結成40周年!今なおオリジナル・メンバーで君臨する世界最高峰のロックバンド、7年振りに来日!2004年にザ・フーも参加したイベント「ロック・オデッセイ」で来日して以来。ライヴ・レポートは他に色んな人が書くと思うのでここでは個人的なエアロスミスの思い出を綴ろうと思う。
1970年代半ば、中学生の頃ラジカセ・ブームがあり、私も「がきデカ」がキャラクターで「男は18センチ」というキャッチ・コピーの松下電気製の大型スピーカー付きラジカセを購入、日々エアチェックに没頭した。そして出会ったのが洋楽ポップスの世界である。初めてエアチェックしたのがジョン・デンヴァーとビーチボーイズで、アメリカの広大な大地と青い空に憧れたものだ。毎週「オール・ジャパン・トップ20」というせんだみつおさんがDJのチャート番組をチェックして最新のポップス/ロックを吸収した。レコード屋にも出入りするようになり、飾ってあったキッスのポスターのおどろおどろしい化粧姿に衝撃を覚え、ミュージック・ライフや音楽専科などの音楽雑誌を読み耽りどんどんロックの世界に惹かれていった。
毎月の小遣いを貯めて最初に買ったLPはジョン・デンヴァーの2枚組ライヴ。次にビーチボーイズの「イン・コンサート」。その次がキッスの「地獄の軍団」。そして栄えある(?)4枚目がリリースされたばかりのエアロスミスの「ロックス」だった。実はクラシック好きの父がレコード屋で貯めたポイントでプレゼントしてくれたのである。父はその店の常連だったようで、お店のサービスでエアロスミスのポスター・パネルを貰った。LPは黒いエンボス加工のジャケットに金の帯が映えるジャケットがカッコ良かった。1曲目の「バック・イン・ザ・サドル」からファンキーでワイルドなサウンドが流れ出し、ポップで分かりやすいキッスのサウンドとは異質の「ヤバさ」を感じた。誰だか忘れたがライナーノーツが歌詞の対訳を交えたエッセイのように綴られており、隠された卑猥な意味やダブル・ミーニングなどが解説されていて、「ロック=危ない魅力」を中坊の私の頭に叩き込んでくれた。今でもあれほどインパクトのあるライナーノーツはないと確信している。
しかしひねくれ者の私は他の友達のようにキッスやエアロスミス、そのルーツであるパープルやツェッペリンを追求することはなく、ジョニー・ウインターやジェネシスにかぶれ、高校受験の頃にはパンク・ロックの洗礼を受ける。当時98,000円もしたグレコのファイアーバード・モデルを買い、卒業式でドラムレスのロック・バンドでキッスの曲を演奏した。高校へ進学してから中学時代の友達とヤマハのロック・コンテストに出演することになり、そこで演奏したのがエアロスミスの「ドロー・ザ・ライン」だった。高校ではパンク・ロック一本槍でハードロックを聴くことはなくなった。だから私のハードロック体験はキッスの「ラヴ・ガン」とエアロスミスの「ドロー・ザ・ライン」で一旦休止している。
大学へ入ってから音楽サークルに所属しロック三昧の日々を送る。遊びで数々のコピー・バンドに参加した。その中の一つがアロエスミスというエアロスミスのコピー・バンドだった。1978年の2枚組ライヴ・アルバム「ライヴ・ブートレッグ」収録の曲をコピーした。ハードロックというよりブルージーなファンク・ロックとしての彼らの魅力を改めて実感した。
「ライヴ・ブートレッグ」以降のエアロスミスのレコードは聴いていないので、映画「アルマゲドン」のテーマ曲「ミス・ア・シング」や「ジェイデッド」、「エンジェル」といったヒット曲以外はほとんど知らない。それでもスティーヴン・タイラー(Vo)、ジョー・ペリー(G)、ブラッド・ウィットフォード(G)、トム・ハミルトン(b)、ジョーイ・クレイマー(ds)というオリジナル・メンバー5人のカッコ良さは強烈に印象に残っている。
エアロスミスのライヴを体験するチャンスは今まで2度あった。1回目はアメリカで開催されたウッドストック’94でのことである。初日の深夜に彼らがトリを務めたが、私はホテルへ帰るタクシーの手配で演奏を聴くどころではなかった。花火が上がってフェスティバルの空を飾っていたことだけ覚えている。2度目はロック・オデッセイの時である。ザ・フーを観て満足してトリのエアロスミスは観ないで帰った。だから彼らのステージをちゃんと観るのは今回が初めてである。もう還暦を過ぎた5人だがルックスもステージングも衰えることなくエネルギッシュなパフォーマンスを観せてくれた。スティーヴンのしゃがれたシャウト、ジョー・ペリーのブルースに則ったプレイは相変わらず強烈だ。各自のソロがあり、その間他のメンバーが休憩するのはご愛敬。7割が知らない曲だったが「ドロー・ザ・ライン」「ラスト・チャイルド」「ママ・キン」「スウィート・エモーション(邦題:やりたい気持ち)」、アンコールは「ドリーム・オン」~「トレイン・ケプト・ア・ローリン(ブギウギ列車夜行便)」~「ウォーク・ディス・ウェイ(お説教)」と懐かしのナンバーもやってくれて大満足の2時間半だった。
飛べ!エアロ
アロエ・ドリンクを
飲みながら
会場で大学時代のサークルの友人に再会した。一遍に気分は10代に戻っていた。