapanoiseの代表格C.C.C.C.で活躍した長谷川洋とフィメール・ノイジシャンRohcoによるデュオユニットASTROと、敬愛する非常階段と同じ四文字熟語のユニット名の進入禁止とのコラボレーション。空間性を活かしたスペーシーなASTROの電子音とストロングスタイルの進入禁止のハーシュノイズが二基のレーザー光線と交差する音響空間は伝説の夜の幕開けを重圧で飾った。

ASTRO+進入禁止 noise drone industrial 2019/08/17



●Numb+Masayoshi Sakaguchi+VJ M.U.//Mikudarihan Uppercut


90年代から活動するNumbとモジュラーヴィジュアルユニットBariumのMasayoshi Sakaguchi & VJ M.U.によるコラボレーション。二台のモジュラーシンセの変幻自在なインダストリアルビートとアブストラクトなヴィジュアル効果により怪奇骨董音楽箱の如き見世物小屋に変貌したライブハウスの音と光のジェットコースターに眩惑された。

●LINEKRAFT+Daisuke Maekawa(GRIM)


"自ら孤立する者のための産業社会音楽"を標榜するLINEKRAFTと伝説的インダストリアルユニットGRIMのギタリストDaisuke Maekawaのコラボ。ドラム缶メタルパーカッションとエレクトロニクスを暴力的に演奏するLINEKRAFTの肉体性と、ジャズマスターを掻きむしり轟音を発するMaekawaのロック美学がバイオニックノイズの祝祭の儀式を繰り広げ、LINEKRAFTのタトゥー塗れの裸体がステージに崩れ落ちるカタストロフを迎えた。

GRIM @ Will To Power: Electronics II, 2016.06.17(LINEKRAFTも参加したドイツのライヴ)



●灰野敬二+HIKO+T.美川+ドラびでお


ノイズやインダストリアルというジャンルが生まれる前から活動する地下ロックの重鎮・灰野敬二、日本ハードコアパンクの先駆者GAUZEのHIKO、ジャパノイズの祖・T.美川、オリジナル楽器で唯一無二の世界感をクリエイトするドラびでお。GIGA NOISE SPECIALのトリにこれほど相応しいコラボレーションはない。マシンガンのようなドラムの連打とギター×ノイズ×エレクトロニクスのサウンドの弾幕が会場全体を覆い尽くす。圧巻という他ない30分の狂騒のエンディングは「Happy Birthday, Mr. Mikawa」という灰野の祝福の言葉だった。

halno+hiko+mikawa+doravideo


アイドルの生誕イベントのように客席から届けられたバースデーケーキのロウソクを吹き消す美川の笑顔がみんなの心に幸せの火を灯した。



生誕祭
ノイズの嵐と
ケーキの甘さ

<灰野敬二 次回のライヴ>
8月23日(金)東京 成城アトリエ第Q藝術
ハイパー能「睡蓮」


白拍子パフォーマーとして知られる桜井真樹子企画のイベントに灰野敬二が出演。スイカをヒントに作られた楽器ポリゴノーラの演奏と生け花を取り入れ、「ハイパー能」としてジャンヌ・ダルクの亡霊を巡るストーリーを持つユニークなパフォーマンスを楽しめる貴重な機会。

開場:19:00
開演:19:30 (21:00 終演予定)
入場料:前売り¥3,500 当日¥4,000 

アーティスト
シテ:桜井真樹子(妖精、ジャンヌ・ダルク、龍笛)
ワキ:灰野敬二(クロード・モネ、ポリゴノーラ)
後見:加藤ひろえ(蓮、生け花)
協力:アトリエ第Q藝術、(有)生物振動研究所

ご予約・お問い合わせ
090-6034-7716, makiko_puti@mac.com(桜井)
03-6874-7739(13時-19時) q.art.seijo@gmail.com (アトリエ第Q藝術)
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【セトリ&音源公開】8/16開催『盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會Vol.27 battre la chaleur de l'été 暑鬼払い』

2019年08月20日 00時01分30秒 | 素晴らしき変態音楽


盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會Vol.27
battre la chaleur de l'été 暑鬼払い
2019.8.16 fri Shibuya DJ BAR EdgeEnd
20:00 Open/Start - 22:30 End Charge ¥1,000 incl.1drink

