アバン。
部屋に投げられていた犬のぬいぐるみを窓際に。
今回はヴァイオレットがだいぶ成長したというのが暗黙の了解になっているので、
その変化をぬいぐるみでやっていたけど、だいぶ淡白な演出に感じたな。
もっと情感をもって、
ヴァイオレットの感情を追うように見せていく際のポイントだと思っていたので。
そういう観点からも今後も注目ポイントですが、この淡白さも逆に気になってきますね。
地図。
戦争が終わった、どこどこの国がどうこうなど、
ファンタジー世界の説明をされますが、
それを割と本気で取り組んでる回だったのも割と驚きで。
この話数はヴァイオレット・エヴァーガーデン、
という作品の世界観を結構説明された回だったのではないでしょうか。
船に乗って河の水路を使って移動しなければ着かない場所、
そして椿の花が大量にあるであろう庭園。
国に住む人々に国旗など、これから手紙で左右される世界、
というのを冒頭で触れられていてきめ細かな、と。
公開されてあるっぽい手紙も伏線的にアップで強調したり。
お辞儀してるところで変わったな、という印象と、
また敬礼してる、という変わらない部分が混在してるのがちょっと気になる。
まだ敬礼を解かない門番に対してのものなのかな。
この辺の敬礼の感覚は自分には掴みづらい気がしたな。
良い手紙を、という兵士の言葉がヴァイオレットの意表を突くものだったのを含め。
木漏れ日が美しいシーンでしたね。
なぜ白椿が選ばれるのかっていうのが結構ファンタジー要素ですよね。
王女のティアラにも刻印がある徹底ぶり。
王女自身が好んでいるのか、国の象徴としてなのか。
椿が思い出の花というのもあるのだろうけど、
それだけでは到底収まらない範囲を射程に入れているようで、
その辺が面白い要素かな、と。
椿の国って素敵じゃない?くらいのファンタジー性かもしれませんが。
ただその語り口は面白いな、と。
同ポの面白さ、結局王女の返答なしに部屋に入る女官、目をそらす執事。
この一連の流れで姫がきっちりとした人物でないことを示していて、
なおかつその流れも目線をそらす執事のコミカルさもあって楽しいシーン。
凛然と立つ女官の姿が、またか、に変わるような間の置き方も楽しい。
人物像を描きつつ、楽しさもある。
このリズム感が面白いですね。
そしてこの執事さん、最後までしゃべらない。
それが別のドラマを予感させれる余白がある。
計算された配置は時に心地よいものですね。
部屋に入って。
右の時計がちゃんと動いてる。
足音のリズムは音を出さない時計の時を刻むことを代弁しているようですね、
というのは変過ぎる褒め方か。
お辞儀。
全体像は部屋に入る前に描いたのでという省略やり方。
2回目のお辞儀をなぜわざわざ描くのかっていうのは、
姫の代筆屋がきたの?
という部屋に入る前の挨拶が届いていない返答を受けてですかね。
律義さっていうのに触れたかったのか、
流れを切れないからこうするのが自然だろうという感じなのかな。
姫の引きこもり生活?
