『第16回 shiseido art egg YU SORA展 もずく、たまご』 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
『第16回 shiseido art egg YU SORA展 もずく、たまご』
2023/3/7~4/9



資生堂ギャラリーで開催中の『第16回 shiseido art egg YU SORA展 もずく、たまご』を見てきました。

1987年に韓国で生まれ、現在は東京を拠点に活動するYU SORAは、白い布や黒い糸を用いた刺繍や実物大の家具を模した立体を用いて、日常へと向き合うインスタレーションを手がけてきました。



ともかく目を引くのがホワイトキューブの空間に置かれた机や椅子、またベットなどを象った立体の作品で、いずれも真っ白に染まりつつ、黒い糸で刺繍が施されていました。



そうした家具の上などには本やカップ、アイロンからメガネにレシートなど日用的な道具などが同じく立体にて表現されていて、黒い糸が無造作に絡まるように垂れていました。



さらに壁には厚みのある支持体にコンセントや衣服、携帯電話、また鍵などが刺繍にて象られていて、一部はタペストリーのように吊るされていました。



YU SORAは震災や事故、またパンデミックや戦争など、何気なく暮らす日常がはかなく簡単に崩れてしまうことをきっかけに、むしろ日常について深く考え、日常の大切さに気づくような作品をつくり続けてきました。



いずれもリアルに再現された日常の部屋ながらも、どことなく不穏な空気が漂っているような世界観も印象に深いかもしれません。静まり返ったモノクロームの空間を歩いていると、いつしか非日常の世界へと誘われているような気持ちにさせられました。


4月9日まで開催されています。

『第16回 shiseido art egg YU SORA展 もずく、たまご』 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:2023年3月7日(火)~4月9日(日) 
休廊:月曜日。*祝日が月曜にあたる場合も休館
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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『WHERE OCEANS MEET マベル ポブレット展』 シャネル・ネクサス・ホール

シャネル・ネクサス・ホール
『WHERE OCEANS MEET マベル ポブレット展』 
2023/3/1~4/2



シャネル・ネクサス・ホールで開催中の『WHERE OCEANS MEET マベル ポブレット展』を見てきました。

1986年に生まれたアーティスト、マベル・ポブレットは、キューバ人としての自らのアイデンティティや世界との関係などを問い直すべく作品を手がけ、写真や映像、キネティックアートやパフォーマンスなどにて多様に表現してきました。



そのポブレットの新作を中心としたのが『WHERE OCEANS MEET』と題する個展で、会場には海や水をテーマにしたさまざまな作品が1つの物語を紡ぐかのように展示されていました。



まず目を引くのが「My Autumn」シリーズと題する作品で、青を基調とした円い支持体には人のすがたを思しきイメージが浮かび上がっていました。

また1つ1つの作品はピラミッド状の折り紙が無数に組み合わされていて、遠目では想像も付かないような素材で出来ていることが分かりました。



一連の「My Autumn」のシリーズからさらに先へと進むと登場するのが、作品の中へと入ることのできる『ISLAS』(Homelandシリーズより)と呼ばれるインスタレーションでした。鏡面に囲まれた空間には小さな鏡と海の写真の断片が無数に吊るされていて、かき分けて歩いていると海の奥底へと沈み込むような体験を得ることができました。



『ISLAS』と同じ「Homeland」シリーズの『NON-DUALITY』は、青く塗られたキャンバスの上に何百もの小さな花々がピン留めされた作品で、いずれもプラスチックにて作られていました。



このほか自身の旅の写真を用いて制作され、7つの円形作品で構成された「Travel Diary」のシリーズも美しく映えていたかもしれません。



ポブレットは鏡や海のイメージの断片を用いつつ、キューバでは身近な移民たちの人生を寓話的に表現していて、そこからは自然や生命、とりわけ移民をはじめとする人々へのオマージュも見ることができました。



鏡面を多用した展示空間そのものも魅力的だったかもしれません。それぞれの作品が鏡へ映り込みつつ、互いに響き合っていました。


キューバの気鋭アーティスト、マベル ポブレットが表現する海や生命へのオマージュ|Pen Online

撮影も可能です。4月2日まで開催されています。

『WHERE OCEANS MEET マベル ポブレット展』 シャネル・ネクサス・ホール
会期:2023年3月1日(水)~4月2日(日)
休廊:会期中無休。
料金:無料。
時間:11:00~19:00。 
 *最終入場は18:30まで。
住所:中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A13出口より徒歩1分。東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅5番出口より徒歩1分。
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『ヴォルフガング・ティルマンス 「Moments of life」』 エスパス ルイ・ヴィトン東京