20:00-20:40 DJ BEKATAROU aka 伊藤元
20:40-21:20 DJ Vaby aka 大場弘規
21:20-22:00 DJ Necronomicon aka 剛田武
22:00-22:40 DJ Bothis aka 山田遼



●DJ BEKATAROU a.k.a. 伊藤元


イントナルモーリの圓盤
1. Luigi Russolo / ℹ︎l risveglio di una città Esempi sonori di Intonarumori
2. Luigi Russolo / Gorgogliatore
3. Luigi Russolo / Ronzatre
4. Luigi Russolo / Ululatore
5. Luigi Russolo /Crepitatore
6. Luigi Russolo / ℹ︎l risveglio di una città Esempi sonori di Intonarumori + Das Synthetische Mischgewebe /The Harvert of Magnetism Ⅰ.Ⅱ
7. Renaldo & The Loaf / Lime Jelly Grass、A Medical Man+ Luigi Russolo / Gorgogliatore
8. John Di Stefano / For The Moment +Luigi Russolo / Ronzatre
9. MASONNA / We Love You + Luigi Russolo / Ululatore
10. Ghédalia Tazartès / Country-4 + Luigi Russolo /Crepitatore



●DJ Vaby a.k.a. 大場弘規


オール7inch Part 2
1. 春歌/ツーレロ節
2. J・A・シーザー/すべての人が死んでゆく時に
3. Libido/死んで生まれた
4. Mannequin Neurose/Magritte In The Night
5. Devo/(I Can’t Get Me No)Satisfaction
6. The Police/Message In A Bottle
7. Big Audio Dynamite/C’mon Every Beatbox
8. Public Image Limited/Seattle
9. Max Eider/心配しないで
10. Psychic TV/Godstar
11. Mixed Band Philanthropist/The Man Who Mistook A Real Woman For His Muse And Acted Accordingly..
12. Z’ev/Wipe Out
13. Organum/Kanal(Part 1)
14. Af Ursin/Aurinko





●DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武


Religious Summer
1. 春日井直樹 / Super Guru 1
2. Public Image Ltd. / Religion II
3. 空手バカボン / おおもうけバカボン
4. Psychic TV / Themes:Part III. Cowbell, Bicycle Wheels And Vibes.
5. Maharishi Mahesh Yogi / Love
6. 吉田好胤薬師寺管主 / 般若心経
7. The Sacred Koran / Azhan
8. 創価学会歌集 / 東洋広布の歌
9. Psychic TV / Themes:Part VIII. Various Temple Bells, Gongs, Cymbals And Vibes.
10. Goddess Of Fortune / Govinda
11. 行 Gyo / 方便品
12. Pierre Henry / Spirale
13. 空手バカボン / 私はみまちゃん
14. Yahowha 13 / I'm Gonna Take You Home
15. The Blue Hearts / 幸福の生産者
16. 工藤礼子 / Mrs Wheeler
17. オックス / 神にそむいて
18. Necronomidol / Kadath





●DJ Bothis a.k.a. 山田遼


黄泉の国へと御案内
1. 鳥肌実 - スピーチ
2. African Head Charge - African Bredda
3. Kenji Endo - melting zero
4. African Head Charge - Pursuit
5. Lust For Youth - Breaking Silence
6. Vatican Shadow - Not The Son Of Desert Storm, But The Child Of Chechnya
7. Will Long ‎- Time Has Come
8. Agnus Dei - Paternoster
9. Dogpop - Meine Kleine Welt
10. Cut Hands - BROWN BROWN



MIX音源DL公開(ダウンロード期限 2019年10月18日(金)) 

GIGAFILE LINK

真夏から
秋の入口
盤魔殿

次回のお知らせ
盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會Vol.28
Fête d'observation de la lune noire 暗黒月見会


2019.9.1 sun
Shibuya DJ Bar EdgeEnd
18:00 Open/Start 22:30 End
1000yen incl. 1dtink

盤魔殿Regular DJs plus
Special guest DJs;

DJ ケロリン aka ケロッピー前田
DJ Satosick
DJ emamouse
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【100フォークスのススメ】第5回:風待ち草のチルアウトフォーキー〜ふきのとう

