『ダミアン・ハースト 桜』 国立新美術館

国立新美術館
『ダミアン・ハースト 桜』
2022/3/2~5/23



国立新美術館で開催中の『ダミアン・ハースト 桜』を見てきました。

1965年にイギリスで生まれたアーティストのダミアン・ハーストは、1995年にターナー賞を受賞して脚光を浴びると、芸術、宗教、科学、生と死などをテーマに、絵画、彫刻、インスタレーションといったさまざまな作品を発表してきました。

そのハーストの最新作のシリーズである「桜」に焦点を当てたのが『ダミアン・ハースト 桜』で、会場には2018年から3年間余りにかけて描かれた「桜」107点のうち、24点の作品が展示されていました。



ともかく真っ白な展示室に並ぶのが、大きいもので縦5メートル、横7メートルを超える絵画『桜』で、1枚1枚には『生命の桜』や『夜桜』、『知恵の桜』や『大切な時間の桜』といった異なるタイトルがつけられていました。



いずれも水色の空を背景に茶色の幹や枝を伸ばした桜が、ピンクや白の花を咲かせるすがたを表していて、まさに満開に咲き誇る鮮やかな桜を目にするかのようでした。



とはいえ、近づいて目を凝らしていくと、ピンクや水色のほかに、緑色や黄色、黄土色などの色彩が粒状に重なるようすも見てとれて、あたかも点描を用いた抽象絵画のような趣きもたたえていました。



また絵具は塗られるというよりも、投げつけられているような感触を見せていて、白い飛沫のような線も跳ねていました。それこそポロックの絵画ならぬドリッピングの技法を思わせるのではないでしょうか。



しばらく「桜」と題した絵画を前にしながら、会場を行き来していると、不思議と「桜」のイメージが消え、未だ見たことのない不穏な景色を目にしているような気分にさせられました。具象と抽象を行き来しつつ、絵具そのものの強い物質感が表れているのも、一連の「桜」のユニークな魅力かもしれません。



会場奥のスペース、また美術館のサイト上にて公開されている映像、『HENI、ダミアン・ハースト、カルティエ現代美術財団によるドキュメンタリー・フィルム』(制作:カルティエ現代美術財団)が大変に興味深い内容でした。


そこではハーストが美術史家のティム・マーロウとともに、桜を描いた理由をはじめ、コロナ禍のロックダウン下の制作などについて語っていて、絵筆をキャンバスから離して投げながら色をつけていく制作風景も見ることができました。

一連の作品は世界各地のプライベートコレクション(一部を除く)によるもので、2021年にカルティエ現代美術財団で公開されたのち、ハーストが作品を選定した上で日本へとやって来ました。



ともすればこれらの作品が再び同じ空間に集まることはもうないのかもしれません。桜が花を咲かせてすぐに散ってしまうのと同様に、どこか物悲しくも感じられました。

会期の初めの頃に行きましたが、思いのほかに賑わっていました。東京での花見のシーズンはすでに終えましたが、ゴールデンウィーク期間中にかけてさらに多くの方が詰めかけるかもしれません。

撮影も可能です。5月23日まで開催されています。*掲載写真はいずれも『ダミアン・ハースト 桜』展示作品

『ダミアン・ハースト 桜』 国立新美術館@NACT_PR
会期:2022年3月2日(水)~5月23日(月)
休館:火曜日。但し2月23日(火・祝)、5月4日(火・祝)は開館。2月24日(水)は休館。
時間:10:00~18:00
 *毎週金・土曜日は20:00まで
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500円、大学生1200円。高校生600円。中学生以下無料。
 *団体券の発売は中止。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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