エスパス ルイ・ヴィトン東京
『ヴォルフガング・ティルマンス 「Moments of life」』 
2023/2/2~6/11



エスパス ルイ・ヴィトン東京で開催中の『ヴォルフガング・ティルマンス 「Moments of life」』をみてきました。

ドイツの写真家のヴォルフガング・ティルマンスは、1980年代の後半以降、写真やイメージ制作の境界線を拡張する作品を手がけ、世界各地の美術館にて個展を開くなどして高く評価されて来ました。



そのティルマンスの過去約20年に撮影された作品からなるのが『ヴォルフガング・ティルマンス 「Moments of life」』で、会場には近年収集を続けてきたフォンダシオン ルイ・ヴィトンの30点を超えるコレクションより選ばれた作品が展示されていました。



今回の個展でまず目を引くのはユニークともいえる空間の構成で、展示室の中央を斜めに区切るような高い壁を設置し、そこへ大小さまざまなサイズの写真をクリップで留めたり、額装したりして展示を行っていました。



それらは日常の光景や近しい人々などを捉えながらも、肖像や生物、また風景画といった伝統的なジャンルを思わせるイメージが広がっていて、中には古代のトルソーや17世紀オランダ絵画、またマネの『草上の昼食』を連想させる作品もありました。



「写真とは極端に薄いキューブである。」と語るインタビュー映像も興味深い内容だったかもしれません。そこでティルマンスは鑑賞者へ向かって「どう映っているのか、それぞれのつながりを見てほしい。」と呼びかけていました。



過去に国内では、東京オペラシティアートギャラリーでの『ヴォルフガング・ティルマンス展』(2004年)や、国立国際美術館の『ヴォルフガング・ティルマンス Your Body is Yours』(2015年)などでティルマンスの展示が開かれてきました。



私にとってティルマンスの作品と初めて出会ったのは前者でしたが、特に後者の個展は私がこれまで見たあらゆる写真家の展示の中でも一番といって良いほど強く印象に残りました。



今回、久々にティルマンスの写真を目にすることができましたが、次は美術館のスケールでの展示を見る機会があればと思いました。


日常の断片と身体の脆弱性を写し出す。写真家、ヴォルフガング・ティルマンスの個展が開催中!|Pen Online

撮影も可能です。6月11日まで開催されています。

『ヴォルフガング・ティルマンス 「Moments of life」』 エスパス ルイ・ヴィトン東京
会期:2023年2月2日(木)~6月11日(日)
休廊:不定休
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7階
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A1出口より徒歩約3分。JR線原宿駅表参道口より徒歩約10分。
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『仲條正義名作展』 クリエイションギャラリーG8

クリエイションギャラリーG8
『仲條正義名作展』
2023/2/16~3/30



クリエイションギャラリーG8で開催中の『仲條正義名作展』を見てきました。

1933年に生まれた仲條正義は、資生堂企業文化誌『花椿』のアートディレクションをはじめ、松屋銀座、東京都現代美術館などのCI計画などを手がけると、日本を代表するグラフィックデザイナーのひとりとして活動しました。



その仲條の業績を紹介するのが『仲條正義名作展』で、会場にはポスター、ロゴ、エディトリアル、パッケージなどが公開されていました。



まず目を引くのが空間を彩るかのように並ぶポスター類で、とりわけ『1994現代ポスター競作展 21 VS. 21』(1994年)や『仲條正義展 NAKAJOISH』(1988年)など過去の展覧会に出展された作品が目立っていました。



また仲條のデザインで有名な資生堂に関する展示も充実していて、『花椿』をはじめ、『資生堂パーラー』のパッケージなども多様に展示されていました。



美術館での仕事として重要なのは、東京都現代美術館、および細見美術館のCI計画などで、両美術館のロゴから細見美術館の琳派に関するポスターも出品されていました。



こうした一連の作品と並んで興味深いのが、過去の出版物より引用された仲條の文章で、「文字について」や「デザインとは」などからは仲條のデザインに対するスタンスを知れました。



「傑作は偶然だ。」や「デザインの根本は矛盾である。矛盾を否定しない。」といった仲條語録も興味深いのではないでしょうか。2021年10月、88歳で亡くなった仲條の幅広い創作世界を作品や言葉を通して楽しむことができました。

