GENTLE FOREST JAZZ BAND
BLUE MOON QUARTET
FATS & FATS
GENTLE FOREST SISTERS
Chai-Chii Sisters
1.Come On-A My House 家へおいでよ
2.I’m Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter 手紙でも書こう
3.Relax Max リラックス・マックス
4.What A Little Moonlight Can Do 月光のいたずら
5.Fools Fall In Love フールズ・フォール・イン・ラブ
6.Rum and Coca Cola ラム・アンド・コカ・コーラ
7.I’m Walkin’ アイム・ウォーキン
8.Exactly Like You イグザクトリー・ライク・ユー
9.Blues No.8 ブルース・NO.8
10.Sh-Boom シュ・ブーン
11.Mr.Sandman ミスター・サンドマン
12.I’ve Got You Under My Skin あなたはしっかり私のもの
13.Goody Goody グッディ・グッディ
2001年にVerveレーベル初の日本人女性アーティストとして華々しくデビューしたジャズ・シンガーakikoは、高校時代はロック系のクラブ・イベントの常連だったという。デビュー作こそオーソドックスなジャズ・ヴォーカル・アルバムだったが、その後須永辰緒、小西康陽、ブッゲ・ヴェッセルトフトなどクラブ系のクリエイターとコラボして新感覚のジャズを生み出した彼女が、自らのルーツと言えるジャンプ&ジャイヴに挑戦したアルバムが2005年の『リトル・ミス・ジャズ・アンド・ジャイヴ』だった。当時筆者が通ったガレージロック・イベントと同時代に、少し離れたところで「READYMADE JAZZ & JIVE」というイベントを主宰していた小西康陽がプロデュース。集まる人種に違いはあるが、愛好する音楽は共通していた。
それから10年経ってakiko自身のプロデュースでスウィングやジャイヴの名曲を歌ったアルバムが本作『ロッキン・ジャイヴィン・スウィンギン』。10年ぶりに再びルーツに回帰したきっかけは、5曲で共演するビッグバンドGENTLE FOREST JAZZ BANDとの出会いであろう。「踊る指揮者」の異名をとるトロンボーン奏者ジェントル久保田率いる彼らは、2007年の結成以来「踊れるスウィングジャズ」を追求するユニークな若手楽団。さらに2組の個性派コンボと2組の女性コーラス・グループを交えて展開するグッド・オールド・ミュージックは、お洒落にコーティングされてはいるものの、ダンス音楽として誕生したジャズ本来の生命感を取り戻す試みに違いない。それはまた、ガレージロックの初期衝動にも繋がることは言うまでもない。
晴れた日の為の灰野敬二の一時間
An Hour of Keiji Haino for a Sunny Day
デヴィッド・ケファー著
by David J. Keffer
staff writer of the Poison Pie Publishing House/owner of An Unofficial Keiji Haino Website
Knoxville, Tennessee, USA
david@poisonpie.com
【序章】
生涯にわたる音楽への献身の結果として、灰野敬二の公式リリースのディスコグラフィーは、本論執筆時2015年2月現在で200を超える。これらの作品が灰野の評価が築かれる基礎となっている。耳を劈(つんざ)くギターの音の壁は、時に長すぎて一枚のCDには収まり切らない。だから、複数枚数のレコード/CD、例えば不失者の2枚組CD『I saw it! That which before I could only sense』(Paratactile, PLE1106/07-2, 2000年)などが理想的なドキュメントと言える。
灰野はユニークなヴォーカリストとしても知られており、『わたしだけ?』 (Pinakotheca, PRL #2, 1981)に於けるギター弾き語りから、フランスの洞窟で遠吠えと呟きを録音したアカペラ・アルバムの『Un autre chemin vers l'Ultime』 (Prele Records, prl007, 2011)まで、キャリアを通して多彩な活動を続けている。