2019年08月15日 09時22分21秒 | こんな音楽も聴くんです


遅過ぎたフォーク再評価の中で、前回取り上げたN.S.Pと並んで筆者が推しているのが北海道出身のふきのとうという二人組である。出会いは1年4ヶ月前、渋谷HMV Record Shopの100円コーナーで目に留まった『風来坊』というLPだった。何もない草原の真ん中に立つ白い枯れ木の枝にラジカセを置いてヘッドフォンで何かを聴くパーマヘアーと、ジャンパーを脱ごうと(いや着ようと)している長髪の青年ふたり。地平線の先は海だろうか。タイトル通り風来坊のように、ラジカセ一台持って日本中を旅しているのかもしれない。カセットテープには風の音しか録音されていないに違いない。風と共に現れ、風と共に去りぬ。「水色の木もれ陽」「白い霧」「銀杏の木」「それぞれの幸せ灯る頃」「雨はやさしいオルゴール」「夜」。。タイトルだけで景色が目に浮かぶ詩情主義。封入されたポスターには背の高い白樺の木となだらかな丘陵が波打つ壮大な大地に立つちっぽけな二人のポートレート。嗚呼、壮大な大地に比べて、人間とはなんて些細で無力な存在であろうか。風が吹けば飛ぶ砂塵のような人生は、悠久の宇宙に比べるとほんの一瞬だけの命しかないが、それでも一寸の虫にも五分の魂。五分のソウルを5分のフォークソングで歌いましょう。風に吹かれて歌声は、地平線の果てまで届くと信じている。そんな決意が二人の今ひとつ冴えない表情から読み取れるだろうか。



一緒に旅をしているからといって二人の関係は義兄弟でもホモセクシャルでもない。ルパン三世と次元大介のような同志もしくは仕事上のパートナーのイーブンな関係。契約書は必要はない。離れたければ離れ、恊働したければ共に戦う。どちらが欠けても他方は自分で生き残る。しかし一緒にいるからにはお互いの為に全力で使命を全うする意志が溢れている。3年後、5年後がどうなっているかは分からないが、俺たちに明日はないという自暴自棄な気持ちは全くない。夢がなければ作り出せばいい。二人でダメなら一人で考えればいい。目先の損得を考えることなしに本音で語り合えば、時がふたりを分つまで少しだけ理解した気持ちになれるだろう。それを悟ってしまったから二人の表情が冴えないのかもしれない。しかしそれは地獄ではない。かといって天国でもない。春になる前に地面から芽を出すふきのとうは、風を待ちながら陽の光に嫉妬する。呪詛の言葉が愛の歌に聴こえることもある。運命の柵や楔を引き抜いて船に乗せて北国の海の沖へ流してしまおう。歌を聴く時僕はいつも地平線を想像する。その先に何があるのか、風来坊の行方を見極めたい。それまで旅は終わらない筈だから。

ふきのとう/白い霧 (1977年)


音を聴く前に1枚のジャケットだけでこれほどの妄想を抱けるとはまるで夢みがちなティーンエイジャーのようだが、このアルバムが発売された1977年に中学3年生だった筆者は同年リリースされたザ・クラッシュのデビュー・アルバム『白い暴動』のジャケットを眺めながらイギリスの経済・人種問題、天皇制を含む日本の政治問題、そして自分の生きる先にある筈の革命について夜な夜な夢想していた。その時ザ・クラッシュでなくふきのとうと出会っていたなら、髪の毛を切ることも、Tシャツを破くことも、白衣に赤いペンキでTERRORISTとペイントすることもなく、ラジカセを担いで日本一周の旅に出発していたかもしれない。

風来坊 ふきのとう


1972年に北海学園大学にて山木康世と細坪基佳によりふきのとうの前身グループが結成された。山木は 1950年10月22日生まれ、細坪は1952年10月26日生まれ。ザ・クラッシュのジョー・ストラマーは1952年8月21日生まれだからほぼ同世代である。1974年「白い冬」でデビュー。数々のヒットで1970年代のフォーク/ニューミュージックブームの牽引役となった。1987年最初で最後の日本武道館コンサート「緑輝く日々」を行い、1万人を動員。その頃から二人の関係に亀裂が入りはじめ、1992年に解散。その後一度も再結成されていない。

流星ワルツ ふきのとう



抒情派フォークの一方の騎手N.S.Pは青春をテーマにポジティヴィティを拡散したが、ふきのとうのテーマは大自然の中の二人の関係と言っていいだろう。先に考察したように運命の悪戯ではなく、独立した二人の魂の恊働と離別が穏やかな歌声で綴られるサウンドインスタレーションは、聴き手の心をトランキライザーのように沈静化し、大宇宙の中に漂う孤独な魂の淋しさを五分間だけ忘れさせるチルアウト・ミュージックなのである。

