私は昨日、Dying in a leadership vacuum を訳してアップした。そこでは、「現在の政治指導者たちは危険なほど無能である」とされていた。そのアメリカ合衆国は言うまでもなく新自由主義が席捲している国である。
そういう国では、多くの人が亡くなっている。
そして新自由主義が跋扈している国と云えば、イギリスである。サッチャー政権が、イギリスの良い制度を破壊して新自由主義者に解放し、そのため公的な制度が消され、民間企業の利潤獲得の手段と化していった。
『世界』11月号で、岸本聡子さんがイギリスの現状を、こう書いている。
新型コロナウィルスによるパンデミック以降、イギリスで、治療に当たっていた国民保健サービス(NHS)の医師、看護師、ケアスタッフが200人以上亡くなった。その多くはガウン、手袋、マスク、キャップなどの個人用防護具(PPE)があれば避けることができた死であった。問題は、この危機がなかったら、NHSの医療資材や機器の調達部門そのものが民営化されていた事実に、多くの英国民も世界も気が付きさえしなかっただろうということだ。2006年より度重なるアウトソーシングを経た調達部門は、2018年にNHSサプライチェーンという組織として再編された。NHSの1部として公的所有の形式をとっているものの、実はその機能のほとんどが企業群にアウトソースされている。
人の健康と命に関わる医療の分野に企業の論理を持ち込み、効率化の名の下に不必要に複雑な仕組みをつくりあげ、結果として無責任体制なってしまったNHSの調達、PPEなどを備蓄せずにその都度購入する「ジャストインタイム」方式が売りのグローバルサプライチェーンはその弱さを露呈した。
要するに、新自由主義の考え方の下、合理化、効率最優先、節約のために民営化させ、企業に儲けさせる仕組みを作りだしたのだ。その結果、多くの医療関係者が命を落とした。ジャストインタイムは、在庫を持たない日本の自動車生産システムであったが、今やこういうところにまで採用されているのである。
人々の命は、ないがしろにされているのである。
新自由主義が跋扈する国、アングロサクソンのこの二つの国で多くの死者、感染者を出し、日本はそのアングロサクソンの真似をしているのである。
アメリカの医学雑誌がいうように、「現在の政治指導者たちは危険なほど無能である」、それはアメリカやイギリスだけではない、日本も、である。