30年前に東急ハンズで購入した組み立て式のスチール製の棚にレコードコレクションを整理していたが、2011年の大震災で傾き歪んでしまった。レコードが斜めに重なっているので、重みで取り出すのもひと苦労。部屋自体がレコードやCDや本や洋服で埋まっており、しばらく開かずの間状態だった。
最近奮起して部屋の整理をはじめ、不要な洋服や段ボールを片付けて、5年近く触れなかったレコード棚に手が届くようになった。2台ある4段棚のひとつはすべて60,70年代サイケ系アルバムで占められている。80,90年代に集めたコレクションだが、90年代半ばのCD再発ブームで激レア盤が続々再発されたことで熱が冷めて、21世紀に入るとノイズ/アヴァンギャルドにハマったため、余り聞くことも無くなってしまった。
そんなレコードたちを無作為に棚から引っ張り出して聴いてみることにした。基本的に安物買い志向なので、万単位のプレミア盤など持っていないし、再評価著しい隠れた名盤があるとも思えない。しかし20年以上前にいろんな場所で出会ったレコにはそれぞれ想い出が詰まっている。(斜体は購入金額/日付/店名)
●The Family of Apostolic『s/t(self title)』 (Vanguard Apostolic 1968)
£8.99/1994.5.30/Reckless Records, Oxford Circus, London
海外出張があると行き先の中古レコード店の住所を電話帳やタウンガイドで調べて、仕事の空き時間にレコ屋巡りをするのが最大の愉しみだった。特にロンドンはレコ屋の宝庫で、贔屓の店もあった。オックスフォード・サーカスにあるレックレス・レコードも行きつけのひとつ。ガレージ/サイケ系のインディー・レーベルも経営していた。本作はアメリカのヒッピー・フォーク・グループの2枚組アルバム。ヴァンガード・レコードの中レーベルのアポストリックは、ジャズ・ギタリストのラリー・コリエルを数枚、それ以外は無名のヒッピー・アーティストの作品を3作リリースしただけの弱小レーベル。「アポストリック家族」というバンド名から想像するに、レーベル所属アーティストによるセッション・アルバムではなかろうか。牧歌的でちょっとイカれたフォークサウンドはリラックスしていて気持ちいい。
the family of apostolic - personality - enhanced sound
●Eve『Take It and Smile』(LHI Records 1970)
$4.00/1994.4.30/Record Ron's, New Orleans
最初で最後のニューオリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェスティバル参戦の戦利品。街中が音楽で溢れたニューオリンズでガンボ料理を楽しみ、フェスでレニー・クラヴィッツやボブ・ウェア、ネヴィル・ブラザーズなどを観た。レコ屋も幾つもあり、殆ど未整理のエサ箱を指を真っ黒にして漁った。フェスの合間の短い時間しかなかったので、時間切れで探し切れなかったことは今でも心残りである。細密なペン画の美人ヴォーカルトリオのアルバムで、バックにライ・クーダー(g)やハル・ブレイン(ds)等腕利きセッション・ミュージシャンが参加しているので、日本でもそこそこ知られた存在。ボブ・ディラン、ジェームス・テイラー、バート・バカラックなどの曲をブルース、ゴスペルの要素のあるコーラスで聴かせる。サイケではないが、南部風味の泥臭さが心地よい。
Eve - Take it and Smile (1970) (7) - Hello LA Bye Bye Birmingham
ではまたね
サイケな夜を
過ごしましょう