88歳の生涯を現役のデザイナーとして貫く。常に新たな表現へと挑み続けた仲條正義の軌跡|Pen Online



撮影も可能です。3月30日まで開催されています。

『仲條正義名作展』 クリエイションギャラリーG8@g8gallery
会期:2023年2月16日(木)~3月30日(木)
休館:日曜、祝日。
時間:11:00~19:00。
料金:無料。
住所:中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
交通:JR線新橋駅銀座口、東京メトロ銀座線新橋駅5番出口より徒歩3分。
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『動物会議 緊急大集合!』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー

ギンザ・グラフィック・ギャラリー
『動物会議 緊急大集合!』
2023/2/9~3/25



ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の『動物会議 緊急大集合!』を見てきました。

1949年、ドイツの作家のエーリッヒ・ケストナーは、絵本『動物会議』において、「子どもたちのために、戦争のない世界をつくろう。」と、動物たちを主人公にして戦争を繰り返す人間を批判する物語を描きました。



この絵本『動物会議』にインスピレーションを受けて企画されたのが『動物会議 緊急大集合!』で、DNPグラフィックデザイン・アーカイブの中から、ケストナーの「人間と動物との共存と平和」という意思を体現するようなポスター約120点が公開されていました。



それらはいずれも日本のグラフィックデザイナー、アートディレクター、アーティストらが、動物を主役、もしくは脇役にして、生命、環境、戦争、文化、社会に対する問題意識や危機感を表したもので、写真、絵画、インスタレーション、またグラフィックなどさまざまな表現が用いられていました。



亀倉雄策から田中一光、それに佐藤晃一や横尾忠則、また監修を担った永井一正といった錚々たるメンバーによる名作ポスターからしても見応え十分といえるかもしれません。またそれぞれの展示室において動物をモチーフとしたポスターが向きあうなど、あたかも会議室をイメージさせるような空間構成も印象に残りました。



なお2階のライブラリーのスペースではケストナーの「動物会議」を実際に閲覧できるとともに、海外アーティストらによる動物をモチーフとしたポスターも展示されていました。



2022年5月から7月にかけ、ローマ日本文化会館にて同タイトルの企画展が開かれると、多くの来場者を数えるなどして話題を集めました。その後、規模を縮小し、パリ日本文化会館へと巡回していて、今回ギンザ・グラフィック・ギャラリーでは、ローマでの展覧会を再構成するかたちにて展示を行いました。



各地で戦争や紛争が続く昨今の世界の状況を鑑みながら、一連のポスターを追っていくと、70年前のケストナーのメッセージが今もなお重要な意味を持ち得ていることを強く感じてなりませんでした。


3月25日まで開催されています。

『動物会議 緊急大集合!』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー@ggg_gallery
会期:2023年2月9日(木)~3月25日(土)
休廊:日曜・祝日。
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅から徒歩5分。JR線有楽町駅、新橋駅から徒歩10分。
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『ある少女の哲学 安珠 写真展』 シャネル・ネクサス・ホール

シャネル・ネクサス・ホール
『ある少女の哲学 安珠 写真展』
2023/1/18~2/12



シャネル・ネクサス・ホールで開催中の『ある少女の哲学 安珠 写真展』を見てきました。

東京に生まれ、パリコレに出演するなど国際的なモデルとして活躍した安珠は、帰国後に写真家に転身すると、文章を織り交ぜた物語性のある写真を手がけるなどして活動してきました。



その安珠の最新作約50点と映像、また過去の作品を交えて構成したのが『ある少女の哲学 安珠 写真展』で、いくつかの児童文学を素材に、少女が真理を求めて旅する無限の物語が紡がれていました。



「ある少女が大きなクローゼットの扉を開けると郷愁を誘う楠の葉の香り」などというテキストに連なるのが、「不思議の国のアリス」や「青い鳥」といった童話をモチーフとした世界による写真で、一連の作品を追っていると、あたかも少女と一緒に夢や幻の世界を旅しているような気持ちにさせられました。



カラーとモノクロームを交えた写真は、耽美的でかつ幻想的な雰囲気に包まれていて、「不思議の国のアリス」を体現するようなシュールな世界観にも心を引かれました。



ドイツの作家、エーリヒ・ケストナーが1949年に出版した絵本、「動物会議」を引用した作品も印象深いのではないでしょうか。



ケストナーは同作にて、かわいい動物たちを主人公にしつつも、戦争の愚行を繰り返す人間を痛烈に批判しましたが、絵本が世に送られてから約70年経った今もなお戦争は繰り返され、多くの子供たちが困難ない状況に置かれています。