続いて灰野のギター・アルバムから2分間の小品。灰野の数多いギターアルバムには同じ傾向を持つ作品もある。しかし『まずは色を無くそうか!!』に類似する作品は存在しない。軽快さと俊敏さを有しつつ同時に瞑想的な作品。ギターは静謐なハープのよう。ディストーションやフィードバックやリヴァーブはない。このアルバムを簡単に位置づけるジャンルはない。70,80年代にハンス・ライヒェル(1949年5月10日生 – 2011年11月22日没)は、ドイツのFMPレーベルから一連のLPシリーズをリリースした。ライヒェルは歌は歌わず、自分で改造/製作したギターの演奏に専念しているが、『The Death of the Rare Bird Ymir』 (FMP, 0640,1979)などのアルバムで聴ける音楽は、灰野のこのアルバムとスタイルに似たところがある。どちらもノン・イディオマティック且つメロディックな美しいギター演奏をフィーチャーしている。どちらも楽観的で陽気な雰囲気を醸し出す。確かにライヒェルのほうが灰野よりもずっと軽快だが、灰野の作品の中でこのアルバムは最も陽気な一枚である。つまりどちらのアルバムも一日を楽しくしてくれるのだ。今すぐドイツや日本の音楽を扱う小売店やネットショップを訪れて、いずれかのアルバムを入手することをお薦めする。
灰野敬二、デレク・ベイリー/Keiji Haino and Derek Bailey
『寄り添い合いし 秩序と無秩序の気配かな(僅かに残されている 余白さえをも 黒く塗り潰す為の第三章)/Drawing Close, Attuning --The Respective Signs of Order and Chaos』
Tokuma Japan Communications, TKCF 77017, 1997
compact disc, 7 tracks - 75m 25s
灰野敬二/Keiji Haino (guitar)
デレク・ベイリー/Derek Bailey (guitar)
灰野と英国のノン・イディオマティック即興ギタリストのデレク・ベイリー(1930年1月29日生 – 2005年12月25日没)の短いギター・デュエット曲で散策を終えるとしよう。このふたつのデュエット曲は、プレイリストの他の曲ほどメロディックではないが、同様に「幸福感」を促進する。一聴すれば、二人がそれぞれ独自のプレイをすると同時にお互いの演奏の本質を探り合っていることが判る。陽気だが表面的なものではない。初めて聴くとメロディーの欠如に取っ付きにくさを感じるかもしれないが、繰り返し聴くことにより、内包する生々しく創造的な衝動が明らかになる。この衝動が、トロンボーン奏者にして学者であるジョージ・ルイスの言葉によれば「自分の創造性を感じることにより、他の人の創造性へ反応することを可能にする共感性」へと聴き手を導く。最初はこの灰野/ベイリーのギター・デュエットから1曲、灰野が歌、ベイリーがギターの共演作『Songs』(Incus, CD 40, 2000)から1曲選ぶつもりだった。だがヴォーカル曲に陽気さを見出す人は確かにいるだろうが、予測不可能な灰野の歌は気ままな散策の目的から逸脱するかもしれない。また、別の面でもインスト2曲で締めるのが適切と考えられる。
灰野の詩
「デレク・ベイリーの魂の安息の為の祈り」
That, which while enfolding this now and present
perfume,
speaks, ‘I will use to the fullest this form bestowed
upon me’
and blurs into the firmament―
ah, where and in what form will it next be devised
先月ギターソロを観た初台NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)4F特設会場での「音楽と美術のあいだ」展イベント。ギターソロのときは空席があったがこの日は前売チケット・ソールドアウト。会場は5人の演奏者が五芒星の頂点に座り、中央向きに並んだ座席を囲むアートっぽい設営。実際の展示を観ていないので直接の比較はできないが、単なる音楽鑑賞ではなく、音を使った実体験作品らしいので、生ライヴパフォーマンスに於いても「誰がWHO」「何をWHAT」「何処でWHERE」「どのようにHOW」演奏するかに拘らず、空間に放たれた音TONE/SOUNDをありのままに体感すべきなのだろう。その意図が十分に共有されたことは満場の観客が1時間近く物音ひとつ立てず息を詰めて聴き入った様子に明らか。酩酊感で感覚が麻痺する忘我の境地に船出した。写真はAsian Meeting Festival 2015のもの。