●2014年の音楽シーンを振り返って:BiS階段とJAZZBiS階段
昨年12月30日のブログでは2013年最も印象に残ったコンサートとして、アイドル、ロック、ラップ、地下音楽(灰野敬二率いる不失者)が一堂に会して混沌を賛美した「カオスフェス2013」を取り上げ、混沌(カオス)を楽しむことから新たな時代が始まると論じたが、2014年を振り返ると、まさに混沌から創造へと創世記さながらの進化を遂げ、新たな展開を実感した一年だった。
⇒【このコンサート/このライヴ2013】~オレ的2013年「今年の漢字」は『沌』~
昨年のあまちゃんブームを追い風にした「ノイズ」のお茶の間進出、2月のMultiple Tapロンドン公演等による海外への波及、白石民夫、グンジョーガクレヨン、陰猟腐厭など80年代オリジネーターへの再評価など、トピックには事欠かないが、ハイライトは「ノイズ+ジャズ+アイドル」共演による「JAZZBiS階段」であろう。ノイズバンド非常階段が30年以上に亘って実践してきた異種混合プロジェクトの究極型ともいえる「BiS階段」をさらに発展させたこのコラボレーションは、パフォーミング・アート実践の場に於いてはジャンルや表現方法による差異は存在しないことや、表現の「現場」を形成するのはパフォーマーだけでなく、オーディエンス(観客)の存在が欠かせないことを証明するとともに、解散により終止符を打つ「有終の美」という日本的美徳が今もって有効なことを鮮烈に印象付けた。
⇒LIVE REPORT:JAZZ非常階段+JAZZBiS階段 2014年4月22日(火)新宿Pit Inn
●来るべき2015年へ向けて:非常階段 featuring ゆるめるモ!とDJ灰野敬二
非常階段 featuring ゆるめるモ!
「解体的交歓~真夜中のヘヴィ・ロック・パーティ~」発売記念ミニライブ&握手・撮影会
@渋谷タワーレコード B1F「CUTUP STUDIO」 2014.12.29(mon)
その非常階段コラボ・プロジェクトの最新型が、早くもCDとして投下された。「BiS階段」が5月6日渋谷WWWで解散した1ヶ月半後の6月21日にイベント「自家発電」で合体したのが、次世代アイドル・ユニットの「ゆるめるモ!You'll Melt More」だった。2年前BiS階段誕生のきっかけとなったイベントの続編とはいえ、これは「推し変」(贔屓のアイドルを乗換えることを示すヲタク語)か?などと下衆の勘繰りはしないが徳。
世界初のノイズアイドルバンド「BiS階段」は、本来水と油の「NOISE」と「IDOL」が衝突・融合することで、カオス的な狂乱状態を産み出した。それに対し、この二代目ノイズ&アイドルコラボ「非常階段 featuring ゆるめるモ!」は、がらっと異なり初共演の時点で驚く程の親和性を見せた。ゆるめるモ!の楽曲がクラウトロックやニューウェイヴの影響の濃いミニマルなエレクトロサウンドであり、サブカル系に特化した志向(嗜好)性が極端音楽に相通じること、企画者やオーディエンス側にもノイズとアイドル共演の経験があり、ある程度のノウハウが確立されていたこと、などが理由と言える。
⇒非常階段/ゆるめるモ!/流血ブリザード/Killer Smells etc.@四ツ谷OUTBREAK! 2014.6.21(sat)
2度目の共演となった9月26日のオールナイト・イベントでのライヴ録音盤である本作を『解体的交歓』と名付けた制作者(JOJO広重)の意図は、当然ながら70年代日本の即興ジャズの極北と呼ばれた高柳昌行×阿部薫『解体的交感』へのオマージュであるが、ミニマルノイズビートに乗せたアニメ風の歌声、アイドルらしい天真爛漫なMC、アイドルヲタクの掛け声、そして演奏の節々に漲る陽性のパワーには、この日のステージを演奏者、観客、企画者全員が最大限に楽しんだことが刻まれている。つまり「ばらばらになった(=解体的)」人々が「ともに打ち解けて楽しんだ(=交歓した)」記録に違いないのである。
70年代の「表現の極北」はシリアスであることを美徳としたが、21世紀の「表現行為」は真面目一辺倒では通用せず、楽しむことではじめて有効性を獲得出来ると言えるのかもしれない。その意味でこのアルバムは、理想的な表現行為の最新型を世に問う「問題作」と言えるであろう。ジャケットを見比べて微笑みながら、溢れる楽しさに身を任せるだけで、21世紀の「表現の極北」に辿り着くことができるのである。
⇒【第1回解体的ジャケット交歓大会】非常階段/ゆるめるモ!/ニューエストモデル/ふぇのたすetc.
あと23時間後に幕を開ける2015年には、日本の混沌が海外と交歓する「Multiple Tap」、強度が強い音楽で出会いの場を作る「Jazz Artせんがわ」、極端音楽&ローカルバンドの交歓祭「秩父4D」、音と音楽に関わる表現の可能性を探求する「Sound Live Tokyo」など注目のイベントやフェスティバルが引き続き開催予定。個別に見ると、結成36年目の非常階段や、DJ活動で新たなシーンへ浸透する灰野敬二はもちろん、新旧数多くの才能が交歓する地下音楽・極端音楽・異能音楽のニュー・チャプターがどこへ向かうのか、目を離すことは出来ない。
犇(ひし)めき合い
蠢(うごめ)き合い
轟(とどろ)き合う
●2015年初交歓:ももいろクローバーZ vs KISS「夢の浮世に咲いてみな」
⇒ももクロ、Kissとコラボシングル&東京ドーム公演参戦
[2015/1/2 22:09追加]
⇒ももクロ vs KISSの“対決型”試聴サイト公開