「動物会議」の動物たちのように、会議へと招かれ、国境もない、恐怖から解放された世界を目指そうとする少女たちのすがたが思い浮かびました。



間もなく会期末です。2月12日まで開催されています。

『ある少女の哲学 安珠 写真展』 シャネル・ネクサス・ホール
会期:2023年1月18日(水)~2月12日(日)
休廊:会期中無休。
料金:無料。
時間:11:00~19:00。 
 *最終入場は18:30まで。
住所:中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A13出口より徒歩1分。東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅5番出口より徒歩1分。
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「第16回 shiseido art egg 岡ともみ展 サカサゴト』 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第16回 shiseido art egg 岡ともみ展 サカサゴト』
2023/1/24~2/26



資生堂ギャラリーで開催中の「第16回 shiseido art egg 岡ともみ展 サカサゴト』を見てきました。

2006年にスタートした新進アーティストを紹介する公募プログラム「shiseido art egg(シセイドウアートエッグ)」も、今年で16回目を迎えるに至りました。

今回のアートエッグに入選したのは岡ともみ、YU SORA、佐藤壮馬の3名で、1月より5月にかけてぞれぞれ約1ヶ月間、個展の形式にて作品が発表されます。

その第1弾となるのが1992年生まれの岡ともみで、死者が出た際に日常の様々な動作を逆に行う「サカサゴト」に着目したインスタレーションを公開していました。



「電話をお取りください。」と書かれた古びた黒電話を取り、階段を降りて展示室へと進むと目に飛び込んでくるのが、11本の林立する柱に柱時計が設置されたインスタレーションでした。



いずれの時計も盤面は反転し、針も逆回転していて、下部には風車が回る光景や一本の花が添えられる様子、はたまた屏風絵が逆さに置かれるすがたなどが映像に映されていました。



これらは「サカサゴト」の風習を表したもので、例えば逆さに置かれた屏風絵では、故人の枕元に屏風を逆さに置く仏教の死後の儀式を意味していました。



一連の柱時計の作品に加え、雨の降る中に紫陽花の咲く光景を映した『青い紫陽花』も魅惑的だったかもしれません。これは作家の祖父が亡くなった際、棺に青い紫陽花を手向けたところ、遺骨が薄青に染まったことに着想を得たもので、作家の祖父の死と弔いの象徴として示されていました。


現代において「サカサゴト」の風習の多くが消えていこうとする中、形骸化する葬送のあり方を問い直す展示だったのではないでしょうか。私自身も最近、近しい人を亡くしただけに、どのように人の死と向かい、そして見送るのかについて改めて考えさせられるものがありました。



2月26日まで開催されています。

「第16回 shiseido art egg 岡ともみ展 サカサゴト』 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:2023年1月24日(火)~2月26日(日) 
休廊:月曜日。*祝日が月曜にあたる場合も休館
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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『石川直樹 写真展 ダウラギリ/カンチェンジュンガ/マナスル』 GYRE GALLERY

GYRE GALLERY
『石川直樹 写真展 ダウラギリ/カンチェンジュンガ/マナスル』 
2022/12/17〜2023/2/26



GYRE GALLERYで開催中の『石川直樹 写真展 ダウラギリ/カンチェンジュンガ/マナスル』を見てきました。

1977年に生まれ、世界各地を旅しながら撮影を続ける石川直樹は、冒険家としても山に挑み続け、エベレストやK2への遠征をはじめ、2016年には北アメリカ・アラスカ山脈最高峰のデナリへの単独登頂するなどの成果をあげてきました。



その石川が2022年春から秋にかけ、ヒマラヤへ出かけて撮影した写真を展示するのが『石川直樹 写真展 ダウラギリ/カンチェンジュンガ/マナスル』で、タイトルの通りにいずれも8000メートル級のカンチェンジュンガ、ダウラギリ、マナスルに登った際の写真が並んでいました。



このうち石川が「身体はズタボロの状態だった。」と語るのが世界で3番目に高いカンチェンジュンガへの登山で、頂上に迫るも、頂を間違えるというまさかの事態に陥って一度撤退し、その後、数日間の休養を経てどうにか登頂を果たしました。



また10年ぶりに向かったマナスルも雪崩が頻発し、頂上付近では強風にさらされるなど、緊迫した登山を強いられていて、こうしたエピソードを伺わせる映像も展示されていました。



石川の個展として思い出すのが、2019年に東京オペラシティアートギャラリーにて開かれた『石川直樹 この星の光の地図を写す』で、1990年代後半から同年近くにて世界各地にて撮影した写真が公開されていました。