春の雨/ふきのとう


しかしながら70年代にリリースされたベスト盤のジャケットが黒一色に統一されていた事実は、実はヴェルヴェット・アンダーグラウンドや阿部薫、さらには不失者といった地下の住人へのシンパシーを持っていたのかと錯覚させる。ふきのとうの歌の中に中に黒く色どられている処があったらすぐ電話をしてほしいものである。



白い冬
革命夢みて
春の雨

コメント (2)
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【生誕祭】沖縄電子少女彩/灰野敬二/美川俊治/ドラびでお/ASTRO/galcid/マキノユキ@小岩オルフェウス 2019.8.11(sun)

2019年08月14日 01時59分17秒 | 灰野敬二さんのこと


沖縄電子少女彩:生誕祭
夜の部:アヴァンギャルドステージ

18:00 open 18:30start
前売:3,500円 当日:4,000円(+1d)

出演:沖縄電子少女彩/ドラびでお/灰野敬二/ASTRO/美川俊治/galcid/マキノユキ



2016年6月に15歳で沖縄アイドルグループTincyのメンバーとしてデビュー。2017年3月からソロ活動を開始した沖縄電子少女彩。ノイズ演奏を始めたキッカケは、元オルタナノイズ系ミュージシャンだったプロデューサーが聴かせたSPKを面白いと言ったことだったという噂。アイドル活動と並行して、というより「融合して」エレクトロノイズ演奏や路上ノイズライヴを行い、現在はアヴァンギャルドアイドル&ノイズミュージシャンとして活躍中。8月7日に19歳の誕生日を迎えた彩の生誕イベントは、昼の部は「アイドルステージ」としてキスエクやめろん畑、リリカオなどが出演し、アイドルらしい華やかなイベントになった。夜の部は打って変わって「アヴァンギャルドステージ」として、日本の地下音楽の重鎮中心に、ドラびでお主催の「GIGANOISE」の番外編のようなコア中のコアなラインナップ。昼と夜/白と黒/陽と陰/光と闇/表と裏/生と死・・・真逆のイメージが列挙できるが、現実世界では二つの世界はメビウスの輪のように繋がっている。どちらがどちらに転じるかも分からない呉越同舟は、まさに筆者の頭の中ではないか。夜に生きる者たちが集う「アヴァンギャルドステージ」はまるで闇の表現者の百鬼夜行であった。

●マキノユキ


高校時代に学研『大人の科学』のシンセサイザーを買ったことがキッカケでモジュラーシンセにハマったという女子ノイジシャン。腰に響く重いビートのテクノイズで前衛生誕祭の幕開けをダークに飾った。

●ASTRO


80年代に日本のノイズバンドの草分けC.C.C.Cを結成すると共にASTRO名義でソロ活動を始めた長谷川洋に2013年女性ノイジシャンRohcoが加わりデュオとして活動中。スペーシーなエレクトロノイズとデュオならではの音の厚みが会場を暗黒のブラックホールに導いた。

●galcid


GIGANOISEではお馴染みのはっちゃけたテクノイズ女子Lenaによるワンマンユニット。高速テクノビートにモジュラーシンセのパラノイアノイズが炸裂するダンス天国で、バースデー・イベントに相応しい祝祭を産み出した。

●美川俊治


最近海外で過去の作品のリイシューが盛んなインキャパシタンツの美川俊治のソロパフォーマンス。一見玩具かガラクタに見えるオリジナル機材を駆使して産み出すサウンドは、単なるハーシュノイズとも雑多なミュージックコンクレートとも異なるノイズ美学の結晶体。音が1ヵ所に留まらず、常に動き回るので飽きることがない。ただし耳が殺られる。

●灰野敬二


エレクトロニクス中心の出演者の中で、アンプ4台を総動員してギターの爆音を響かせる灰野敬二はロック美学の体現者である。エフェクターを踏む度にヴォリュームが増し聴覚を圧迫する。「義務より礼儀正しく」と歌い、音を左右に分断するエフェクターとエアシンセの電子音がノイズの壁の中で飛び回る。再びギターを手にして「誕生日おめでとう」のMCのあとを爆音で締めくくった。

