1. 大らかな予感 Vague Premonition
2. LA LA WHAT LA LA WHAT
3. チンピーシーとランデヴー Chim-pi-si and Rendezvous
4. 人生の嘘 The Lie of Life
5. 東京辺りで幽体離脱 Astral projection around Tokyo
6. とびむしのごちそう Flying insect feast(Geosmin)
7. 残念なブルース Unfortunate Blues
8. 夢見ているかい? Are you dreaming?
9. 濃厚な虹を跨ぐ Straddle a Thick Rainbow
10. 門外不出 Hidden Treasures
11. 又々木の股から Born from the crotch of a tree(Lost sense of humanity)
All lyrics MAKIGAMI KOICHI
Music MAKIGAMI KOICHI(1) ,SAKAIDE MASAMI (3,8,10), MITA FREEMAN(2,5,6) and HIKASHU
Produced by MAKIGAMI KOICHI
Recorded at 1714 Studio in Atami and IGO studio in Tokyo 2021
Recorded and Mixed by SAKAIDE MASAMI
Mastered by ONO SEIGEN(Saidera Mastering)
Cover art SAKABASHIRA IMIRI
Designed by OUCHI TOMONORI (graphic garden)
Special thanks to Star Pine’s Cafe
10分超えの長尺曲2曲を含む全11曲69分の『虹から虹へ』は、水滴の滴る音から始まる環境音楽M1「大らかな予感」で幕を開ける。三田超人作曲のM2「LA LA WHAT」ではタイトなハードロックに乗せて巻上が堂々とした歌声で二律背反した世界を断罪する。今年6月の「オノマトピアミーティング in 熱海」、10月松本での「オノマトペ歌謡祭」で共演したオルタナティヴ・シャンソン・デュオ、チャラン・ポ・ランタンのももをゲストに迎えたM3「チンピーシーとランデヴー」(坂出雅海作曲)は、オクターヴ違いのユニゾン・ヴォーカルで「チン」「ピー」「シー」の三つの擬音の大喜利を繰り広げる演劇的な曲。初期ヒカシューの「プヨプヨ」「びろびろ」などの“オノマトペ・ソング”とともに、「いいね」「了解です」「いい質問ですね」といった最近の“流行語ソング”にも通じる。コルネットとピアノを中心にアブストラクトに展開する即興演奏M4「人生の嘘」は、“幸せに生きるための心理学”で知られるアルフレート・アドラーの言葉に因んだ曲。M5「東京辺りで幽体離脱」(三田作曲)は、満を持してゲスト参加した纐纈雅代のブルージーなサックスが咽び泣く超歌謡ロック。M6「とびむしのごちそう」は口琴が虫の羽音に擬態するインプロ人力テクノ。英語タイトルを見れば虫のご馳走とは人間様が嫌う下水溝の匂いの元であるゲオスミンだと分かる。虫の気持ちになって演奏しているのだろう。三田作曲のM7「残念なブルース」は初期ヒカシューを思わせる惚けたグッドタイム・ロック・ナンバー。散歩しながら“ズビズビズー”と口ずさみたくなる。坂出作曲のM8「夢見ているかい?」もレトロ感のあるポップ・ソング。軽快なスカ・ビートが、ポール・マッカートニー&ウィングス「ジェット」にちょっと似たリフに導かれてロマンティックなスローバラードへと展開する。EXPO’70っぽいチープなシンセサイザーが、昭和の時代に夢見た近未来を生きる我々への挽歌を奏でる。“人間以上は人間なのか しあわせも行きすぎちゃうのかな”という歌詞が心に刺さる(だけどぜんぜん悲しくない)。M9「濃厚な虹を跨ぐ」は様々な音が交錯する12分近いインプロヴィゼーション。歌詞カードに描かれた奇怪な水棲生物たちが虹の上で踊り出す光景を幻視する。M10「門外不出」(坂出作曲)は、重厚なプログレッシヴ・ロック。キング・クリムゾンのロバート・フリップを彷彿させる三田のサステイン・ギターが素晴らしい。シベリアの神やロシアの都市、アラブの呪文やアボリジニの伝統楽器などの名称を織り込んだ歌詞がエキゾチックなムードを高める。ラストのインプロ・ナンバーM11「又々木の股から」は不穏なアンビエント・ミュージック。英語タイトルは“人間性の喪失”とサブ・タイトルされており、コロナ禍が収まったとしても世界の不穏と混迷が続くことを示唆しているように思える。巻上のヴォイス・パフォーマンスの傍らで警報のように三田のノイズ・ギターが鳴り続ける。テレミン、ピアノ、ドラム、ベースが渦を巻くカオスの後にギターだけが残されて、アルバムは終焉する。
出演:
DJ Athmodeus a.k.a.持田保
DJ BEKATAROU a.k.a.伊藤元
DJ Bothis a.k.a.山田遼
DJ Ipetam a.k.a. Rie Fukuda
DJ Necronomicon a.k.a.剛田武
DJ Paimon a.k.a. Moppy
DJ Qliphoth a.k.a.宇田川岳夫
DJ Vaby a.k.a.大場弘規
●DJ Vaby a.k.a. 大場弘規
1. Non Band / Non Band II (2021年12月リリース)
ナント40年振りの2ndアルバムにして最高傑作!
2. Grim / Maha (2015年リリース)
ドープ過ぎる密教トランス儀式空間!血沸き肉踊ります!!
3.触媒夜 / Unreleased Cassette
未発表スタジオテイク!今宵、伝説の音源を貴方に!!
2020年に引き続きコロナ禍再拡大による緊急事態宣言でスタートした2021年。1~3月はイベントの中止・延期はあったが春ごろから再開。盤魔殿レーベルLes Disques Du DaemoniumからCDRを3作リリースするとともに、ケロッピー前田とのデュオやアンビエントユニット「MOGRE MOGRU」、爆裂女子のカバーバンド「爆団バンド」を結成し演奏活動を拡大した。5月の橋本孝之君の急逝は大きなショックだったが、残された音楽が生き続けるパワーを再確認し未来への希望を抱いた。私生活では住居をリフォームし、レコード棚とオーディオ&楽器スペースを設置し快適な音楽生活を楽しめる環境を完備した。いろいろな意味で区切りの年となる2022年も充実したミュージックライフを送りたいものだ。
●執筆 JazzTokyo - Jazz and Far Beyond No.273(2021年1月2日公開)