一連の大自然を捉えた風景はもとより、現地の人々を写した写真にも魅力があるのではないでしょうか。コロナ禍以降、最近の石川の活動を伺い知ることができました。



なおGYRE地下1階では石川のドームテントが公開されていて、中ではマナスル登山時の映像を見ることができました。


コロナ禍を乗り越え、石川直樹が再びヒマラヤの山々へと挑む。GYRE GALLERYにて個展が開催中|Pen Online



2月26日まで開催されています。

『石川直樹 写真展 ダウラギリ/カンチェンジュンガ/マナスル』 GYRE GALLERY
会期:2022年12月17日(土)〜2023年2月26日(日)
休廊:不定休(12月31日、2023 年1月1日、2月20日は休館)
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅4番出口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A1出口より徒歩4分。
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『宇野亞喜良 万華鏡』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー

ギンザ・グラフィック・ギャラリー
『宇野亞喜良 万華鏡』
2022/12/9~2023/1/31



ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の『宇野亞喜良 万華鏡』を見て来ました。

戦後日本のイラストレーション界を切り開いてきた宇野亞喜良は、広告美術、絵本や小説の挿絵から舞台美術などと幅広く手がけ、現在に至るまで多くの作品を世に送り出してきました。

その宇野が新たに特殊印刷とコラボを果たしたのが『宇野亞喜良 万華鏡』で、会場では特殊印刷を施した新作、および1960年代から70年代にかけての旧作のポスターが公開されていました。



まず1階展示室にて目を引くのが特殊印刷による新作で、いずれも宇野がかねてより親しむ俳句と、代名詞とも言える少女をモチーフとしたシリーズが並んでいました。



そこには間村俊一や藤田湘子の俳句とともに、宇野の耽美的でかつアンニュイとも呼べる少女が描かれていて、あたかも作品を飛び出して壁から展示室へとイラストレーションが渦巻くような空間が作られていました。



一連の特殊印刷を手がけたのが雑誌『デザインのひきだし』(グラフィック社)の編集長である津田淳子で、一口に特殊といえどもギルディング和紙や段ボールといった素材をはじめ、スクリーンフォイルや箔を腐食させるような加工などさまざまな様態を見ることができました。



藤田湘子の俳句を添えた『美少女』では、バラの模様がエンボスされたドイツ製のホイルペーパーが用いられていて、支持体の色や柄も相まってか、可憐ながらもややゴージャスな雰囲気を醸し出していました。



いずれの作品も元来の宇野のイラストレーションの妙味をさらに引き出していて、大いに魅せられるものを感じました。



地下展示室での1960年から70年代のポスター約50点も見どころかもしれません。この時代、宇野のイラストレーションは大変な人気を呼び、たとえば劇団人間座公演のポスターに至っては街から剥がされてしまったというエピソードも残っていますが、一連のポスターからも当時の人気を伺い知るものがありました。

イラストレーター、宇野亞喜良が新たにコラボした特殊印刷とは? ギンザ・グラフィック・ギャラリーにて展覧会が開催中!|Pen Online



日曜、祝日、および年末年始はお休みです。2023年1月31日まで開催されています。

『宇野亞喜良 万華鏡』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー@ggg_gallery
会期:2022年12月9日(金)~2023年1月31日(火)
休廊:日曜・祝日。2022年12月28日(水)〜2023年1月5日(木)
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅から徒歩5分。JR線有楽町駅、新橋駅から徒歩10分。
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『高木由利子 写真展 カオスコスモス 壱 — 氷結過程 —』 GYRE GALLERY

GYRE GALLERY
『高木由利子 写真展 chaoscosmos vol.1 — icing process — カオスコスモス 壱 — 氷結過程 —』 
2022/10/7〜11/28



GYRE GALLERYで開催中の『高木由利子 写真展 chaoscosmos vol.1 — icing process — カオスコスモス 壱 — 氷結過程 —』を見てきました。

東京生まれの写真家の高木由利子は、衣服や人体を通して「人の存在」を撮り続けた作品で知られ、日本やヨーロッパにて展覧会を開くなどして活動してきました。

その高木が近年手がけている「カオスコスモス(chaoscosmos)」と呼ばれる作品を紹介するのが今回の個展で、会場にはモノクロームによる大小さまざまな写真が展示されていました。