●ドラびでお


レーザー光線が描く幾何学模様が、銃声のようなエレクトロニクスと同期し聴覚と視覚を刺激する。機材のライトとレーザー光線の明かりに浮かぶ顔が鬼のように見えた。ドラびでおのレーザーショーはTDLやTDSやUSJの平和ボケした生半可な“アトラクション”を焼き尽くし、喜怒哀楽/創造と破壊/希望と絶望すべてを含む真の“エンターテインメント(スルー・ペイン)”を構築するのにピッタリだと思う。

●沖縄電子少女彩


ヴォーカル無しのエレクトロニクス一本勝負。レーザー光線の描く模様が、ドラびでおのときより優しくなった気がする。空気の重さを忘れさせるピンクノイズの無重力感は、19歳の彩ならではのフットワークの軽さと思考力の自由さの証である。俯くと機材の半分を覆い隠すブロンドの髪の美しさに魅了された。

●沖縄電子少女彩&ドラびでお+ASTRO+T.MIKAWA 『アルバム黒の天使セッション』


総勢5人全員エレクトロニクスのセッションは、誰がどの音か分からなくなり混乱することもなく電子音アンサンブルとして聴き手に心地よい時間をプレゼントした。個々のミュージシャンが誕生日を祝うスペシャルムードに包まれていたことが演奏に反映され、夢と愛に任せた信頼関係の中結ばれた友情の徴である。

沖縄電子少女彩&ドラびでお&ASTRO&T.Mikawaセッション20180811
Okinawa Electric Girl Saya & doravideo & Astro & T.Mikawa



最後に彩の実の母親から花束贈呈のサプライズ。アイドル女子に囲まれ華やかだった昼の部とは趣向が異なるが、彩の19歳の誕生日を祝う気持ちは同じ。爆音の連続で毛布をかけられたように熱を帯びた聴覚を、慈愛が優しく醒ましてくれた。

昼の部に
ビッグサプライズ
発表された

▼昼の部:アイドルステージのフィナーレ。




*初出時に不十分な表現があり関係各位にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。
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【灰野敬二新作CDレビュー】『灰野敬二+SUMAC/ほんの少しだけでいいから 「償い」をチャージし続けてくれ〜』『サンヘドリン/密度を変えろ 義務の海から 這い上がるように』

2019年08月11日 01時21分58秒 | 灰野敬二さんのこと


7月31日NHKのTV番組『ガッテン!』のスイカ特集に突然灰野敬二が登場したことが話題になった。植物学者の広島大学・櫻井直樹教授が、スイカを叩いた音の良さにヒントを得て開発した楽器「ポリゴノーラ」の紹介だった。また、8月3日に瀬戸内国際芸術祭のDommune Setouchiに出演し<義務よりも礼儀正しく>という金言を残した。8月9日発売の雑誌『ユリイカ』遠藤ミチロウ特集号にPANTA、BUCK-TICK今井寿、七尾旅人等と並んでインタビューで登場。さらに明日8月11日にはアヴァンギャルドアイドル沖縄電子少女彩の生誕祭夜の部にドラびでお、美川俊治、ASTRO等と共に出演する。



妥協のない演奏スタイルや一貫した音楽思想が変化した訳ではないが、謎に満ちた灰野敬二の世界がこれまでとは異なる文脈で紹介されたりリンクしたりする機会が増えている。時代が追いついたなどと陳腐な常套句を言うつもりはない。正しく生きていれば白と黒/表と裏/陰と陽が交差する瞬間は何度も訪れることは紛れもない真理である。そんな出会いをキッカケに灰野敬二の真髄である『音楽』に触れてみてはいかがだろうか。最近リリースされたばかりの新作CD2作を紹介したい。

●KEIJI HAINO + SUMAC『ほんの少しだけでいいから 「償い」をチャージし続けてくれ 少しは良くしよう を接続して』
CD: Trost Records ‎– TR183 / Austria


