「河童」を読んだ。ぐいぐいと引っ張られて、一気に読み終えた。一面では、河童の世界を描いて、そこにどのような意図を隠しているのだろうかと思いながら読み、もう一面では芥川の想像世界にひきこまれて読み進んだ。
河童の世界の不可思議は理解できた。多くの人は、この「河童」を読んでいろいろな解釈をしてるのだろうが、私には不可思議な世界というしかない。
河童の世界は、人間たちが生きる土の下にあるようだ。主人公は穴に落ち、そして人間世界へは綱に頼ってあがって帰ってきた。
私は、山中で河童にであったその場面で、河童は死者の世界から来たのだと思った。つまり、河童の世界とは死の世界ではないのかと思い、読み進めたのだが、よくわからない。人間の通常の価値観とはことなる世界が展開しているのだが、それは果たして死の世界なのか、そうでもないようだ。河童の世界は河童の世界独自の価値観があるようなのだが、しかしそれは秩序だっていない。
となると、芥川の妄想なのか。芥川は夢をよく見るようだが、夢には合理的な秩序はない。夢か妄想か。
理解しようとは思わない、はじめて前衛劇を見たときのように、解釈しようとせずに、そのままの世界を受容するしかないようだ。