自著『地下音楽への招待』で同じかそれ以上の波紋を巻き起こした当事者が言うのも烏滸がましい気がするが、『ガセネタの荒野』が火をつけたお陰で、ガセネタの初CD『SOONER OR LATER』が1993年にリリースされる結果になったのだから、雨降って地固まる/ 諍い果てての契り/ 災い転じて福となす/ 怪我の功名 /人生万事塞翁が馬といった諺が地下音楽界でも有効なことの証である。
その18年後の2011年には『ガセネタの荒野』の復刊に併せて10枚組BOX『ちらかしっぱなし-ガセネタ in the BOX』がリリースされた。「雨上がりのバラード」26テイク、「父ちゃんのポーが聞こえる」27テイク、「宇宙人の春」17テイク、「社会復帰」11テイク、プラスその他11テイク、以上670分92テイク収録という過剰というしか無い膨大な音源は、過剰さを加速させる演奏に相応しいヴォリュームであった。更に追い討ちをかけるようにベスト盤『グレイティストヒッツ』もリリースされた。
そして2017年2月『Dokkiri! Japanese Indiews Music, 1976-1989 A History and Guide』の著者であるKato David Hopkinsによる『ガセネタの荒野』の英語版の出版に併せて7inchシングル『ガセネタ』がリリースされた。収録されたテイクは1978年春明治大学での録音。既発音源と思われるが、アナログの太い低音により迫真性を高めたサウンドは、ガセネタの過剰な音楽を更に濃厚にコンデンスしている。
1 END OF DAYS(日々の終焉)
作曲 Kei Toriki
作詞 NECRONOMIDOL
オープニングからいきなり「終わり」の歌とは物騒極まりない。ステージでは五つの姿態がお互いを抱き合い重なり合いひとつの塊に変貌する振り付けが幻想的なナンバーだが、CDで聴くと重厚なギターと連打されるバスドラの音圧に圧倒される。音の波間に浮き上がるクリアなヴォーカルがイマジネーションを刺激する。複数のサウンドのレイヤーが暗黒系の名に恥じない密室感を醸し出す。
3 SKULLS IN THE STARS(星々の中の髑髏)
作曲 DAN TERMINUS
作詞 NECRONOMIDOL
2015年の3rdシングルのリードトラックを新編成メンバーで再録。メタル/ドゥーム色が薄く軽快なビートに貫かれた作風はネクロ魔ナンバーでも1,2を争うメジャー感がある。とは言っても全国興行収益No.1ではなく、ミニシアター系人気投票No.1という意味でのポピュラリティである。星空を切り裂いて冥界への旅を誘うこの曲も終末の予感が濃厚である。
ニューシングル「colorful」(劇場版アニメ『スタードライバー THE MOVIE』主題歌)はとにかく前向きで、爽やかで、青春を感じられる、疾走感のある楽曲!「何が起こっても、絶対!大丈夫だから!」というフレーズがとても力強く、印象的な作品!この曲が、9nineが、少しでも誰かの背中を押す事が出来る事を願っています!
1991年12月発売のTHE BLUE HEARTSの5thアルバム『HIGH KICKS』に収録。「今までと違う方に、すごく力の抜けたリラックスした自分を置いてみようとした」と甲本。「反逆的なメッセージをモロに出すより、ポップ形式にして今までロックを聴いたことのない人に届く方が、有効なんじゃないか」とは真島の弁。
87年のデビューアルバム『THE BLUE HEARTS』を聴いて凄くカッコいいと思ったが、TVコマーシャルに使われたりしたので「パンクじゃない。ただのメジャーじゃないか」と思って追いかけなかった。90年代はサイケに夢中で所謂ビートパンクをバカにしていたので、ブルハを聴くことは無かった。ヒロトとマーシーの作るロケンローのカッコ良さに再び気付いたのは、90年代半ば社員旅行で伊豆へ向かう車のカーラジオから流れたハイロウズのデビュー曲「ミサイルマン」を聴いたときだった。
HAPPY BIRTHDAY
●The Birthday『抱きしめたい』
The Birthdayのシングル。通算9枚目のアルバムへの期待値をさらに加速させる強力楽曲が完成! 2017年3月15日リリース。
その後はサイレンやドイツやフランスのレーベルから作品をリリース、84年に二人は別離しダモン・エッジがクロームとして活動、95年にダモンが死去するとヘリオス・クリードがクロームの名前を引き継ぎ、現在まで活動を続ける。最新作『Feel It Like A Scientist(科学者みたいな気分)』(2014)はSF風のサイバーガレージパンクが炸裂する怪作である。
ドッグス・ダムールは91年に一旦解散、その後ソロ活動を続けるヴォーカルのタイラの元で何度か再活動を行い、2013年にオリジナル・メンバーで再結成ライヴも行った(DVDとしてもリリースされた)。その後タイラ以外の3人でジョー・ドッグ&ザ・デスペラードス(ならず者たち)/Jo Dog & The Desperadosを結成し、昨年12月に1stシングル「プリーチャーズ・ブルース」が配信リリースされた。メンバーは元ドッグスのジョー・ドッグ(g)、スティーヴ・ジェームス(vo,b)、バン(ds)の3人に加え、キーボード奏者ヘンリー・トゥインチが参加している。トゥインチは93年のドッグスのアルバム『許されざる恥辱/More Unchartered Heights Of Disgrace』にゲスト参加して以来、タイラのソロ作品でコラボしてきた所縁のミュージシャンである。ドッグス時代もブルース好きを公言していたジョーの嗜好に相応しいマイナー調のブルースロック。若い時は甘いルックスで女子ファンの人気を集めていたスティーヴ・ジェームスがいぶし銀のような味のある歌声を聞かせる。PVにプロレスラーが登場するのは「時々以前より強くなって帰ってくる」という歌詞の内容であろう。