門馬(ザ・シャロウズ)presents カルトGSコレクション 新宿JAM編 vol.1
新世代GSの騎手ザ・シャロウズのベーシスト、ブローノ門馬氏初の自主企画。出演はザ・シャロウズ/モンドダイヤモンド(高松)/ザ・サイクロンズ(京都)/サロメの唇/ザ・ヤンマーズ/フラワーミュール/ラブ&レボリューション(vo田渕純 gtナポレオン山岸 bsサリー久保田)の7バンド。5時間に亘るイベントだ。どのバンドも2000年代GS/ガレージ/昭和歌謡を代表するバンドで、FUJI ROCKに行か(け)なかった若者でJAMは超満員。つけマツゲにキノコヘアーの60's少女が多い。年齢層が高い男性も目立つ。
私がグループサウンズに興味を持ったのは高校の時読んだ鈴木いづみさんの文庫本「恋のサイケデリック」だった。B級ロック小説を思わせる表紙とサイケデリックというタイトルにつられて買ったのだが、文中に登場するゴールデン・カップスを始めとする数々のGSの名前に心ときめかせた。当時GSといえばタイガースやワイルドワンズ、ブルー・コメッツなど懐メロとして捉えていたので、主人公の破天荒な生活を彩るサイケなGSの世界は新鮮だった。当時は鈴木いづみさんが阿部薫さんのパートナーだとは知らなかった。
1980年代半ばにネオGSが勃興し20hitsのカセットや380円のザ・ファントムギフトのシングル「ジェニーは嘘つき」などを聴いて、ネオGSのライヴにも通った。ミニスカートの女の子がゴーゴーダンスで絶叫するのが面白かったが、GS=Garage Soundと解釈したワイルドなサウンドやファズ・ギターの応酬に嬉々としたのである。その頃GS研究家の黒沢進氏の「熱狂!GS図鑑」が出版され、「B級GS(=カルトGS)」「一人GS」といった知られざるGSが多数紹介され奥深いGSの世界に惹かれていったのである。
1990年代に黒沢氏監修で各レコード会社から「カルトGSコレクション」シリーズがリリースされ、名前とジャケットしか知らなかったB級GSが気軽に聴けるようになった。ネオGSブームはとっくに終わっていたが、"イカすビートにシビれるサイケ"というキャッチコピー通りのサウンドを耳にした若者たちが次々GSの影響を受けたバンドを始め、老舗のJAM、UFO CLUB、Red ClothといったライヴハウスでGSイベントが定期的に開催されるようになった。新陳代謝の盛んなシーンでバンドの変遷は激しいのだが、現在はザ・シャロウズが最も人気・知名度共にリードしているようだ。
私は所用で開演時間に遅れ2番手のザ・ヤンマーズの最後から参戦。10年近いキャリアを持つガールズ・ガレージ・バンドフラワーミュールを観れなかったのは残念。キャリアの割にライヴの回数は少ないので貴重な機会だったのだが。ザ・ヤンマーズはゴーグルエースの影響濃いコミカルなノリですでに会場は温まっている。
各バンド25分間のステージなのでテンポよく進行する。DJはCHERRYBOWIE(神戸・HAPPYEND / 日本発狂)/セルジュ ハヤティーヌ アンジーン/ブローノ門馬(ザ シャロウズ)でGSや歌謡曲、70年代アニメソングなどで盛り上げる。
次に主催者のザ・シャロウズが登場。ファンの女の子がステージ前に殺到する。数年前にキノコホテルの対バンで観て以来何回も観ているバンドだが、その度に人気の高まりと演奏のカッコ良さが増していく。ヴォーカルの奥山恭一氏は長髪をマッシュルームに変えてよりアイドルっぽさを演出。イベントの趣旨に沿ってカルトGSナンバーを演奏。「I'm Just A Mops」(ザ・モップス)、「恋はもうたくさん」(ザ・ダイナマイツ)、「メラ・メラ」(ザ・スパイダース)。どの曲もファズ・ギターを活かしたパンキッシュなアレンジがいい。新曲も披露した。デビュー・アルバム「シャロウズの世界」リリースから1年半近く経ったのでそろそろニュー・アルバムを期待したい。
続いてサロメの唇。橘京子嬢(vo)、水のさとし氏(b)の二人を中心としたバンドで観るのは2度目。まつげパッツンのダンサー二人が踊りまくる楽しいステージ。妖艶な京子嬢のあで姿に年配男性ファンが身を乗り出してカメラを構えている。基本的にGS歌謡で京子嬢の歌がとても上手い。ムード歌謡/演歌全盛期ならば間違いなく人気スターになったであろう。激しいアップビートのバンドが多い中、しっとりしたバラードも聴かせる彼らの存在感が光った。
続いて個人的に楽しみにしていたプロジェクト、ラヴ&レボリューション。ムード歌謡の創始グループ「和田弘とマヒナスターズ」の最年少かつ最後の歌手としてデビュー、現在はソロで活躍する田渕純氏、元ファントムギフトのナポレオン山岸さん、同じくサリー久保田さんによるアシッド・フォーク・ユニット。この日が初ステージで、フルート奏者(名前は失念したが有名な人らしい)を加えたドラムレスの4人組。女装の田渕氏、ファントムギフト時代のトレードマークのグヤトーンのシャープ5モデルと丸いサングラスが嬉しい山岸さん。久保田さんはウッドベースをプレイ。ジャックス、加藤登紀子/長谷川きよし、タイガースのカヴァーを演奏。まだレパートリーが4曲しかないのでMCで田渕氏が大沢悠里や永六輔の物真似を披露。歌は抜群に上手く演奏も素晴らしいので今後の展開が楽しみである。
結成13年目の京都のベテラン・トリオ、ザ・サイクロンズ。6枚のアルバムをリリースしているだけに人気も高く会場は大盛り上がり。関西ならではの熱い(暑苦しい?)MCとロケンロー魂溢れる演奏で客を煽る。GSのカヴァーは「チュッ!チュッ!チュッ!」(ザ・カーナビーツ)、「銀色のグラス」(ザ・ゴールデン・カップス)、「御意見無用」(モップス)。イベントのエンディングへ向けてアゲアゲの演奏。
トリは高松の歌謡ヘヴィ・サイケ・トリオ、モンドダイアモンド。ゴングのデヴィッド・アレンを思わせる風貌のギターのホリチヒロシ氏はこのブログを読んで連絡をくれて以来イベント情報をメールしてくれる。ベースの紅一点トモール嬢、坊主頭のドラマー、コウガミ氏、3人それぞれがキラビやかな衣装で爆裂ファズ・ロックを展開する。リフは60'sサイケや70'sパンクのおいしいところをパクリ、歌は美空ひばり、黛ジュン、中尾ミエ、タイガース、スパイダース、妖怪人間ベムなど歌謡曲やGSやアニソン。この組み合わせの凄さはGSを超えて全ロック・ファンにおススメである。最前列で観たのだが後ろから押されて何度かステージに倒れ込むほどの盛り上がり。久々に汗をかいた演奏だった。終演後ホリチ氏に話を聞くと、高松での灰野さんのライヴを何度か企画したことがあるとのこと。この日はメンバーの都合で即日帰らなければならなかったが次回はゆっくり話をしたいものだ。
GSは
今を生きる
ロケンロー
ザ・シャロウズ次回は8/4(土)新宿JAMでの"That's a NO NO!1st album「YES or NO?」RELEASE PARTY”に出演。我が愛するsixも出演するのでまた汗をかきに行こうかと思っている。