まず目を引くのが「地上絵 the geoglyph」と題した写真で、それこそナスカの地上絵を連想させる線が折り重なるようにして画面へと広がっていました。



この他、まるで宇宙に浮かぶ天体のような球形のモチーフや細胞を思わせるようなかたち、はたまた植物のようなイメージなどが写されていて、いずれも宝石のごとくに白く輝いていました。



一連の写真は、高木が自ら生活する寒冷地において、氷点下の夜、容器に水を張り、朝にかけて氷に成長していくプロセスを捉えたもので、「氷結過程」と名づけました。



「カオスコスモス」プロジェクトとは、肉眼では見えない自然現象をカメラによって抽出しようとする試みで、「氷結過程」は第1弾に相当します。



今回は「カオスコスモス 壱」として「氷結過程」のシリーズが展示されていましたが、以降、第2弾、第3弾でもこれまで見たことのないような自然のさまざまなすがたが示されるのかもしれません。


まるで地上絵のようなイメージとは?写真家、高木由利子が見出したミクロの世界|Pen Online



GYRE店内の吹き抜けを使った展示も迫力がありました。11月28日まで開催されています。

『高木由利子 写真展 chaoscosmos vol.1 — icing process — カオスコスモス 壱 — 氷結過程 —』 GYRE GALLERY
会期:2022年10月7日(金) 〜11月28日(月)
休廊:会期中無休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅4番出口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A1出口より徒歩4分。
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『シャネルを紡ぐ手 アンヌ ドゥ ヴァンディエール展』 シャネル・ネクサス・ホール

シャネル・ネクサス・ホール
『シャネルを紡ぐ手 アンヌ ドゥ ヴァンディエール展』 
2022/8/31~10/2



シャネル・ネクサス・ホールで開催中の『シャネルを紡ぐ手 アンヌ ドゥ ヴァンディエール展』を見てきました。

1980年代よりジャーナリストとして活動をはじめた写真家のアンヌ ドゥ ヴァンディエールは、手をテーマとした「H/and」シリーズを発表すると、以来ポートレイトを取り続け、世界各地の美術館などで作品を発表してきました。

そのアンヌ ドゥ ヴァンディエールの活動を紹介するのが『シャネルを紡ぐ手』とで、会場にはアンヌの撮り下ろした大小さまざまなモノクロームの作品が展示されていました。

今回の個展に際してアンヌが取材したのは、パリにあるシャネルのオートクチュールのアトリエ、およびそのクリエイションを支えるメティエダールの13のアトリエで、いずれも職人の手にフォーカスとして撮影を行いました。



そのうちのマサロとは1894年創業の靴のアトリエで、シャネルのシューズを職人らがすべて手作業にて製作してきました。



絹織物のアトリエのドゥニ&フィスでは、リヨンの絹織物の伝統を守りつつ、革新的な技術を取り入れながら、さまざまなシルク生地を生産していて、アーカイブとして17500もの図案が保管されてきました。



一方で1829年創業のコスチュームジュエリーのアトリエであるデリュは、手作業を基本としながらも、3Dプリンターを用いた技術を取り入れていて、職人らが繊細な手仕事をする光景を目の当たりに出来ました。



また職人たちが自らの手について語るコメントも付いていて、例えば水の中で手を動かす必要性やケアが大切であることなど、仕事を行う上でのエピソードも伺い知れました。



こうした職人らの手仕事はほとんど公開されていなかったことからしても、貴重な写真といえるのではないでしょうか。まさにシャネルを支える職人らのモノづくりの真髄が臨場感をもって切り取られていました。



会期中は無休です。10月2日まで開催されています。

『シャネルを紡ぐ手 アンヌ ドゥ ヴァンディエール展』 シャネル・ネクサス・ホール
会期:2022年8月31日(水)~10月2日(日)
休廊:会期中無休。
料金:無料。
時間:11:00~19:00。 
 *最終入場は18:30まで。
住所:中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A13出口より徒歩1分。東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅5番出口より徒歩1分。
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『高橋大輔個展 絵画をやるーひるがえって明るい』 ANOMALY

ANOMALY
『高橋大輔個展 絵画をやるーひるがえって明るい』
2022/9/10〜10/8

(*)

ANOMALYで開催中の『高橋大輔個展 絵画をやるーひるがえって明るい』を見てきました。

1980年に埼玉県で生まれた画家の高橋大輔は、絵具を厚く盛った厚塗りの抽象絵画で知られ、「絵画の在りか」(東京オペラシティアートギャラリー、2014年)といった国内のグループ展に参加するなどして活動してきました。

