外岡さんの「コロナ 21世紀の問い」は、一つ一つの文がとても長い。それを読みながら必死に過去の知識と思考力とを駆動させる。なかなか疲れる作業である。したがって、一度にすべてを読むことは難しい。だが、この文も読む価値がある。
外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(19)アベノミクスの今と、資本主義の行方
文というものは、ただ読むだけのものではない。情報や知識を得たり、考える材料を得たりするが、それだけではない。たとえば芥川龍之介の文章を読んでいると、その文章にほれぼれしてしばし立ち止まることもある。「或日の大石内蔵助」なんかは、静謐な情景の中での微妙な心境の動きを庭の風情などとともに短い文章の中に書き込まれていて、唸るほどの名文だと、こころから感心する。
外岡秀俊さんはもと朝日新聞記者だ。でもその前に「北帰行」で芥川賞を受賞した作家でもある。外岡さんの目は、文章だけではなく鋭く、書かれている文を読んでいくだけで、新しい情報とともに直ちに読む者の思考の動きを始動させる。
この文もそうだ。なるほど疋田桂一郎のグループにいただけのことはある。
これを読んでいて、政治の担い手がどこを向いて行われているか、問題を解決するために政府が全力を尽くすのか、それともいつものままに利権政治にうつつをぬかしているのかがよくわかる。