2017年初夏に来日したアメリカのヘヴィロックバンドSUMACは灰野敬二とスタジオとライヴで共演した。2017年6月末のスタジオ録音の方は2018年2月にThrill Jockeyより『アメリカドル紙幣よ  そのまま横を向いたままでいてくれ 正面からは見られたもんじゃないから』としてリリースされた。そして今年7月にTrost Recordsからリリースされた本作は、2017年7月3日新代田Feverでの共演ライヴ音源である。1週間前のスタジオレコーディングによりお互いを理解し合っていた為、ライヴ当日も初顔合わせとは思えない一体化したグルーヴを持っていたと記憶する。その印象はこうしてライヴアルバムとして聴くことでより深くなる。トリオ編成でありながら重層的なヘヴィロックをクリエイトするSUMACに、ヴォーカル/ギター/チャルメラ/フルートで加わる灰野敬二。どちらがどちらに合わせるといった迎合性は全くない。KEIJI HAINO+SUMACというひとつのバンドの音である。ステファン・オマーリーとオーレン・アンバーチとのトリオNAZORANAIや、約10年前に裸のラリーズのメンバーとやっていた灰野敬二+どろんこ+サミーに近いヘヴィロックと言えるが、アメリカ土着のスケールの大きいサウンドと、4人の有機的なアンサンブルはバンドをやる意義を再認識させてくれる。今年5月23日にバンクーバーで3度目のコラボを果たしたこのユニット、機会があればまた日本で共演してほしい。
SUMAC/灰野敬二/ENDON@新代田Fever 2017.7.3 (mon)
【Disc Review】灰野敬二+SUMAC『アメリカドル紙幣よ  そのまま横を向いたままでいてくれ 正面からは見られたもんじゃないから』

●サンヘドリン『密度を変えろ 義務の海から 這い上がるように』
CD: Trailights Record - TRLT-0016 / Japan

 
灰野敬二(不失者)、ナスノミツル(Ground Zero, Altered States)、吉田達也(Ruins, 是巨人)という地下音楽界の名手により2004年に結成されたサンヘドリンの秋葉原Club Goodmanでのライヴ録音。日付クレジットはないが、恐らく2014年3月7日のワンマンライヴではなかろうか。ゼロ(2000)年代のサンヘドリンでは灰野はヴォーカルはもちろん、様々な楽器を弾き分けていたが、テン年代のサンヘドリンは灰野がギターに専念するユニットへと変貌した。灰野の旗艦グループ不失者が、各メンバーの個人技ではなくバンド構成員の細心の注力を必要とする機能体へと進化する一方で、灰野のギターだけを思い切り堪能できる場が少なくなった。その希求を昇華させることがサンヘドリンに託されたのではなかろうか。この日のトリオは冒頭から気迫溢れるプレイで聴き手に畏怖の想いを抱かせた。全4曲75分を超える長尺CDに灰野のギターマジックがたっぷり注入されている。ナスノと吉田の卓越したクロスプレイはもはやリズムセクションと呼ぶことを許されない凌ぎ合いとなり、三つの魂の切磋琢磨がリスナーの聴覚を解放する。7月半ばの西日本ツアーで各地の音楽ファンに大きな衝撃を与えたサンヘドリンの東京公演が望まれる。
サンヘドリン(灰野敬二+ナスノミツル+吉田達也)@秋葉原Club Goodman 2014.3.7(fri)

雪崩堕ちる
ヘヴィネスと
ギタリズム

<灰野敬二2018年8月のライヴスケジュール>
8月11日 (日)東京 小岩オルフェウス
沖縄電子少女彩:生誕祭:夜の部


18:00 open 18:30start
前売:3,500円 当日:4,000円(+1d)

出演:
沖縄電子少女彩
ドラびでお
灰野敬二
ASTRO
美川俊治
galcid
マキノユキ


8月17日(土)東京 秋葉原CLUB GOODMAN
GIGA NOISE SPECIAL !! レジェンド オブ ノイズ 2nd


18:30開場 19:00開演
前売り3000円 / 当日 3500円 (1ドリンク代別)
【出演】
灰野敬二+HIKO+T.美川+ドラびでお
LINEKRAFT+Daisuke Maekawa(GRIM)
Numb+Masayoshi Sakaguchi+VJ M.U.//Mikudarihan Uppercut
ASTRO+進入禁止


8月23日(金)東京 成城アトリエ第Q藝術
ハイパー能「睡蓮」


開場:19:00
開演:19:30 (21:00 終演予定)
入場料:前売り\3,500 当日¥4,000 

アーティスト
シテ:桜井真樹子(妖精、ジャンヌ・ダルク、龍笛)
ワキ:灰野敬二(クロード・モネ、ポリゴノーラ)
後見:加藤ひろえ(蓮、生け花)
協力:アトリエ第Q藝術、(有)生物振動研究所