自分で選んだであろうクッションやらぬいぐるみやらというのが目に入る。
部屋をのぞく女官。
赤ちゃんの時取り上げたという話から、
これが母親の胎内にいることのメタファーと一応。
着替え。
こういう女の子が綺麗になっていくのを見るのは変身の一種で楽しいですね。
椿の花が舞ってる辺り、他のアニメ作品のように記号をはめ込めないためか、
こうして実物の花をそのまま見せたりする辺り、
茶目っ気も感じられて見ていて楽しいですね。
他の女官さんたちもそれぞれの顔を持っていて、それもまた見ていて楽しい。
ピン送り+PAN。
ここの違和感としては初めからPANした位置で見せればいいものを、
その前に2つの処理がされているという点。
ピン送りはヴァイオレットの意識が相手に向く、
と言ったような解釈が可能ですが、なぜカメラも降るのか、という。
ちょっとした異化作用のある演出なので引っかかる感じ。
もちろん変身が終わった王女様を強調する意図もあるんでしょうが。
ここはPANする方向は同じなのに、
ヴァイオレットは先ほどのカットとは逆に動いている。
一度見せた現象とは違う現象が見られる引っ掛かり。
そして一旦2人の会話の想定線を超えたカットが入る。
女官はずっとヴァイオレットを見ている。
愛が無くとも?という姫の疑問に顔を向ける女官。
色々な方向へカメラを振るシーンでしたが、一定のルールはあるように見える。
その中でヴァイオレットと姫の想定線を超えて見せる女官の印象っていうのを、
姫の意外な一言への反応へ持ってくるのが目を引かれますね。
王女様ヴァイオレットの今後まで心配してくれる優しい人でややびっくり。
そこまでヴァイオレットの今後について指摘してる人が今までいなかったのも、
今考えればびっくりで。
王女が普通の感覚を持っているのがポイントなんですかね。
王女の表情豊かな怒りに無表情に、
顔をこねくり回すヴァイオレットの対比も楽しいです。
女官さんの手紙試し読み。
この女官さん、仕事をするような場面では顔をやや上げるような動作をしますが、
そういう仕草がある人という描き方なのかな。
きちっとされてる感じで好感触。
恋文音読。
既に国中にこの手紙が読まれていることをこの時点で描いてる。
一発書きでここまでの文章をヴァイオレットが書けてることへの驚きと、
手紙を街に伝える人やそれを目を輝かせて聞く聴衆がいることなど、
この手紙への国中の関心の高さもうかがえるシーンで、
上でも触れましたが世界観を描く回としてもグッとくるシーンでしたね。
王女の姿を絵で語るのも現代の写真などの文化がないせいもあり、
ちょっとした異化作用もあって新鮮でしたね。
偽りの恋文っていうのを絵で強調されているようで。
そういうメタファーをこういう文明レベルと合わせて描かれる面白さ。
アイディアの面白さですね。
しかし絵で描かれた王女は本物ではない、みたいな、
その絵を描いた人物を蔑ろにするような考え方をしてもいいのだろうか、とも思う。
ただヴァイオレットの後半の立ち位置を考えると、
果たしてそこにこの職業の人はいるのだろうか、
という自問自答を演出レベルで示されているようで、そこが興味深いかな。
まあアニメは絵だし、ということに帰結する自問自答なんでしょうが、
そういう自らが描いたことに対する考え方が見えるような感触は、
見てる側としては甘美に映ってしまうよな、と。
どうでもいい話でした。
私もはやく、私のあなたに触れたいと思っています。
王子からの返答の手紙に感づいたものがあるヴァイオレット。
相手の表現に触れるところがやや新鮮な感じ。
それを明かさないところもミステリアス。
自分的には見ていて「私のあなた」、
という所有することを意図する文面があまり好きじゃなかったんですが、
その辺がドールのクセが出ている表現だったんですかね。
ここも女官さんの癖が見れるような感じ。
そして女官さんとは相反する王女の表情。
ジッと見つめるようなヴァイオレット。
この表情を微動だにせず固めるように見つめる構図って結構怖くもありますが、
音楽などの雰囲気も手伝ってあまりそういう雰囲気になってないですね。
同ポジで。
時間。
生まれたときから今まで。
仕事をする時とはまた違った横顔を見せる。
それを見つめるヴァイオレット。
女官さんのカットで想定線を超えた見せ方をするのが面白いですね。
そして見つめるヴァイオレットはどこか怖く感じる。怖くない?
