A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

JAZZ非常階段@新宿ピットイン 2012.9.23 (sun)

2012年09月25日 00時59分36秒 | 素晴らしき変態音楽


JAZZ 非常階段 CD発売記念 GIG !
【MEMBERS】JOJO広重、T.美川、コサカイフミオ、JUNKO、岡野 太、坂田 明、豊住芳三郎、勝井祐二

先日お伝えしたように今年4月9日に開催されたJAZZ非常階段のライヴ盤「メイド・イン・ジャパン ~ live at Shinjuku Pit Inn 9 April, 2012」+坂田明さんを迎えての非常階段8年ぶりのスタジオ盤「メイド・イン・スタジオ」のレコ発イベントが開催された。ジャズの聖地ピットイン初出演、FREEDOMMUNE 0<ZERO>出演、福島でのノイズ電車・ノイズ温泉、と今年は非常階段のスペシャルな活動が目白押しだが、この2作同時リリースとパワーアップしたJAZZ非常階段のこの日のライヴはひとつのハイライトに違いない。前回も大盛況だったが、今回は噂が噂を呼んで好評でそれ以上の動員だった模様。ノイズ系ライヴで良く見る顔やFB/Twitter繋がりの人とも会った。

前回向かって右手の前から3列目に座り、コサカイ氏のまさかのダイヴ攻撃に襲われた教訓から、今回は左手、美川氏側の2列目に席を定める。ツイン・ドラムは先日のポール・ニルセン・ラヴ&ケン・ヴァンダーマークのライヴで予習済なのでその迫力は想像できる。開演前の観客の会話にメルツバウやインキャパの名前やFREEDOMMUNE 0の話題が聞こえ何となく嬉しい。

開演時間になると広重さん、JUNKOさんに加え今回初参加の岡野太氏と勝井祐二氏の4人が全員黒T-シャツで登場。前回同様「今日はちゃんと演奏します」との広重さんのMC。岡野氏と勝井氏は17年前にROVOの前身である太陽の塔というバンドで一緒だったという。そのバンドには山本精一氏や広瀬淳二氏なども参加していたが、音源は発表していないそうだ。

まずはこの4人での演奏。比較的抑えめの広重氏のギターに勝井氏のスペーシーなヴァイオリンが交錯する。左のドラムの椅子に座ったJUNKOさんが金切り声を上げると雰囲気は一気に非常階段になる。90年代に"大阪の奇蹟"と呼ばれたへヴィ・サイケ・バンド、サバート・ブレイズのメンバーだった岡野氏の激しく乱打するドラミングが混沌を拡張する。勝井氏は途中からエフェクターで電子音を操作。次第に熱を帯びるが、後半の全員での演奏に備えてか爆発寸前で留めた小手調べ的な25分の演奏。



続いて美川氏、コサカイ氏、坂田さん、SABUさんの4人組。今度は3人が白い服。非常階段には4月以来の参加のコサカイ氏がノイズ・バンドSLOGANのT-シャツを着ているのが素敵。SABUさんは二胡を演奏。2001年に購入し2005年からライヴで演奏しているとのこと。インキャパ組のエレクトロ・ノイズと融合したアンビエントな音響の中に坂田さんのクラリネット、歌、アルトが屹立する空間は非常階段とは違った幻想的な雰囲気があり面白い。スタジオ盤にはインキャパ+坂田さんのトラックが収録されておりエレクトロ音響をサックスが切り裂く聴覚的にも気持ちいい。30分の演奏。Session 1、Session 2ともに擦弦楽器が加わることにより無愛想な非常階段サウンドに叙情性が加わり新鮮な感覚だった。