ご予約・お問い合わせ
090-6034-7716, makiko_puti@mac.com(桜井)
03-6874-7739(13時-19時) q.art.seijo@gmail.com (アトリエ第Q藝術)
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【地下音楽の冒険者たち】疎水響/The Mickey Guitar Band@荻窪Club Doctor 2019.8.7 wed

2019年08月10日 10時51分57秒 | 素晴らしき変態音楽


club Doctor, Purifiva, Pataphysique Records, Taiga Yamazaki Presents
August 2019 3 days ogikubo club DOCTOR
6bodies60minutes6months vol.6
各日 open 19:00 / start 19:30
¥2000+drink 3日間通し券 ¥3000
8月6日(火)
D,D,D,Deep Psychedelia… 愛の裏側 8月の熟れたウタ!
川口雅巳ニューロックシンジケイト (川口雅巳、ヨシノスイセイ、野中名人)
20Guiders (タバタミツル、スズキジュンゾ)

8月7日(水)
D,D,D,Deep Sonic Attack… 邪な清涼 真夏の音響対決!
The Mickey Guitar Band (松谷健、ASTRO長谷川洋、ルイス稲毛、福岡林嗣)
疎水響 (コサカイフミオ、長谷川裕倫、内田静男)
8月8日(木)
D,D,D,Deep Make Up… 狂った太陽 腐乱の華!
組原正+黒田三四郎+山崎怠雅
クリッペンリボン (濁朗・トバちゃん・コイデ君・斉藤さん・ケイちゃん)


荻窪Club Doctorは2017年1月に閉店した高円寺Mission'sのあとを継いで地下音楽の中心地になった感がある。今回はPurifiva(川口雅巳)、パタフィジックレコード(福岡林嗣)、山崎怠雅という中央線地下ロッカーがClub Dcotorと共同主催で三日間のツーマンイベントを開催した。本ブログでもお馴染みのミュージシャンが揃って出演する興味深いラインナップ。その2日目を観覧した。

●疎水響 (コサカイフミオ、長谷川裕倫、内田静男)


最近続けてライヴを観ている内田静男(b)の別のユニットが疎水響。あぶらだこ/kito mizukumi rouberの長谷川裕倫(ウクレレ)と、Incapacitants/元非常階段のコサカイフミオ(electronics)とのトリオである。金属板を叩いたり擦ったりする物音ノイズを核に、ウクレレもベースもアトーナルな音響発生装置と化し、静謐さの中繰り広げられる演奏行為の果ての残響は、音の磁場でClub Doctorを歪め特殊空間に変容させた。コサカイのTangerine Dream Syndicate、長谷川と内田の長谷川静男、内田のUHに通じるアンビエント/ドローンと呼ばれるサウンドだが、金属的(metalic)かつ鉱物的(mineral)な感触は脳内に鉛のように硬質な印象を残した。



●The Mickey Guitar Band (松谷健、ASTRO長谷川洋、ルイス稲毛、福岡林嗣)


5年前に観たMicky Guitarはマーブルシープの松谷健と魔術の庭/元Overhang Partyの福岡林嗣のギターデュオにリキッドライティングを加えた編成だったが、その後バンド形態になって活動している。松谷以外女性メンバーだったこともあるが、現在は東京地下音楽界のベテラン4人によるスーパーバンドとなっている。福岡林嗣がドラムとヴァイオリンを担当、比較的動きの少ない他のメンバーに比べアクション面でアピールする。クラウトロックを思わせるスペーシーなヘヴィサイケは酩酊感たっぷり。聴きながらラ・デュッセルドルフを思い出した。福岡のヴァオリンが入るとレコメン系チェンバーロックの香りが漂い、エモーショナルな波に飲み込まれる。60分間澱みなく流れ出るサウンドの万華鏡は、サイケな照明がなくても十二分にトリップさせてくれた。



この日の2組を含め、3デイズの出演アーティストの多くは、徒に新奇な音楽スタイルを求めることなく、過去現在未来に拘らず、音楽表現の深みを探求することで、未経験の聴取体験と未知の情念を掘り起こすことを目論む冒険者たちである。

医者倶楽部
地下音楽者の
交歓場

▼5 Years Ago
MICKEY GUITAR + dbqp - 18 April 2014 Penguin House Koenji Tokyo -

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