その高橋の近作と最新作によるのが『高橋大輔個展 絵画をやるーひるがえって明るい』で、会場には油彩による30点の絵画が展示されていました。


『無題』 2022年

まず目を引くのは、比較的サイズの小さな数点の絵画で、何らかのかたちこそ見え隠れするものの、具体的なモチーフは示されていませんでした。


「外壁」シリーズ

この一連の絵画は「外壁」シリーズと呼ばれていて、高橋が日頃の生活で目にするという近所の建物の外壁の色を抽出して描いたものでした。そしていずれも明るい色彩による絵具が塗られているものの、決して厚塗りではありませんでした。


右:『Toy(キリン)』 2021年

こうした外壁シリーズと同様、かつての厚塗りの絵画とは大きく異なって見えたのが、「Toy」と題した動物をモチーフとしたシリーズでした。ここでも明るい色彩と素早いタッチによって動物が描かれていて、明らかに具象的なイメージが立ち上がっていました。

今回の個展でとりわけ鮮烈な印象を与えたのは、自動筆記によるドローイングを契機に生み出されたという「白昼夢」と呼ばれるシリーズでした。


『白昼夢 #4』 2022年

中でも『白昼夢#4』は縄文から令和への時代や年号の漢字のみを一面に描いていて、それぞれの文字はどこか記号を示すように連なっていました。


『Toy(キリン)』(部分) 2021年

一見するところ、いずれのシリーズもかつての厚塗りの絵画とは大きく異なっているようでしたが、下地の色やストロークの痕跡、また色が滲むようなタッチなど絵具に対するこだわりとも言える表現も垣間見ることができました。


『無題/One Yen Coin』 2021年

身近なモチーフを描くようになった高橋の新たな方向性の示された展覧会だったかもしれません。その清新でかつむしろ大胆な表現に心を引かれました。


厚塗りの抽象絵画から新たな境地へ!画家、高橋大輔の個展がANOMALYで開催中|Pen Online

10月8日まで開催されています。*は『Toy(虎)』 2021年

『高橋大輔個展 絵画をやるーひるがえって明るい』 ANOMALY
会期:2022年9月10日(土)〜10月8日(土)
休廊:日、月、祝祭日。
時間:12:00~18:00。
料金:無料
住所:品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F
交通:東京臨海高速鉄道りんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩約8分。東京モノレール羽田空港線天王洲アイル駅中央口より徒歩約11分。京浜急行線新馬場駅より徒歩12分。
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『野口哲哉「this is not a samurai」」』 ポーラ ミュージアム アネックス

ポーラ ミュージアム アネックス
『野口哲哉「this is not a samurai」」』 
2022/7/29~9/11



ポーラ ミュージアム アネックスで開催中の『野口哲哉「this is not a samurai」」』を見てきました。

1980年に生まれた現代美術家の野口哲哉は、鎧兜を身につけた人間をモチーフとした絵画や彫刻で知られ、国内外にて作品を発表するなどして活動してきました。



その野口の新旧作によって構成されたのが『this is not a samurai』と題した個展で、立体や平面など約40点あまりの作品が公開されていました。



野口の手がけるサムライの特徴として挙げられるのが、極めて精緻な甲冑の造形で、実際に歴史的資料を参照するなど綿密な考証に基づいて制作されました。



またいずれの人物も人間の内面を巧みに表現していて、途方に暮れていたり、手を額に当てて座り込んでいたりと、同じ表情を見せている者は一人としていませんでした。



そして時にジーンズを履いていたり、スマホらしく物体を操作しているなど、あたかも現代の若者のような出立ちや仕草をしていて、古のサムライがあたかも現代に生きているようなすがたを見せていました。



とはいえ、彼らはサムライであるかどうか厳密に規定されているわけではありません。いずれも鎧をまとい、兜をかぶりながらも、必ずしもサムライをそっくりそのまま表現していない点こそ、野口の作品の醍醐味といえるのではないでしょうか。



今回の個展のタイトルに「this is not a samurai」、つまり「サムライではない」と付けられていましたが、たとえば戦国の武将でもなく、かといって現代人でもない、いわばどの時代もさまざまな内面を持った一人の人間として表現されているのかもしれません。



展示は昨年の高松市美術館にはじまり、山口県立美術館、群馬県立館林美術館、刈谷市美術館にて行われてきた巡回展で、東京ではポーラ ミュージアム アネックスでの開催となります。