第2部はいよいよ8人揃っての集団ノイズ即興。コサカイ氏がさりげなくボルビドマグースのT-シャツに着替えていたのにニヤリ。「おー行くぞ!」という広重さんの掛け声で一斉にパワー全開の怒涛演奏開始。非常階段としては小音量だろうがピットイン史上最大音量であることは間違いない。とにかく音量に関係なく音の強度は普段の非常階段以上のものがある。ツイン・ドラムの迫力は筆舌に尽くしがたい。親子以上に歳の離れたSABUさんと岡野氏が対等に張り合って叩きまくるエントロピーは1+1=3以上のエネルギー。初っ端から凄い演奏だったのにどんどんパワーアップしていく。広重さんはギターを振り回して観客と演奏者を煽る。坂田さんが辛抱たまらずデス声で吠え始める。絶叫している時は鬼の形相なのが歌い終わるといつもの温和な表情に戻るのが面白い。広重さんが坂田さんを指さして鼓舞するジェスチャー。爆走するエネルギーは誰かが演奏を休んでも変化なく持続する。30分過ぎに広重さんがしきりにコサカイ氏ににじり寄り火に油を注ごうとする。比較的痙攣具合が大人しめだったコサカイ氏が遂に動く。いきなりアンプを抱えて客席乱入、そのまま通路を最後尾まで突進する。待ってましたとばかり観客は大喜び。しばし客に埋もれて暴れた後、ステージへ戻る途中、何と正に前回私が座っていたのと同じ席の客の上に倒れ込む。”ピットイン右3列目危険地帯説”はやはり本当だった!ステージでは広重さんがギターを最前列の客に押しつけて攻撃中。コサカイ氏のエフェクターボードはとっくに破壊されている。



80年代初期の汚物に塗れた過激パフォーマンスが出現してもおかしくない程の阿鼻叫喚地獄。観ている内にこの状況の異常さに気がついた。ぐしゃぐしゃのカオス状態が炸裂するステージに対して、観客は行儀よく座って眺めているのだ。動物園の檻を覗いているような断絶した世界。安全地帯に身を置いて戦争シーンを見ているような安穏感。これは正しい非常階段のライヴの観方なのか。観客自身もパフォーマーと一体化して自らの攻撃本能を曝け出してこそこの演奏に相応しいのではないか。こんなことなら敢えて前回と同じ席に座ってコサカイ攻撃を受ければよかった、などと考えちょっと居心地の悪さを感じたのも事実。45分の演奏は前回以上に素晴らしい混沌の美だったし、まだ足りないと前回やらなかったアンコールを嬉々として披露してくれてリスナーとしては大満足だったが、次回はピットイン初のオールスタンディング・ライヴなんて実現できないかな~。

たぶん今日のライヴを一番楽しんだのは「これが出来るようになるまで40年かかった」「昔の山下洋輔トリオみたいだった」と感想を漏らしていた坂田さんかもしれない。メンバー全員とても楽しそうに機材を片付けていたのが印象的だった。

JAZZ非とは
JAZZに非ずと
いう意味か

帰宅して会場で購入した「メイド・イン・ジャパン」をパソコンに入れて出てきたアーティスト名/曲名に思わずヤラレた!と思った。ネタばれになるので詳しくは書かないがさすが広重さん、この悪戯は史上最高ですな。

[10/1追記]
地引雄一さんのサイトに当日のリハ&ライヴ写真が掲載されています。
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4 コメント

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Unknown (  フクチ)
2012-09-25 17:08:30
前回はステージ向かって左手にいましたが今回は運が良いのか悪いのか
右側三列目での観戦となりました。直撃は間逃れましたが目の前をアンプが交差してさた。今回は勝井さんの参戦でカオス度が更にアップして最高のステージでした。
木曜日には不失者に参戦します。得三のレポートを読みながら楽しみにしています。
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三列目 (miro)
2012-09-25 18:30:23
第五列ならぬピットイン右三列目ですね(笑)。第五列といえば阿部怪異のライヴも楽しみです。
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Unknown (フクチ)
2012-09-26 00:35:43
吉田達也とのからみが楽しみです。
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阿部怪異 (miro)
2012-09-26 07:40:09
ベースのBar Issheeの店長のプレイにも注目です。
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