1978年セックス・ピストルズ脱退時にジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)が放った言葉が「Rock Is Dead(ロックは死んだ)」。パンクを体現する男によるロック死亡宣告。それは、旧態依然としたロックを否定することで生まれたパンクというムーヴメントを端的に象徴するエピソードだが、そのパンクを殺したのは先ほどFREEDOMMUNE ZERO 2013で来日したペニー・リンボー率いるハードコア・バンド、CRASSだった。1978年に発表したシングル「Punk Is Dead(パンクは死んだ)」で、商業化したロックを否定したパンクもまたムーヴメント化/メジャー化することで方向性を見失った、と批判し、自らのレーベルを立ち上げ、アンチコマーシャリズム&D.I.Y.精神を貫いた。
The gardens=庭だから静岡ノイズを連想した、というのは嘘だが、素敵な名前だし、「A Place in the Sun」=太陽の住処というタイトルも夢があっていい。白ワンピースの少女の光でトンだ写真も魅力的なので買ってみた。アコギのストロークがいい感じ。ビートの効いた明るく伸びやかなヴォーカルが元気いっぱい。とってもハイクオリティなポップ。歌謡曲っぽいメロディーラインが所々ネオアコ的なウェット感を醸し出すのも良。その正体は、SPEEDの”プロデューサー、伊秩弘将が1997年に発足したプロジェクト。ヴォーカルのJunko(大塚純子)は7曲の作詞も手がける才人。もしSPEED関係だと知っていたら買わなかったかもしれない。ダンスミュージックではなく、ガールポップなので大当たり。大塚純子は元々シンガーソングライターでソロ活動していた。2000年前後に青年実業家と結婚して引退した。スリップケース入デジパック仕様。
UP-TIGHTと庭、ジモティには浜松と静岡じゃ全然違うよ、と言われるのを覚悟で「静岡アンダーグラウンドの代表アーティスト」と呼びたい二者がスプリットCDを限定300枚でリリースした。EPサイズのポスタージャケに包まれた銀盤に庭9曲、UP-TIGHT1曲(5パートからなる長尺ナンバー)収録。The CORE of a boiling CHAOS=「沸騰するカオスの中心核」=庭の参加メンバーは望月(electro,vo)を始めシンセ、ギター、ベース、ドラム、ラップなど11名がクレジットされているが、サウンドは強烈なハーシュノイズとクラスター音響が渾然一体となり爆発するカオスの連続で、Play It Loudとの指示通りに再生したら隣近所から苦情殺到間違いなし。混沌の中からポエトリーリーディング・ラップが浮き出るトラックは新機軸。今までのCDRで提示された「あらゆる表現との接触によりその場その瞬間に存在する全ての事象をノイズとして肯定する」というプロパガンダが増殖していることが脅威的である。
JAZZ ART せんがわ2013のライヴはメイン会場のせんがわ劇場と、徒歩5分のサブ会場Jenny's Kitchenとで交互に開催された。サブ会場はロフト風のスタジオで、演奏者に応じて会場セッティングが変更できる。メイン会場に比べて、若手による実験的な試みが多く、かつてのピットイン・ニュージャズホールはこんな雰囲気だったのか?と想像が広がる。フェス最終日のサブ会場のトリがKILLER-OMA=鈴木勲(b)× KILLER-BONG。KILLER-BONGは判りやすく言えばヒップホップDJ兼ラッパーだが、音楽性や演奏スタイル、共演者などの守備範囲はヒップホップやラップやクラブミュージックの枠を大きくはみ出した、ジャンル分け不能のオリジナルな存在である。
崖っぷちSESSIONの翌日、灰野敬二は『JAZZ ART せんがわ2013』に出演。今年で6回目になる巻上公一プロデュースの音楽フェスティバル。"JAZZ"と銘打っているが、巻上の弁によれば「ひと言で判られないフェスティバルを目指した。簡単じゃない、音楽も楽しくないもの。よく音を楽しむのが音楽だと言われるが、冗談じゃない。言葉はあとから作られたのであって、音が先にあった。だからなるべくたいへんな音楽をやっている」とのこと。ラインナップを見れば一目瞭然だが、いわゆる真っ当な「ジャズ」はひとつもない。かといってロックでも前衛音楽でもドドンパでもない。言葉やジャンルで言い表せないややこしい音楽と出会える世界的にもユニーク極まりないフェスである。
「崖っぷちSESSION」は2007年初頭よりはじまった藤掛正隆dsと早川岳晴bassによるジャンル無用のセッションシリーズ。山本精一、JOJO広重、巻上公一、鬼怒無月、ジム・オルークなど蒼々たるゲスト陣は現代即興音楽紳士録のようだ。ライヴCDシリーズもあり、派生ユニットEDGEとしても活動する。記念すべき40回目のゲストはFREEDOMMUNE 0 2013で圧巻のパフォーマンスを観せたばかりの灰野敬二。藤掛と灰野は2004年~2010年横浜Sormy Mondayを中心にデュオライヴを定期的に開催していた。今回は3年ぶりの共演。早川とは、2004年に鬼怒無月誕生記念ライヴで早川が参加するCOILのゲストに灰野が出演して以来だから、何と9年ぶりの共演になる。いずれもベテラン揃いのトリオのセッションがどうなるかは、本番まで判らない、タイトル通り崖っぷち(Close To The Edge=危機)のライヴ。
(撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)
ルースター・ノースサイドは初めてだったが、アルトー・ビーツのワークショップが行われた本店同様にアメリカっぽいブルース・カフェ調でStormy Mondayに似た雰囲気がある。灰野側の最前列にTAKE's Home Pageのタケダ氏と同席。レポートしていたDJ灰野敬二3時間ライヴの詳細な曲目解析に驚いたと言うと、曲目検索できるiPhoneアプリを使ったとのこと。これは面白い、と自分のiPhoneにDLしようとしたら、iOSバージョンが低くてダメだった。