手紙の返事に花は付き物なのだろうか。
国同士の付き合いから見るに、相手の国も花の国なんだろうか。
王女を見つめるヴァイオレット。
ずっと王女の動きを、人の感情を追ってきたヴァイオレットの視点を、
改めてここで強調されてる感じだったのかな。
ありのまま、と言われて、
ちょっと表情を作ろうとするようにまぶたが動くのも引っかかる感じ。
顔がアップになったところでエメラルドが映らないのがポイントなのかな。
そういえば今回は少佐関連とか手袋外しに驚くとか、
ヴァイオレットに関する約束的な描写が無い回なんですよね。
ヴァイオレットが手紙を書かないという点から見ても、
ヴァイオレットが不要というか、後ろに下がる回でしたね。
回想。思い出の君。
合間から見える星空、月をバックにした王子と絵になる風景でグッときますね。
一瞬だけ映す王女の主観から見せるような王子の姿がまた一瞬で、
そのいい絵がスッと過ぎ去っていく感じが過去の虚栄っぽくもあって好みかな。
美しい思い出。
手紙に花と月の指定があったのも納得というか。
本当の気持ちが知りたいの。
反応するヴァイオレットが思わずドールの証に手を触れるのが素晴らしい。
ここでこれを見せるのかぁ、とグッときました。
3話のヴァイオレットも、
果たしてヴァイオレットの手紙がそこまで評価されるものだったのか、
という疑問があったのを踏まえるとなおのことを来るものがあるかなぁと。
ドールとしての仕事というのを正に姫の言葉通りに置いてきたわけですが、
結果的にそれが一流としての動きを見せていることへの感動ですよね。
何が姫のためになるのか、どうすることがドールとして、
ヴァイオレットとして何ができるのか。
そんな問いかけをその証を通して行うような精神性にグッとくる感じ。
相手からタイプライターではなく手書きの手紙。
相手のドールにも手紙を書かせるのをやめさせるヴァイオレットの手腕。
そして姫の手紙にアドバイスをするヴァイオレット。
自分で書かなくとも、サポートすることができる。
それが今回のヴァイオレット。
2人のやり取りに合わせて増えていく花瓶の花、
そしてそのやり取りにやきもきする聴衆たち。
みんなで2人の恋を見守るのが新鮮で楽しかったな。
最後にはヴァイオレットのアドバイスもなく、
1人で手紙を書ききる姫様も圧巻。
時計に合わせて右往左往。
まだかまだかと手紙を待つ姿が微笑ましいですね。
そして手紙の返事もいつもよりも遅いのだろうな、
というのが暗にわかる演出なのもGOOD。
プロポーズ。
月の君と椿の姫という絵が美しくて好きですね。
姫の一瞬の主観。
かつては見上げる相手からというのがグッとくるところですかね。
同ポジからの意外性。
母の胎内からの脱却。
ありがちですが、姫の反応の新鮮さも含め、
身を固めた女性の変化に戸惑わされる感じが、
女官の戸惑いにリンクするような感じだったかな。
花を飾る女官。
それは女官としての、
仕事としての側面であることを今までの横顔で意識しつつ、
その表情に惹かれますね。
鏡の前から離れ、慕う気持ちを伝える。
映り込みの虚構性、みたいなのは結構毎話されてますが、
ここは姫の打ち明け切れない気持ちを行動で示していて、
お前呼びとか、高圧的な態度とは違う、
その裏腹さにかけた描写なのかな。
王子のドールは、というシーン。
まあカトレアがなぜこんな重要なことのドールをやっていないの?
というそもそもの疑問が伏線になっていた感じ。
ヴァイオレットも表情。
結婚というテーマからか、美しいシーンが多くてグッときますね。
そしてヴァイオレットの物語へ。
はてさて、どう物語は転がるのでしょうか。
脚本:鈴木貴昭
絵コンテ:山田尚子
演出:藤田春香 澤真平
作画監督:植野千世子
山田尚子凄い!素晴らしい!と素直に思える話数でした。
脚本が世界観よりだったのは脚本の所為が大きかったのかな。
髪の描写などもきめ細かくてグッときたな。
山田さん監督の映画ももうすぐですね。
正直あまり期待してなかったんですが、
今話数で一気に期待感上がったので見るのが楽しみです。