「もし現代にサムライがいたら・・?! 野口哲哉の個展へ行こう!」 | イロハニアート

会期中は無休です。9月11日まで開催されています。*写真はすべて『野口哲哉「this is not a samurai」」』より。撮影が可能です。

『野口哲哉「this is not a samurai」」』 ポーラ ミュージアム アネックス@POLA_ANNEX)
会期:2022年7月29日(金)~9月11日(日)
休館:会期中無休。
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は18:30まで 
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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『第24回亀倉雄策賞受賞記念 大貫卓也展「ヒロシマ」』 クリエイションギャラリーG8

クリエイションギャラリーG8
『第24回亀倉雄策賞受賞記念 大貫卓也展「ヒロシマ」』
2022/7/12~8/20



クリエイションギャラリーG8で開催中の『第24回亀倉雄策賞受賞記念 大貫卓也展「ヒロシマ」』を見てきました。

グラフィックデザインの発展に寄与することを目的として、1999年に設立された亀倉雄策賞は、今年で第24回を迎えるに至りました。



今回の亀倉雄策賞に選ばれたのは、数々のブランドミュニケーションを手がける大貫卓也で、平和希求キャンペーンポスターおよび関連制作物の「HIROSHIMA APPEALS 2021」が受賞作に決まりました。



ともかく目を引くのは、スノードームに入れられた白い鳩のモチーフで、黒い雪の中から白い鳩があらわれる様子などが表されていました。それらはあたかも黒い雨を連想させるようで、床には同じような黒く細かいゴムチップが敷き詰められていました。



白い鳩はドームの中で美しいすがたを見せていたものの、黒い雪にすべて覆われていて目にすることができないものもあり、それこそ原爆による破壊や死を連想させてなりませんでした。



会場の奥にて公開されていたスノードームと鳩による映像も凄みがあったかもしれません。またパブロ・カザルスの『鳥の歌』などがBGMとして流れていて、まさに瞑想と祈りを誘うような空間が広がっていました。



広島に原爆が投下されて77年が経過しましたが、今改めて「NO WAR」のメッセージが重く響いているように感じられてなりませんでした。


日曜、祝日、及び8月10日から8月14日の間がお休みです。8月20日まで開催されています。

『第24回亀倉雄策賞受賞記念 大貫卓也展「ヒロシマ」』 クリエイションギャラリーG8@g8gallery
会期:2022年7月12日(火)~8月20日(土)
休館:日曜、祝日。および8月10日(水)〜8月14日(日)
時間:11:00~19:00。
料金:無料。
住所:中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
交通:JR線新橋駅銀座口、東京メトロ銀座線新橋駅5番出口より徒歩3分。
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『「A Quiet Sun」田口和奈展』 メゾンエルメス フォーラム

メゾンエルメス
『「A Quiet Sun」田口和奈展』 
2022/6/17~9/30



メゾンエルメス フォーラムで開催中の『「A Quiet Sun」田口和奈展』を見てきました。

1979年に生まれた田口和奈は、現在ウィーンを拠点に制作を続け、アジアやヨーロッパなどで個展やグループ展を開くなどして活動してきました。



その田口の東京での個展が『A Quiet Sun』で、本展のために作られた新作と、田口が収集した誰の手によるものか分からないファウンドフォトと呼ばれる作品にて構成されていました。



ともかく目を引くのは、モノクロームに包まれた人や風景、はたまた名画のモチーフを捉えた小さな作品で、いずれも時間がとまっているような静謐でかつ幻想的な表情を見せていました。



田口は自ら制作した絵画や彫刻を多重露光で撮影したり、プリントした印画紙の上に油彩のドローイングを描き、再び撮影をするといった複雑な手法にて作品を制作していて、一見するところ写真とも絵画とも判別し得ないような重層的なイメージが浮かび上がっていました。



またコラージュとも呼べるような手わざの跡も感じられて、質感などの繊細なニュアンスも魅惑的に思えました。



エルメスのスペースがこれほど寡黙な雰囲気に包まれていたことはあまりなかったかもしれません。ガラスブロックの窓から降り注ぐ明るい夏の日差しの中、小さなモノクロームの小宇宙が物語を生み出すように連なっていました。



予約は不要です。9月30日まで開催されています。

『A Quiet Sun」田口和奈展』 メゾンエルメス フォーラム
会期:2022年6月17日(金)~9月30日(金)*予定
休廊:7月14日(木)、8月17日(水)
時間:11:00~19:00 
 *最終入場は閉館の30分前まで。
料金:無料。
住所:中央区銀座5-4-1 銀座メゾンエルメス8階フォーラム
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。
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